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東京高等裁判所 平成8年(ネ)1399号 判決 1997年7月30日

控訴人(原告)

バンク・ウォルム(法的形態・株式会社)

右代表者取締役会会長

ジャック・アンリ・グーゲンハイム

右訴訟代理人弁護士

立石則文

菅原高志

被控訴人(被告)

株式会社イ・アイ・イーインタナショナル

右代表者代表取締役

高橋治則

右訴訟代理人弁護士

松尾翼

森島庸介

浦野雄幸

谷口正嘉

主文

一  本控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、二七一四万9382.90フランス・フラン及びうち一〇七万四一三二フランス・フランに対する一九九二年一〇月二一日から、うち一三五五万2317.90フランス・フランに対する同年一一月二三日から、うち一二五二万二九三三フランス・フランに対する同年一二月二三日から、各支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要

本件事案の概要は、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」に記載のとおりである(ただし、原判決四丁裏一〇行目の「)」を削除する。)から、これを引用する。

第三  当裁判所の判断

一  当裁判所も、当審における資料を加えて本件全資料を検討した結果、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。

その理由は、次の二のとおり原判決を補正し、三を付加するほか、原判決の事実及び理由の「第三 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  (原判決の補正)

原判決八丁表五行目の「同日」を「同年六月二十八日」と、同裏七行目の「同日」を「同年六月十四日」と、同一三丁表六行目の「破産手続の」を「破産手続における」と、各訂正し、同一四丁裏八行目の「なり、」の次に「元本については八パーセントにも満たない金額につき保証したことと実際上相容れない結果を招来し、また、」を同一〇行目の「連帯債務」の次に「ではなく連帯保証の一種」を、それぞれ加え、同一五丁表四行目の「解せられる」を「解される」と、同九行目の「被告」を「原告」と、各訂正する。

三 控訴人は、本件ローン・アグリーメントの期間は、数回の期間延長により、一年を超えることになったのであるから、法五五条ただし書の適用により、その遅延利息は、HJR社の司法救済手続の開始後も引き続き発生する旨を主張し、当審において、これに沿う趣旨のジャック・ゲスタンの鑑定書(甲三〇の1、2)、イヴ・ギヨンの鑑定書(甲三一の1、2)を提出している。

しかし、法五五条ただし書は、長期信用を与えた債権者を他の債権者の犠牲において特に優遇する趣旨であるところ、債務者の返済困難な事情のもとに債権者が任意に返済の猶予を繰り返し、その期間が通算して一年を超えた場合にまで、債権者を優遇する趣旨であるとは解し難く、また、右のような債権者を優遇することになると、債務者に対する裁判上の倒産手続の開始をいたずらに遅らせることになり、できるだけ多くの企業等の更生のため、早期に観察期間を開始して、更生の可能性を探ろうとするフランス民法一九八五年一月二五日法の趣旨とも矛盾することになるから、右鑑定書に依拠する控訴人の右主張は、採用することができない(乙一六の1、2、一八参照)。

四  以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官塩崎勤 裁判官橋本和夫 裁判官川勝隆之)

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