大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成7年(行ケ)273号 判決 1996年11月26日

イタリー国、ミラン、フオロ・ボナパルテ、31番

原告

アウシモント・エス・ピイ・エイ

同代表者

カルロ・コグリアティ

同訴訟代理人弁理士

阿形明

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 荒井寿光

同指定代理人

関口博

伊藤三男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を90日と定める。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が平成7年審判第771号事件について平成7年7月28日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文1、2項と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和61年2月13日に、イタリー国1985年2月13日付け出願第19497A/85号に基づく優先権を主張して、名称を「ポリオキシペルフルオロアルキレンのブロックを含むフッ化ポリウレタン及びその製造方法」(その後「フッ化ポリウレタン」と補正)とする発明(以下「本願発明」という。)につき特許出願(昭和61年特許願第28093号)したが、平成6年9月19日に拒絶査定を受けたので、平成7年1月11日に審判を請求し、平成7年審判第771号事件として審理された結果、平成7年7月28日、「本件審判の請求を却下する。」との審決があり、その謄本は同年8月21日原告に送達された。

2  審決の理由

本願は、昭和61年2月13日の出願であって、平成6年9月19日に拒絶査定がなされ、その査定の謄本が平成6年10月12日に本件審判請求人である出願人の復代理人(本訴における原告代理人)に送達されたことは、東京都・芝郵便局の郵便物配達証明書によって明らかである。

その拒絶査定に対する審判の請求は、査定の謄本の送達があった日から90日以内である平成7年1月10日までになされなければならないところ、本件審判の請求は、平成7年1月11日になされているので、上記法定期間を経過した後の不適法な請求であり、その欠缺は補正できないものであるから、本件審判の請求は、特許法135条の規定により、これを却下すべきものとする。

3  審決を取り消すべき事由

審決の理由のうち、本願の出願日、拒絶査定の日時、拒絶査定謄本の送達日時、本件審判の請求日時については認めるが、その余は争う。

(1)  審決は、「拒絶査定に対する審判の請求は、査定の謄本の送達があった日から90日以内である平成7年1月10日までになされなければならない」としている。

しかし、拒絶査定の謄本(甲第3号証)には、「なお、この査定に不服があるときは、この謄本の送達があった日から30日以内に特許庁に審判を請求することができる。」と、特許法121条1項に規定される日数が記載されているのみであり、「90日以内」という日数については示されていない。

特許法4条の規定による法定期間の期間延長は特許庁内の内規により定められているが、内規の内容については、一般の法令のように一般人が公平に入手しうる情報媒体による公示がなされていないので、個々の行政処分に際して発送される書面の記載によって知らざるを得ず、当該書面には正確な日数を表示する義務があるのであって、特許庁の審査官に対する手引書である乙第1号証(工業所有権方式審査便覧)にも、審査官が取り扱うべき事項としてこのことが定められている。

したがって、本件拒絶査定の謄本には、在外者に対する延長された法定期間として「90日以内」と記載すべきところ、審査官は非在外者に対する法定期間である「30日以内」と誤記して送達したもので、明らかに特許庁内で定められた取扱い規定に違反したものであって、行政手続上の重大な瑕疵もしくは過失があったものというべきである。

また、拒絶査定の書面に、その査定に不服があるときに審判を請求しうる法定期間が記載されているのは、行政不服審査法47条5項の規定が設けられている趣旨と同一の趣旨に基づくものと考えられ、このことからみても、拒絶査定の書面に記載すべき審判を請求しうる法定期間の日数を、単に行政庁の事務手続の簡略化を理由として、不正確に記載して送達した点に行政手続上の重大な過失があったことは明らかである。

(2)  甲第8号証の1・2(弁理士会発行「対庁協議事項集」)に示されているように、特許庁と弁理士会との協議により、在外者に対して非在外者の指定期間が記載されている場合、代理人は、特許庁(出願課)と連絡して延長するという取決めに従って、本願の復代理人である原告代理人は、外国に在住する出願人に対し、審判請求が可能な正確な期間を通知する必要上、特許庁長官の職権により延長される期間を確認するため、電話で特許庁の担当部署に問い合わせたところ、電話口に出た係官から、拒絶査定の謄本の送達の日から3か月以内であるとの回答を得た。

(3)  以上のとおり、本願における審判請求の期間の徒過は、被告の手続上の重大な瑕疵、及びその瑕疵を是正するための原告の行為に対する誤った誘導に起因するもので、すべて被告の責に帰せられるものである。

そして、本件事案のような審判請求権の消失という重大な事態をもたらす場合には、原告にとって不利な結果をもたらすことになる不正確な内容を含む通知書、すなわち拒絶査定の謄本を正確な内容に訂正した上、再送したのち、相応の行政処分を行うのが被告における正しい措置であったにもかかわらず、本願に関してはこのような措置が講じられていない。

したがって、このような手続上の瑕疵があるにもかかわらず、これを看過して、本件審判の請求を却下した審決は違法であって、取り消されるべきである。

また、本願における審判請求の期間の徒過は、すべて被告の責に帰せられるべきものであって、原告の判断によって避けることのできない性質のものであるから、特許法121条2項の規定により救済されるべきであり、この点においても審決は取り消されるべきである。

(4)  被告は、乙第1号証ないし第11号証等に基づき、特許法121条1項の法定期間について、在外者の場合には職権により60日延長されることが周知・徹底されていたから、在外者に対する拒絶査定の謄本に審判請求を行いうる期間として、謄本送達があった日から「30日以内」と記載したとしても、行政手続上の重大な瑕疵もしくは過失があったとはいえない旨主張している。

しかし、上記乙各号証はいずれも、その刊行物の購読者、特定分野の関係者あるいは説明会の参加者等の限られた者のみに対して情報を与えることができる媒体であり、これらに記載したとしても特許庁の内規を一般人に普遍的かつ公平に公示したとすることにはならず、特許法121条1項の法定期間が在外者の場合職権により60日延長されることが、特許制度利用者全体にわたって周知・徹底されていたと認めることはできない。

また、上記乙各号証により、法定期間が在外者の場合60日延長されることが周知・徹底されていたと仮定しても、そのことをもって、拒絶査定の謄本に審判請求しうる期間について、送達の日から「90日以内」とすべきところを、非在外者の期間である「30日以内」と誤記することを正当化しうる理由にはならない。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1及び2は認める。同3は争う。審決の判断は正当であって、原告主張の誤りはない。

2  反論

(1)  拒絶査定の謄本には、「なお、この査定に不服があるときは、この謄本の送達があった日から30日以内に特許庁に審判を請求することができる。」旨表示されているが、これは、特許法121条1項に規定されている事項を、拒絶をすべき旨の査定を受けた者に対して、注意喚起の観点からサービスで付記(示唆)しているにすぎないものであって、法的根拠があるわけではない。

ところで、特許庁長官は、在外者については、拒絶査定に対して審判を請求しうる期間を、職権で、法定期間(30日)を画一的に延長(60日)しているが、このことについては、乙第1号証ないし第11号証、第21号証等に示すとおり周知・徹底を図った結果、出願人又は代理人において十分理解・認識される状況に至っている。

特許庁では、発送書類の処理促進の要請等に応えるべくペーパーレスシステムの一環として書類の発送業務の的確・迅速化を図ることを目的として「新出願システム及び発送事務機械化システム」を構築し、昭和62年10月からこれを稼働させ、これに伴い従来の発送業務にあった「期間延長スタンプの押印」はなされないこととなったが、期間延長のスタンプの押印がなくても、その期間は、特許法4条に基づいた特許庁例規に即し、職権により60日延長されるので実質的に従来と変わりはないものである。

特許庁としては、「期間延長スタンプの押印」がなされなくなったことにより、出願人及び代理人等において不測の混乱を生ずることのないように、乙第12号証ないし第15号証に示すとおり上記の点についての周知・徹底を図ってきたものであり、その結果、本件審判請求時においては格別の混乱は生じていない状況にあった。

上記のとおり、特許法4条の規定により法定期間を延長する期間は、一般に知らせるべく周知・徹底施策が実施(公示)されており、個々の出願人(代理人)においても自発的にその具体的日数を知りうる状態にあったものとみるべきであるから、応答期限の定められた通知書においては、その発送者である被告に正確な日数を表示する義務があるとはいえず、被告に行政手続上の重大な瑕疵もしくは過失があったものということはできない。

なお、拒絶査定の謄本に表示されている「30日以内」は、特許法121条1項に規定する法定期間を表示したものであり、かつ、その表示は、画一的・定型的に処理されているものであるから、該表示は誤記とはいえないものである。

(2)  原告は、本願に関して、特許庁に対して、審判請求が可能な期間を問い合わせたところ、電話口に出た係官から送達の日から3か月以内であるとの回答を受けた旨主張するが、そのような事実は知らない。電話での問合わせには、言い間違いや聞き間違いも少なくないばりか、正確に審判請求期間に関する応答がなされたか否かも不明である。

(3)  本件は、特許法121条2項によって救済される事案ではない。

第4  証拠

本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも(甲第3号証、第4号証、乙第17号証、第18号証の各2は原本の存在も)当事者間に争いがない。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)及び2(審決の理由)は、当事者間に争いがない。

そして、本件拒絶査定の謄本(甲第3号証)が平成6年10月12日に本件審判請求人である出願人の復代理人(本訴における原告代理人)に送達されたこと、本件審判の請求が平成7年1月11日になされたことについても、当事者間に争いがない。

2  そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。

(1)  乙第1号証(社団法人発明協会発行「工業所有権方式審査便覧」)によれば、特許庁長官は、昭和58年10月1日より、在外者については画一的に、職権で、特許法4条の規定により延長する期間を60日とする取扱いを実施していることが認められる。

したがって、本件拒絶査定に対する審判の請求は、査定の謄本の送達があった日から90日以内である平成7年1月10日までになされなければならなかったことになり、本件審判請求は上記期間経過後の不適法のものということになる。

(2)  原告は、特許法4条の規定による法定期間の期間延長は特許庁内の内規により定められているが、内規の内容については、一般の法令のように一般人が公平に入手しうる情報媒体による公示がなされていないので、個々の行政処分に際して発送される書面の記載によって知らざるを得ず、当該書面には正確な日数を表示する義務があるのであって、特許庁の審査官に対する手引書である乙第1号証(工業所有権方式審査便覧)にも、審査官が取り扱うべき事項としてこのことが定められていることを理由として、本件拒絶査定の謄本には、在外者に対する延長された法定期間として「90日以内」と記載すべきところ、審査官は非在外者に対する法定期間である「30日以内」と誤記して送達したもので、明らかに特許庁内で定められた取扱い規定に違反したものであって、行政手続上の重大な瑕疵もしくは過失があったものというべきである旨、また、拒絶査定の書面に、その査定に不服があるときに審判を請求しうる法定期間が記載されているのは、行政不服審査法47条5項の規定が設けられている趣旨と同一の趣旨に基づくものと考えられ、このことからみても、拒絶査定の書面に記載すべき審判を請求しうる法定期間の日数を、単に行政庁の事務手続の簡略化を理由として、不正確に記載して送達した点に行政手続上の重大な過失があったことは明らかである旨主張するので、この点について検討する。

<1>  本件拒絶査定の謄本(甲第3号証)には、「なお、この査定に不服があるときは、この謄本の送達があった日から30日以内に特許庁に審判を請求することできる。」旨記載されていることが認められる。

ところで、行政不服審査法57条1項は、行政庁は、審査請求や異議申立て等の不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨及び不服申立てをすることができる期間を教示しなければならないと規定しているが(同法47条5項も同様の内容)、特許法195条の4によれば、査定については行政不服審査法による不服申立てをすることができないとされており、拒絶査定については同法の規定は適用されないものと解されること、査定の記載事項について規定する特許法施行規則35条において、審判を請求することができる期間は査定に記載すべき事項とはされていないことからすると、本件拒絶査定の謄本中の上記なお書きは、出願人の注意を喚起するために便宜的に、特許法121条1項に定められた事項を付記したにすぎないものと認められる。

同様に、特許法4条の規定による期間延長をした場合でも、その旨を拒絶査定の謄本に記載しなければならないものとまでは認められない。

そして、「工業所有権方式審査便覧」(乙第1号証)には、法定期間及び指定期間の取扱いに関して、手続をする者が在外者である場合には、特許法4条の規定により延長する期間は60日とする旨記載されているだけであって、審査官が取り扱う書面には、上記延長期間を含めた日数を表示しなければならないというような取扱い規定は記載されておらず、他に、特許庁内で上記のような内容の取扱い規定が定められていることを認めるべき証拠はない。

したがって、上記なお書きにおいて、審判を請求しうる期間を「30日以内」と記載したことが、誤記であるとか、特許庁内で定められた取扱い規定に違反したものであるとか、あるいは不正確なものであるとかとはいえないことは明らかである。

<2>  乙第1号証ないし第7号証、乙第11号証、乙第19号証ないし第21号証によれば、特許庁は、社団法人発明協会発行の「方式審査便覧」(乙第1号証、乙第19号証)、「特許出願のてびき」(乙第3号証)、弁理士会発行の「お知らせ」(乙第2号証)、特許庁発行の「出願・登録・審判の手続」(乙第11号証)、「方式審査ハンドブック」(乙第20号証)、「特許・実用新案 審査便覧」(乙第21号証)等の刊行物や、全国各地で実施する工業所有権説明会(乙第4ないし第7号証)により、昭和58年10月1日以降、拒絶査定に対する審判請求をすることができる期間につき、在外者については画一的に、職権で、特許法4条の規定により延長する期間を60日とする取扱いを実施している旨を、出願人や弁理士等に周知・徹底するよう努めてきたことが認められる。

そして、乙第8号証、乙第10号証、乙第12号証ないし第15号証によれば、特許庁では、出願人が在外者の場合、拒絶査定の謄本には「本書に定める期間は特許法第4条の規定により職権で60日延長する」旨のスタンプを押印していたが、昭和62年10月5日から「新出願システム及び発送事務機械化システム」を稼働することとなり、それに伴い、上記謄本には上記期間延長のスタンプを押印しない取扱いとすることとしたこと、そのため特許庁は、出願人が在外者の場合は、「職権で期間を延長する」旨の表示がなくても60日延長されることを、昭和62年9月以降、特許庁発行の「とっきょ」(乙第12号証)、財団法人通商産業調査会発行の「特許ニュース」(乙第13号証)、社団法人発明協会発行の「発明」(乙第14号証)等の刊行物、弁理士会との運用協議会(乙第8号証)、全国各地で実施する工業所有権説明会(乙第10号証、乙第15証)により、出願人や弁理士等に対し周知・徹底を図ってきたことが認められる。

上記認定の事実によれば、在外者が拒絶査定に対して審判を請求することができる期間は、法定期間30日に職権による延長期間60日を加えた90日であり、在外者の場合は、拒絶査定の謄本に「職権で期間を延長する」旨の表示がなくても60日の期間が延長される取扱いとされていることは、少なくとも本件拒絶査定の謄本の送達当時においては、出願人、弁理士等の特許関係業務に従事する者において十分知りうる状況にあったものと認められる。

<3>  上記<1>、<2>のとおりであって、形式的及び実体的に考察しても、本件拒絶査定の謄本に在外者に対する延長期間を加えた日数を記載せず、特許法121条1項所定の日数を記載して、原告に送達した点に、当・不当の問題はあるとしても、行政手続上の瑕疵があったものとまでは認めることはできず、原告の上記主張は理由がない。

(3)  次に原告は、本願の復代理人である原告代理人は、特許庁長官の職権により延長される期間を確認するため、電話で特許庁の担当部署に問い合わせたところ、電話口に出た係官から、拒絶査定の謄本の送達の日から3か月以内であるとの回答を得た旨主張する。

甲第5号証(原告代理人事務所の期限管理簿)には、本件拒絶査定に対する審判請求の期限として「1.11」と記載されていること、甲第6号証(原告の連絡先であるサマ・パテンツ宛の原告代理人の通知書)には、本件拒絶査定を受けたことに関して、「期限である1995年1月11日又はそれ以前に審判を請求する段階となりました。」と記載されていることが認められるが、上記各記載をもって上記主張事実を認定することは到底できず、他に上記主張事実を認めるに足る証拠はない。

ちなみに、乙第16号証の1ないし5(弁理士会名簿)、乙第17号証の1ないし4(拒絶査定、審判請求書等)、乙第18号証の1ないし3(同上)によれば、原告代理人は、特許庁長官が、在外者については、特許法4条の規定により延長する期間を画一的に60日とする取扱いを実施することとした昭和58年10月1日より相当以前から、弁理士として特許出願等の代理業務に従事してきたものであり(昭和45年度の弁理士名簿に掲載されている。)、在外者の出願を代理したのも本件が初めてではなく、平成6年3月7日、同年11月28日にも出願人が在外者であるものにつき審判請求をしていることが認められること、前記のとおり、在外者について特許法4条の規定による延長期間を掲載した刊行物が多数存在し、原告代理人自ら容易に調査することができたものと推認されること、仮に原告代理人が特許庁に電話で問い合わせたのであれば、特許法121条1項が定める法定期間は「30日以内」であるのに、延長期間が加わったからといって、単位を異にする「3か月以内」となるというのは不自然であることは容易に気付くはずであることからすると、原告の上記主張事実の存在については強い疑念を持たざるを得ない。

(4)  原告は、本件審判請求の期間の徒過は、被告の行政手続上の重大な瑕疵もしくは過失、延長期間についての原告の問い合わせに対する被告の誤った教示に起因するものであることを前提として、この点を看過した審決は違法である旨主張するが、上記前提事実が認め難いことは前記説示のとおりであって、上記主張は採用できない。

また、原告は、本件審判請求の期間の徒過は、すべて被告の責に帰せられるものであって、原告の責めに帰することができない理由により期間内に上記請求をすることができなかったものであるから、特許法121条2項の規定により救済されるべきであり、この点においても審決は取り消されるべきである旨主張するが、上記前提自体失当であることは前記説示のとおりであって、採用できない。

(5)  以上のとおりであって、本件審判の請求は、法定期間を経過した後の不適法な請求であり、その欠缺は補正できないものであるとして、本件審判請求を却下した審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由は理由がない。

3  よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間の付与について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、158条2項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例