大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和25年(う)834号 判決 1950年7月20日

被告人

市川久之

主文

省略

理由

前略。

控訴趣意第一点について。

しかし原判決が、証拠の標目として挙示しているのは原審公判廷における被告人の供述自体であつて、公判調書中の記載ではない。従つて公判調書中の記載によつては被告人の供述の内容は、起訴状の記載と相俟つにあらざれば之を知るに由ないけれども、原審公判廷においては犯罪事実は裁判長によつて明白に解示され、被告人は右事実を肯認したものであるから親しく被告人の供述を聴取した原裁判所は該供述が、原判示事実と同趣旨であることは直ちにこれを判断することを得べく、所論の如く、起訴状の記載と相俟つにあらざれば之を知るに由なきものではない。従つて、該供述を罪証に供するには更に起訴状について証拠調をなすの要はないものと解すべきであつて、論旨の引用する最高裁判所の昭和二十三年五月四日の判決は第二審公判で公判請求書を読み聞かせていないのに、右請求書記載の犯罪事実は相違ない旨の第一審公判調書中の被告人の供述記載を採つて事実を認定したのは違法であるとの趣旨であつて、本件におけると問題を異にしているのである。それゆえ論旨は理由がない。

(註、本件は量刑不当により破棄自判)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例