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東京高等裁判所 昭和29年(ネ)2386号 判決 1955年7月18日

控訴人(原告) 康安道

被控訴人(被告) 東京都知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用を控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。訴外東京都葛飾税務事務所長が控訴人に対し原判決添付の別表の上段記載(昭和二十六年一月分及二月分は同二十七年一月分及二月分の誤記と認める)のとおりになした処分及び被控訴人が同下段記載のとおりになした決定をいずれも取消す。訴訟費用を第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の陳述した主張の要旨と提出、援用した証拠方法とそれに対する認否は、全部原判決の摘示のものと同一であるから、ここに引用する。

理由

先ず、東京都葛飾税務事務所長が原判決添付の別表上段記載のとおり控訴人に対し為した処分の取消を求める被控訴人の請求の当否について判断する。原審は右請求を、被控訴人には当事者適格がないとして却下している。しかして、後段認定のとおり、東京都葛飾税務事務所長のなした右処分は違法なものではないから、被控訴人に当事者適格ありと判断すれば、控訴人の右請求を棄却する関係になるが、右判決は、控訴人にとつては原判決よりもより不利益になり、他方、被控訴人はこの点について不服を申立てていないから、当審は右のような判決をなすことができない関係にある。しかして、被控訴人に当事者適格がないとすれば、本件控訴はもちろん理由なくてこれを棄却しなければならない関係にある。故にいずれにしてもこの点に関する本件控訴は棄却すべき関係にあるのだから、被控訴人の当事者適格の有無について判断するまでもなく、この点に関する控訴を棄却すべきものとする。

次に、原判決添付の別表下段記載の決定の取消を求める請求について判断する。控訴人が東京都葛飾区本田立石町五百四十五番地で打球場施設を昭和二十六、七年当時経営していたこと、東京都葛飾税務事務所長が、控訴人に対し打球場施設は地方税法第七五条第四項第四号所定の施設に該当するものとして、原判決添付の別表上段記載のとおりの処分をなして控訴人に通知したこと、及び控訴人が右処分を不服として被控訴人に異議申立をなしたところ、被控訴人が原判決添付の別表下段記載のとおりに、控訴人の申立を理由なしとして棄却する決定をなして控訴人に通知したことは、いずれも当事者間に争がない。被控訴人は打球場施設は地方税法第七五条第四項第四号所定の施設に該当すると主張し、控訴人は右施設に該当しないと主張するが打球場施設は右施設に該当すると解するを相当とし、その理由は実定法上入場税の課税標準を確定することが可能であるとの点と共に、下記の補足理由以外は、すべて原判決の理由と同一であるから(記録二一六丁裏二行目「第四号は」以下二二一丁裏三行目「できない」まで)ここにこれを引用する。打球場施設を利用する顧客が経営者から玉を買うに支出する代金のうち相当額が、顧客に交付する景品代に充当せられることは各その同一原本の存在とその成立について争のない甲第一ないし第三号証によつて認められるが、その代金のうちには打球場の施設を利用する料金が包含せられておると解するを相当とするから(つり堀の入場料についても同様であることについては、各その同一原本の存在とその成立について争のない甲第四ないし第六号証によつて認められる)、玉代金を標準として担税力を把握して、入場税の課税標準となすことは租税理論からしても又、地方税法の解釈からしても元より当然なことである。玉代金の全額を標準として課税するか、その一部、どれだけの割合を標準として課税するかの課税技術上の困難な問題はあるが、それが困難であるとの一事で、玉代金が打球場の施設を利用する料金である性質を有しないといえないのはもちろんである。打球場の経営者が地方税法第八七条第三項によつて納入した入場税に対しては、入場税を支払はなかつた者に対しては同条第四項によつて求償権を有するが、打球場の経営者は本来顧客から同法第八七条第一項東京都税条例第三二条によつて入場税を徴収すべきもので、経営者がその義務に反して徴収しないで打球場の施設を利用させた場合には、その者の住所氏名を明かにして後日求償し得るような処置を講じておくべきであつて、このような処置を講ずることなく、そのために求償権の行使が事実上不可能な場合がでるからといつて、打球場の施設を利用するものから入場料を徴収すべきではないとはとうてい断じ得ない。

控訴人がその徴収すべき入場税について申告書の提出も納入もしなかつたことについては当事者間に争がないのであるから、東京都葛飾税務事務所長が控訴人に対し地方税法第九四条第二項、第九七条第二項によつて原判決添付別表上段記載のような決定をなしたことは適法であつて、右各決定に対する異議申立を理由なしとして棄却した被控訴人のなした右別表下段記載のような決定は適法であるといわなければならない。よつて、これと同趣旨によつて控訴人の請求を棄却した原判決は相当でこの点に関する本件控訴は民事訴訟法第三八四条第一項によつて棄却しなければならない。

よつて、本件控訴は全部これを棄却し、控訴審での訴訟費用の負担について右同法第九五条第八九条を適用し、主文のように判決する。

(裁判官 柳川昌勝 村松俊夫 中村匡三)

(別表省略)

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