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東京高等裁判所 平成5年(行コ)168号 判決 1995年7月17日

東京都世田谷区喜多見六丁目一番一七号ドエル・フレグランス二〇三

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

吉岡弘史

右訴訟代理人弁護士

船尾徹

塚原英治

山口泉

東京都大田区雪谷大塚町四番一二号

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

雪谷税務署長

伊藤豊

右指定代理人

矢吹雄太郎

矢沢峰夫

畦地文晴

松尾啓一

増渕実

主文

一  本件控訴・本件附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人が昭和六三年一一月一日付けでした、

(一)  控訴人の昭和六〇年分所得税の更正(但し審査裁決により一部取り消された後のもの)及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額を二九八万〇三八三円として計算した額を超える部分

(二)  控訴人の昭和六一年分所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額を四四一万七〇五二円として計算した額を超える部分

をいずれも取り消す。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の各負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を次のとおり変更する。

被控訴人が昭和六三年一一月一日付けでした、

(一) 控訴人の昭和六〇年分所得税の更正(但し審査裁決により一部取り消された後のもの)及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額を二〇九万五〇〇〇円として計算した額(納付税額四万九一〇〇円)を超える部分

(二) 控訴人の昭和六一年分所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額を三六二万五三九一円(納付税額二四万七一〇〇円)として計算した額を超える部分

(三) 控訴人の昭和六二年分所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、総所得金額を二三一万六九四〇円(納付税額六万八六〇〇円)として計算した額を超える部分

をいずれも取り消す。

2  本件附帯控訴を棄却する。

3  訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

(控訴人は、当審において、昭和六一年及び昭和六二年分の各所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定の取消請求を、右1(一)(二)のとおり減縮した。)

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  原判決中、被控訴人敗訴の部分を取り消す。

3  右取消部分に係る控訴人の請求をいずれも棄却する。

4  訴訟費用は第一、第二審とも控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

次のとおり加除、訂正するほかは、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決三枚目裏三行目の「三四六万六一五四円」を「三六二万五三九一円」と、「二二万四七〇〇円」を「二四万七一〇〇円」と、同四行目の「二二八万円」を「二三一万六九四〇円」と、同行から次行にかけての「六万四八〇〇円」を「六万八六〇〇円」と、同七枚目表二行目の「金額である。」を「当判決別表(1)記載の収入合計額を推計課税上の収入金額とする。」と、同八枚目表一行目及び同一二枚目裏末行から一三枚目表一行目にかけての各「割引料」いずれも「手形等の割引料」とそれぞれ改める。

二  原判決二一枚目裏二行目から三行目にかけて及び同五行目から六行目にかけての各「別表第八の一」をいずれも「当判決別表(1)」と、同四行目の「別表第八の三の一ないし三」を「当判決別表(2)のア、イ、ウ」とそれぞれ改め、同二三枚目表九行目の「(3) 同(3)は否認する。」を削除し、同裏一〇行目の「(4) 同(4)は否認する。」を「(3) 同(3)は否認する。」と改める。

三  原判決二六枚目裏一〇行目の末尾に「なお、控訴人の立証に基づく係争各年の経費の実額は、これを最大限に見積もっても、当判決別表(3)記載の額にとどまるものである。」を加える。

第三証拠

証拠関係は、原審及び当審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の請求は、六〇年分更正及び同賦課決定については総所得金額を二九八万〇三八三円として計算した額を超える部分の取消しを求める限度で、六一年分更正及び同賦課決定については総所得金額を四四一万七〇五二円として計算した額を超える部分の取消しを求める限度でいずれも理由があるから、右限度でこれを認容し、その余は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり加除、訂正するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する(なお、右説示中、「必要経費取引明細書」とあるのはすべて「必要経費取引先明細書」と訂正する。)。

1  原判決三七枚目表三行目の「算出税額の適否」を「処分理由」と、「同一一行目の「争いのない」を「控訴人の主張している」と、同裏一〇行目の「五件」を「六件」とそれぞれ改め、同三八枚目表一〇行目の「として、」の次に「個人で」を加え、同裏五行目の「並びに」を削除し、同六行目の「又は」を「<6>」と改め、同一〇行目の「ない者」の次に「、以上<1>ないし<6>のすべての要件を充たす者」を、同三九行目表九行目の「記載の」の次に「個人の」を、同三九枚目表九行目の「業種別名簿記載の」の次に「青色申告の承認を受けている」をそれぞれ加え、同一〇行目の「(1)<2>」を「(1)<3>」と、同一一行目から同裏一行目にかけての「同<4>及び同<5>」を「同<4>、同<5>及び同<6>」とそれぞれ改める。

2  原判決四〇枚目裏四行目及び同五行目の各「抽出作業」をいずれも「抽出作業の方法」と同五行目の「(一)(2)」を「(一)(2)及び(3)」と、同六行目の「(一)(2)」を「(一)(3)」とそれぞれ改め、同四一枚目表一〇行目の「及び」の次に「本訴において被控訴人の主張する比準同業者のうち」を加え、同一一行目の「七の一」を「七の二」と改める。

3  原判決四三枚目表八行目の「基準だけで」から同九行目の「業者が」までを「基準を付加することによって、鎌田税務署管内で三〇〇件前後に上る機械部品加工業者が三、四件に、大森税務署管内で一〇〇件前後に上る同種業者が」と、同四四枚目表一行目の「企業を」を「企業をも」と、「事業規模と」を「事業規模」とそれぞれ改める。

4  原判決四五枚目裏三行目の「少なくとも」から同五行目の「とどまり、」までを「直ちに」と、同四六枚目表六行目の「<9>」を「<7>」と、同八四枚目裏四行目の「これら」を「各資料に登録された」と、同七行目の「六一一件のうち、」から八行目の「比準同業者が」までを「六一一件の記述のうち、同一年分の同一業者に関する記述であると推定されるものが」とそれぞれ改める。

5  原判決五〇枚目表一一行目の「主張」を「手続」と、同裏九行目から一〇行目にかけての「甲第五九号証」を「甲第五九号証の一の一、二、同号証の二」と、同五一枚目裏四行目の「売上金額が」から五行目の「争いのないところ」までを「売上金額は、推計課税上、控訴人の主張する当判決別表(1)記載の金額であるとされているところ」と、同五二枚目表七行目の「そして」を「ところで」とそれぞれ改め、同裏五行目の「そこで、」の次に「右(2)ないし(4)で検討したもの以外の」を加え、同五三枚目表八行目及び同一〇行目の各「別表第八の一」をいずれも「当判決別表(1)」を改め、同裏四行目の「各一」を削除する。

6  原判決五四枚目裏二行目の「別表第八の一」を「当判決別表(1)」と、同三行目から四行目にかけての「別表第八の三の一ないし三」を「当判決別表(2)のア、イ、ウ」と同五行目から同五五枚目表二行目までを次のとおり、それぞれ改める。

「そこで、係争各年の控訴人の事業所得の算出過程において問題となる収入、一般経費、特別経費、事業専従者控除の各項目について、控訴人の実額主張の当否を検討する。

(一)  収入金額について

控訴人の主張する当判決別表(1)記載の収入金額は、被控訴人においても推計課税にあたりその根拠として採用した金額である。」

7  原判決五六枚目裏一行目の「及び」の前に「、機械納入証明書(甲第二三二、二三三号証)、(小切手帳の控え)(甲第二四七ないし二六一号証)」を加え、同五七枚目裏一〇行目の「しかしながら、」から同五八枚目表七行目の末尾までを次のとおり改める。

「証人馬場良彰及び控訴人本人(原審・当審)は、控訴人は係争各年当時、事業に係る請求書、領収書等の帳票類を、年度ごとにダンボール箱に分類し、当該年分は事業所に、前年以前の分は自宅にそれぞれ保管していたと陳述しているが、本来揃っていなければならない領収書等の枚数がかなり不足していることに照らせば、右陳述部分はにわかに採用することができないというべきである。したがって、基本的には、右不備のある領収書等の中で、宛て名を「上様」とした領収書等であっても、日付の記載があり、かつ、記載された取引内容や前後の取引状況から控訴人の事業に係るものと推定できるものについては、経費の支払いの事実を認めることができるが、作成日付がないものや控訴人の事業との関連性が明らかでないものについては、係争各年の控訴人の事業所得に係る経費に関するものと認めるのは困難というべきである。」

8  原判決五八枚目裏九行目の末尾に「また、右アの小切手控えも、控訴人本人尋問の結果(当審)により控訴人が記載したものと認められるものの、その記載の中には当座勘定照合表(甲第二一号証)の記載と合計しないものがかなりあり、右小切手控えの記載が控訴人の供述しているように発行の都度記入されたものとは必ずしも認められないから、その記載によって直ちにその記載のとおりの趣旨の支払いがあったものと認定することはできない。」を、同一〇行目の「受取証明書」の次に「及び機械納入証明書」をそれぞれ加え、同五九枚目裏三行目から四行目にかけての「あったこと」の次に「、右機械納入証明書の取引年月日、機械名及び取引金額はいずれも同種の印字機器によって記載されており、証明書に記名押印した取引先が自ら記載したものではなく、また、記載された納入時期は昭和四八年から同五八年までであって、証明書の作成された平成四年よりかなり以前であること」を加え、同四行目及び同九行目から一〇行目にかけての各「受取証明書」をいずれも「各証明書」と改める。

9  原判決六〇枚目表四行目の「一九八万二三七九円」を「二〇〇万一五五九円」と、原判決別表第九の一の合計額「一、九七八、七二三」を「一、九九七、九〇三」と、同別表の一及び二の合計欄の「一、九八二、三七九」を「二、〇〇一、五五九」と、原判決六〇枚目表九行目の「二万三七五〇円」を「〇円」と、同六一枚目表九行目の「納品」を「納品等」とそれぞれ改め、同一一行目の「スカイライン、」の次に「主に家事に使用する目的で所有されているものであり」を加え、同六一枚目裏三行目から同七行目までを次のとおり改める。「所得税法四五条一項一号及び同法施行令九六条一号によれば、家事上の経費に関連する経費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合においては、当該部分に相当する経費は事業所得に係る必要経費に算入することができる旨規定されているところ、前記認定判断によれば、スカイラインに関連する経費の主たる部分が業務の遂行上必要であるとは認められず、しかも、その業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合に当たるとも認められないから、スカイラインに係る自動車税を控訴人の事業所得に係る公租公課と認めることはできないというべきである。」

10  原判決六一枚目裏八行目から同六二枚目表一行目までを次のとおり、同二行目の「なお」を「また」とそれぞれ改め、同裏一行目の「認め得る。)」の次に「、控訴人本人尋問の結果(当審)」を加える。

「c 控訴人は、昭和六〇年ころ東京都から一〇〇〇万円を借り入れた際に使用した印紙の購入代金四〇〇〇の支出を証する書証として甲第三〇号証の一を提出している。しかし、右書証によっては、昭和六〇年七月一六日に郵便局に対して四〇〇〇円を支出したことが認められるに過ぎず、右支出が、控訴人がその主張に係る目的で購入した印紙購入のためであることは認められず、右主張に沿う控訴人本人尋問の結果(原審・当審)も、客観的な受付けを欠くあいまいなものであるから、控訴人主張の支払を認めることはできない。」

11  原判決六二枚目裏四行目の「五〇万五一七五円」を「五一万二七四〇円」と、同八行目の「五〇万五一七五円」を「五〇万三八九五円」と、原判決別表第一一の二の三行目の金額「五、一二〇」を「三、八四〇」と、同四行目の金額「一四、〇八〇」を「一二、八〇〇」と、同別表一及び二の合計欄の金額「五〇五、一七五」を「五〇三、八九五」と、原判決六二枚目裏一〇行目の冒頭から同六三枚目表二行目の「また、」までを「さらに、成立に争いのない甲第二一号証の二(手書き部分を除く。)、同第三三号証の一ないし三、同第二六六号証、同第二六七号証(手書き部分を除く。)によれば、控訴人は、昭和六〇年分の電気料金として東京電力に対して八八五四円を支出したことが認められる。なお、」とそれぞれ改める。

12  原判決六三枚目裏三行目から同六六枚目裏五行目までを次のとおり改める。

「カ 通信費 二三万八九六八円

別表第一二の書証欄掲記の各証拠(いずれも成立に争いがない。)、成立に争いのない甲第二三号証(手書き部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は昭和六〇年分の電話料として同別表記載の金額のほか、同年二月二八日に一万五四七〇円、同年三月二〇日に一万五五五〇円、同年七月二五日に五五四〇円、同年八月二六日に四四九〇円、同年九月二五日に三五七〇円を支払い、以上の合計額二三万八九六八円を支払ったことが認められる。甲第二六三号証の一、第二六四号証の八によれば、控訴人の控訴人の係争各年当時の自宅(世田谷区大蔵五-二-一二)の電話番号は四一六-〇二七三であり、甲第三六号各証にある電話番号と異なっていること、甲第三六号各証の記載内容と甲第二三号証の記載内容との間に連絡が認められることから見て、以上はいずれも事業所得に係る通信費と認めるのが相当である。

キ 接待交際費 一二〇〇円

弁論の全趣旨によって成立の真正を認める甲第三一号証の一、二によれば、控訴人は、昭和六〇年の事業所得に係る接待交際費として右金額を支出したことが認められる。甲第三七号証及び甲第六四号証は、いずれも各宛人の特定されない領収書であって、これによって控訴人がそこに記載された費用を事業に関して支出したものと認めることはできない。

ク 損害保険料 四万三二六〇円

成立に争いのない甲第二二号証の二の六ないし九(手書き部分を除く。)、弁論の全趣旨によって成立の真正を認める甲第三八号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、控訴人が、有限会社鶴原保健事業所に対し、昭和六〇年七月一日軽トラックの保険料として九三三〇円を支払い、その後同年中に軽トラック及びスカイラインの保険料として一か月九九八〇円(軽トラック分三一一〇円、スカイライン分六八七〇円の合計額)の割合による金員を三回にわたり支払ったことが認められる。控訴人は、スカイラインの保険料として八万二四四〇円、軽自動車の保険料として三万七三二〇円、火災保険料として二万四六〇〇円を支出した旨主張し、甲第三八号証の一には右主張に沿うかのような記載があるが、保険関係のように継続的な随時解消することの可能な法律関係に基づく経費については、単に当該法律関係の成立のみでなく、現実の支出等具体的債務の確定及びその履行期限の到来を証明する資料によって経費を認定すべきところ、右甲第三八号証の一は、記載された金額につき右のような要件が具備したことを客観的に裏付ける証拠ということはできず、他に右に支出を認定した額以上の損害保険料につき右要件が充足されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。そして、スカイラインに関する保険料が控訴人の事業所得の経費に当たらないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりであるから、経費として認められるのは軽トラックの分一万八六六〇円のみである。

成立に争いのない甲第二一号証の八(手書き部分を除く。)、前出甲第三八号証の一によれば、控訴人はその事業所得に係る火災保険料として昭和六〇年中に二万四六〇〇円を支出したことが認められる。

ケ 修繕費 三万四三〇〇円

いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める甲第三九号証、同第四一号証一、二及び同四三号証の一、四によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る修繕費として、浜工業に九〇〇〇円、黒崎ガラス店に一万八〇〇〇円、丸山電機商会に七三〇〇円の合計三万四三〇〇円の金額を支出したことが認められる。

控訴人は、右認定額の外にも、昭和六〇年分の事業所得に係る修繕費の支出を主張し、その証拠として、甲第四〇号証及び同第四二号証の一ないし五を提出するが、スカイラインの修繕費(甲第四〇号証、甲第四二号証の一、四)が控訴人の事業所得の経費に当たらないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりであり、また、甲第四二号証の二、三及び五には、修繕の対象となった車両の車種、車両番号等の記載がないから、これによって右支出が軽トラックのためのものであると認めることはできない。

コ 消耗工具費 一五二万三二二八円

原判決別表第一六の一の書証欄記載の各証拠及び甲第四四号証の二の一ないし九(いずれも弁論の全趣旨によって成立を認める。)によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る消耗工具費として、同別表記載の取引先に対し、それぞれ該当する金額欄の各金員(ただし、斉藤鋲螺商店に対する支払額として「一二〇〇円」とあるのを「一八〇〇円」に訂正する。これにともなって、合計額も六〇〇円加算される。)の支出をしたことが認められる。

弁論の全趣旨によって成立の真正を認める甲第四五号証の二ないし五及び七によれば、控訴人は、右のほか、同年分の消耗工具費として、妙義商工に対し、五万六五〇〇円を支出したことが認められる。

サ 消耗品費 三二万八五六〇円

a いずれも弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第四三号証の二、三、五及び六によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る消耗品費として、丸山電機商会に対し、合計五万三〇一〇円を支出したことが認められる。甲第四三号証の七は、上様宛となっているのみならず、他の領収書とは形式も異なるものであるから、採用することができない。

b いずれも弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第五〇号証の一ないし八及び控訴人本人尋問の結果(原審)によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る消耗品費(工業用油代)として、北越石油商会に対し、合計一四万四一五〇円を支出したことが認められる。

控訴人は、右認定の外、スカイライン及び軽トラックのガソリン代の支出を証する書証として甲第五一号証の一ないし一二の関東鉱油株式会社の領収書を提出することが、これらの領収書には給油された車両番号の記載がなく、その記載のみよっては、これは軽トラックのガソリン代としてのみ支出されたものと認めることはできず(スカイラインのガソリン代が控訴人の事業所得の経費に当たらないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりである。)、他にこのことを認めることに足る証拠もないから、控訴人の右主張額を事業所得に係る経費と認めるとはできない。

c 別表第一七の三書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める。なお、そのうち日比猛商店名義の領収書である甲第五三号証の一、二については、上様宛てのものではあるが、記載された取引内容や後記控訴人の供述に照らし、控訴人との取引に関するものと認める。)及び控訴人本人尋問の結果(原審)によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る消耗品費として同別表三記載の合計一二万〇七八〇円を支出したことが認められる。

d 弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める甲第五八号証の一ないし四によれば、控訴人は、昭和六〇年分の事業所得に係る消耗品費として、丸康商店に対し一〇五〇円の、福屋文具店に対し合計九五七〇円の支出をしたことが認められる。

控訴人は、右のほか富士房に三〇〇円を昭和六〇年分の事業所得に係る消耗品費として支出したと主張し、右主張に伴う証拠として甲第五七号証(富士房分)を提出するが、右書証は宛名が特定されていないうえ、取引内容も不明なので、採用することができない。」

13  原判決六六枚目裏七号目の「必要経費取引明細書」の次に「及び機械納入証明書」を加え、同六八枚目表一行目の「新聞講読」を「新聞購読料金」と、「同六九枚目表二行目から同七行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「タ 雑費 〇円

弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める甲第八六号証及び控訴人本人尋問の結果(原審)によれば、控訴人が作業場に飾ったしめ飾りの代金として犬飼政雄に対し七二八〇円を支出したことが認められるが、右第八六号証にはその領収の日付の記載がなく、他にその支出の時期を認めるに足りる客観的な証拠はないから、右支出が昭和六〇年分の事業所得に係るものとは認められない。」

14  原判決六九枚目表九行目の「二一六万七八一八円」を「二〇〇万九一六八円」と、原判決別表第二一の一の一行目の金額「一七四、八一二」を「一六、一六二」と同別表一の合計金額「一、五三八、〇六六」を「一、三七九、四一六」と、同別表一及び二の合計欄の金額「二、一六七、八一八」を「二、〇〇九、一六八」と、原判決六九枚目裏三行目の「一万九七五〇円」を「〇円」と、同六行目の「右の」から「同八行目の「である。」までを「右支出が昭和六一年分の事業所得に係る公租公課として認められないことは、(二)(3)イで説示したとおりである。」と、同九行目の「(3)イc」を「(3)イd」とそれぞれ改める。

15  原判決七〇枚目表五行目から同九行目までを次のとおり、原判決別表第二三の一の一行目の金額「一五、五二三」を「一八、五二三」と、同二行目の金額「五四、五五一」を「八四、五五一」と、同別表一の合計金額「五九三、〇九〇」を「六二六、〇九〇」と、同別表二の二行目の「甲第九五号証の二」を「甲第三四号証の三、第九五号証の二」と同別表一及び二の合計欄の金額「六〇九、九九〇」を「六四二、九九〇」とそれぞれ改める。

「エ 水道光熱費 六八万六七二五円

別表第二三の一及び二の書証欄記載の各証拠及び甲第九四号証の二二(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める。)並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭和六一年分の事業所得に係る水道光熱費として、右格別表記載の金額のほか昭和六二年二月五日に東京電力に対し四万三七三五円を支出したことが認められる。」

16  原判決七〇枚目裏二行目の末尾に次のとおり加える。

「控訴人は、昭和六一年五月一九日に一万七一二六円、同年一〇月一七にちに一万七四七九円、同年一二月一七日に一万七四〇〇円を支払っていると主張し、甲第二一号証の一七、二二及び二四(当座預金照合表)の出金欄の記載を援用するが、右記載をもってしては、右各金員が控訴人の事業用の電話の電話料金であることを認めるに足りず、他に右事業を認めるに足る的確な証拠はない。」

17  原判決七一枚目表五行目の「二万四六〇〇円」を「八万六九二〇円」と改め、同一〇行目から同裏九行目までを次のとおり改める。

「成立に争いのない甲第二二号証の二の一〇ないし一四(手書き部分を除く。)、昭和六〇年の損害保険料について前記(二)(3)クで認定したところ及び昭和六二年の損害保険料について後記(二)(5)キで認定するところによれば、控訴人が前記鶴原保険事務所に対し、昭和六一年一月から四月まで自動車保険料として四万九九〇〇円(九九八〇円ずつ五回)を支払ったこと、そのうち軽トラック分は一万五五五〇円(一回につき三一一〇円)であることが認められ、また、同年中に更に軽トラック分の保険料として七回分二万一七七〇円を支払ったことが推認される。

成立に争いのない甲第二二号証の三、四(手書き部分を除く。)、第二六八号証によれば、控訴人は昭和六一年中に中小企業倒産防止共済掛金として二万五〇〇〇円を支出したことが認められ、右は事業所得に係る経費と認めることができる。」

18  原判決七一枚目裏一〇行目の「一二万一二六五円」を「一二万円」と、同二枚目表七行目の「認められ、」から同一〇行目の末尾までを「認められるが、スカイラインの修理代が控訴人の事業所得の経費に当たらないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりである。」と、同裏三行目の「前記のとおり、」から同裏六行目の「支出された」までを「これらの書証に記載された修理代金の支出が軽トラックの修繕のためのものであった」とそれぞれ改める。

19  原判決別表第二六の一の書証欄三行目の「同号証の二の一」を「同号証の二の二」と、同別表の二の書証欄一二行目の「同号証の二の六」を「同号証の二の六ないし九」と、同別表の四の書証欄二、三行目の「甲第一〇八号証の一の一、二及び甲第四号証の三」を「甲第一〇八号証の一の一、三」とそれぞれ改める。

20  原判決七三枚目表三行目から同七四枚目裏一行目までを次のとおり改める。

「コ 消耗品費 二四万三〇八六円

a  別表第二七の該当書証欄掲記の各証拠(いずれも弁論の全趣旨によりその成立の真正を認める。)及び控訴人本人尋問の結果(原審)によれば、控訴人は、昭和六一年の事業所得に係る消耗品費として、同別表一、同別表二の初めの三行と五行目、同別表三の初めの二行記載の各金額を支出したことが認められる。これによる支出額は、同別表一の分が一九万九三五〇円、同別表二の分が二万一一五六円、同別表の分が三〇六〇円、合計二二万三五八六円である。

甲第一一三号証の一、二は、名宛人の特定されていない領収書であり、控訴人はこれについて取引先の日比猛商店から甲第二〇七号証の受取証明書を得ているが、被控訴人も、反証として乙第一六号証の申述書を提出している。しかしながら、右領収書の記載内容及び昭和六〇年の同商店の領収書に関して認定したところからして、右領収書は控訴人との取引に関するものと認めるのを相当とする。

b  甲第一一二号証の一の四の請求書は、控訴人が事業に使用している軽トラックに関する経費を含んでおらず、スカイラインに係る経費を控訴人の事業所得に係る経費と認められないことは前記(二)(3)イで説示したとおりである。

c  控訴人は、直売タムラに対して四六〇〇円を支出したと主張し、甲第一四一号証を提出するが、右は名宛人を特定しない領収書であり、取引内容も明らかでなく、控訴人の事業所得に係る経費と認めることはできない。

d  弁論の全部趣旨により成立の真正を認め得る甲第一六五号証の一、四によれば、控訴人は、北越石油商会に対し、昭和六一年中に買い入れた油等の代金として一万九五〇〇円を支払ったことが認められ、右は控訴人の事業所得に係る経費と認められる。

e  以上によれば、控訴人の消耗品に関する経費の合計額は二四万三〇八六円である。」

21  原判決七四枚目裏二行目の「九九万二〇一六円」を「九九万四二五七円」と、原判決別表第二八の月数・償却率欄の「一三、四四六」を「一五、六八七」と、合計「九九二、〇一六」を「九九四、二五七」と、原判決七五枚目裏九行目から同七六枚目表二行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「ソ 雑費 〇円

弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第一三六号証によれば、控訴人が雪谷民主商工会に対しコピー代として三〇〇円を支出したことが認められるが、右金員が控訴人の昭和六一年分の事業所得に係るものであることを認めるに足りる証拠はない。また、甲第一三七号証は宛名のない領収書であって、控訴人の事業所得に係る支出を示すものとはいえない。」

22  原判決七六枚目表四行目の「二〇四万二〇〇六円」を「二〇四万〇六八三円」と改め、同五行目の冒頭に「甲第一四二号証を除く」を加え、同七行目の「同表記載の」を「同表三の諏訪鋼鉄分一三二三円を除く」と改め、同八行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「控訴人は、諏訪鋼鉄株式会社に対して一三二三円を支出したと主張するが、甲第一四二号証は宛て名が「上殿」となっているほか、取引内容の記載もないものであるから、いかなる取引に関する領収証か不明であり、他に右主張を認めるに足る的確な証拠はない。

さらに、控訴人は、幸和電子工業株式会社からの材料仕入れ代として、同社に対して一二万六一〇八円を支出したと主張するが、右主張に沿う甲第二〇号証の必要経費取引先明細書及び甲第二〇号証の必要経費取引先明細書及び甲第一九五号証の受取証明書の記載が採用できないことは(2)イ及びオで述べたとおりである。甲第二七二号証の二も右に主張を認めるに足るものとはいえない。」

23  原判決七六枚目表九行目の「一万九七五〇円」を「〇円」と、同裏二行目の「原告の」から同四行目の「である。」までを「スカイラインに係る自動車税を控訴人の事業所得に係る公租公課と認めることはできないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりである。」と、同七行目から一一行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「ウ 荷造運賃

弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第一四四号証の一、二によれば、控訴人はヤマト運輸株式会社に対し貨物運賃として合計一八〇〇円を支出したことが認められるが、右文書には作成された年の記載がないので、これを昭和六二年の事業所得に係る経費と認めることはできない。」

24  原判決七七枚目表五行目の末尾に「甲第二六〇号証の四枚目は、水道光熱費であること認めるには十分でなく、他に控訴人の主張するその余の支出を認めるに足る的確な証拠はない。」を、同九行目の末尾に「控訴人は、昭和六二年三月一九日に一万七三二三円、同年一二月二一日に一万七四五〇円を支払っていると主張し、甲第二五六号証の五枚目及び同第二六〇号証の五枚目(いずれも小切手の控え。枚数は写しの枚数による。)の記載を援用するが、右記載によっては、右各金員が控訴人の事業用の電話の電話料金であると認めるに足りず、他に右事実を認めるに足る的確な証拠はない。」を、原判決別表第三四の二の書証欄の「甲第一四六号証」の次に「及び甲第九五号証の二」をそれぞれ加え、同別表第三五の下から二行目の「甲第一四七号証の九」を「甲第一四七号証の一〇」と改める。

25  原判決七七枚目表一一行目から同裏一〇行目までを、「昭和六二年の接待交際費については、控訴人は当審で主張を撤回したので、判断しない。」と、同一一行目から同七八枚目裏六行目までを次のとおり、それぞれ改める。

「キ 損害保険料 一一万七七〇〇円

弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第一五二号証の六によれば、控訴人は昭和六二年中に前記鶴原保険事務所に対し火災保険料二万三五〇〇円を支払ったことが認められ、右は控訴人の事業所得に係る経費と認められる。

いずれも弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第一五二号証の五、第二六四号証の四によれば、控訴人は同年七月以降の分の軽トラックの保険料として前記鶴原保険事務所に対し一万五五四〇円を支払ったことが認められ、また、右軽トラックの同年一月から六月までの分の保険料として毎月三一一〇円、合計一万八六六〇円を支払ったことは、昭和六一年の損害保険料に関し前記(二)(4)キで認定したところから推認することができる。スカイラインに関する保険料を事業所に係る経費と認めることができないことは(二)(3)イで説示したとおりである。

成立に争いのない甲第二二号証の五ないし八(手書き部分を除く)、前第二六八号証によれば、控訴人は中小企業倒産防止共済掛金として昭和六二年中に六万円を支払ったことが認められる。」

26  原判決七八枚目裏七行目の「五六万〇五二〇円」を「四八万五五二〇円」と、同七九枚目表一行目の冒頭から同二行目の「認められる。」までを「しかしながら、スカイラインに係る修繕費が事業所得に係る経費と認められないことは、前記(二)(3)イで説示したとおりである。」とそれぞれ改め、原判決別表第三七の書証欄五行目の「甲第一五四号証の二の一、二」の次に「、同号証の五」を加え、同欄六行目の「甲第一五四号証の五及び」、七行目の「甲第一五六号証の一」、同別表取引先等欄六、七行目の「関東マツダ大田営業所(その支出額一五〇、〇〇〇の五割相当額)」、同別表金額欄六行目の「七五、〇〇〇」をそれぞれ削除し、合計額「五六〇、五二〇」を「四八五、五二〇」と改める。

27  原判決七九枚目裏二行目の「三三万五九二七円」を「三〇万五六六七円」と、同別表第三九の一の二行目の金額「二五、八〇〇」を「六、三〇〇」と、同別表一の合計額「二一六、一〇〇」を「一九六、六〇〇」と、同別表二の一行目の金額「六、二四一」を「六、一六一」と、同二行目の金額「一五、七三六」を「一二、七三六」と同別表二の合計額「一六、四一七」を「五八、三三七」とそれぞれ改め、同別表三の一行目をすべて削除し、同別表三の合計額「五八、四一〇」を「五〇、七三〇」と同別表一ないし三の合計額「三三五、九二七」を「三〇五、六六七」とそれぞれ改め、原判決八〇枚目表一行目から二行目にかけての「スカイラインあるいは」を削除し、同四行目と五行目を次のとおり改める。

「c 控訴人は菊栄刃物店に七六八〇円を支出したと主張し、甲第一六七号証を提出するが、右は宛先も特定されず、取引内容も表示されていない領収書であるから、これに記載された金額を控訴人の事業所得に係る経費と認めることはできない。

28  原判決八〇枚目裏四行目から同一〇行目までを次のとおり改める。

「シ 福利厚生費 四九三八円

弁論の全趣旨により成立の真正を認める甲第一七二号証及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭和六二年分の事業所得に係る福利厚生費として雪谷民主商工会に対して四九三八円を支出したことが認められる。控訴菱は、甲第一七三号証記載の三〇〇〇円も同年の事業所得に係る福利厚生費であると主張するが、右の領収証の記載のみでは右事業を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

29  原判決八一枚目裏三行目の「四万三二〇〇円」を「四万四二〇〇円」と、同一〇行目及び同八二枚目表一行目の各「別表第四三」をいずれも「当判決表(4)」と、同七行目の「(1)」を「(一)」と、同八行目及び一〇行目の各「一〇一八万四三四五円」いずれも「一〇二四万五三四三円」と、同裏八行目から同八三枚目表八行目までを次のとおり、それぞれ改める。

「イ 右アの請求書、領収書等の帳票類が整然と保管されていたものとは認め難く、したがって作成日付のないものや控訴人の事実との関連性が記載上明らかでないものについては当該帳票に係る経費の支出の事実を認めることができないことは、前述のとおりである。

ウ 右アの受取証明書は、取引日ごとに取引金額が記載されているのみで、個々の取引の内容を認定することができないものであり、また、(二)(2)アの受取証明書とその作成過程が同様であって、その信用性については(二)(2)アの受取証明書について同オで述べたところがあてはまるものといえるから、その記載のみによってこれに係る経費の支出の事実を認めることはできない。」

30  原判決別表第四四の二の六枚目を削除し同別表二の合計額「一、一二九、七〇〇」を「一、一二〇、二〇〇」と、同別表六の八行目の「甲第七八号証の一」を「甲第七八号証の一、四及び甲第二四八号証」と、同行の金額「二八、八〇〇」を「三〇、六〇〇」と、同別表六の合計額「四〇三、〇〇〇」を「四〇四、八〇〇」と、同別表の一ないし七の合計額「四、六七二、八〇〇」を「四、六六五、一〇〇」とそれぞれ改める。

31  原判決別表第四五の二の合計額「八三六、一八〇」を「九〇三、七八〇」と改め、同別表五の九行目を削除し、同合計額「五七三、〇二〇」を「五二三、〇二〇」と、同別表の一ないし七の合計額「四、五二三、七五〇」を「四、五四一、三五〇」とそれぞれ改める。

32  原判決別表第四六の四の一行目を削除し、同九行目の金額「二、二五〇」を「五、二五〇」と、合計額「三八四、一四〇」を「二七七、一四〇」と、同別表一ないし六の合計額「二、六五〇、九五〇」を「二、五五三、九五〇」とそれぞれ改める。

33  原判決八三枚目裏八行目の次に改めて、次のとおり加える。

「<1> 甲第六九号証の一の六は、昭和六〇年七月一三日付の荒製作所から控訴人に宛てた納品書であるが、同製作所と控訴人との取引に関する甲第六九号証の一の一ないし一一、同号証の二の一ないし一一によれば、昭和六〇年当時、同製作所は控訴人に対する売掛債権につき毎月二〇日締めで請求書を発行し、翌月末に請求全額の支払いを受けるのを常としていたことが明らかであるから、前記納品書に記載された債権額については同年八年三一日付の甲第六九号証の二の六の領収書をもって弁済を受けるものと推定され、この推定を覆すに足りる証拠はない。したがって、右領収書に記載された経費とは別個に右納品書に記載された額を経費として認めることはできない。

<2> いずれも日本スチールベルト株式会社の控訴人に宛てた領収証である甲第一二六号証の二の五及び甲一八二号証の二に記載された金額(五万円及び一〇万円)は、弁論の全趣旨により成立の真正を認める乙第一八号証及び弁論の全部趣旨によれば、控訴人が右会社から受け取っていた前受金を清算するために作成されたものであって、外注取引に基づくものではないことが認められる。

<3> 甲第一八四号証の一の三によれば、控訴人は林製作所との間で昭和六二年一〇月二〇日に二二五〇円、同年一一月六日三〇〇〇円の外注加工取引をしたことが認められる。」

34  原判決八四枚目表五行目から九行目までを「そうすると、係争各年の控訴人の事業所得に係る外注加工費の支出の実額を立証し得た金額は、別表第四四ないし四六記載のとおりである。」と改める。

35  原判決八四枚目裏一行目、五行目から六行目にかけての各「必要取引明細書」をいずれも「必要経費取引先明細書」と、同八五枚目表二行目から七行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「これに対し、甲第六七号証の一ないし六、甲第一一九号証の一ないし五、甲第一七六号証の一ないし六の出勤伝票には、支払いの相手方である宮本による押印がなされている。通常の場合、控訴人の内部文書である出金伝票に取引先の押印がされていても、そのことから直ちにその取引に客観的な裏付けがあるということはできないが、右出金伝票は控訴人方にアルバイトとして雇用されていた宮本に対する支払いのために作成されたものであること、出金伝票に右のような処理がされているのは宮本の関係のものだけであることを考慮すると、右押印をもって受領証の作成に代えたものと推認することができるから、右出金伝票によりそれに記載された支出を認めることができる。」

36  原判決八五枚目裏一行目から五行目までをつぎのとおり改める。

「(五) 被控訴人が比準同業者の平均値として得た人件費率に基づいて算定した外注費、人件費の額は、別表第二のとおり、昭和六〇年につき四五〇万一七七〇円、昭和六一年につき三七二万一七〇〇円、昭和六二年につき二九九万〇八八三円であるところ、右(三)、(四)で認定した実額は、係争各年につき右推計額を上回っているから、外注加工費及び人件費に関する控訴人の実額主張は理由がある。」

37  原判決八五枚目裏九行目の「別表第四三」を「当判決別表(4)」と、同八六枚目表六行目から七行目にかけての「右2の(1)及び別表第三の一ないし三のとおり、」を「別表第三の一、二のとおり、」と、同一一行目の「右6(二)及び別表第四三」を「当判決別表(4)」と、同裏一行目の「一〇一八万四三四五円」を「一〇二四万五三四三円」と、同三行目から四行目にかけての「四六七万二八〇〇円」を「四六六万五一〇〇円」と、同四行目の「四五二万三七五〇円」を「四五四万一三五〇円」と、同四行目から同五行目にかけての「二六五万〇九五〇円」を「二五五万三九五〇円」とそれぞれ改める。

38  原判決八七枚目表六行目の「同表書証欄に」から七行目の「金融機関に」までを「同別表に記載された金額を、その記載に対応する取引先に」と、同八八枚目表四行目から五行目にかけての「利子割引料」を「利子補給金」と、同裏五行目の「一及び三」を「二及び三」と、同九〇枚目表八行目から一〇行目までを次のとおり、それぞれ改める。

「(九) 右(一)ないし(八)によれば、当判決別表(5)記載のとおり、係争各年の控訴人の事業所得の金額は、昭和六〇年分が二九八万〇三八三円、昭和六一年分が四四一万七〇五二円、昭和六二年分が三八五万四〇九三円となる。」

39  原判決九〇枚目裏三行目、同九行目の各「二九七万二六八三円」をいずれも「三九八万〇三八三円」と、同三行目から四行目にかけて、同一〇行目の各「四四三万四六〇二円」をいずれも「四四一万七〇五二円」とそれぞれ改める。

二  結語

よって、六〇年分更正及び六〇年分賦課決定については本件付帯控訴に基づき、六一年分更正及び六一年分賦課決定については本件控訴に基づき、それぞれ前記判断と結論を異にする限度で原判決を変更し、昭和六二年分更正及び昭和六二年分賦課決定については控訴人の請求を棄却した原判決を維持することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加茂紀久男 裁判官 鬼頭季郎 裁判官柴田寛之は、転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 加茂紀久男)

別表(1)

収支計算書

<省略>

別表(2)イ

減価償却費明細書 昭和60年分

<省略>

別表(2)イ

減価償却費明細書 昭和61年分

<省略>

別表(2)ウ

減価償却費明細書 昭和62年分

<省略>

別表(3)

被控訴人の試算による経費実額・事業所得金額

<省略>

別表(4)

実額立証に係る一般経費一覧表

<省略>

別表(5)

事業所得金額計算表

<省略>

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