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東京高等裁判所 昭和40年(う)713号 判決 1965年7月20日

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

一、検察官の所論は、原判決が沖繩は外国ではないから同地より鹿児島港に麻薬を搬入した所為は輸入に該当しない、としたのは、法令の解釈を誤つたものであると主張するのである。

しかしながら、沖繩にはアメリカ合衆国が日本国との平和条約によつて施政権を有し、日本国の統治権が排除されているが、なおわが国の領土の一部で外国でないことは明らかである。ただ、このようにわが国の領土の一部であつても、特殊の事情で、その統治権のおよばない地域については、法律の適用上、特にこれを外国とみなす場合がある。それはその法律が規制しようとする趣旨、目的によるものである。関税法第一〇八条は、関税の賦課徴収というその目的のために、沖繩を同法の適用については、当分の間これを外国とみなす旨定めているのである。このように、本来わが国の一部であるものを、法律の適用上外国とみなすためには、それなりの立法理由があり、なおそれは当該法律の明文の上で明確にしなければならない。

本件麻薬取締法には右のような明文が存在しないのであるが、それは麻薬取締法上、特に沖繩を外国とみなし、沖繩内地間の麻薬移動を輸出入として規制する必要がないからである。関税定率法において麻薬を輸入禁制品と定め関税法上これを規制すれば足りると考えているのである。麻薬は、毒物、劇物、覚せい剤、あへん、火薬類と同様、国内治安、国民の保健衛生上その取締りに必要とする危険物であり、したがつて、その製造はもとより、譲渡、運搬、所持に至るまで厳格な規制がなされ、その取締り万全を期しているのである。勿論これら危険物についても、その外国よりの輸入について、より高度の規制、取締りを必要とし、その違反に対しても高度の制裁を要することは言うまでもない。しかしながら、沖繩の現状は、特にこれら危険物の取締規制上、これを外国とみなし、その間の移動を輸出入として規制するまでの必要が存在しないために、関税法のような特別立法措置が講ぜられていないのである。概ね関税定率法においてこれを輸入禁制品と定め、沖繩よりの搬入を関税法上規制することで足りると考えているわけである。

以上の如く沖繩よりの麻薬搬入は輸入禁制品の輸入として関税法上処罰すれば足り、これを麻薬取締法上の輸入として処断することはできない。同趣旨の判断をした原判決は正当であつて、検察官の所論は採るを得ない。

(その余の判決理由は省略する)(兼平慶之助 関谷六郎 西村法)

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