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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)224号 決定 1958年6月21日

抗告人 関口春男(仮名)

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告人は、「本件調停前の処分命令を取消し、更に相当の裁判を求める。」旨申立て、その理由は、申立人を小沢タミとし、抗告人を相手方とする東京家庭裁判所昭和三二年(家イ)第四、〇六七号夫婦関係調整に関する調停申立事件につき、同裁判所調停委員会は昭和三三年四月二四日抗告人に対し調停前の処分として、抗告人は右小沢タミに対し、右タミが立替えた昭和三二年三月以降の当事者間の長女尚子の生活費の一部として金二万円を昭和三三年五月二日限り東京家庭裁判所に寄託して支払うべき旨を命じた。しかし申立人小沢タミは長女尚子を抗告人方より勝手に連れ去り、抗告人において同女を扶養せんとしその引取方を請求しているにもかかわらず、これに応じないのに、突如として本件調停前の処分命令がなされたのは不当であるから、右処分の取消を求めるため抗告に及んだというにある。

本件抗告の適否について考えるに、家事審判法一四条は家事審判に対する不服申立につき審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができると規定し、同法二八条により調停前の処分に違反した者が過料に処せられた場合には、その者は同規則一三条に従い過料の裁判に対し即時抗告をなすことができるけれども、同規則一三三条一項により調停委員会が調停前に調停のために必要であると認めて命じた処分そのものに対する不服申立については何らの定めがなく、却つて同条二項によれば右調停前の処分は執行力を有しない旨定められ、右処分が勧告的性格を有するにすぎないところからみれば、右規則一三三条一項の調停前の処分に対しては不服の申立をすることができないと解するのが相当であるから、本件抗告を不適法として却下すべく、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 二宮節二郎 裁判官 奥野利一 大沢博)

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