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東京高等裁判所 昭和28年(く)136号 決定 1954年6月30日

抗告人 各少年法定代理人実父三名

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は右少年三名の附添人稲葉誠一名義の抗告趣意書と題する書面に記載されたとおりであるからこれを引用する。

所論により本件各記録を調査検討して見ても、原裁判所がなした前記各保護処分の決定には、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認、又は処分の著しい不当があるものとは認められない。

第一、少年保護事件において審判に付せらるべき少年は少年法第三条所定の少年即ち罪を犯した少年その他同条第一項第二号又は第三号に該当する少年であつて、かかる少年に対し、その性格の矯正及び環境の調整に関し適切な保護処分を加えて右少年の健全な育盛を期することが同法の目的とするところであり、かかる少年の犯した犯罪が本件のように親告罪であり、その告訴がなく又は告訴が取り消された場合であつても、検察官が捜査の結果犯罪の嫌疑があると考えるときは、検察官は同法第四十二条により、これを家庭裁判所に送致すべく、裁判所はこれに対し同法の定むる所に従い、調査審判をなし、適当と認める保護処分をなすべきものであることは家庭裁判所の機能並びに保護処分の性質に鑑み疑を容れないところである。

本件記録を調査すると本件少年等が原決定に認めたとおりの強姦未遂の罪を犯したものであることは記録上明白であつて、かかる少年に対し少年法の定むる所に従い適当と認める保護処分をした原決定はいずれも正当である。所論は保護処分の性質を刑罰と同一視し、本件に対する刑事処分との権衡を云為して原判決の不当を主張するものであつて、これを採用するに足りない。

(その他の決定理由は省略する。)

(裁判長判事 谷中董 判事 荒川省三 判事 福島昇)

抗告趣意

第一本件強姦未遂事件は刑法上親告罪であり被害者の告訴が訴訟条件となつていることは云うまでもない。勿論成人の刑事事件とは異なるのであり自ら別個の見地に立ち処分の量定をなすべきであるが親告罪の認められている精神は尊重されなければならない。本件においては検察官の捜査中に告訴取下げがあり円満に示談解決している。通常事件なら簡単に親告罪告訴欠如として不起訴処分になつて済んだ事案である。これを考えると少年であるが故に少年院送致(事実上短期一年位の懲役刑を受けたに等しい処分であると常識上考えてよいと思う)の処分を受けるのは余りに比較公平の精神に反する。

(その他の抗告理由は省略する。)

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