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東京高等裁判所 昭和29年(ラ)485号 決定 1956年2月17日

抗告人 金子勇本

訴訟代理人 平岡孝輔

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告人は、原決定を取り消すとの趣旨の裁判を求め、抗告理由として別紙「抗告の事由」のとおり陳述した。

よつて案ずるに、民事訴訟法第五百四十七条に基ずく強制執行停止決定に対しては、従来不服の申立をなしうるものと一般に解されていたのである。けだし同法第五百条第五百十二条に基ずく強制執行停止決定については同法第五百条第三項に不服の申立を許さない旨の明文があるのに反し、同法第五百四十七条に基ずく強制執行停止決定についてはこのような明文がないので、この場合においては、同法第五百五十八条の規定に従い即時抗告をなし得ると解すべきであり、この解釈は不当なる強制執行停止決定に対しては債権者に対しこれを是正する機会を与えることは当然のことであり、殊に同法第五百四十七条に定める強制執行停止決定は同法第五百条第五百十二条に定める場合と異り異議のため主張したる事情が法律上理由ありと考えられ且つ事実上の点につき疏明ある場合に限り発せられるのであるから、この要件を具えているかどうかについて更に上級審の判断を受けさせる実質的な必要があるからである。然しながら本案判決あるまでの一時的、応急的裁判であるという点において右第五百四十七条に基ずく強制執行停止決定と異らない民事訴訟法第五百条第五百十二条に基ずく強制執行停止決定につき予断の弊を避けるため同法第五百条第三項において既に右実質的理由を排して不服申立を許さないとしている以上右第五百四十七条に基ずく強制執行停止決定につき、これを容れて不服申立をなしうるものとなす根拠に乏しいものといわねばならない。元来民事訴訟法第五百五十八条に規定する裁判とは、それ自体において独立する裁判を指すのであるが、同法第五百四十七条に定める強制執行停止決定は異議の訴に附随する仮りの裁判であつてそれ自体独立する裁判とはいえないものであり、またこれに対し本案の裁判とは独立して特にその当否を争わせる必要もないから、即時抗告の対象とはならないものと解すべきである。しかして、決定に対する不服申立については民事訴訟法第四百十条第四百十一条その他特別の規定の存する場合のみ許されることは、民事訴訟法に明らかであり、前記強制執行停止決定については結局かような規定がないのでこれについては不服申立を許さないものと解すべきである。しからば本件抗告は不適法にして却下すべく主文のとおり決定する。

(裁判長判事 岡咲恕一 判事 亀山脩平 判事 脇屋寿夫)

抗告の事由

一、抗告人は、東京地方裁判所昭和二十八年(ノ)第九〇九号調停調書の執行力ある正本に基ずき相手方石島惣平に対し強制執行をなした。然るに、右石島惣平は、右調停においてはその代理人弁護士木戸悌次郎に代理権のなかつたことを主張し、東京地方裁判所に対し調停調書無効確認等請求の訴を提起し、右調停調書に基ずく強制執行の停止決定の申請をなし、同裁判所は昭和二十九年十月二十七日強制執行停止決定をなした。

二、然しながら、右調停は前後八回に亘つて行われ、右木戸悌次郎は相手方石島惣平の委任状を提出して出頭し昭和二十九年一月二十一日の調停期日には相手方石島惣平も出頭して調停条項を定めたものであつて、相手方石島砲塔の右主張は全く虚構のことである。従うて、相手方石島惣平の主張は理由がなく、前記強制執行停止決定は不当であるので、その取消を求めるため本件抗告に及んだものである。

参考

強制執行異議の訴における強制執行停止決定に対する抗告についての東京高裁民事各部の取扱。

○即時抗告を許す。

昭和三〇年七月一五日第三民事部決定(昭和三〇年(ラ)第三三六号)

昭和三〇年五月一〇日第四民事部決定(昭和三〇年(ラ)第二〇八号)

昭和三〇年四月一一日第五民事部決定(昭和三〇年(ラ)第七八号)

昭和三〇年五月一九日第六民事部決定(昭和三〇年(ラ)第一四五号)

昭和三〇年五月二〇日第七民事部決定(昭和三〇年(ラ)第二〇一号)

昭和三〇年七月一四日第八民事部決定(昭和三〇年(ラ)第三〇一号)

昭和三〇年九月一四日第九民事部決定(昭和三〇年(ラ)第五〇四号)

昭和三一年三月二六日第一民事部決定(昭和三一年(ラ)第一〇号)(後掲)

○不服申力を許さない。

昭和三〇年六月二八日第二民事部決定(昭和三〇年(ラ)第二九一号)

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