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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)709号 判決 1956年7月18日

控訴人(原告) 謝文森

被控訴人(被告) 横浜入国管理事務所長主任審査官

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和二十八年十二月十日附を以つて原告に対してなした退去強制令書発布処分を取り消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出、認否、援用は、原判決事実摘示の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は原審と同一の理由により、控訴人の請求を理由なしと認めるので、「退去強制処分が実体的に違法であることを主張せんがためには、入国行為が出入国管理令第二十四条の各号のいずれにも該当しないことを主張し且つこれを立証(同令第四十六条)することを要するのであるが、控訴人は本訴においてこの点につきなんら主張するところがない、しかして控訴人が本訴において主張する事実は、要するに控訴人が不法入国をするにいたつた事情と入国後に生じた事情から考えるときは控訴人の退去を強制することは甚だしく不当である、というに帰するのであるが、(仮りに控訴人主張のような事実があつたとしても、これを以つて退去強制を甚だしく不当ならしめる事由となすことはできないのみならず)かかる事由の存在はなんら本件退去強制処分の違法を招来するものではない。尤も同令施行規則第三十五条第四号の規定によると、退去強制が甚だしく不当であることを理由とする異議申立が許される場合があるかのように解されないでもないが、同令中にはこれに関するなんらの明文がないのみならず、右施行規則の規定は同令第五十条の規定による法務大臣の在留特別許可処分の行われる場合を予想して、異議申立の際にその許可処分(これは法務大臣の自由裁量処分と解すべきである)を促がすために主張することを許したものと解すべきであるから、右施行規則の規定を以つて、退去強制が甚だしく不当である場合には退去強制令状を発付することが許されないものである、と解することはできない。」と附加する外、原判決理由の記載をここに引用し、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用して主文のとおり判決した。

(裁判官 岡咲恕一 亀山脩平 脇屋寿夫)

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