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東京高等裁判所 平成5年(ネ)2558号 判決 1993年10月27日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らの各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文と同旨

第二当事者の主張

原判決の「事実及び理由第二 事案の概要」のとおりであるからこれを引用する。

第三証拠関係

原審の書証目録の記載を引用する。

理由

一  当裁判所も、自賠法一六条一項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務は、期限の定めのない債務として発生し、保険会社は、民法四一二条三項の規定により、被害者から履行の請求を受けた時から遅滞の責めを負うものと解する(最高裁判所昭和六一年一〇月九日第一小法廷判決)。

二  この点に関し、控訴人は、保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務は、損害の査定に基づいて初めて具体的に確定されるのであり、右査定に当たつては、自動車損害賠償責任保険損害査定要綱に準拠して行われるのであるから、被害者の加害者に対する損害賠償額が保険会社の右査定した金額を上回つたとしても、その超過差額について、保険会社が被害者の同項に基づく請求時に遡つて遅滞の責めを負ういわれはないと主張する。

確かに、自賠法一六条一項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務が具体的に確定される手続は、控訴人主張のとおりであるけれども、右債務は、被保険者である加害者において被害者に対する損害賠償債務の履行として支払うべき額を保険者が保険金額の限度において被害者に対して直接に支払うべきものであつて、右の具体的な確定手続のいかんにかかわらず保険事故の発生と同時に一体的に生ずるものである。そして、右の具体的な確定手続と右債務の付遅滞の時期をいかに解するかとは別次元の問題であり、後者が前者の手続に拘束されるべきいわれはないというべきである。このことは、例えば、被害者の加害者に対する損害賠償額は、当事者の合意(示談等)又は確定判決により最終的に確定されるが、右損害賠償債務は、主として沿革上の理由と公平の観点から不法行為時から遅滞の責めに任ずるものとされていることを考えれば、容易に理解されるところである。

控訴人の主張は、独自の見解というほかなく採用の限りでない。

三  よつて、これと同旨の原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから棄却し、控訴費用の負担について、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 並木茂 髙柳輝雄 中村直文)

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