大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和24年(新を)2255号 判決 1950年7月17日

被告人

香川栄一

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人松永東、同名尾良孝の控訴趣意第一点について。

刑事訴訟法第三百一条の規定するところは被告人の自由に関する供述調書を当該犯罪事実に関する他の証拠の取り調べ前に取り調べをすることはこれによつて裁判官をしてその被告事件についてあらかじめ偏見又は予断を生ぜしむる虞あるが為にこれを禁止する趣旨であるから仮令検察官において右自白調書について他の証拠と同時にその取調べ方を請求したとしても当該裁判官においてこれが取り調べに当つて他の証拠を取り調べた後になされた以上その証拠調べを違法であるということのできないのは勿論これに基ずく自白調書を断罪の資料に供したからというて毫も違法ではない。記録によると原審において検察官は所論のように被告人の自白に関する各供述調書を本件犯罪事実に関する他の証拠の取り調べ請求と同時にこれが取り調べ方を請求したかの疑い必ずしもなしとしないが原審裁判官においてはその証拠調べに当りこれを右他の証拠の取り調べをした後になされたことが明白であるから上敍のような理由から該証拠調は適法に行われたものであつてこれに基ずく被告人の自白に関する各供述調書を断罪の資料に供したのは正当である。論旨は結局理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例