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東京高等裁判所 平成9年(ネ)3546号 判決 1998年10月15日

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  本件各附帯控訴に基づき原判決主文第一項を取り消す。

三  一審原告らと一審被告らとの間で、一審原告野本義雄は別紙物件目録記載三の土地を、承継前一審原告甲野太郎は同目録記載四の土地をそれぞれ要役地とし、同目録記載二の土地を承役地とする通行地役権を有することを確認する。

四  本件各附帯控訴に基づき原判決主文第五項を次のとおり変更する。

一審被告らは、別紙物件目録記載二の土地上に一審原告らの通行を妨害する車両等の物件を置いてはならない。

五  一審原告らのその余の附帯控訴をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その一を一審原告らの、その四を一審被告らの各負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  当事者の求めた裁判

一  一審被告ら

(控訴事件)

1 原判決を次のとおり変更する。

2 一審被告らと一審原告らとの間において、別紙物件目録記載二の土地について一審原告らが自動車の通行を含まない囲繞地通行権を有することを確認する。

3 一審被告らは、別紙物件目録記載二の土地上にある貨物自動車一台(横浜一一せ第三二-〇一)を撤去せよ。

4 一審被告らは、別紙物件目録記載二の土地上に一審原告らの通行(ただし、自動車による通行を除く)を明らかに妨害する車両等の物件を置いてはならない。

5 一審原告らのその余の請求を棄却する。

6 訴訟費用は、第一、二審を通じて一審原告らの負担とする。

(附帯控訴事件)

附帯控訴棄却

二  一審原告ら

(控訴事件)

控訴棄却

(附帯控訴事件)

1 原判決中一審原告ら敗訴部分を取り消す。

2 一審原告らと一審被告らとの間において、一審原告野本義雄は別紙物件目録記載三の土地を、承継前一審原告甲野太郎(以下、単に「甲野」という。)は同目録記載四の土地を、それぞれ要役地とし、同目録記載二の土地を承役地とする通行地役権を有することを確認する。

3 一審被告らは一審原告らに対し、別紙物件目録記載二の土地上にある貨物自動車一台(川崎四四ぬ第八三〇)、普通乗用自動車一台(川崎五六て第四〇-〇四)及び特殊自動車一台(トヨタ製フォークリフト)その他一切の物件を撤去せよ。

4 一審被告らは、別紙物件目録記載二の土地上に車両その他一審原告らの通行の妨げとなる一切の物件を置いてはならない。

5 訴訟費用は、第一、二審とも一審被告らの負担とする。

6 第3項につき仮執行宣言

第二  本件事案の概要は、当審係属中の平成九年一二月一九日に甲野が破産宣告を受け、破産管財人沢辺照夫が訴訟承継をしたこと及び当事者双方の主張を以下のとおり付加するほかは原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書四枚目裏二行目及び三行目の「現三七番一」をいずれも「三七番一」に改め、同八行目の「ている。」の次に「なお、右三七番一は、昭和四四年一一月二七日、現三七番一と同番四に分筆され、同番四の土地は川崎市に買収されている。」を加え、同八行目の「(本件一土地)」を削除し、同九行目の「所有権移転登記手続がなされ、」の次に「昭和四四年一一月二七日には、同番五の土地が分筆されて川崎市に買収され、右分筆後の同番三の土地(本件一土地)は、」を加え、原判決書五枚目裏一〇行目の次に行を改めて「6 一審被告らは社会的実体としては同一のものである(当事者間に争いがない。)。」を加える。)。なお、甲野が破産宣告を受けるまでの経過において「一審原告ら」というときは、特に断らない限り、一審原告野本と甲野を指すものである。

一  一審被告らの主張

1 本件通路の囲繞地通行権は自動車通行を含まないものであることについて一審被告らは、一審原告らが本件通路(別紙物件目録記載二の土地)に囲繞地通行権を有することは認めるが、以下のとおり右通行権には、自動車通行の権利は含まれないものである。

(一) 長瀬から乙土地を買い受けた井上、井上から右土地を買い受けたアーツが作業のために使用していた車両は軽トラックー台にすぎず、また本件通路全部を使用していたものでもなかったし、アーツは、昭和五六年ころには倒産状態となり、そのころから本件通路は一審被告らが独占的に使用していたものである。

(二) 乙土地をアーツから取得して、建売分譲した砂場建設の販売広告にも車庫付とは記載されていなかったし、右分譲住宅を買い受けた一審原告野本は、自動車購入に際し他の場所を車庫として申請している。一審被告らが乙土地の分譲地を取得した当時、一審被告らが本件通路を独占的に利用しており、その現状を一審原告らは認めていたのである。

2 一審原告らの損害について

一審被告らは、平成五年四月の仮処分決定を尊重して、決定書に記載された車両すべてを撤去した。したがって、一審原告らは、少なくとも同年五月ころから自宅の駐車場を利用できたものであるから、右時点以降の駐車場料金の支払いは一審被告らの行為と相当因果関係を欠くものである。

二  一審原告らの主張

1 長瀬と井上との昭和四二年五月四日の乙土地の売買契約に際して本件通路部分について、無償、無期限の通行地役権の設定契約が締結された。そして、本件通路は、一審被告秋浜冷暖房が本件一土地の所有権を取得する以前から通行の用に供されてきたものであり、一審被告らは右土地に通行権の負担が付着した土地であることを十分知悉しながら本件一土地を取得したものである。なお、本件通路は建築基準法上の道路であって、常時通行可能なことが要件であるとともに、いつでも消防、救急等緊急自動車の出入りが必要である。

2 一審被告らは明らかに一審原告らの通行を妨害する目的で車両及びフォークリフト等の物件を本件通路に置いている。

第三  当裁判所の判断

一  一審被告らは、本件通路について一審原告らが囲繞地通行権を有すること自体は争わないが、右通行権には自動車通行の権利が含まれないものであるから自動車通行以外の方法による一審原告らの通行に支障がない限り一審被告らにおいて本件通路に車両を駐車するなどしても、一審原告らの通行権を侵害するものではないなどと主張し、一方、一審原告らは、主位的に本件通路に約定通行地役権を有することの確認を、予備的に囲繞地通行権を有することの確認を求めるものであるが、いずれの場合にも自動車通行の権利を含むものであると主張するものである。したがって、本件における最も重要な争点は本件通路の通行権の内容として自動車通行の権利が含まれるか否かにあるが、まず本件通路に一審原告ら主張の約定通行地役権が成立しているか否かについて検討し、次に通行権の内容として自動車通行の権利が含まれるか否かについて検討することとする。

1 当事者間に争いのない事実等(原判決事実及び理由の「第二 事案の概要」欄の「一」の事実)に《証拠略》によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原判決書六枚目表八行目の「昭和四〇年一〇月一日」から同裏二行目末尾までに記載の事実(ただし、同裏二行目の末尾の次に「一審被告秋浜冷暖房の当時の代表者であった秋浜茂の長男の秋浜公一(現在の一審被告秋浜冷暖房の代表者)は、一審原告らが本件三ないし四の土地を取得した昭和五九年以前から右アパートに居住していた。」を加える。)。

(二) 長瀬は、昭和四二年四月二七日、元三七番一の土地から乙土地(同番二)を分筆の上、これを同年五月四日井上に売り渡した。井上は、翌昭和四三年一〇月四日、右土地を後記の作業所兼倉庫の建物とともに同人が経営するアーツに売却した。

当時、井上は、アーツを経営し、ビニール製人形の製造販売等を行っていたことから、乙土地をその製造や倉庫のための敷地とする目的で購入したものであり、昭和四二年七月一日には同土地の西側部分に二階建ての作業所兼倉庫を建築し、製造作業等を開始し、倉庫の二階には従業員が住み込んでいた。

井上は、乙土地は公道に接していなかったことから、本来は乙土地の南側の現在田辺が借地している三七番一の土地部分の購入を希望したが、同土地部分は他に賃貸され、鉄くずが置かれ、鉄くず業者が占有していたことなどから、右土地部分の取得を断念して乙土地を取得したものであるが、同土地は袋地であるから公道への通路を確保する必要があった。そこで、井上は、長瀬との売買契約において「売主は当物件に通ずる私道四メートルの無料にて永久使用を認める又第三者に売り渡したる時も同じ」旨を合意した(売買契約書〔甲二一の七〕一三条)。当時は、甲土地のうち乙土地の北側に当たる部分には前記(一)認定のとおり長瀬の建築したアパートが建っており、右合意における私道四メートルの部分は既に事実上通路部分として使用されており、ほぼ本件通路に相当する部分であった(なお、本件各土地の位置関係は別紙図面一記載のとおりであり、乙土地を分筆譲渡したことにより、乙土地の北側の甲土地部分(同図面の三七番三)は、乙土地の東側部分(本件通路部分)を利用しなければ公道に出られない状態となったものである。)。右売買の翌昭和四三年五月四日、長瀬は甲土地から本件通路を含む部分を三七番三として分筆し、右土地を子である長瀬好隆に贈与(同年四月一日贈与、同年五月一六日所有権移転登記)し、分筆後の三七番一の土地部分は長瀬マサに贈与(同年四月一日贈与、同年五月一六日所有権移転登記)され、同年七月二〇日田辺らが共同住宅を建築し、同建物の居住者は本件通路部分を通って公道に出ていた。田辺武善は、昭和五一年六月に同所に転居してきたが、公道に接する部分はブロック塀であったため、東側の私道、すなわち本件通路部分側に玄関及び車庫の出入口があり、本件通路部分を通行に利用してきた。また、昭和四四年一一月二七日には、右分筆後の三七番三のうち本件通路部分の公道に接する部分が同番の五として分筆され、道路用地として川崎市に買収された。なお、右同日、三七番一から同番四が分筆され、同土地も道路用地として川崎市に買収されている。右各土地の位置関係は、別紙図面一記載のとおりである。

井上及びアーツは、乙土地の西側部分の作業場兼倉庫で製造、保管を行い、その東側部分、すなわち本件通路側部分を駐車場や作業場として使用し、本件通路部分を利用して車両による運搬を行っていた。前記のとおり、甲土地の所有者に変更があったが、アーツの本件通路使用について何らの異議も出なかった。

(三) 原判決書六枚目裏三行目の「被告秋浜冷暖房」から同七枚目表一〇行目末尾までの事実(ただし、原判決書六枚目裏三行目の「代表者の秋浜茂(以下「茂」という。)」を「当時の代表者秋浜茂(以下「茂」という。なお、平成八年七月には茂の長男の秋浜公一が代表取締役に就任している。)」と、原判決書七枚目表二行目の「平業」を「営業」とそれぞれ改める。)。

(四) その後、昭和五八年七月二九日、アーツは乙土地を砂場建設に売却した(なお、同土地上の作業所兼倉庫は同年八月ころ取り壊された。)。

砂場建設は、乙土地を本件三及び四の土地に分筆の上、各土地上に建物を建築して、建売分譲地として一審被告野本や甲野に売却した。その際砂場建設と一審原告らとの間で締結された売買契約では、売買契約書や建築確認書類の中に前記私道四メートルの無償通行を認めた条項が記載された長瀬と井上との乙土地の売買契約書の写しが添付されていた。また、一審原告野本との売買契約書の売買物件の表示欄の特記事項としてカーポート、網戸、ヌレ縁を売り主が取り付ける旨の記載があり、または、甲野に売却された本件四土地の販売用パンフレットには、車庫付である旨が明示されていた。

(五) 原判決書七枚目表一一行目の「原告らは」から同裏六行目末尾までの事実(ただし、原判決書七枚目裏六行目の「紛争が発生した。」を「紛争が発生し、一審原告らは本件通路の通行妨害禁止等の仮処分を申請し、平成五年四月一九日、横浜地方裁判所川崎支部は本件通路上から貨物自動車一台、普通乗用自動車二台の撤去を命ずるなど一審原告らの申請をほぼ認容したが(横浜地方裁判所川崎支部平成四年(ヨ)一三四号事件)、一審被告らの異議申し立てにより普通乗用自動車の撤去を命じた部分が変更されるなどし(同裁判所平成五年(モ)三四八号仮処分決定に対する異議申立事件)、これに対する保全抗告事件(東京高等裁判所平成五年(ラ)第一〇八七号事件)において、右異議申立事件の決定が取り消されて、当初の仮処分決定が認可されるなどの経緯をたどり、本件訴訟が平成五年に提起された後も、本件通路の一審原告らの自動車通行をめぐって紛争が継続してきた。また、一審被告らは一審原告野本の車庫前の本件通路の東側付近に特殊自動車一台(トヨタ製フォークリフト)を駐停車するようになった。」と改める。)。

2 右事実に《証拠略》を総合すれば、本件通路については、昭和四二年五月四日、乙土地の売買に際して、乙土地を要役地、甲土地のうち本件通路部分を承役地とする期限を定めない、無償の通行地役権を設定する旨の合意が井上と長瀬の間で成立したと認めるのが相当である。証人井上は、前記売買契約書一三条の「又第三者に売渡たる時も同じ」の記載について、右は井上が乙土地を第三者に譲渡する場合を念頭においていたものであり、長瀬が甲土地を他に売り渡した場合のことは考えていなかった旨証言(原審)しているが、右記載文言は長瀬が甲土地を他に譲渡する場合を除外しているものではないし、井上において長瀬が甲土地を他に譲渡した場合に約定の通行権が失われることを是認していたとはとうてい考えがたいし、また、長瀬においても、本件通路部分については、前記1で認定した土地の形態や利用状況からしても乙土地を井上に売却する以上乙土地の北側に残る甲土地部分の通路として使用することを当然のこととしていたものと認めるのが合理的である(前記1認定のとおり長瀬は、乙土地の売買契約に際し、本件通路部分を「私道四メートル」と表示しているし、昭和四三年五月には甲土地を三七番一と三七番三に分筆し、同番三の土地を長瀬好隆に贈与し、これにより右三七番三の土地(本件一土地と現三七番五の土地)は本件通路部分によってのみ公道に接することになったものであり、また、右長瀬好隆もアーツの本件通路部分の使用に何らの異議も述べていない)。そして、その他には右認定を左右するに足りる証拠はない。

そして、右通行地役権については設定登記がされていないのであるが、一審被告秋浜冷暖房は昭和四四年ころから本件一土地の西側部分を長瀬から賃借して同所で冷暖房設備工事の請負業を営み、自らも本件通路部分を通路として利用してきたものであり、一審被告らは、一審被告秋浜冷暖房が本件一土地を売買により取得した昭和六一年四月当時も本件通路部分が道路状態の土地であり、一審原告らが通行のために利用してきたことを十分認識していたものであるから、一審被告らは、本件通行地役権の設定登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者に当たらない(最高裁判所平成九年(オ)第九六六号、平成一〇年二月一三日第二小法廷判決参照)。

そうすると、本件通路につき通行地役権が存在することの確認を求める一審原告らの主位的請求は理由がある。

3 そこで、右通行地役権が自動車の通行を含むものであるか否かについて検討する。

前記1認定の事実及び当事者間に争いのない事実等によれば、井上は、ビニール製人形の製造販売等を業とするアーツを経営していたものであり、同社の業務に使用する目的で乙土地を取得したこと、当時乙土地と公道に挟まれた乙土地の南側の現三七番一の土地部分は第三者に賃貸され、鉄くず等が置かれており、その後昭和四三年七月、田辺らが右現三七番一の土地上に共同住宅を建築し、本件通路部分は右関係者らの通路として使用されていたこと、右通路部分の幅員は当初から四メートルほどであり車両通行に支障のない幅員を有していたこと、井上は、昭和四二年七月乙土地の西側部分に二階建ての作業所兼倉庫を新築し、その東側部分を業務に必要な車両の駐車場や作業場として確保し、本件通路を車両通行のために利用していたこと、その後、乙土地及び同地上建物がアーツに譲渡された後も同土地の利用状況に変更はなかったこと、そして、一審被告秋浜冷暖房も昭和四四年ころから本件一土地の西側部分を長瀬から賃借して、作業所兼倉庫を建築して、同所で冷暖房設備工事の請負業を始めて以来、業務上の必要から車両通行のために本件通路部分を利用してきたが、井上やアーツとの間でトラブルは生じてこなかったことが認められる。右事実に照らせば、本件通行地役権は当初から自動車通行を含むものとして設定されたものと認めるのが相当である。

二  妨害排除請求及び妨害予防請求並びに損害賠償請求について

1 通行地役権は用益物権であり本件通路部分に通行地役権が設定されたとしても本件通路部分の所有者は、通行地役権の設定を受けた者の通行を妨げない範囲で通行することもその他の目的に使用することもできるものであるところ、本件通行地役権設定契約においても、乙土地を分筆して譲渡することにより甲土地(承役地)も本件通路部分を通じてのみ公道に接することになるものであり、かつ現実に右部分を通路として使用していたものであるから、長瀬及び井上は、長瀬自身も右部分を通路として使用することを前提として、あわせて井上の通行をも認める趣旨で右設定契約を締結したものであることは明らかであって、右設定契約においては、承役地所有者も本件通路部分を通行の用に使用することはもとより、要役地(乙土地)所有者の通行を妨げない範囲でその他の目的にも使用できることが当然のこととして合意されていたと認めることができ、右設定契約において他に格別の合意がされたことを窺わせる証拠はない。そして、本件における要役地及び承役地をそれぞれ承継取得した一審原告ら及び一審被告秋浜冷暖房らの各土地の利用状況についてみると、一審原告らは本件三ないし四の土地を自宅敷地として使用しているもので、本件通路を車両通行に利用する頻度は少ないものであるのに対し、一審被告らは本件一土地において冷暖房設備工事の営業を行っており、車両を利用することが営業上不可欠となっており、現状では一審被告らの本件通路における車両通行の必要性は一審原告らに比して格段に高いものと認められる(《証拠略》)ところ、地役権は、その目的を達するのに必要であって、かつ、承役地所有者にもっとも負担の少ない範囲においてその権利を行使すべきことはその機能からして当然であることからすると、一審被告らの本件通路の利用行為が営業上必要な範囲内のものであれば車両等の物件を一時的に置くなどの利用をしたとしても、その利用の態様等が一審原告らの通行の具体的支障にならない場合には、一審原告らにおいてその妨害の排除を求めることはできないが、他方、一審被告らの本件通路の利用態様等が一審原告らの通行の具体的な支障になる場合には、一審被告らは一審原告らに対しその妨害の排除を求めることができる(この場合、その支障の程度が一見明白である場合に限定されるべき理由はない。)と解するのが相当である。

2 そこで、本件における一審原告らの妨害排除請求等についてみるに、平成四年九月七日ころから平成六年八月ころまでの一審被告らによる本件通路の使用状況、一審原告らがその間他に駐車場を借りざるを得なかったこと、今後とも本件通路の利用に関して互いに自己の便益を主張して派生的な紛争が生ずる蓋然性が高いこと及び弁護士費用等についての判断は原判決書一一枚目表八行目の「被告らは、」から同一二枚目表三行目の「相当である。」までに記載のとおりであるから、これを引用する。なお、貨物自動車(横浜一一せ第三二-〇一)は既に廃車されて存在しないが、普通自動車(川崎五六ゆ第二九〇)が別紙図面二記載の位置に駐停車すれば一審原告らの車両通行に具体的支障が生ずるものと認められる。しかし、普通自動車(川崎五六て第四〇-〇四)及び特殊自動車一台(トヨタ製フォークリフト)は、その設置状況、一審原告ら及び一審被告らの本件通路の車両通行の必要性や頻度及び一審被告らは一審原告らの通行に支障が生じたときはいつでも移動に応じる態度を明らかにしていること並びに乙七号証を総合すると、未だ一審原告ら特に一審原告野本の車両通行に具体的支障が生じているとまでは認めがたいから、右車両の撤去を求める請求は理由がない(もとより、本件通路は通路の用に供されるべきものであるから、これを駐車場として恒久的に車両を駐車することは一審原告らの通行地役権を侵害することになると解される。)。なお、一審原告らの妨害排除請求の根拠が仮に一審原告らが予備的に主張する囲繞地通行権であったとしても、その通行の方法は通行権者のために必要にして囲繞地のために損害がもっとも少ないものでなければならず、前記認定の本件の袋地(乙土地)が発生した経緯、過去及び現在の本件通路の利用状況、各土地の位置的状況、相隣地利用者である一審原告ら及び一審被告らの利害得失等を考慮すれば、一審原告らは右囲繞地通行権を根拠に右各車両の撤去を求めることはできないというべきである。また、一審被告らは、前記一の1の(五)の仮処分決定後本件通路の駐車車両を撤去したから駐車場料金の支払いによる損害は相当因果関係を欠く旨主張するが、一審被告らは右仮処分決定を不服として異議申立てをし、これに基づき仮処分決定が一部変更され、さらにこれに対して一審原告らが保全抗告し、平成六年六月一五日、抗告審(東京高等裁判所)で右異議事件の決定が取り消されて、当初の決定が認可されるなどの経緯をたどったものであって、一審原告らにおいて同年八月ころまでは本件通路の自動車通行の確保がきわめて不安定な状況にあったということができるから、その間一審原告らが他に駐車場を賃借したことによる損害と一審被告らの行為との間に相当因果関係を認めることができる。一審被告らの右主張は採用することができない。

三  以上によれば、一審原告らの通行地役権の確認請求(主位的請求)、本件通路の妨害予防請求及び妨害排除請求(車両の撤去請求)のうち普通自動車(川崎五六ゆ第二九〇)の撤去を求める部分(なお、貨物自動車(横浜一一せ第三二-〇一)は既に廃車されて存在しないが、原判決中右車両の撤去請求を認容した部分については控訴がない。)並びに損害賠償請求は、いずれも理由がある。

よって、本件各附帯控訴に基づき、原判決中、一審原告らの通行地役権確認の主位的請求を棄却した部分を取り消して右請求を認容し、右と一部判断を異にする原判決主文第五項を本判決主文二項のとおり変更し、その余の附帯控訴及び本件各控訴は理由がないからこれらをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条、六五条、六四条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日・平成一〇年七月一六日)

(裁判長裁判官 宗宮英俊 裁判官 長 秀之)

裁判官 高橋 譲は、差し支えのため署名押印することができない。

(裁判長裁判官 宗宮英俊)

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