大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和27年(ラ)149号 決定 1952年7月29日

抗告人 相手方 余語映吉

相手方 申立人 余語美彌子 外二名

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

第一、抗告の理由

本件抗告の要旨は、東京家庭裁判所八王子支部は頭書の扶養に関する審判事件(右事件は当初調停事件として繋属したが昭和二十七年二月十八日調停不成立の結果、審判申立事件に移行)につき、昭和二十七年三月十九日家事審判規則第九十五条第一項に基く被扶養者のための臨時の処分として、「相手方(抗告人)はその勤務先である東京都中央区佃島五十四番地石川島重工業株式会社より毎月支給される相手方の給料手当等の給与のうちより各申立人(余語美弥子、余語惇子、余語信一)に対し各金三千七百円宛を昭和二十七年三月末日より右扶養料請求事件の裁判が確定するに至るまで毎月末日限り各申立人居所に宛て送金又は持参して支払わなければならない。」旨の決定をし、その決定謄本は同年三月二十二日抗告人に送達された。しかし抗告人が勤務先である石川島重工業株式会社より支給される給与では、別居の二世帯生活は到底不可能であつて、右処分は抗告人に不能を強いるものであるから、右処分の取消を求めるため本抗告に及ぶ、と謂うにある。

第二、決定の理由

家事審判法第十四条によれば、審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができる旨を規定し、家事審判規則第九十七条には、当事者又は利害関係人は扶養に関する審判に対し即時抗告をすることができる旨を定めているけれども、同規則第九十五条第一項による被扶養者のためにする家庭裁判所のなした処分に対しては、不服申立に関する規定なく、却て同条第二項に、家庭裁判所は相当であると認めるときは、何時でも前項の処分を取消し、又は変更することができる旨を定めている法意に徴すれば、かかる処分に対しては抗告も即時抗告もできないと解するのが相当であるから、本件抗告は不適法として却下を免れない。

よつて抗告費用は抗告人に負担せしむべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判長判事 斎藤直一 判事 菅野次郎 判事 坂本謁夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例