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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)779号 判決 1958年6月23日

事実

控訴人(一審債務者、敗訴)は、被控訴人の本件土地賃貸借契約を解除する旨の通知書は昭和三十一年十二月三十一日に発送されて、控訴人に到達したのは翌三十二年一月元旦である。日本古来の慣習として、元旦には何人も金銭の請求をなさずすべての紛議を起さないことになつていて、この慣習は国民の確信として例外なく遵守され、確固たる慣習法を形成している。被控訴人の前記契約解除通知は右慣習法に違反するとともに、権利の濫用として無効であり、かかる無効の契約解除通知に基く本件仮処分申請は許されるべきではないと主張した。これに対し被控訴人は、控訴人主張の慣習並びに慣習法の存在を否認すると述べた。

理由

控訴人は当審に至り、前記争点欄に記載したような新たな抗弁を提出したが、その主張のような慣習や慣習法の存在はこれを認めることができないばかりでなく、ただわが国において一月元旦には普通一般に国民が仕事を休み、新年を祝い合い、債務の履行など私法上の紛争に関する行為を差し控えるという風習があるけれども、それだからといつて、一月一日に到達した契約解除の意思表示がその効力を生じないとする根拠はどこにもないし、たまたま一月一日に到達するように発信した契約解除の意思表示を権利の濫用というわけにもゆかない。

よつて、本件仮処分決定を認可した原判決は相当で、本件控訴は理由がないとこれを棄却した。

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