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東京高等裁判所 平成2年(ラ)174号 決定 1990年4月10日

抗告人(債権者)

濱名忠三

右抗告人代理人弁護士

伊藤博

松江頼篤

右抗告人復代理人弁護士

谷眞人

相手方(債務者)

株式会社山仁

右代表者代表取締役

山田仁吉

相手方(債務者)

八千代信用金庫

右代表者代表理事

新納太郎

主文

一  原決定を取り消す。

二  相手方株式会社山仁は、別紙根抵当権目録記載の根抵当権の滌除の手続を続行してはならない。

三  相手方八千代信用金庫は、前項の根抵当権を実行してはならない。

理由

一本件抗告の趣旨は、主文同旨の裁判を求めるというにあり、その理由は、別紙抗告理由書及び補充書記載のとおりである。

二当裁判所の判断

1  本件記録によれば、抗告人は、別紙根抵当権目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)を所有し、相手方八千代信用金庫(以下「相手方金庫」という。)に対して、同目録記載の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)を設定し、抗告人及び同人が代表取締役をしている有限会社濱名硝子店が同金庫から極度額四億一五〇〇万円の与信を有するうち、右会社が平成二年四月三日現在三億一五八〇万円の融資をうけていること、相手方株式会社山仁(以下「相手方山仁」という。)との間で本件不動産の所有権の帰属について係争中であること、それにも係わらず、相手方山仁は、本件不動産の第三取得者であるとして同金庫に対し、平成二年三月六日付をもって本件根抵当権を指定金額一億円で滌除する旨を通知してきたこと、そこで、相手方金庫は、同山仁に対し、同年四月五日付で増価競売の請求を行い、そしてこれに伴い、抗告人に対して本件根抵当権を実行せざるを得ない立場におかれていること、以上の事実が一応認められる。

2  そうすると、本件不動産の所有者であり、かつ、相手方金庫から今後引き続き円滑な融資を受けなければならない抗告人としては、相手方山仁のこれ以上の不当な滌除権行使を防止すべき立場にあるところ、本件不動産の係争から窺われるこれまでの相手方山仁の抗告人に対する行動からみて同山仁は同金庫に対する滌除の手続を強行するおそれがあり、その続行を差し止める必要があるものと認められる。また、第三取得者の滌除権の行使とこれに対する抵当権者の対抗手段としての増価競売の請求及び競売の申立ては、相互に関連しながら進行していくものであり、その手続が進行し本件不動産の競売が行われると、抗告人は本件不動産の所有権を喪失することになるものであるから、抗告人としては、このような相互に関連する一連の手続を停止させるため、相手方ら双方の行為を差止める必要があるものというべきであり、従って、抗告人は、相手方山仁に対し本件根抵当権の滌除手続の続行の差止め及び相手方金庫に対し本件根抵当権実行の差止めをそれぞれ求めることができるものというべきであって、本件仮処分申請には、被保全権利も保全の必要もこれを認めることができるものといわなければならず、本件抗告は、理由がある。

3  よって、原決定を取り消し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官宍戸達徳 裁判官澤田三知夫 裁判官板垣千里)

別紙保証目録<省略>

別紙抗告の理由<省略>

別紙抗告理由補充書<省略>

別紙根抵当権目録<省略>

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