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東京高等裁判所 昭和27年(う)5985号 判決 1952年12月19日

控訴人 被告人 大槻実

弁護人 関谷信夫 渡辺泰敏

検察官 小出文彦関与

主文

原判決を破棄する。

被告人は無罪。

理由

本件控訴の趣意は弁護人関谷信夫同渡辺泰敏(連名)名義の控訴趣意書に記載されたとおりであるからここにこれを引用しこれに対し次のように判断する。

第一点について。

所論の検証調書に見取図五葉が添附され、調書と一体をなしていること、原審第三回公判調書には、右検証調書の証拠調として、「右書類を朗読し」と記載されているのみで、添附見取図についてはこれを示した旨の記載がないことは所論のとおりである。而して検証調書に図面が添附され、調書と一体をなしている場合に右検証調書の証拠調をするに当つては右検証調書の記載を読み聞かせただけではその内容の全部又は一部を了解し難いときは、これに応じて添附の図面を展示すべきことは当然の措置であるが、添附の図面を示さなくとも、検証調書の朗読のみでその記載内容を了解することができる場合には必ずしも添附図面を併せて示さなければ検証調書の証拠調手続が違法であると断ずることはできない。本件の如く被告人並に弁護人が検証に立会つた場合において当該検証調書の証拠調に際し、証拠調終了後裁判官が訴訟関係人に意見を求めたのに対し弁護人は争わない旨を述べ、何等異議を止めた跡がない(このことは右第三回公判調書の記載に徴し明かである)以上、訴訟関係人は特に右図面を示されなくとも検証調書の朗読のみによつてその内容を了解したものと認められるから、右添附図面を示さなかつたからといつて直ちに本件検証調書の証拠調手続が適法に行われなかつたということはできない。従つて原審の証拠手続には所論のような違法はないと認むべく、又右検証調書を罪証に供した原審判決は所論のような採証の法則に違反したものとはいえないから論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 谷中董 判事 荒川省三 判事 堀義次)

控訴趣意

第一点原判決はその主文に於て被告人に対し懲役一年に処する訴訟費用は全部被告人の負担とする旨言渡しその理由に於て昭和二十六年三月十三日付起訴状及び昭和二十六年三月二十日付起訴状記載の公訴事実の通りと犯罪事実を認めた。

さうして右起訴状によれば被告人坂本厳同大槻実の両名は共謀の上昭和二十六年三月十三日付 昭和二十六年二月二十六日午後十一時半頃鹿島郡徳宿村大字東野一八二四番地の三農業田口甲子方西北方堀立物置において同人所有の水粳玄米二俵価格四千円相当及び中古自転車(価格三千円相当)を窃取し 昭和二十六年五月二十四日付 (1) 昭和二十六年二月十九日午前二時頃鹿島郡夏海村大字神山三四六四番地農業富施長次方に於て同人所有の水粳玄米一俵価格二千五百円相当中古自転車一台価格五千円相当を窃取し(2) 同年同月二十五日午前二時頃鹿島郡大谷村大字子生三九四番地農業皆藤弘正方に於て同人所有の中古自転車一台価格五千円相当白米一俵価格二千八百円相当粳米三斗二千円相当及び同人保管に係る酒井利男所有の砂糖五貫刄価格一千九百円相当を各窃取し(3) 同年同月二十六日午後十一時半頃鹿島郡徳宿村大字徳宿字東野一六九五ノ二農業菅原きく方に於て同人所有の中古自転車一台価格三千円相当黒革短靴(中古)一足価格三百円相当木綿一枚価格一千百円相当木線ニコニコ一枚価格一千百円相当煙草(バット)五十本価格七十五円木綿風呂敷一枚価格百円相当及び現金五十円を各窃取したものである。というのでありその証拠として(一)田口甲子、皆藤弘正、酒井利男、菅原きくの各被害届、富施長次の盗難届及菅井きく答申書、(二)証人坂本留吉の当公廷における供述、(三)相被告人坂本厳(公判分離前)の当公廷における供述、(四)昭和二十六年五月七日為した当裁判所の検証調書を採用したのであつた。

ところが証拠に採用した(四)の検証調書には見取図五葉が右調書末尾に添付されて一体となり調書記載において右の見取図が援用されているのに原裁判所は第三回公判に於て右の検証調書の証拠調をするに当り「右書類を朗読し」た丈けで右添付見取図についてはこれを示さず全く証拠調を為さなかつた(原審第三回公判調書援用)のであるから右の検証調書は全体として適法の証拠調を為したと云うことが出来ない。これを証拠に採用することは明らかに判決に影響を及ぼすものであるから原判決はこの点で破棄を免れないものと信ずる。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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