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東京高等裁判所 昭和29年(う)2136号 判決 1956年2月21日

控訴人 被告人 吉田史郎

弁護人 重富義男

検察官 小西太郎

主文

原判決中被告人に対する有罪の部分を破棄する。

被告人を懲役六月及び罰金参拾万円に処する。

この裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予する。

右罰金を完納することができないときは金千円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

本件の趣意は弁護人重富義男提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、ここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。

所論により本件記録を調査し並びに当審における事実の取調の結果に徴し、被告人の性行経歴、家庭の状況、本件の各犯行の動機、情状、犯行後の状況等諸般の事情を総合考察するときは、被告人に実刑を科した原審の判決はその量刑がいささか重きに過ぎるものと認められるから、論旨は理由がある。

よつて刑事訴訟法第三百九十七条により原判決中被告人に対する有罪の部分を破棄し同法第四百条但書により当裁判所において更に判決をすることとする。

原審が被告人に対し有罪と認めた事実(原判決第一乃至第七の各(一)の事実)を法律に照らすと被告人の所為は各昭和二十九年七月一日法律第二百五号附則第十五項、同法律による改正前の競馬法第三十条第三号罰金等臨時措置法第二条に該当する(前記改正前の競馬法第三十条第三号にいわゆる「利を図つた」とは同法条制定の趣旨に鑑み単に勝馬投票類似行為をさせること自体の対価として利益を取得する場合のみに限らず汎く一般に財産上の利益を得る目的で勝馬投票類似行為をさせた場合を指称するものと解すべく、被告人の判示所為がこれに該当することは、原判決挙示の各証拠並びに当審における証人福山芳次の供述によつて明らかである)ので情状により前記競馬法第三十二条を適用し、所定の懲役と罰金を併科すべく、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条第四十八条を適用し懲役刑については犯情の最も重いと認める原判示第五の(一)別紙犯罪一覧表(五)の番号1の罪の刑に法定の加重をなし罰金はこれを合算した刑期金額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金三十万円に処し、諸般の情状に鑑み刑法第二十五条第一項を適用しこの裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予することとし、右罰金を完納することができないときは同法第十八条により金千円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い全部被告人にこれを負担させることとする。

(裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 荒川省三)

控訴趣意<省略>

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