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東京高等裁判所 平成9年(行コ)15号 判決 1997年9月08日

東京都千代田区一番町二三番地二

控訴人

共立酒販株式会社

右代表者代表取締役

古市滝之助

右訴訟代理人弁護士

井上励

和田元久

千葉県柏市あけぼの二丁目一番三〇号

被控訴人

柏税務署長 寺岡勝義

右指定代理人

加藤裕

渡辺進

桑原秀年

高橋博之

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し平成四年七月七日付でした酒類販売業免許を付与しない旨の処分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり補正するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

原判決二五頁六行目の「主張ついて」を「主張について」に改め、同二六頁一〇行目の「のであり、」の次に「酒税確保とは全く無関係である。仮にこれが酒税確保に何らかの効果を有するとしても、」を同一一行目の「おいて」の次に「これを維持する必要性はなく、」を、同三六頁一行目末尾の次に「また、酒類が到酔性をす有する嗜好品であることを理由に規制するのは、酒税法の明文上の根拠が必要である。」をそれぞれ加え、その次に行を改め次のとおり加える。

「(六) 平成元年の免許取扱要領について被控訴人は合理化された旨主張するが、販売量の増加に比した免許数の増加がなされていないのであり、これほどまでに既存の販売業者を保護する理由は何らなく、改正に名を借りた消費者騙しであり、免許取扱基準は不合理である。また、霞が関地区は、夜間人口はほとんばゼロであるから改正後の基準では免許を付与できないのに、改正前の基準による酒類販売免許業者が存することからしても、改正後のほうが後退していることになり、不合理である。

(七) 酒税法一〇条一一号でいう、需給調整上の要件は、酒税の保全を害する需給の不均衡の場合に限って酒類販売免許を与えないことができるとするものであるから、酒類の需給不均衡があっても酒税が保全される場合には、その他の要件を具備すれば所轄税務署長は免許を与えなければならないところ、酒税の保全上の需給の均衡という概念は、その時の経済状況や供給者の経営規模、消費動向に左右されるもので個々の納税業務履行、不履行の問題であり、一定の計数をもって示される数値基準で判定できるようなものではないというべきであり、これを単なる数値基準をもって判定することは、酒税の保全とは無関係に既存業者の権利を保護する以外の何ものでもない。また、酒類の需給の均衡は、販売業者の数より製造数量の多寡によって左右されるものであるところ、酒造業者については酒税法による免許制で厳しい制約を受ける一方、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律によって手厚い保護が与えられ、また、需給の調整も行われているのであるから、酒類販売業者まで免許制にする必要はまったくない。さらにいえば、酒税法が一〇条一〇号で経営の基盤薄弱の場合には免許不許可とできるとした点や、第六章において納税の担保に関する規定を設けている点からして、酒税の保全の予防及び履行の手段は十分講じられているのであって、そのうえなお需給上の要件を問題にする余地は全くないというべきであり、酒税の保全に対する突発的危険が具体的に発生した場合、例えば、現実に過当競争によって販売業者が倒産し、ひいては酒税の納税に問題が行ったか、起こる具体的な兆候が出た場合にのみ、右要件を容認できるというべきである。

(八) 平成元年から消費税が施行されて一般的な間接税が導入された現行法制下においては、全ての業種の販売業者について消費者に税を転嫁する必要があるか問題になるのに、酒類販売業者だけを免許制にするのは法の下の平等に違反する疑いがある。」

第三証拠関係

本件原審及び当審の各記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所の判断は、次のとおり補正、付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四〇頁六行目の「解されるところ」の次に「(乙六)」を、同四二頁二行目の「三・六パーセント」の次に「(乙五の2)」をそれぞれ加え、同四行目の「他方で、」を「そして、」に、同五行目の「競争政策の観点から、」を「前記のとおりの酒税収入の国税収入に占める割合の低下や社会経済状況の変化、許認可制度に関する行政改革の必要性や経済活動の自由化等の観点から、」に、同一〇行目の「現れていること」から同一一行目末尾までを「現れており、酒税確保の目的からみた酒類販売業者の免許制という手段の必要性や合理性について、これを疑問視し、免許制の弊害等を訴えてその撤廃を求める世論も高まってきたこと、そしてこれらの議論にも一理ないわけではないこと、そして、これらの提言を受けて、大蔵省は平成八年一月、酒類販売業者の免許制につき需給調整上の要件の撤廃をも視野に入れて抜本的に見直す方針を固めたことが認められる。」それぞれに改める。

2  同四三頁八行目の「一五・〇」を「一五・一」に、「一八・二」を「一八・三」にそれぞれ改め、同四四頁九行目の「考慮すると、」の次に「確かに前記のとおりの酒税の国税に占める割合の低下や社会事情の変化等に照らし、免許制度廃止の提言等にも傾聴すべき点があるにせよ、なお」を、同四五頁九行目末尾に「なお、控訴人は、酒類が到酔性を有する嗜好品であるという見地からの規制は、酒税法に明文がない以上許されるべきではないと主張するが、酒税法上、酒類が到酔性を有する飲料であることがその販売規制の目的とされていないからといって、同法に定める酒販免許制度の合理性等を職業選択の自由との関係といういわば消極面から評価するうえで右の点を考慮に入れることが許されないものではないというべきである。」をそれぞれ加える。

3  同四八頁二行目の「限られるべき」から同三行目末尾までを「限られるべきであり、酒税法における酒類製造業者や酒類販売業者に対する他の各種義務、措置を定めた規定によって酒税確保の目的は十分達成できるから、酒販免許制度は必要最少限度の原則に反する旨主張する。」に、同一〇行目の「解されない」を「解することはできず、控訴人主張のとおり酒税法の他の各種規定が酒税確保の目的に沿う効果的な措置であるとしても、酒販免許制度が未だ合理性を失っているとまでは認められないから、これら免許性が違憲であるとする控訴人の前記主張は採用できない」にそれぞれ改め、同四九頁四行目冒頭から同五行目の「認められる。」までを削り、同五〇頁一〇行目の「原告の」から同五一頁二行目末尾までを「控訴人主張のような目的のために立法されたと認めることはできない。また、酒販免許制度を採用した結果、庫出税方式に反対した酒類製造業者の保護がもたらされるが、これは酒類の販売代金の回収を容易ならしめ、酒税の納税を保全するという国家財政上の目的に資することになるから、控訴人の前記主張は採用できない。」に、同五一頁四行目の「その目的」から同七行目末尾までを「右目的は、職業選択の自由に対する規制目的として相当とはいえない旨主張するが、酒税の適正かつ確実な徴収を図るという国家の財政目的は重要な公共の利益であり公共の福祉に合致するから、職業選択の自由に対する規制目的として相当であって、控訴人の右主張も理由がない。」にそれぞれ改める。

4  同六一頁二行目の「合理性を」から同三行目末尾までを「著しく合理性を欠くものとはいえないというべきである。」に、同六八頁一行目の「不合理ではないこと、」を「不当に新規免許を制限することにはならないこと、」にそれぞれ改め、同八行目末尾の次に行を改め、次のとおり加える。

「また、控訴人は、柏地区の既存小売免許者は、A地区の基準より一〇・三パーセントの増収増益を約束されており、また、他より約二倍も優遇されていることになるなどと種々計算し、既存の販売業者の売上げ維持、増加に協力してこれを優遇する結果、消費者ないし免許取得希望者が冷遇されている等主張して、基準に合理性がない旨論難する。しかし、控訴人のこれらの主張は、独自の計算や理屈を根拠にするものであるところ、平成元年六月一〇日付改正に係る免許取扱要領に基づく人口基準は、原判決に説示のとおり、酒類消費の実情が該当地域に居住する人口と密接な因果関係を有するものと認められ、また、基準としての透明性、客観性の点で優れていることから取り入れられたものであり、また、A、B、Cの三分類も地域の特性等を考慮しての分類で、その基礎数値は昭和六二年度の免許付与の実態から算出したものであって、これらをもとにした人口基準は、酒税徴収の確保という目的が損なわれることがなく、しかも、従前の制度から新制度へ円滑な移行を図るための一手法として採用された客観的なものであるから、合理的裁量の範囲ないとして肯定できるものというべきであって、これら基準による現行の免許付与制度も多々問題点が指摘されてきており、その見直しを検討すべき時期にあることは否定できないものの、右基準自体が不合理で恣意的であるとか、既存の販売業者の保護を目的としたもので不当であるなどとの非難は当たらないのであり、これを機械的に適用した前記(二)の計算結果にはなんら不当な点はないというべきである。」

5  同七〇頁八行目末尾の次に行を改め、次のとおり加える。

「控訴人は、平成元年の免許取扱要領では販売量の増加に比例した免許数の増加がなされず、既存販売業者を保護するものである旨、また、夜間人口がほとんどゼロである霞が関地区に改正後の基準では免許を付与できないことになり、かえって、改正前の基準より後退している旨主張して現行の免許取扱要領に合理性がない旨非難するが、現行の免許取扱要領の改正が、前示の趣旨で行われたもので、その改正目的に合理性を認めることができ、基準としてより客観性を期したものであると認められるのであるから、個々の場合につきなんらかの不具合があったとしても、それのみで改正後の免許取扱要領が全体として不合理であると断ずることはできないし、控訴人指摘の点を考慮しても、右改正が専ら既存の販売業者の権益の擁護を企図し、免許取得希望者に厳しくし、およそ合理性を著しく各不当な要領になったとみることもできないというべきである。

また、控訴人は、酒税法一〇条一一号にいう、酒税の保全上の需給の均衡という概念は、その時の経済状況や供給者の経営規模、消費動向に左右されるもので個々の納税義務履行、不履行の問題であって、一定の計数をもって示される数値基準で判定できるようなものではなく、数値基準をもって判定することは、酒税の保全とは無関係に既存業者の権益を保護する以外の何ものでもない旨、また、酒税法上、酒税の保全の予防及び履行の手段は十分講じられているのであって、そのうえなお需給上の要件を問題にする余地は全くないというべきであり、酒税の保全に対する突発的危険が具体的に発生した場合のみ右要件を容認できるというべきである旨主張する。しかし、現行の免許取扱要領の客観的、具体的基準の定立が、税務署長の合理的裁量の範囲を超えるといえないこと、既存業者の権益の保護を目的として定められた基準でもないことは前示のとおりであるうえ、需給上の要件自体、不必要で著しく不合理といえないことも既に判断したとおりであるから、右主張も採用できない。

さらに、控訴人は、消費税が施行された現在の現行租税法制下においては、酒類についてのみ販売業者を免許制にすることは法の下の平等を欠く旨主張するが、酒税は納税義務者が酒類製造者に限定され、その税率も高率であり、消費者に広く負担を求める消費税とはその仕組みや税率等が異なるのであるから、必ずしも同列に論ずることはできないというべきであり、控訴人の右主張は容易には採用できない。

その他、控訴人が、酒類免許制度の不合理であることをるる主張するが、いずれも、前示の認定を覆すに足りず、採用できない。」

二  以上によれば、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきである。

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加茂紀久男 裁判官 北山元章 裁判官 三村晶子)

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