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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2894号 判決 1950年8月25日

被告人

阿部実

主文

原判決を破棄する。

本件を新発田簡易裁判所に差し戻す。

理由

弁護人三輪寿壮、同豊田求の控訴趣意第一点について。

原判決が本件犯行の日時を第一事実につき「昭和二十四年八月十日頃」、第二事実につき「同年八月十二日頃」と、各判示していることは所論のとおりであつて、所論は、右犯行の日時は、第一事実につき「昭和二十三年八月十日頃」第二事実につき「同年八月十二日頃」が真実であつて、原判決にはこの点につき、事実の誤認がある旨主張するにより、記録を精査するに、原判決が証拠として採用している被害者阿部ヒロ作成の被害申告書中、被害年月日、作成年月日、受付年月日の各記載、被告人の原審公判廷における供述中所論援用の部分、及び原判決が証拠として採用してはいないが、原審において取り調べた証拠中、柿本イツ、小林スミヱのそれぞれ作成にかかる各買受始末書、司法警察員作成にかかる被告人の第二、三囘各供述調書等の各記載によれば、本件第一、第二の各窃盗は、いずれも昭和二十三年八月中の犯行であることが認められる。尤も、昭和二十四年九月十四日附検察事務官作成にかかる被告人の第二囘供述調書中には、同人の供述として「本年八月十日頃云云」の記載があり、原判決は、これを証拠に採用しているが、該供述調書中、右犯行日時の点のみについては、前記各証拠と対照して、到底信用することができないから、結局本件犯行の日時は、所論のように、第一事実につき「昭和二十三年八月十日ごろ」第二事実につき「同年八月十二日ごろ」と認定することが、真実に合致するものと言うべく、従つて原判決には、この点において、所論のような事実の誤認があつたものと言わなければならない。検事は、当公廷において、右は単に、原判決書において「昭和二十三年」とすべきを「昭和二十四年」と誤記したに過ぎない旨主張するが、しかし、本件においては、検察事務官梶信礼の起訴状にも、公訴事実として、原判決の判示と同様「昭和二十四年八月十日頃」と各記載してあり、原審は、これに基ずいて審理した結果、公訴事実のとおり、判示事実を認定したのであるから、検事主張のような、原判決書における単なる誤記とは認められない筋合である。而して、犯行の日時は刑事訴訟法にいわゆる罪となるべき事実ではないが、しかし、事件の同一性を特定するにつき、重要な一要件であつて、犯行の日時につき、満一ケ年の相違がある如きは、事件の同一性に影響を及ぼすものと解することが、社会通念上妥当であると考えられるので、原判決における前示事実の誤認は結局、判決に影響を及ぼすこと明らかな場合に該当するものと言わなければならない。

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