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東京高等裁判所 平成5年(行コ)91号 判決 1994年6月09日

東京都港区青山一丁目二二番五号

控訴人

松本玲子

右訴訟代理人弁護士

大宮竹彦

塩生三郎

内田成宣

宮崎良昭

東京都港区西麻布三丁目三番五号

被控訴人

麻布税務署長 松井保夫

右指定代理人

山田知司

神谷宏行

齋藤春治

實川嘉晴

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2(一)  被控訴人が昭和六三年一月二九日付で控訴人の昭和六一年分の所得税についてした更正のうち総所得欠損金一一〇万八八〇二円(総所得金額マイナス一一〇万八八〇二円)及び還付金の額に相当する税額七四万七九〇〇円(納付すべき税額マイナス七四万七九〇〇円)を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(二)  被控訴人が平成三年三月一日付で控訴人の昭和六二年分の所得税についてした更正のうち総所得欠損金一九万四二二七万(総所得金額マイナス一九万四二二七円)及び還付金の額に相当する税額一三万二四四一円(納付すべき税額マイナス一三万二四四一円)を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(三)  被控訴人が平成三年三月一日付で控訴人の平成元年分の所得税についてした更正のうち総所得欠損金五七四万七二九九円(総所得金額マイナス五七四万七二九九円)及び還付金の額に相当する税額一〇三万八〇〇〇円(納付すべき税額マイナス一〇三万八〇〇〇円)を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定を取り消す。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  当事者双方の主張は、控訴人の当審における主張として次の二を付加するほかは、原判決「第二事案の概要」(原判決二枚目裏三行目から五枚目裏六行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  当審における控訴人の主張

控訴人の夫の正夫が代表者である株式会社スタジオユーが、正夫所有の西麻布貸スタジオビルを賃借してスタジオ業を営んでいたが、昭和五五年ころからの近隣の再開発にともなってスタジオ経営を諦めざるをえなくなったため、控訴人は、夫正夫とともに、従来から行ってきた建物の賃貸業を拡張すべく、マンションを借入金で取得し、賃料収入によって金利の返済等に充て、西麻布スタジオビルの売却代金をもって借入元金に充当することを目してマンション賃貸を始めたが、賃料収入が予定どおり得られないばかりか、西麻布スタジオビルも売却できず、ローンの返済に窮し、倒産必至の状況に追い込まれたため、賃貸効率の悪い物件を売却処分してより効率の良い物件に買換えて賃貸業を維持する必要から、賃貸効率の悪い物件を売却したものであって、物件の譲渡は営利を目的として行われた譲渡ではない。

第三証拠

証拠関係は原審及び当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求はいずれもこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、原判決六枚目表末行から同裏六行目までを削除し、次の二を付加するほかは、原判決の「第三争点に対する判断」(原判決五枚目裏八行目から一〇枚目裏九行目まで)と同一であるから、これを引用する。

二  控訴人の当審における主張について

控訴人の本件不動産の保有状況、譲渡の経過等に照らすと、控訴人は、不動産の賃貸から生ずる利益とその譲渡から生ずる利益とを比較して、不動産の賃貸と不動産の譲渡との総合収支上の利益を求めて、本件不動産の譲渡を行っていたものと推認できることは前記認定のとおりであり(当審における控訴人の立証も右認定を左右するものとはいえない。)、賃貸効率の悪い不動産を譲渡した等の控訴人主張の事情は、営利を目的として行われた譲渡であるとの認定を左右するものではないというべきであるから、控訴人の主張は採用することができない。

三  以上のとおり、控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを却した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がなく、これを棄却すべきである。

よって、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柴田保幸 裁判官 伊藤紘基 裁判官 滝澤孝臣)

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