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東京高等裁判所 平成4年(行ケ)79号 判決 1993年9月08日

札幌市東区北43条東3丁目2-18

原告

出塚寛孝

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 麻生渡

指定代理人

土井清暢

清水修

中村友之

涌井幸一

主文

特許庁が平成2年審判第17212号事件について、平成4年2月19日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和57年12月18日、名称を「二輪車の前輪を駆動する動力伝達機構」とする発明につき、特許出願をした(昭和57年特許願第222649号)が、平成2年7月24日、拒絶査定を受けたので、これに対し不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を、平成2年審判第17212号事件として審理したうえ、平成4年2月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年3月12日、原告に送達された。

2  本願発明の要旨

別添審決書写し記載のとおりである。

3  審決の理由

別添審決書写し記載のとおり、審決は、いずれも本願出願前に我が国において頒布された刊行物である実開昭56「8599号公報(以下「第1引用例」という。)及び実開昭49-22640号公報(以下「第2引用例1という。)を引用し、本願発明は、当業者が第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由のうち、本願発明の要旨の認定は認める。また、非直線経路を経由して回転動力を伝達するための伝達手段として、ユニバーサルジョイント、ユニバーサルジョイントを組み合せたシャフト及び可撓性シャフトとしてのケーブルワイヤが従来よりごく普通に知られており、そのいずれを採用するかは、伝動手段の使用条件に応じて適宜選択できるものであるとの認定(審決書6頁1~8行)は認める。

しかしながら、審決は、本願発明と第1引用例との一致点及び相違点の認定を誤り(取消事由1)、本願発明の容易推考性に関する判断を誤り(取消事由2)、本願発明の奏する顕著な作用効果を看過した(取消事由3)結果、誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(本願発明と第1引用例の一致点及び相違点認定の誤り)

本件審決は、第1引用例と本願発明との一致点を「クランク軸で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置する伝動手段に伝達し、さらにヘッドチューブの直下を伝動手段を用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構」と認定するが、誤りである。

本願発明は上記の構成を有するのに反し、第1引用例には、ヘッドチューブ直下を経由して前輪へ動力を伝達するものが記載されておらず、せいぜい「ヘッドチューブ『周辺』を伝動手段を用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構」が記載されているにすぎない。

これに対し、本願発明におけるヘッドチューブ直下とは二輪車では左右のバランスをとるのが当業者に自明の事項であることから、2本のフロントフォークの中間、すなわち車体フレームの中心線上を意味し、このように厳密に位置を選択した結果が、後記3の本願発明の顕著な作用効果に直結しているのである。

審決は、本願発明と第1引用例との重要な相違点を一致点として誤って認定した。

2  取消事由2(容易想到性にかかる判断の誤り)

審決は、第1引用例に記載されたケーブルワイヤに代えて、第2引用例に記載されたユニバーサルジョイントを組み合わせたシャフトを採用することは容易に推考することができるものと判断するが、以下のとおり、第2引用例記載の技術を第1引用例記載の発明に適用することは困難であり、審決はこの点の判断を誤っている。

(1)  第2引用例は、板バネ、スプライン嵌合プロペラシャフト、後車軸管等を備えている三輪車の技術に関するもので、後二輪を駆動する部分については、エンジンが付いていないことを除くと、実質的には四輪自動車と同じ技術分野に属する事項である。同分野では、駆動伝動手段が中心線からずれていても安定性が保てる点で、二輪車の技術分野とは全く異なるから、その技術を二輪車に適用することは困難である。

ことに、第1引用例は、進行運動(操舵)と走行運動とを前車輪一体で行うことを目的とし、後輪を駆動することを積極的に否定するものであるのに反し、上記のとおり、第2引用例は後輪駆動を目的とする実質的に自動車に係る技術であり、したがって、第2引用例を第1引用例に適用することは、そもそもできないものというべきである。

(2)  第2引用例のユニバーサルジョイントは、車体のたわみによる心ずれの吸収を目的とするものであり、このような技術に使用されるユニバーサルジョイントは、大きくとも20°「程度の作動角を持つにすぎない。

一方、自転車や二輪車は、約42°にも及ぶハンドル切れ角を必要とするから、第2引用例のユニバーサルジョイントは、このような大きな作動角の変化に対応できるようなものではない。

また、同引用例のユニバーサルジョイントは、ストレートに嵌合されており、本願発明のように約4°又は13°の角度で曲がった状態にはないから、ストレート嵌合における単純な技術を二輪車に適用することは困難である。

このことは、第2引用例と同じ技術分野の出願人の発明であり、本願発明と同じように、ユニバーサルジョイントをヘッドチューブの周辺に配置させた実開昭59-75389号の実用化又は試作車発表がないことからも裏付けられる。

(3)  ペダルからの動力の伝達手段の位置は、第1引用例においてはヘッドチューブの直近の外側の位置にあり、第2引用例においてもヘッドチューブの中心線からずれているのに対し、本願発明においては、曲折の中心を得られるヘッドチューブの直下にこれが位置せしめられている。

第1引用例に第2引用例の技術を適用しても、ヘッドチューブの直下にユニバーサルジョイントを配置することはできず、その位置は第1引用例よりもさらに外側になるほか、そもそも、ヘッドチューブ直下にユニバーサルジョイントを位置させるための空間を創製すること自体が困難である。

3  取消事由3(本願発明の格別の作用効果についての判断の誤り)

審決は、「本願発明の効果は、第1引用例および第2引用例にそれぞれ記載された各発明から予測することができる効果の総和を超えたものであるとも言い難い。」と判断するが、本願発明には、第1、第2引用例ないしその組み合わせによっては奏することのできない以下のような格別の効果があり、審決はこの点の判断を誤った。

(1)  スプラインの省略を可能としたこと

第1引用例に第2引用例を適用したとしても、中心線をはずれた位置にあるユニバーサルジョイントとプロペラシャフトを用いた駆動伝動機構では、スプラインを省略することはできず、かつ、ユニバーサルジョイントは長さ方向に大きな伸縮を要する結果、相当の重量となることが避けられず、スペースも必要とする。

これに対し、本願発明は、ユニバーサルジョイントを曲折の中心に位置させることにより、長さ方向の伸縮が極めて小さくなるから、伸縮機能がわずかしかないユニバーサルジョイントが使用でき、スプラインを省略することができ、これによって、本願発明は、単純な構造とすることができるとともに、スペースの省略を可能としている。

(2)  違和感のないハンドル操作を可能としたこと

第1引用例に第2引用例を適用したとしても、ユニバーサルジョイントは車体フレームの中心線上に来ないから、ハンドル操作によるユニバーサルジョイントの位置の移動があるほか、スプライン嵌合プロペラシャフトとの組み合わせにより、更にヘッドチューブを中心とした慣性モーメントが生じ、ハンドル操作に違和感がもたらされる。

これに対し、本願発明は、ユニバーサルジョイントをヘッドチューブの直下とし、曲折の中心に位置させることにより、上記のとおり42°に及ぶ実用上十分なハンドル操作角を得ることができ、従来と同様、違和感のないハンドル特性を可能とした。

(3)  タイヤの路面に対するグリップを高め、安全性、走行性の向上を可能にしたこと

本願発明のような前後二輪駆動は、悪路において前後輪とも同期的に駆動できることにより、回転力が分散されるので、摩擦力を上回ることが少なくなり、タイヤの路面に対するグリップが高められ、安全性や走行性が向上するとの効果を奏するところ、第1、第2引用例とも前輪又は後輪のみの駆動であり、これらを組み合わせても上記の格別の効果を奏することはできない。

第4  被告の主張の要点

以下のとおり、審決の認定、判断に誤りはなく、原告の取消事由の主張は理由がない。

1  取消事由1について

審決は、本願発明の要旨の認定において、「ヘッドチューブの直下をユニバーサルジョイントを用いて経由して」なる構成を、必須の構成として認定している。

ところで、本願添付の図面によると、ユニバーサルジョイント(9、26)の中間点は、ヘッドチューブ(17)の「厳密な直下」ではなく、該ヘッドチューブの軸線上であることは明らかである。

そして、本願発明の主な効果は、上記のごとくユニバーサルジョイントがヘッドチューブの「軸線上」にあることによって奏されることは、当業者にとって自明であるにもかかわらず、本願発明では、上記図示のごとき唯一の実施例である「軸線上」にある構成を、ヘッドチューブの「直下」と称しているのである。

したがって、本願発明でいう「ヘッドチューブの直下」の意味は、上記図示のものを含む「ヘッドチューブ周辺」ほどの意味合いと解すべきであって、当然に第1引用例の発明も「ヘッドチューブの直下をケーブルワイヤ」を経由して」なる構成を有するものと解すべきである。

よって、審決の第1引用例の認定、したがって、本願発明と第1引用例との相違点の認定に誤りはない。

2  同2、3について

上記1のとおり、本願発明と第1引用例との対比認定に誤りがない以上、第1引用例のものに第2引用例のものを適用して本願発明とすることは、当業者にとって困難なことではなく、また、原告の主張する本願発明の作用効果は、いずれも第1、第2引用例のもの及び従来周知又は慣用の技術手段が奏する効果、あるいは、それらから予測することができる効果以上のものではないので、審決の判断に誤りはない。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する(書証の成立については、いずれも当事者間に争いがない。)。

第6  当裁判所の判断

1  本願発明の要旨が、「クランク軸で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置するユニバーサルジョイントを組み合わせたシャフトに伝達し、さらにヘッドチューブの直下をユニバーサルジョイントを用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」にあることは、当事者間に争いがない。

この要旨に示される「ヘッドチューブの直下をユニバーサルジョイントを用いて経由して」の要件につき、甲第3号証の1、2によれば、補正後の本願明細書には以下の記載があることが認められる。

「二輪駆動にした場合のメリットが、これによる重量増加のデメリットを越えるためには、この動力伝達系を最短の長さにしなければならないが、これを可能とするのがヘッドチューブ直下のユニバーサルジョイントの位置である。ヘッドチューブ直下にユニバーサルジョイントを位置させ、ダウンチューブ付近にも配置すると・・・車体が前輪駆動による反力でたわむことに対して心ずれを吸収し、・・・動力伝達系はフレーム中心線上の位置を得られ、左右の平衡を維持できる。」(甲第3号証の2明細書8頁1~15行)

「ユニバーサルジョイントが、角度をつけて作動すると二次モーメントを発生するが、4度以下だと無視できるほど小さい。ヘッドチューブ直下のこれとヘッドチューブに直角な線とに角度があると、これの一次または二次モーメントによりハンドル29の回りに左右に回転力が発生する。これを小さくするためにユニバーサルジョイントは、その角度の小さいヘッドチューブ直下の位置でなければならず、2個用いる方が二次モーメントが小さいので有利である。」

(同8頁16行~9頁5行)

「以上説明したように、前輪駆動の二輪車または自転車は、実用上十分なハンドル操作角と従来とほぼ同じで違和感のないハンドル特性を得ることができ、前輪を駆動輪とすることができる。これは、ユニバーサルジョンイントをヘッドチューブ直下と必然的に予め曲げた状態になダウンチューブ付近に使用する、動力伝達機構と2つの有意な位置の相乗効果であり、問題解決のための第一歩である。」

(同9頁13~10頁1行)

これらの記載と図面(甲第3号証の1)によれば、上記要件のユニバーサルジョイント(図面第1、第2図において「9」、「26」で示されているユニバーサルジョイント)の設置位置である「ヘッドチューブの直下」とは、ヘッドチューブの軸線上にあって、ヘッドチューブの真下にあることを意味するものと認められる。

2  これに対し、甲第4号証の1によれば、第1引用例には、「ペダルからの足動力をケーブルワイヤをもつて、前車輪に伝動し前車輪を回転して進行する自転車の構造装置」の考案が記載されており、その図面には、ペダルに固定されたスパイラルギヤ1に噛み合ったカンターギヤ2と繋がるケーブルワイヤ3が、ダウンチューブに沿ってヘッドチューブ付近に至り、ヘッドチューブ付近から下方に急角度に彎曲され前車輪右側に設置されたドライブギヤ5に繋がり、このドライブギヤ5が前車輪のコースターに固定された傘歯車5と噛み合って、ペダルからの足動力を前車輪に伝動する自転車の構造が示されていることが認められるが、このケーブルワイヤがヘッドチューブ付近の湾曲部位において、上記認定の本願発明でいう「ヘッドチューブの直下」、すなわち、ヘッドチューブの軸線上にあって、ヘッドチューブの真下を経由するものであることは、明示されていないことが認められる。

かえって、第1引用例の装置の上記構造からすると、ケーブルワイヤ3はドライブギヤ5に繋がり、ドライブギヤ5は前車輪のコースター8に固定された傘歯車6と噛み合うものであるから、ドライブギヤ5は前車輪の右側又は左側に設置されることが必要であり、したがって、ケーブルワイヤ3は、必然的にヘッドチューブの軸線上を外れた前車輪の右側部又は左側部を経由するものであると認められる。甲第4号証の2(第1引用例についての実用新案登録願書添付の明細書及び図面)その他本件全証拠によっても、上記認定を覆すに足りない。

そうすると、審決が、第1引用例には「クランク軸(ペダル7の軸として示されている。)で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置するケーブルワイヤ(ケーブルワイヤ3として示されている。)に伝達し、さらにヘッドチューブ直下をケーブルワイヤを用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」が記載されているとし、本願発明と第1引用例のものとが、「クランク軸で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置する伝動手段に伝達し、さらにヘッドチューブの直下を伝動手段を用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」である点で一致するものと認定したことは誤りというほかはない。

そして、本願発明は、上記の構成によって、審決の認定する<1>ないし<3>の効果(審決書3頁6~18行)を奏するというものであってみれば、審決の上記認定の誤りは、審決の結論を左右するものというべきである

3  被告は、本願明細書の図面によれば、ユニバーサルジョイント(9、28)の中間点は、ヘッドチューブの軸線上にあることが明らかであり、したがって、本願発明における「ヘッドチューブの直下」とは、ヘッドチューブの「厳密な直下」ではなく、ヘッドチューブの「軸線上」を意味し、本願発明の主な効果がこのことによって奏されることは、当業者にとって自明であるから、このようにヘッドチューブの軸線上ではあっても、その「厳密な直下」にないようなものも「直下」に含まれる以上、第1引用例においてもヘッドチューブの「直下」を経由していると認定したことに誤りはないと主張する。

しかしながら、第1引用例の装置におけるケーブルワイヤがヘッドチューブの軸線上であってヘッドチューブの真下を経由する構成を備えているとは認められないこと上記のとおりであるから、被告の主張は失当である。また、本願発明の上記構成が、周知技術に属することないし当業者にとって自明であることについて、被告が具体的に主張立証しないことは、本訴の審理経過に照らして明らかであ。

以上によれば、審決は取消を免れない。

4  よって、原告の本訴請求を理由があるものとして認容し、訴訟費用の負担にっき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 三代川俊一郎 裁判官 木本洋子)

平成2年審判第17212号

審決

札幌市東区北43条東3丁目2-18

請求人 出塚寛孝

昭和57年特許願第222649号「二輪の前輪を駆動する動力伝達機構」拒絶査定に対する審判事件(昭和59年7月2日出願公開、特開昭59-114185)について、次のとおり審決する。

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

理由

Ⅰ.本願の出願日およびその発明の要旨

本願は、昭和57年12月18日に出願されたものであって、平成2年10月21日付け手続補正書により補正された明細書、および平成2年6月14日付け手続補正書により補正された図面の記載から見て、その発明の目的は、「二輪車にタイヤの路面に対するグリップや直進安定性を高め、安全性や走行性を向上させること」(平成2年10月21日付け手続補正書第2頁第18行ないし第20行)であり、特許請求の範囲第1項に記載されたとおりの以下の事項を、その発明の構成に欠くことができない事項としているものである。

「クランク軸で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置するユニバーサルジョイントを組み合わせたシヤフトに伝達し、さらにヘッドチューブの直下をユニバーサルジョイントを用いて経由して 前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」

そして、本願発明は、前記事項をその構成に欠くことができない事項としていることにより、以下の効果を奏する(平成2年10月21日付け手続補正書第9頁第13行ないし第10頁第10行)、というものである。

<1>実用上十分なハンドル操作角と、従来とほぼ同じで違和感のないハンドル特性を得ることができる。

<2>前輪を駆動輪とすることができることによって、前輪の摩擦力を有効に活用して駆動力を発生させることができ、通常の後輪駆動に比較して高低のある悪路では乗り越えることが容易になり、また前輪により車体全体を引っ張ることになり、直進安定性が高められる。

<3>前後輪とも同期的に駆動することができ、その場合には、回転力が分散されるので摩擦力を上回ることが少なくなり、タイヤの路面に対するグリップが高められ、安全性や走行性が向上する。

Ⅱ.引用例に記載された発明

これに対し、原審における査定の理由に引用され、いずれも本願の出願前に国内において頒布された刊行物である実開昭56-8599号公報(以下、第1引用例と称する。)および実開昭49-22640号公報(以下、第2引用例と称する。)には、それぞれ以下のとおりの発明が記載されている。

第1引用例(実開昭56-8599号公報)

「クランク軸(ペダル7の軸として示されている。)で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置するケーブルワイヤ(ケーブルワイヤ3として示されている。)に伝達し、さらにヘッドチューブの直下をケーブルワイヤを用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」

第2引用例(実開昭49-22640号公報)

「クランク軸(符号14により示されている。)で発生した動力を、ユニバーサルジョイント(符号18により示されている。)を組み合わせたシャフト(符号15により示されている)。を経由して駆動輪へ伝達する自転車の動力伝達機構。」

Ⅲ.発明の対比

本願の発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、以下の事項について一致している。

「クランク軸で発生した動力を、フレームパイプのダウンチューブ付近に位置する伝動手段に伝達し、さらにヘッドチューブの直下を伝動手段を用いて経由して前輪へ動力を伝達する二輪車の動力伝達機構。」

しかしながら、両者は、以下の事項については相違している。

[相違点]

本願発明の伝動手段は、ダウンチューブ付近においては「ユニバーサルジョイントを組み合わせたシャフト」であり、ヘッドチューブの直下においては「ユニバーサルジョイント」であるのに対し、第1引用例に記載された発明の伝動手段は「ケーブルワイヤ」であること。

Ⅳ.当審の判断

一般に、非直線経路を経由して回転動力を伝達するための伝動手段として、ユニバーサルジョイント、ユニバーサルジョイントを組み合わせたシャフトおよび可撓性シャフトとしてのケーブルワイヤは、いずれも従来よりごく普通に知られており、そのいずれを採用するかは、伝動手段の使用条件に応じて適宜選択することができるものである。

ところで、第2引用例には、自転車の動力伝達機構において、クランク軸で発生した動力を駆動輪へ伝達するための伝動手段として、ユニバーサルジョイントを組み合わせたシヤフトを採用したものが記載されているから、当業者であれば、第2引用例の記載を参酌することによって、第1引用例に記載された発明において、ケーブルワイヤに代えて、本願発明のようにユニバーサルジョイントおよびユニバーサルジョイントを組み合わせたシヤフトを採用することは、容易に推考することができることと言わなければならない。

そして、本願発明の効果は、第1引用例および第2引用例にそれぞれ記載された各発明から予測することができる効果の総和を超えたものであるとも言い難い。

以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が第1引用例および第2引用例に記載ざれた発明に基づいて容易に発明をすることができたものである、と言わざるをえない。

[まとめ]

したがって、原審の判断は正当であって、特許法第29条第2項の規定により、本願発明については特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

平成4年2月19日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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