大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和26年(う)3449号 判決 1952年4月04日

控訴人 被告人 佐藤勉

弁護人 飛鳥田一雄 外一名

検察官 吉井武夫関与

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役十月に処する。

但しこの裁判確定の日より三年間右刑の執行を猶予する。

押収に係る洋服生地三ヤール(当裁判所昭和二六年押第九八七号)はローヤルインターオーシヤンライン会社支配人佐藤正義に還付する。

原審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、末尾に添附した弁護人飛鳥田一雄、同谷田部正の共同作成名義に係る控訴趣意書と題する書面記載のとおりである。

控訴の趣意第一点について

国際法又は国内法において特に除外例の場合を規定しない限り日本国内の港湾に繋留されている船舶内において、日本人が刑法所定の罪を犯したときは、たとえその船舶が外国船であつても、日本の裁判所がその犯人に対し裁判権を有するものと解する。現在連合国の占領下にある日本においては、国内における刑法犯に対する日本の裁判権の行使について、特に制限を附した法令はあるが、本件のように、日本人が日本港内の港湾に繋留されている外国船内において窃盗罪を犯したとき、その犯人に対する日本の裁判権の行使を制限した法令は未だ存在しない。されば原審は本件について正当な管轄権を有するものであるから論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 下村三郎 判事 高野重秋 判事 久永正勝)

控訴趣意

第一点原判決は不法に管轄を認めた違法があるから破棄さるべきものと思料する。

原判決は判示事実を認定して被告人を懲役十月に処しているが本件犯行の場所は横浜税関構内南棧橋繋留中の和蘭船アカテカーク号内である。しからば原審は刑訴法第三三八条第一号の「被告に対して裁判権を有しないとき」に当る場合として判決で公訴棄却しなければならないにも拘らず有罪の言渡をしたことは不法に管轄を認めたものである。

(その他の控訴趣意は省略する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例