大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成9年(ラ)836号 決定 1997年7月11日

抗告人

学校法人平和学院

右代表者理事

山下瞬台

右代理人弁護士

宍戸金二郎

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告の趣旨

原決定を取り消し、新井隆二に対する売却を不許可とするとの裁判を求める。

二  抗告理由

別紙のとおり。

三  当裁判所の判断

1  抗告理由1について

抗告人の主張は、要するに、原決定添付物件目録記載の土地建物(以下「本件物件」という。)の最低売却価額を決定するに当たって依拠した評価書には、本件物件の価額を求めるに際し、一般不動産市場において成立する適正価額から競売市場における特殊性を考慮した減価率を四〇パーセントと査定してこれを控除する旨記載されているが、この減価率は過大で、本件物件の最低売却価額が不当に低額であり、本件最低売却価額の決定には重大な誤りがあるというものである。

しかし、不動産競売手続においては、しばしば売主の協力を得にくいこと、買主は、競売物件を買うことについて心理的抵抗を有しがちなこと、事前に物件に立ち入って物件の内部を確認できないこと、代金を即時納付しなければならないこと、物件の引渡しに法定の手続を要すること、利用権利者の存在により物件の利用が妨げられること及び情報提供期間が短いことなどにより、通常の取引に比べて買受人を募ることが困難な事情が少なからずあることなどの特殊性があり、たとえその評価額が一般の市場価額に比して相当程度低額であったとしても、そのことをもって競売市場における評価額として不合理であるということはできない。また、本件記録によれば、評価人は、右競売手続の特殊性に加えて本件物件の形状、利用状況等を種々勘案して本件物件の評価額を定めていることが認められ、その評価の方法や評価に用いた基礎資料に誤りがあるとも窺われず、本件物件の最低売却価額が評価の基準に照らして著しく低額で社会通念上容認できないとの事情は認められないから、本件最低売却価額の決定に重大な誤りがあるということはできない。

2  抗告理由2について

担保権の実行としての不動産競売において、被担保債権の弁済期が未到来であることは、民事執行法七一条各号に定める事由に該当しないことは明らかであり、右事由に該当することを前提とする抗告人の主張は失当である。

3  よって、本件抗告は理由がないから棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官佐藤久夫 裁判官池田亮一 裁判官廣田民生)

別紙抗告の理由

1 原決定は、本件1、2の物件を金七億六〇一一万円で売却した。最低売却価額は金七億二八五二万円であった。

上記最低売却価額は評価書の一括売却価額と同一であるところ、同評価書は、価格の決定に当たり、まず一般不動産市場において成立する適正価格を金一〇億二六三〇万円と求め、これから競売市場における特殊性からその減価率を四〇%と査定し、これを控除して上記価額を求めている。

しかし、いわゆる競売市場における修正があるとしても、その減価率は価額により比率が異なって然るべきであり、それを十分に検討することなく、一律に四〇%の減価率とすることは不当である。

本件の場合は物件市場価額が約一〇億円であり、約四億円も減価されている。競売市場における特殊要因として余りに高額過ぎる。よって原決定は違法である。

2 本件競売手続は被担保債権の弁済期が未到来であり違法である。

即ち、債務者は学校法人であるところ、平成六年五月二五日和議認可決定を得、同年六月八日確定した(浦和地方裁判所平成四年コ第二号)。その手続のなかで、本件物件を含む校舎物件(他に二ヶ所)については、競売に付されれば学校経営が不可能となり再建もできないので、各抵当権者は和議債権が弁済された後でなければ別除権を行使しない旨確約した。そこで和議認可決定がなされたものである。

和議債権は、平成一七年六月が最終弁済期限である。

従って、本件申立債権者は前記合意に反し、競売申立をしたことになる。

よって原決定は違法である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例