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東京高等裁判所 平成8年(ラ)1801号 決定 1996年11月01日

抗告人

大島健一

主文

本件執行抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件執行抗告の趣旨は、原決定を取り消し、辻本典仁に対する売却を不許可とする裁判を求めるというにあり、その理由は、評価人は建物内部に立ち入らずに本件不動産を評価しており、このような評価に基づく最低売却価額の決定には重大な誤りがあるというものである。

二  しかし、評価人に対象不動産への立入義務があるわけではなく、立入りの方法で建物内部を調査しなければ評価が誤りとなるものではない。一件記録によれば、評価人は現地調査を行った上で、建物の再調達原価や現価率、近隣の地価水準、本件不動産の個別的要因、競売特有の価格形成要因等を総合考慮して本件不動産を評価しており、その評価過程に誤りはない。したがって、原裁判所が右評価の結果に基づいて最低売却価額を決定したことに重大な誤りは認められない。

三  よって、原決定は正当であり、本件執行抗告は理由がないから棄却することとし、抗告費用の負担につき民事執行法二〇条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官北野俊光 裁判官瀧澤泉 裁判官六車明)

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