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東京高等裁判所 平成5年(ネ)2105号 判決 1995年1月30日

第二一〇五号事件控訴人(以下「控訴人」という。)

日蓮宗

右代表者代表役員

奥邨正寛

右訴訟代理人弁護士

長谷川正浩

永倉嘉行

第二二〇六号事件控訴人(以下「控訴人」という。)

宗教法人浄瀧寺

右代表者代表役員

水林上嚴

右両名補助参加人

水林隨正

控訴人宗教法人浄瀧寺及び補助参加人訴訟代理人弁護士

馬場一廣

本郷亮

松田純一

下田久

濱勝之

小林俊行

被控訴人

遠藤日乾

右訴訟代理人弁護士

阪岡誠

同(第二一〇五号事件のみ)

大谷昌彦

主文

一  原判決中控訴人日蓮宗の敗訴部分及び同宗教法人浄瀧寺に関する部分をいずれも取り消す。

二  右部分につき、被控訴人の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人日蓮宗

1  原判決中控訴人日蓮宗の敗訴部分を取り消す。

2  右部分につき、被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴人宗教法人浄瀧寺(以下「控訴人浄瀧寺」という。)

1  原判決中控訴人浄瀧寺に関する部分を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

三  被控訴人

本件控訴をいずれも棄却する。

第二  事案の概要

次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」第二に記載のうち控訴人浄瀧寺に対する地位確認及び同日蓮宗に対する損害賠償請求に関する部分のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の訂正

1  原判決三枚目表五行目の末行に続けて「原審は、被控訴人の右宗教法人に対する地位確認請求及び右包括法人に対する損害賠償請求を認容したが、右包括法人に対する不利益処分の差止請求を棄却し、右宗教法人及び包括法人だけが控訴した。したがって、当審における審判の対象は、被控訴人の右請求のうち地位確認及び損害賠償の各請求だけである。」を加える。

2  同五枚目裏七行目の次に行を変えて次のとおり加える。

「(4) 住職候補者の選定に関し、住職又は代務者と干与人及び総代の間に協議が調わないときは、関係者はその事情を具し、宗務所を経由して宗務総長に裁定を申請することができる(一一条)。

(5) 前条の規定により、住職候補者が決定したときは、決定後一か月以内に、住職承認の申請をしなければならない(一二条)。

(6) 前条の規定による手続をしないときは、宗務総長は、宗務所長に事実を調査させた上、住職又はその代務者を任命することができる(一三条)。」

同八行目の「(4)」を「(7)」に、同九行目の「(5)」を「(8)」にそれぞれ改め、同行の「場合」の次に「で二週間以内に住職承認の申請がないとき」を加え、同一一行目の「(6)」を「(9)」に改める。

3  同六枚目表四行目の「(7)」を「(10)」に改め、同裏四行目の「有効である」の次に「ところ、被控訴人の住職代務者の地位がその後消滅したことにつき何らの主張がない」を加える。

4  同一六枚目表七行目の冒頭から同一〇行目の末尾までを削る。

二  当審における主張の付加

1  控訴人浄瀧寺及び控訴人両名補助参加人(以下「補助参加人」又は「水林隨正」という。)

(一) 住職代務者任命の取消し(地位喪失事由(一)―原審主張の補充)

被控訴人に対する住職代務者の任命を取り消す旨の昭和三五年四月六日付けの控訴人日蓮宗の宗務総長の断定処分は、住職代務者の在任期間を経過した直後に採られた措置で、住職代務者の任命自体を取り消す意思表示であるから、住職選定規程二〇条三項にいう住職代務者の「解任」と評価することができる。したがって、被控訴人は、前訴判決の既判力の基準時(昭和五七年五月一七日。以下単に「基準時」という。)前に控訴人日蓮宗により住職代務者を解任されていたのであるから、代表役員代務者ではない。

(二) 任期満了による住職代務者の解任(地位喪失事由(三)―原審主張の補充)

被控訴人の住職代務者としての地位には一年の期間が定められており、右期間が経過しても重任手続もされていないことから、控訴人日蓮宗は被控訴人に対して昭和五九年三月六日付けで解任通知をし(住職選定規程二〇条三項)、その結果、被控訴人はその地位を喪失した。

右の解任は、檀信徒の嘆願があり、かつ、これを登記等で外部に表示する必要があるときのみにする慣行があり、本件においては右の事情は基準時後に生じたのである。したがって、前訴判決によってその行使を遮断されるいわれはない。

(三) 水林隨正の住職任命(昭和五九年三月六日)―その一(地位喪失事由(四)―原審主張の補充)

(1) 控訴人浄瀧寺の総代を初め多数の檀信徒は、前訴判決確定後、控訴人日蓮宗の宗務院(以下「宗務院」という。)を度々訪れ、水林隨正及び住職後任者水林上嚴に対する帰依を表明するとともに、被控訴人は本堂を同人名義に登記するなどの不信行為をしているとして同人に対する不信任を表明し、水林隨正を住職とする裁定をするよう上申した。

(2) 控訴人日蓮宗は、同浄瀧寺には昭和三四年以降住職が欠けていたが、住職任命の時期については特段の制限はなく、かつ、控訴人日蓮宗には檀信徒から新住職任命の嘆願等があって初めて住職を任命する謙抑的慣行があるところ、前記のとおり多数の檀信徒から水林隨正の任命を求める嘆願があったこと、住職選定規程一〇条にいう「承認の申請」とは総代等必要な署名が整い、かつ、申請者が住職に相応しいと判断できるときに初めて受理し得るものであるところ、後記(四)(1)a記載のとおり、被控訴人のした昭和五九年一月九日付けの住職承認申請には総代の署名が欠けていたこと、檀信徒及び控訴人浄瀧寺を管轄する同日蓮宗の宗務所長(以下「宗務所長」という。)の意見も被控訴人は住職に不適当であるというものであったことなどから、同条に基づき後記(四)(2)及び(3)記載のとおり、宗務所長の事実調査を経て水林隨正を新住職に任命したものである。なお、前訴判決によって、被控訴人が住職代務者の地位にあることまで確認されたわけではないから、同条に基づき水林隨正を住職に任命するについて、被控訴人を住職代務者から解任する必要はない。また、仮に被控訴人が住職代務者の地位にあったとしても、右新住職の任命により、控訴人浄瀧寺に住職代務者を置くべき事由はなくなったので、被控訴人は日蓮宗規則五八条一項及び浄瀧寺規則一四条により、当然にその地位を失い、したがって、代表役員代務者たる地位を失ったものであり、控訴人日蓮宗のした解任通知(甲一〇)は、確認的なものにすぎない。

(四) 水林隨正の住職任命―その二(地位喪失事由(五)―当審の新主張)

控訴人日蓮宗は、昭和五九年三月六日、住職選定規程一一条及び同控訴人の慣行に基づき、水林隨正を控訴人浄瀧寺住職に任命した。これにより、控訴人浄瀧寺に住職代務者を置くべき事由はなくなったので、日蓮宗規則五八条一項及び浄瀧寺規則一四条により、被控訴人は、当然に控訴人浄瀧寺の住職代務者、したがって代表役員代務者の地位を失ったものである。

(1)a 前訴判決により「代務者」と認められた被控訴人は、昭和五九年一月九日付け上申書により、宗務所長を経由して控訴人日蓮宗に対し、被控訴人が先に住職承認申請をした昭和三五年に遡って被控訴人に対して住職の辞令を交付するよう求めた(甲六九)。しかし、右上申書は、遡って住職の辞令交付を求めるという控訴人日蓮宗の慣行上認められない内容のものであるばかりか、住職承認申請には干与人・総代の同意を得る必要がある(住職選定規程八条)のに、被控訴人が選定したと称する干与人・総代は存在せず、仮に存在していたとしても、控訴人日蓮宗に届け出られて初めて干与人・総代として認められる(控訴人日蓮宗の干与人総代選定規程一条一項、慣行、浄瀧寺規則一七条一項、一九条一項)ところ、これらの者については昭和三五年ころから昭和五九年三月七日に至るまで宗務総長に届出がされておらず有効に選定された者ではない。一方、控訴人日蓮宗に届け出られていた干与人・総代は、水林隨正が住職に就任することを支持していた。したがって、被控訴人が控訴人日蓮宗に届出のある干与人・総代の同意を得ることは不可能な状況にあった。このような場合、控訴人日蓮宗の慣行上、「代務者と干与人及び総代の間に協議が調わないとき」に当たるものと解し、住職選定規程一一条により解決することも十分可能であるものとして運用されていた。

b 仮に、控訴人日蓮宗に届け出られていた干与人・総代が正当な干与人・総代であると解することができないとしても、住職、代務者、干与人・総代を名乗る者が紛争の渦中にあって、これらの関係者から同控訴人に対して紛争の収拾を求められた場合には、住職選定規程一一条を適用する慣行がある。同控訴人は、昭和五八年一二月二三日ころから昭和五九年二月二〇日ころまでの間に、水林隨正及び総代以下多数の檀信徒から、宗務所を経由しあるいは直接に宗務総長に対し、水林隨正を住職とする裁定を求められており、一方、被控訴人からは前記のような上告書が提出されたので、右の慣行に従って同条を適用し、水林隨正を新住職に任命したものである。

(2) 宗務所長は、住職から互選される管区代表者であり、管区内の紛争寺院についての情報は日常活動において十分把握しており、そのため同控訴人は、宗務所長の事情調査及び意見を尊重していたところ、本件紛争については、宗務所長片山宣英が、前訴判決の基準時後に被控訴人から住職辞令の交付申請を宗務院に伝達するよう求められた際に被控訴人の意見を聴取しているほか、昭和五九年一月二五日、同年二月六日、同月九日及び同月一三日の四日間にわたり、水林隨正の意見も聴取した上で調査報告書を提出し、宗務総長及び宗務院担当者に水林隨正が住職として適格である旨報告した。

(3) 宗務総長は、宗務所長の事実調査及び意見を受け、かつ、同年一月一二日、同月一三日及び同年二月二一日、宗務院庶務部員の調査及び内局の慎重な詮議を経て、内局会議で方針を決定し、同年三月二日、同会議で正式に水林隨正を住職に任命することを決定し、同年三月六日その任命をした。

(4) 住職選定規程一一条は「住職」「代務者」を予定しての協議不調の場合であるから、同条による住職任命は、論理的に被控訴人の解任を必要条件としていないし、同条の文言上も解任を要求していない。住職の任命は、当然に代務者の退職を伴うのである。控訴人日蓮宗のした解任通知(甲一〇)は、前記のように確認的なものにすぎない。

(五) 水林上嚴の住職任命(地位喪失事由(六)―当審の新主張)

(1) 昭和六二年八月二六日、水林上嚴が控訴人浄瀧寺の住職に任命され、代表役員に就任したので、被控訴人は、住職代務者、したがって代表役員代務者たる地位を失った。

(2) 一般寺院たる控訴人浄瀧寺の住職選任には、①前住職水林隨正の住職候補者選定、②干与人の同意、③総代の同意、④控訴人日蓮宗宗務総長の承認が必要とされる(住職選定規程四条)が、水林上嚴の住職選任は右手続を履践して行われた。

(3) 右のうち①の水林隨正による後任候補者選定の手続に、仮に瑕疵があったとしても、包括宗教団体による被包括宗教団体の住職任命権は、伝統的に宗教団体の治教権に由来し、あたかも包括宗教団体から一身専属的に任命されるもので、この性質はいわば地位(住職権とでもいうべき権利)の原始取得に比肩されるべきものであるから、住職たる地位の原始取得性に着目すれば、右瑕疵の程度は部分的で軽微なものに止まり、水林上嚴の住職たる地位を否定し得る程度のものではないというべきである。

(六) 被控訴人の僧籍喪失(地位喪失事由(七)―当審の新主張)

控訴人日蓮宗の僧籍規程一六条は、控訴人日蓮宗から離宗したときには、本人からその旨の届出がされないときは宗務所長から控訴人日蓮宗に届出がされた上、僧籍が削除される旨規程している。

被控訴人は、従来から控訴人日蓮宗の信仰を放棄し、控訴人浄瀧寺の檀信徒からの支持も失っているなど控訴人日蓮宗を離宗した客観的事実を具備していたところ、被控訴人から控訴人日蓮宗に対する離宗の届出がされなかったので、宗務所長は、平成六年二月四日、被控訴人宛調査をして離宗を確認した上、同年三月一〇日、控訴人日蓮宗の宗務院に届出をし、控訴人日蓮宗は、同月一五日、離宗を理由に控訴人日蓮宗の僧籍を削除し、同年八月三一日、被控訴人に僧籍削除の通知をした。

したがって、被控訴人は、控訴人日蓮宗の僧籍を失い、同浄瀧寺の代表役員代務者たり得る基本的資格を喪失しその地位を失った。

2  控訴人日蓮宗

(一) 前訴判決の既判力に抵触しない。

既判力の客観的な範囲は主文のみであって、判決理由中の判断には格別のことがない限り及ばないのであるから、控訴人日蓮宗は、前訴判決の理由中に示された「被控訴人が住職代務者である」との判断に拘束されない。

また、実質的にも、控訴人日蓮宗が水林隨正を控訴人浄瀧寺住職に任命した行為は、包括宗教団体たる控訴人日蓮宗の治教権に基づく宗教行為であるから、判決主文で住職の地位に何ら触れていない前訴判決に反するものではない。

(二) 故意過失の不存在

浄瀧寺規則は控訴人日蓮宗が任命した住職を代表役員とする旨規定しているので、控訴人日蓮宗の意思と離れたところの浄瀧寺規則により水林隨正が控訴人浄瀧寺の代表役員になったにすぎない。宗教法人法上代表役員は一人とされている結果被控訴人は代表役員たる地位を失ったのであり、控訴人日蓮宗が被控訴人の職務権限を侵したものではない。

3  被控訴人

(一) 水林隨正の住職任命による被控訴人の地位の喪失について

(1) 一般寺院の住職(代務者)はすなわち代表役員(代務者)とされているのに、前訴判決後、代表役員と住職との分離した状態にあるとする控訴人浄瀧寺及び補助参加人の主張は、無用な混乱を招く結果になることを故意に主張するものであり、信義則上許されない。

(2) 浄瀧寺規則七条二項は、「代表役員以外の責任役員はこの寺院の干与人及び総代のうちから代表役員が選定し控訴人日蓮宗の代表役員に届け出るものとする。」と定めているところ、右の届出は、効力発生要件ではないから、これがなくても当該責任役員の就任が無効ということはできない。総代及び干与人の選任についても同様である。したがって、被控訴人の選任した責任役員並びに総代及び干与人の就任は有効である。

(3) 被控訴人による後任住職の選定手続及び後任住職承認申請手続の履践をしない住職任命は違法である。なお、控訴人日蓮宗に届け出られている干与人及び総代は、裁判によりその地位を否定された水林隨正によって選定された者であり、適法なものではないから、これらの者との間に協議が調わないからといって、「協議が調わない」場合に当たるとはいえない。檀信徒には住職の進退に関与する権限は認められていない。

(4) 被控訴人は、昭和三五年二月二二日、適法に選任されかつ控訴人日蓮宗に届け出られた干与人及び総代の同意を得て、控訴人日蓮宗に対して住職承認申請及び住職代務者退職申請をし、更に同年三月三一日にも再申請をしたが、昭和五八年一二月一六日に上告棄却判決により被控訴人の地位が確定したので、改めて昭和五九年一月九日、控訴人日蓮宗に対し右住職承認申請及び住職代務者退職申請の受理を求めた。しかるに、控訴人日蓮宗は、これを認めず、被控訴人の意思によらずに新住職を任命したのであるから、宗制違反、権利の濫用である。

(二) 水林上嚴の住職任命による被控訴人の地位の喪失について

住職の地位は、承継取得であり原始取得ではない。

(三) 被控訴人の僧籍喪失による地位の喪失について

被控訴人は、離脱通知をしたが、これは責任役員会の決議に基づく規則変更の通知であり、宗派や寺院から脱退する離宗とは異なるものである。したがって、宗務所長と控訴人日蓮宗が共謀して、離宗者として被控訴人の僧籍を削除したことは、宗教法人法の趣旨に反し権利の濫用として無効である。また、控訴人日蓮宗が被控訴人に対する調査はもちろん被控訴人に何らの通知もしないでした僧籍削除は、社会通念及び信義則に反するもので無効である。

(四) 控訴人日蓮宗の過失について

控訴人日蓮宗が前訴判決確定後に内容虚偽の文書(乙三三の1)を作成して被控訴人の住職代務者たる地位から解任したことは、確定判決を故意に覆そうとした違法な反社会的行為であり、許されることではない。同控訴人が控訴人浄瀧寺の実情を調査しなかったことは過失であり、住職代務者である被控訴人の職務権限を無視して新住職を任命したことは、控訴人日蓮宗の宗制の定めに反する違法行為である。したがって、控訴人日蓮宗に故意・過失があることは明らかである。

第三  争点についての判断

一  控訴人浄瀧寺に対する地位確認請求について

1  前訴判決の効力について

前訴判決の効力についての当裁判所の判断は、原判決の「事実及び理由」第三の一1に説示のとおりであるから、これを引用する。

2  地位喪失事由(一)及び(二)について

当裁判所も、地位喪失事由(一)及び(二)は理由がないと判断する。その理由は、原判決の「事実及び理由」第三の一2に説示のとおりであるから、これを引用する。

控訴人浄瀧寺及び補助参加人は、被控訴人に対する住職代務者の任命を取り消す旨の宗務総長の断定処分は、住職代務者の在任期間を経過した直後に採られた措置で、住職代務者の任命自体を取り消す意思表示であり、住職選定規定二〇条三項にいう住職代務者の「解任」と評価することができ、したがって、被控訴人は基準時前に控訴人日蓮宗により住職代務者を解任されていたのであるから、代表役員代務者ではない旨主張するが、前記1の説示に照らして採用できない。

3  地位喪失事由(三)及び(四)について

(一) 証拠(甲六三の1ないし6、乙五、五一、五二、五五、五八、五九、丙一、証人小林正雄、被控訴人本人)及び括弧内に掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人浄瀧寺における住職ないし住職代務者の地位をめぐる紛争について、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1) 水林隨正は、第二で引用する原判決の「事実及び理由」第二の前記一3に記載のとおり控訴人日蓮宗から住職解免処分を受けたので、昭和三四年に同控訴人に対し、住職解免無効等確認の訴え(東京地方裁判所昭和三四年(ワ)第二八七六号)を提起した。

(2) 被控訴人は、同じく右3に記載のとおり昭和三四年三月一六日に控訴人日蓮宗の管長増田日遠により代務期間を一年と定められて控訴人浄瀧寺の住職代務者に任命された後、昭和三五年二月二二日、干与人として武田宣祐、総代として横打俊太、鈴木八重及び木村実の記名押印を得て、控訴人浄瀧寺の住職候補者として被控訴人を選定したので承認されたい旨の住職承認申請書(甲一六の2)及び控訴人浄瀧寺住職就任のため被控訴人が住職代務者を退職することを承認されたい旨の退職承認申請書(甲一六の3)を宗務所長を経由して控訴人日蓮宗に提出した。

(3) 控訴人日蓮宗の第一部審査会は、昭和三五年三月七日、昭和三四年二月二八日付けで水林隨正に対する前記住職解免処分が無効である旨の判定をした(乙六)。

(4) 被控訴人は、昭和三五年三月一四日付け(同月一五日進達)で、干与人として武田宣祐、総代として横打俊太、鈴木八重及び木村実の記名押印を得て、後任住職の選定が困難なため、控訴人浄瀧寺の住職代務者の候補者として被控訴人を選定したので承認されたい旨の継続住職代務者承認申請書(甲四二)を宗務所長を経由して控訴人日蓮宗に提出した。

(5) 宗務総長は、昭和三五年四月六日、断定書(乙七)により、水林隨正に対する昭和三四年二月二八日付け住職解免は無効であり同人は今日もなお住職資格を有するとした上、被控訴人に対する昭和三四年三月一六日付け住職代務者任命を取り消した。

(6) 被控訴人は、昭和三五年一一月一四日、控訴人日蓮宗に対し、代表役員代務者任命取消無効確認の訴え(東京地方裁判所昭和三五年(ワ)第九一二一号)を提起したが、当該法人を当事者としない当該法人の理事者たる地位の確認を請求する訴えには確認の利益がない旨を判示した最高裁判所の一連の判決が出たため、約一〇年後にこれを取り下げ、昭和四六年一月二一日、新たに控訴人浄瀧寺を被告として前訴を提起した。

(7) 被控訴人は、前訴判決確定後の昭和五九年一月九日、昭和三五年二月二二日に提出した住職承認申請は有効であるので申請当時に遡る日付けをもって辞令の交付等について然るべく取り計らわれたい旨の被控訴人作成名義の上申書、(甲六九)を宗務所長の押印を得て控訴人日蓮宗に提出したが、これには干与人及び総代の署名押印はされておらず、別途に干与人及び総代の同意書が提出された事実もなかった(乙五五)。

(8) 昭和五九年一月二六日ころ、控訴人日蓮宗に対し、同浄瀧寺の住職・水林隨正、住職後任者・水林上嚴、総代・犬山銀治郎及び餅田万亀子、その他檀信徒三四者の署名押印のある同月二五日付け宗務総長宛て上申書(乙六〇)等が宗務所長経由で届けられたほか、控訴人浄瀧寺の総代・犬山銀治郎及び餅田万亀子、その他檀信徒一五名の署名押印のある同月三〇日付け宗務総長宛て上申書(乙六一)、住職・水林隨正、住職後任者・水林上嚴、総代・犬山銀治郎の署名押印のある同年二月三日付け宗務総長宛て追加上申書(乙六四)、総代・犬山銀治郎及び餅田万亀子、その他檀信徒一六名の署名押印のある同日付け管長宛てお願い書(乙六二)、総代・犬山銀治郎、その他檀信徒一九八名の署名押印のある同月付け上申書(乙五一)等がそれぞれ提出された。右の上申書等は、いずれも、前訴判決が確定したことに伴い、被控訴人が寺院本堂を個人の所有名義に所有権保存登記をしたなどの非行等を挙げて同人が控訴人浄瀧寺の住職代務者として不適任であることを強調し、被控訴人を住職代務者から解任すること及び水林隨正又は同人の弟子である水林上嚴を住職に任命することを求める内容のものであった。なお、水林隨正は、宗務総長に提出した上告書等には不都合な表現があったので、これらを取り下げるので作成名義人宛てに返戻して結構である旨の同月二三日付け宗務総長宛て取下書を宗務所長に提出し、宗務所長はこれを同年三月五日ころ取り次いだ。

(9) 控訴人日蓮宗においては、前訴判決確定後、昭和五九年一月一二日及び一三日に宗務院庶務部長以下の職員三名及び顧問弁護士二名が今後の対処の仕方を検討した上、同年二月二一日及び同年三月二日の内局会議(責任役員会議)でも今後の方針を検討した。

右の内局会議等において、被控訴人作成名義の昭和五九年一月九日付け上申書についても検討されたが、昭和三五年二月二二日付け住職承認申請書に署名押印をした干与人及び総代のすべてが死亡しているのに、右上申書には干与人及び総代の署名押印はされておらず、別途に干与人及び総代の同意書が提出された事実もないこと、更に、控訴人日蓮宗には遡って住職の辞令を交付することは宗制上の根拠も先例もないことから、右上申書に沿うような扱いをすることは考えられないことであること、更に加えて、前訴判決は被控訴人が控訴人浄瀧寺の住職代務者の地位にあることまで確認したものではないとの解釈の下に、控訴人日蓮宗としては、昭和四二年改正後の日蓮宗規則五六条五項並びに住職選定規程一条二項及び附則二項の規定と直接抵触する事態を容認して、被控訴人が当時なお住職代務者であると認めることはできないとの結論に達したこともあって、前記上申書をもって正式な住職承認申請をしたものとは扱わなかった。一方、前記の内局会議等においては、前記関係者の要望・意見や宗務所長の調査結果の報告を踏まえ、控訴人日蓮宗が過去二五年間にわたり控訴人浄瀧寺の住職と認めてきた水林隨正を同控訴人の住職として残す方針を固め、住職選定規程一〇条ないし一九条により改めて水林隨正を控訴人浄瀧寺の住職に任命するとともに被控訴人に対して本件処分をすること、及び同月六日に各通知をすることを決定した。なお、宗務所長片山宣英は、宗務総長の命により、同月三日、訴訟記録及び控訴人浄瀧寺の登記簿の調査結果を報告する内容の調査報告書(乙五四)を提出した。

(10) 被控訴人並びに責任役員小川道也及び同飯田龍太郎は、同月三日、被包括関係を廃止することを目的として、浄瀧寺規則のうち被包括関係に関する規定の削除及びこれに伴う改正をする決議をして改正規則を公告した(甲七、八)。

(11) 控訴人日蓮宗は、同月六日、第二で引用する原判決の「事実及び理由」第二の一4及び5に記載のとおり、控訴人浄瀧寺の住職に水林隨正を任命するとともに本件処分をし、控訴人浄瀧寺は、同月七日、代表役員として水林隨正が就任した旨の登記を経由した(乙四)。

(12) 被控訴人は、同月七日、宗務所長に対し、被包括関係を廃止する旨の通知をするとともに、控訴人日蓮宗宛ての責任役員の欠員を補充するため小川道也及び飯田龍太郎を選定したので承認されたい旨の責任役員承認願出書(甲六)を提出したが、宗務所長は、右の通知が唐突であった上、離脱に必要となる被控訴人の新役員承認願が管轄外の宗務所に持ち込まれたため、その受理を拒否した。そこで、被控訴人は、同月九日、控訴人日蓮宗に対し、被包括関係を廃止するための規則変更をすることになった旨の通知(甲九)を発し、右通知はそのころ同控訴人に到達した。なお、控訴人浄瀧寺の代表役員として水林隨正が登記されているため、被控訴人は浄瀧寺規則変更の認証申請をすることができない状態にある。

(13) 控訴人浄瀧寺においては、浄瀧寺規則(甲五)一六条により正干与及び副干与各一人を置き、同規則一八条により総代三人を置くものとしているところ、水林隨正は、住職として、昭和五八年八月ころ、控訴人日蓮宗に対し、控訴人浄瀧寺の正干与人として権僧正水林澄雄、副干与人として僧正西川智泰(乙六九)を、総代として犬山銀治郎、犬山守及び餅田万亀子(乙六八)を、代表役員以外の責任役員として水林澄雄及び犬山銀治郎(乙七〇)をそれぞれ届け出ている。

なお、被控訴人は、住職代務者として控訴人日蓮宗に対し、昭和三四年九月一〇日ころ正干与人として権僧都武田宣祐、総代として横打俊太、鈴木八重及び木村実を届け出た(甲一六の2)が、その後の改選者及び欠員補充者については届け出ていない。

(14) 被控訴人は、昭和三一年一一月二七日受付けで控訴人浄瀧寺の本堂につき、所有者を遠藤宣耀(被控訴人の旧名)とする所有権保存登記を経由した(乙六二)。これに対し、控訴人浄瀧寺は、昭和五九年に被控訴人に対し、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求める訴え(横浜地方裁判所昭和五九年(ワ)第二一七号)を提起し、平成元年二月八日、右控訴人勝訴の一審判決が言い渡された(乙三二)が、現在控訴審に係属中である。

(二) 右の事実によれば、代表役員代務者は、その置くべき事由がやんだときは、当然その職を退くものとされており(日蓮宗規則五八条一項、浄瀧寺規則一四条)、被控訴人は、住職であった水林隨正が解免処分により住職の地位を失い控訴人浄瀧寺の住職が空位になったとして住職代務者に任命され、代表役員代務者になったのであるから、新たに同控訴人の住職が任命されて代表役員になったときには、当然に住職代務者、したがって代表役員代務者の地位を失うことになると解されるところ、控訴人日蓮宗は、昭和五九年三月六日、水林隨正を控訴人浄瀧寺の住職に任命したのであるから、右任命(以下単に「本件任命」ということがある。)が有効である限り、水林隨正が同控訴人の代表役員となり、被控訴人は同控訴人の住職代務者、したがって代表役員代務者としての地位を喪失したことになる。

そこで、まず本件任命が控訴人日蓮宗の宗制に従ってされたものであるか否かについて検討する。

寺院に住職代務者が就任している場合には、後任住職は住職代務者が選定して承認申請をすることによって選任されるのが原則である(日蓮宗規則五三条一項、住職選定規程八条)ところ、前認定のとおり、被控訴人は、控訴人日蓮宗に対し、昭和三五年二月二二日に被控訴人を控訴人浄瀧寺の住職に選定し、干与人及び総代三名の同意を得て住職承認申請をしたのであるが、控訴人日蓮宗の第一部審査会が同年三月七日に水林隨正に対する住職解免処分が無効である旨の判定をし、宗務総長が同年四月六日付け断定書により、水林隨正に対する昭和三四年二月二八日付け住職解免は無効であり同人は今日もなお住職資格を有するとした上、被控訴人に対する同年三月一六日付け住職代務者任命を取り消したことにより、これと両立し得ない右四月六日前の被控訴人による住職承認申請は黙示的に却下されたものと解することができる(控訴人日蓮宗の『右住職承認申請は返戻された』との主張―原判決の「事実及び理由」第二の三6参照―は、右却下の主張を含むものと解される。)

その後、被控訴人は、前訴判決確定まで控訴人日蓮宗に対して何らの申請もしなかったのであり、また、前訴判決によって被控訴人の控訴人浄瀧寺の代表役員代務者たる地位が確定されたからといって、当然に控訴人日蓮宗による右却下処分が無効とされ、前記住職承認申請がなお有効な申請として復活するものではないと解される。ところで、被控訴人は、前訴判決の確定した昭和五八年一二月一六日の間もなく後の昭和五九年一月九日、昭和三五年二月二二日に提出した住職承認申請は有効であるので、申請当時に遡る日付けをもって辞令の交付等について然るべく取り計らわれたい旨の上申書を提出したのであるが、右上申書の記載内容からして、これによって新たに住職承認申請がされたものと解するのは困難であるのみならず、昭和三五年二月二二日付け住職承認申請書に署名押印をした干与人及び総代のすべてが死亡しているのに、右上申書には干与人及び総代の署名押印はされておらず、別途に干与人及び総代の同意書が提出された事実もなく、更に、控訴人日蓮宗には右のように遡って住職の辞令を交付することは宗制上の根拠も先例もないことから、右のような扱いをすることは考えられないことであるとして、控訴人日蓮宗が右上申書をもって正式な住職承認申請をしたものとして扱わなかったことに不当とすべき点はないというべきである。もっとも、控訴人日蓮宗としては、前訴判決は被控訴人が控訴人浄瀧寺の住職代務者の地位にあることまでを確認したものではないとの解釈の下に、昭和四二年改正後の日蓮宗規則五六条五項並びに住職選定規程一条二項及び附則二項の規定と直接抵触する事態を容認して被控訴人が当時なお住職代務者であると認めることはできないとの結論に達したことも、前記上申書に対する取扱いを決める上での一つの要因となっているものと認められるところ、前訴判決についての控訴人日蓮宗の解釈に誤りがあるとしても、前記の判断に影響を及ぼさないというべきである。一方、水林隨正が控訴人浄瀧寺の住職たる地位になかったものとすれば、同人が提出した前記上申書等も、正式な住職承認申請をした書類と認めることはできないものである。

したがって、前訴判決の基準時である昭和五七年五月一七日の後においても、控訴人浄瀧寺の住職が欠けているのに、住職選定規程八条に定める住職の承認申請がされていない状態にあったということができる。そうすると、宗務総長は、住職が欠けた日から三月を過ぎて、なお承認の申請がないときに当たるものとして、同規程一〇条及び一九条により、宗務所長に事実を調査させた上、住職を任命することができることとなり、前記(一)(9)に認定した事実に基づいてされた本件任命は、右各条の定めに則ったものと解することができる。

(三)  以上に述べたところによれば、控訴人日蓮宗は、昭和五九年三月六日、日蓮宗規則五三条二項、住職選定規程一〇条により水林隨正を控訴人浄瀧寺の住職に任命したのであるから、同人は、日蓮宗規則五一条一項、浄瀧寺規則七条一項により控訴人浄瀧寺の代表役員に就任したものであり、他方、被控訴人は、同日、日蓮宗規則五八条一項、浄瀧寺規則一四条により住職代務者、したがって代表役員代務者の地位を失ったものであって、控訴人日蓮宗が被控訴人に対して同日付けでした本件処分(住職代務者解任)は、被控訴人が控訴人浄瀧寺の住職代務者たる地位を失ったことを確認したにすぎないものと解するのが相当である。したがって、控訴人日蓮宗が水林隨正を住職に任命したことが、その宗制に違反するものということはできない。なお、住職選定規程(甲七三、乙九、丙四)二〇条一項は、「代務者に就任した事由が止んだときは、その事由を具し、住職、干与人及び総代連署の上その退職の手続をしなければならない。」と定めているが、これは住職代務者がその地位を失ったことを確認するための手続であり、これがなされない限り、被控訴人がなお住職代務者の地位に止まっているものと解することはできない。

4  離脱防止の目的について

被控訴人は、本件任命及び本件処分は、控訴人浄瀧寺の同日蓮宗に対する被包括関係の廃止を防止することを目的としたものであって無効である旨主張し、被控訴人本人(同人作成の陳述書を含む。)は右主張に沿う供述をするが、右の供述は、前認定の事実経過、特に控訴人日蓮宗が前訴に対する最高裁判所の判決がされて間もなくからその後の対応を検討していたこと、水林隨正らから同控訴人に対して被控訴人が住職代務者として不適任である旨の上申がされていたこと、及び被控訴人が同控訴人に対して被包括関係廃止の通知をしたのは、既に水林隨正を住職として選任する方針が決まった後のことであること、並びに被控訴人が基準時において控訴人浄瀧寺の住職代務者の地位にあったものとすると、日蓮宗規則五六条五項並びに住職選定規程一条二項及び改正附則二項の定めと矛盾する状態が継続していることになるので、控訴人日蓮宗としては右の状態を解消する実際上の必要があったこと、以上の事情を総合して本件任命及び本件処分がされたことなどの事情に照らして採用することができず、他に右事実を認めるに足りる証拠はなく、被控訴人の右主張は採用することができない。

5  権利の濫用について

(一) 被控訴人は、控訴人日蓮宗が被控訴人を住職代務者から解任したことを前提として解任権の濫用ないし失効をいうが、前記のとおり、被控訴人が住職代務者、したがって代表役員代務者たる地位を失ったのは、同控訴人が水林隨正を住職に任命した結果であるというべきであるから、右の主張はその前提を欠き採用できない。

(二) 被控訴人は、控訴人日蓮宗が水林隨正を住職に任命したことは任命権の濫用である旨主張する。しかしながら、被控訴人の住職代務者たる地位は、住職が欠けたために置かれた新住職が任命されるまでの臨時的なものであり、新住職の任命を当然の前提としていることは、既に説示したとおりである。そして、証拠(甲四三、一〇九ないし一一八、被控訴人本人)によれば、住職代務者が任期満了後もそのままその地位に止まっている例があることが認められるが、本件においては、被控訴人は現に他の寺院の住職ではない(証人小林正雄)ので、被控訴人が基準時において控訴人浄瀧寺の代表役員代務者であり、したがってその住職代務者の地位にあったものとすると、日蓮宗規則五六条五項並びに住職選定規程一条二項及び改正附則二項の定めと矛盾する状態が継続していることになるので、控訴人日蓮宗としては右の状態を解消する実際上の必要があったということができる。被控訴人は、住職選定規程二一条が二寺住職兼任を禁止していることを挙げ、改正後の規定は無効であるか、少なくとも著しく合理性を欠くものである旨主張するが、証拠(丙四、証人小林正雄)によれば、住職代務者は、干与人や総代を選定することになるところ、干与人は他の寺院の住職が当たるものとされている(日蓮宗規則六〇条一項)ため、住職代務者が他の寺院の住職でない場合には、職階上、下の者が上の者を選定する権限を与えられることになり、宗門の慣習からして望ましくないとの理由で改正されたことが認められるのであって、改正後の規定を無効ということができないのはもとより、これが著しく合理性を欠くということもできない。また、証拠(甲一三二、一四七、証人小林正雄、被控訴人本人)によれば、控訴人日蓮宗においては、寺院の住職代務者から右寺院の住職に任命された例もあるが極めて少数であることが認められるので、住職として住職代務者である被控訴人を選任しなかったからといって、右の選任が著しく不合理ということはできない。右の事情を総合すると、控訴人日蓮宗が水林隨正を住職に任命したことは任命権の濫用であるということはできず、被控訴人の前記の主張は採用することができない。

6  結論

以上のとおりであるから、被控訴人の控訴人浄瀧寺に対する地位確認請求は理由がない。

二  控訴人日蓮宗に対する損害賠償請求について

右一に説示したとおり、本件任命は有効であり、被控訴人は、昭和五九年三月六日、控訴人浄瀧寺の住職代務者、したがって代表役員代務者たる地位を失ったのであるから、本件処分が違法であることを前提とする控訴人日蓮宗に対する損害賠償請求は理由がない。

よって、右と異なる原判決は相当でないから、原判決中控訴人日蓮宗の敗訴部分及び同浄瀧寺に関する部分を取り消した上、右部分につき被控訴人の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官清水湛 裁判官瀬戸正義 裁判官小林正)

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