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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)99号 判決 1999年11月17日

原告

株式会社カプコン

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

【C】

【D】

被告

丸井産業株式会社

代表者代表取締役

【E】

訴訟代理人弁護士

古城春実

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成10年審判第30126号事件について、平成11年2月19日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

被告は、「ロックマン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表(以下「旧別表」という。)第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品とする登録第1657913号商標(昭和55年8月12日登録出願、昭和58年4月30日出願公告、昭和59年2月23日設定登録、平成6年1月28日存続期間更新登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、平成10年2月12日、被告を審判被請求人として、本件商標につき、指定商品中の「金具」について不使用に基づく登録取消の審判の請求をし、その予告登録が同年3月11日になされた。

特許庁は、同請求を平成10年審判第30126号事件として審理したうえ、平成11年2月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年3月10日に原告に送達された。

2  審決の理由の要点

審決は、別添審決書写し記載のとおり、被請求人(被告)が、本件商標と社会通念上同一と認められる「ロックマンボルト」又は「ロックマン ボルト」との商標を商品「ボルト」について使用していたものと認められ、本件商標が、被請求人により、継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中「ボルト」について使用されていたものであるから、本件商標は、商標法50条の規定により、請求に係る指定商品についてその登録を取り消すべき限りでないとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

1  審決は、被告が「ボルト」であるとして示した商品が指定商品「金具」の範疇に属するものと誤認した(取消事由)結果、本件商標が、被告により、継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中「ボルト」について使用されていたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

2  取消事由

審決は、「登録商標の使用説明書」(審決乙第1号証、本訴甲第3号証)に示された商品(以下「本件商品」という。)が仮設構造物組立金具に使用される「ボルト」であって、「ロックマンボルト」と表示され、単独で販売されていなかったものとはいい得ず、該「ボルト」(本件商品)は、指定商品「金具」の範疇に属する商品であると認めざるを得ない(審決書6頁12~23行)としたが、それは誤りである。

すなわち、旧別表第13類の「金具(他の類に属するものを除く。)」とは、特許庁商標課編「商品区分解説」(乙第1号証)にもあるように、「それ自体単独で使用されるのでなく、何かに取り付ける性質の金属製品」であり(但し、他の類に属するものは除外される。)、汎用的性格を有するものである。

しかるところ、「登録商標の使用説明書」(甲第3号証)添付の「ロックマンH1型」カタログに表示された「ロックマンH1型」は、該カタログ表紙の写真が示すとおり、明らかに、重仮設構造物の組立に使用する一対のボルトを備えたクランプ装置である。そして、「ロックマンボルト」と表示された本件商品は、該クランプ装置の専用部品であるにすぎず、上記の意義における「金具」とは、販売経路、取引者・需要者、用途を異にし、商品として全く異なるものである。

なお、審決は、本件商品が単独で販売されていなかったものとはいい得ないとするが、たとえ、単独で販売されていたとしても、それは、クランプ装置の専用部品の販売であるにすぎず、本件商品がクランプ装置の専用部品であることを左右するものではない。

第4  被告の反論の要点

1  審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。

2  取消事由について

「登録商標の使用説明書」(甲第3号証)に記載された本件商品は、「ボルト」であって、旧別表第13類の「金具」に属する商品である(平成3年通産省令第70号による改正前の商標法施行規則別表第13類。なお、「ボルト」は、同表の第13類以外の類には具体的に記載されていないから、旧別表第13類の「金具」に係る「他の類に属するものを除く」との括弧書きには該当しない。)。

原告は、本件商品がクランプ装置の専用部品であるから旧別表第13類の「金具」に属さないと主張するが、誤りである。

すなわち、原告の指摘する特許庁商標課編「商品区分解説」(乙第1号証)にあるように、旧別表第13類の「金具」とは、「それ自体単独で使用されるのでなく、何かに取り付ける性質の金属製品」であるところ、本件商品は、クランプ本体に取り付けて使用する金属製品であり、まさに金具に該当する。また、審決の認定するとおり、本件商品は単独で販売されるものであるから、それ自体1個の商品(金具)なのであって、このことは、ボルトが特定のクランプ装置に取り付けて使用するに適した寸法、形状であるか否かによって影響を受けるものではない。

したがって、本件商品が指定商品「金具」の範疇に属する商品であるとした審決の判断に何ら誤りはない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由について

「登録商標の使用説明書」(甲第3号証)添付の「建設パーツ総合カタログ№2」、「ロックマンH1型」カタログ及び「ロックマン使用上の注意」によれば、被告の商品「ロックマンH1型」は、互いに対向する一対のボルトを備えたクランプ装置であって、土木・建築現場において各種仮設構造物を組み立てる際に、先端を特殊加工した高張力ボルトで、仮設鋼材同士を締め付けて接合するための仮設構造物組立金具であること、本件商品(「ロックマンボルト」と表示されたもの)は、「ロックマンH1型」に備えられた高張力ボルトであり、専らそのクランプ本体に取り付けて使用するものであることが認められ、さらに、「ロックマンH1型」カタログ2丁目に「ロックマンにとってこのロックマンボルトが生命です。このボルトによってより強固な締付けができ、安全且つ迅速な作業性を得ることができます。」との記載があることに照らせば、本件商品は、「ロックマンH1型」の機能の中心的な要素であることが、また、「ロックマン使用上の注意」に「ロックマンを一工事使用後は、各部を十分点検し、ロックマンボルトには防錆油を注油して屋内に保管して下さい。」、及び「使用前には、・・・ロックマンボルトの先端破損の有無を確認し、破損の場合はボルトを交換して下さい。」との各記載があること、並びに前掲「登録商標の使用説明書」(甲第3号証)添付の「本社在庫表」に、「ロックマンH1型」とは別に、「ロックマン ボルト」自体の入出荷数量等の記載があることに照らせば、「ロックマンH1型」は複数回の仮設構造物組立に繰り返して使用できるものであって、数次の使用等により本件商品が破損した場合にはこれを新たなものと交換する必要があるため、本件商品は単独でも販売されていることが認められる。

しかして、原告は、本件商品がクランプ装置(ロックマンH1型)の専用部品であって、旧別表第13類の「金具」に属さないと主張するところ、本件商品がクランプ本体とともに「ロックマンH1型」を構成するものであることは前示のとおりである。そして、本件商品自体が、前示のとおり、高張力ボルトであり、平成3年通産省令第70号による改正前の商標法施行規則別表第13類において、ボルトが旧別表第13類の「金具」に属する商品として区分されているとはいえ、一般に、ボルトが締付け金具であることから、ある商品を構成する1要素であるボルトが、例えば、当該商品自体を組み立てるために、その部材同士を締め付けて接合しているにすぎない場合などのように、ボルトが、他の商品との関係で独立した商品としての性質を失い、他の商品の単なる1部品に止まる場合も想定することができる。

そこで、本件商品について、この点を見るに、本件商品は、「ロックマンH1型」を組み立てるために使用されているものではなく、前示のとおり、クランプ本体に取り付けたうえ、ボルト本来の締付け作用によって、仮設構造物組立金具である「ロックマンH1型」の機能の中心部分を担うものであり、しかも、1個の「ロックマンH1型」に対し、本件商品は破損等により交換され、順次新たなものが取り付けられることが予定されているのであるから、本件商品は、「ロックマンH1型」ないしそのクランプ本体との関係で、独立した商品としての性格を失った単なる1部品であるということはできない。そして、そうであれば、単独で販売されている本件商品は、「ロックマンH1型」のクランプ本体に取り付けられる性質を有する金属製品たる独立の商品として、旧別表第13類の「金具」の範疇に属する「ボルト」であるものというべきである。この場合に、本件商品が専ら「ロックマンH1型」のクランプ本体に取り付けて使用するものであって、それに適合した規格を備えており、他の用途には通常用いられないとの意味で汎用性がないとしても、そのことは、本件商品が旧別表第13類の「金具」のうちの「ボルト」に該当することを妨げるものではない。なお、甲第5号証によっても、旧別表第13類の「金具」に該当するために、そのような汎用性が要求されるものと認めることはできない。

したがって、本件商品が指定商品「金具」の範疇に属する商品であるとした審決の判断に原告主張の誤りはない。

3  以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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