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東京高等裁判所 昭和34年(く)122号 決定 1959年12月09日

少年 A子(昭一八・三・四生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は抗告申立人作成名義の抗告申立書記載のとおりで其の要旨は第一、抗告人は友人B子と共に虞犯保護事件で昭和三十四年十月九日静岡家庭裁判所で審判を受け、B子は保護観察処分となり抗告人は試験観察処分となつた。そして二人共○沢商店の女工となり同店工場に通勤中、同年十月十四日静岡駅前○野百貨店に於て共犯で窃盗を働いたと云うことで、同年十一月九日静岡家庭裁判所で二人共審判を受けたので同一処分を受けるものと期待して居たが、意外にもB子は試験観察処分(抗告申立書に保護観察処分とあるは誤記と認める)となり抗告人は初等少年院送致決定となつた。第二、抗告人は右のとおりB子と同一処分を受けるものと期待して居たので、B子に同情し原審審判廷でB子と共に窃盗した旨陳述したが、事実はB子が単独で窃盗したのであつて、其の際B子は○野百貨店の奥の方から出て来て抗告人に窃盗をしたかと聞くので抗告人は何にも盗らない旨告げると、B子はスカートを窃取した旨申した。そこで抗告人も欲しいと申述べるとB子はでは盗つてやるからと云つて再び同店内に入り二人で同店内商品売場の処で商品を見て居たとき、○野百貨店店員に呼び止められ逮捕された次第で抗告人は共犯ではない。以上のとおり原決定は納得が行かないから本件抗告に及んだ次第であると云うに在る。

よつて案ずるに、原決定が認定した非行事実(2)の窃盗の点は所論共謀の点をも含めて総て記録添附の○野○郎名義の被害届○月○美子の司法巡査に対する供述調書、B子の司法警察員、司法巡査及び検察官に対する各供述調書、抗告人の司法警察員、司法巡査及び検察官に対する各供述調書、B子及び抗告人の原審審判廷に於ける各陳述等により優に之を肯認することが出来るのであつて、記録を精査検討して見ても原決定の右認定が誤つて居るとは思われないから、原決定には決定に影響を及ぼす重大なる事実の誤認はない。

そこで記録に現われた本件保護事件の非行事実(1)(2)と抗告人たる少年の年齢、性格、生育歴、家庭の事情、生活環境等諸般の事情を総合勘案するときは、所論の事情を斟酌して見ても、少年を初等少年院に送致した原決定は相当であると思料せられる。所論は抗告人は先にB子と同一虞犯事由により試験観察処分を受け、同一勤務先に勤め居たところ、この度B子と共犯であるとして審判を受けたのに、B子は試験観察処分となり抗告人は初等少年院送致となり納得出来ないと主張するが、記録に現われた両人の各性格、家庭の事情、生活環境等を比較考量するときはB子と抗告人との間には明らかに異るところがあつて、抗告人には抗告人を指導して社会に適応せしめて呉れる社会資源の乏しい点を考慮するときは、其の保護処分の種類の異るのは当然であつて、原審がB子を試験観察処分に付し抗告人を初等少年院に送致したからと云つて不当の処分であるとは云えない。従つて少年を初等少年院に送致した原決定の処分は結局已むを得ざるものと考えられ抗告人主張のように著しく不当の処分とは思われない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三十三条第一項少年審判規則第五十条により之を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 山田要治 判事 滝沢太助 判事 鈴木良一)

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