大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和33年(ツ)36号 判決 1958年8月23日

事実

上告人は上告理由として、被上告人の主張によれば本件無尽金九万円の弁済方法は昭和三十年二月より同年十月まで都合九回に毎月二十五日金一万円宛支払うこととし、右払込金の支払を一回たりとも遅滞したときは分割弁済の利益を失い未済額を一時に請求されても異議がないことになつている。原判決は右主張を認め、右割賦金は昭和三十年五月以降支払われていないこと明白であるとなし、被上告人の請求の有無を認定することなく、前記特約により直ちに上告人は昭和三十年五月二十六日以降の遅延損害金を支払う義務があると判示している。しかしながら、大正十年五月二十七日大審院判決(二七輯九六三頁)は、「契約不履行に因る損害賠償の債務の如きは債務者が履行の請求を受けたる時より遅滞の責に任ずべきものなることは民法の規定に依り明白にして其の法意は債務者をして履行の請求を受けたる日に其履行を為さしむるを以て足れりとし履行を為さずして其日を経過したる場合始めて遅滞の責に任ぜしめたるものと解するを相当とする」と判示しているから、前記の原判示は右大審院判例と相反するものであつて破毀を免れないと主張した。

理由

原判決によれば、原審は本件無尽契約においては、上告人は本件無尽返掛方法として昭和三十年二月から同年十月まで九回に毎月二十五日金一万円宛支払うべく、もし右払込金の支払を一回でも怠つたときは、当然分割弁済の利益を失い、一時に未済額全部の請求を受けても異議ない旨約した事実を認定したこと明らかである。右のように、債務者がその債務を分割して弁済する旨約するに当り、割賦金の弁済を一回若しくは数回怠つたときは当然期限の利益を失う旨定めた場合においては、通常右延滞により期限の利益を失つた割賦金についても、既に延滞にかかる割賦金と同様に扱い、損害金の如きも右延滞の時から支払う趣旨であると認むべく、原審も本件契約が右通常の趣旨に従つてなされたものであることを認定したことをその判文によつて看取することができるから、上告人に期限の利益を失つた部分について履行遅滞の責任を生ぜしめるため上告人主張のような催告をなすことを必要とするものではない。上告人引用にかかる判決は本件に適切ではない。

よつて本件上告は理由がないとしてこれを棄却した。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例