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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2814号 判決 1950年7月18日

被告人

上岡弘

主文

原判決を破棄する。

本件を宇都宮地方裁判所栃木支部に差し戻す。

理由

弁護人大谷彰一、同尾関義一の論旨第一点について。

記録を調査すると、本件起訴状には被告人にたいする公訴事実中、被告人は法定の除外事由なく、昭和二十四年一月中旬頃前後二回に亘り、下都賀郡(栃木県)三鴨村大字甲二千四百五十三番地上岡嘉一郎方において同人よりその生産に係る玄米四斗入一俵宛をそれぞれ代金六千円にて買い受けた旨の記載があるにも拘らず、原判決は右の事実の一つである被告人は米麥等の売買によつて利益を得る目的の下に、法定の除外事由がないにも拘らず、昭和二十四年一月中旬頃、米麥の生産者たる右上岡嘉一郎方において同人より粳玄米四斗入一俵を代金六千円で買い受けたとの旨の事実のみを認定し、その余の前記買受の事実について判断をしなかつたのみならず、却つて起訴状に犯罪事実として記載されていない事実、即ち被告人が法定の除外事由なく同年一月中旬、前記上岡嘉一郎方から被告人の肩書住居迄粳玄米四斗入一俵を自転車を利用して携帯輸送したとの旨の事実を認定したことは洵に所論のとおりである。しかるに、原審各公判調書を閲するに、原審検察官が刑事訴訟法第三百十二条第一項による訴因の変更等を請求し或いは裁判所が同条第二項による訴因の変更等を命じたような形跡の存することは遂にこれを認めることができない。果して然らば、原判決には同法第三百七十八条第三号にいわゆる審判の請求を受けた事件について判決をせず、且同号の審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるから、この点において原判決は破棄を免れない。よつて、爾余の各論旨にたいする判断を省略し、同法第三百九十七条、第三百七十八条第三号、第四百条本文に則り、主文のとおり判決する。

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