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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)66号 判決 1998年12月22日

千葉県市川市市川4丁目2番10号

原告

株式会社バイオ技研

代表者代表取締役

松沼英雄

訴訟代理人弁理士

廣瀬哲夫

岡村憲佑

オランダ国

ロッテルダム 3013 エーエル ヴェーナ455番

被告

ユニリバー エヌヴイ

代表者

ジーエスピー ヴォス

エージェー モンスマ

訴訟代理人弁理士

浅村皓

浅村肇

小池恒明

新田藤七郎

岩井秀生

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

特許庁が平成8年審判第1132号事件について平成10年1月13日にした審決中、商標登録第2029855号商標の指定商品中「薬剤」についての登録を取り消するとの部分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  請求の趣旨にする答弁

主文と同旨

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、「バイオファーム」の文字を横書きしてなり、指定商品を商品の区分(平成3年9月25日政令第299号による改正前の商標法施行令による商品の区分。以下同じ。)第1類「防カビ剤、その他本類に属する商品」とする商標登録第2029855号商標(昭和60年12月18日出願、昭和62年7月22日公告、昭和63年3月30日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。原告は、平成8年1月29日、被告から、本件商標登録の取消審判の請求を受け、平成8年審判第1132号事件として審理された結果、平成10年1月13日に「登録第2029855号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録を取り消す。その余の指定商品についての審判請求は、却下する。」との審決を受け、平成10年2月4日にその謄本の送達を受けた。

2  審決の理由

審決の内容は、別添審決書の理由の写しのとおりである3 審決を取り消ずべき事由

審決の理由中、1(本件商標の構成、指定商品、商標登録出願日等)、2(請求人(被告)の主暖)、3(被請求人(原告)の主張)は認める。

審決は、原告が本件商標を使用しているとする「抗菌、防かび剤」は、不織布等に抗菌、抗かび加工するために用いられる「化学剤」の一種であって、「薬剤」中の公衆衛生用票剤に含まれる「殺菌剤」等とは、その取引系統、用途、目的等を全く異にする商品であると認定し、その結果、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、指定商品中「薬剤」について使用されていたものということはできず、本件商標の登録は、商標法50条1項の規定により指定商品中「薬剤」について取り消すべきものと判断したが、上記認定判断は、誤りであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  原告が本件商標を使用している商品(以下「本件商品」という。)は、抗菌剤であって、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」に当たる。

すなわち、本件商品は、繊維に対して抗菌機能を付与することを目的として使用されているものである。上記抗菌機能を付与された繊維は、「抗菌防臭繊維」、つまり、「繊維に抗菌剤を付着させるなど、特殊な加工を施し、細菌の増殖を抑え、・・・防汚性を備えた繊維」(甲第9号証。株式会社集英社発行の「imidas1993年版」1011頁)に該当するものであって、例えば、「衣料抗菌」とか「繊維抗菌」というような公衆衛生上の用途目的のために使用される抗菌剤である。

一方、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」とは、水稲殺菌、園芸殺菌等農業用に使用される殺菌剤及び水道殺菌、衣料殺菌、器具殺菌等公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤を意味するものであり、農業用及び公衆衛生用のすべての殺菌剤を含むものである。そして、公衆衛生用薬剤の殺菌剤は、<1>直接殺菌剤、<2>保護殺菌剤、<3>浸透殺菌剤、<4>抗菌剤の4つに分類されるものである(甲第7号証。「現代商品大事典・新商品版」)。

また、「農業用抗菌製剤」は、特許庁における審査において、農業用薬剤に含まれるものとして、殺菌剤と同様に「薬剤」た属する商品として取り扱われているのが現状である(甲第8号証の1及び2。商標公報)。

したがって、本件商品は、単なる「化学剤」としての加工処理剤ではなく、抗菌性のある薬剤であって、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」に当たるものである。

(2)  被告は、本件商品が、厚生省の製造認可を受けた薬品でないことを、商品の区分第1類の「薬剤」に当たらない理由の一つとしているが、本件商品のように人体に直接投与せず、繊維に付与することを目的とする商品は、厚生省の製造認可を必要としない薬剤に当たるものである。

第3  請求の原因に対する認否及び主張

1  請求の原因1及び2は認め、同3は争う。審決の判断は、正当であって、取り消されるべき事由はない。

2  被告の主張

(1)  「殺菌」とは、「細菌をはじめとする微生物、特に病原菌を死滅させること」とされ、「殺菌剤」とは、「殺菌に用いる薬剤の総称」とされていることからすれば(乙第5号証。小学館発行「大辞泉」)、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」は、主として、薬事法にいう「医薬品」の「人又は動物の疾病の診断、治療、又は予防に使用されることが目的とされている物」、あるいは、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」という要件を具備するものを指称するものということができる。

ところが、本件商品は、繊維に対して所定の機能を付与することを目的とする物であって、人又は物に対して使用されたり、あるいは、人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことを目的とする物ではなく、本件商品は、バイ菌やダニを寄せ付けないというだけであって、病原菌を死滅させるものではない。しかも、厚生省の製造認可を受けた薬品でもない。

また、本件商品は、公衆衛生用薬剤とは、取引系統が異なっている。

したがって、本件商品は、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」には当たらない。

(2)  本件商品は、「防かび剤」の一種でもあるところ、「防かび剤」は、商品の区分第1類「化学品」の小分類の四の「化学剤」に例示列挙されており(乙第1号証)、したがって、繊維に対して事後的の抗菌及び防かび加工処理を施すための化学的製品である本件商品は、「化学品」の一群である「化学剤」の範疇に属するものであって、「薬剤」の範疇に属するものとはいえない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、2(審決の理由)は当事者間に争いがない。

第2  審決を取り消すべき事由について判断する。

1  本件商標が、「バイオファーム」の文字を横書きしてなり、指定商品を商品の区分第1類の「防カビ剤、その他本類に属する商品」とする登録商標であることは、当事者間に争いがない。

2  甲第4号証、甲第5号証及び甲第10号証の1及び2によれば、本件商品である「バイオファーム」は、不織布等に練り込んで使用する不織布用抗菌・抗カビ剤であり、上記不織布用抗菌・抗カビ剤を練り込んだ不織布用ファイバーを「バイオファームファイバー」と称していること、本件商品は、ばい菌、ダニを寄せ付けず、抗菌、防カビ、防ダニ、防臭の作用を有する商品として取引されていることが認められる。

3  原告は、本件商品は、抗菌剤であって、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」に当たる旨主張するので、検討する。

(1)  平成3年5月2日法律第65号による改正前の商標法6条1項は、「商標登録出願は、政令で定める商品の区分内において、商標の使用をする1又は2以上の商品を指定して、商標ごとにしなければならない。」と規定し、上記規定にいう政令である同年9月25日政令第299号による改正前の商標法施行令1条は、「商標法第6条第1項の政令で定める商品の区分は、別表のとおりとする。」と規定し、別表は、第1類に属するものとして、「化学品(他の類に属するものを除く。)」、「薬剤」、医薬補助品」を掲げている。そして、当時施行されていた同年10月31日通商産業省令第70号による改正前の商標法施行規則3条は、「商標法施行令(昭和35年政令第19号)1条の規定による商品の区分に属すべき商品は、別表のとおりとする。」と定め、別表によると、商品の区分第1類の「化学品(他の類に属するものを除く。)」は、「無機工業薬品」、「有機工業薬品」、「界面活性剤」、「化学剤」等に区分されており、また、上記「化学剤(他の類に属するものを除く。)」に属する商品として、「漂白剤」、「つや消し剤」、「剥離剤」、「皮革処理剤」等51の具体的な商品が例示列挙されている。

一方、商品の区分第1類の「薬剤」は、「中すう神経系用薬剤」、「末しょう神経系用薬剤」、「感覚器官用薬剤」等30の商品に区分されている。

ところで、乙第2号証(昭和55年4月7日発行の特許庁商標課編「商品区分解説」)によれば、商品の区分第1類の「薬剤」に属するものとして区分されている30種類の薬剤は、いずれも、薬事法2条1項、2項に定義する医薬品、医薬部外品に該当する薬品、あるいは農薬であることが認められる。

(2)  そこで、検討するに、上記認定事実によれば、まず、商品の区分第1類の「薬剤」は、化学的な商品のうち、「化学品(他の類に属するものを除く。)」、「医薬補助品」を除いたものであること、また、具体的な商品として「中すう神経系用薬剤」、「末しょう神経系用薬剤」、「感覚器官用薬剤」等といった用途又は効能によって区別されていることが認められる。

次に、上記認定事実によれば、商品の区分第1類の「化学剤」は、本来的には、無機又は有機の工業薬品であるのに、商品の区分上、「無機工業薬品」、「有機工業薬品」と同列に区分されており、かつ、具体的な商品として「漂白剤」、「つや消し剤」、「剥離剤」、「皮革処理剤」等といった用途又は効能によって区別される商品が例示列挙されており、そうすると、上記「化学剤」は、無機又は有機の工業薬品のうち、用途又は効能の面に着目して、商品の区分の一分類としたものと解される。なお、用途の面に着目している「界面活性剤」と区別されているので、「化学剤」が、界面活性の用途の薬品を除外していることは自明である。

以上のとおり、商品の区分第1類の「薬剤」は、化学的な商品であり、用途又は効能の面に着目したものでありながら、同じく用途又は効能の面に着目している「化学剤」とは区別されていること、また、「薬剤」の種類として掲げられている商品は、いずれも、薬事法にいう医薬品、医薬部外品に該当する薬品、あるいは農薬であること、更に、「薬剤」は、「医薬補助品」とも区別されていることを総合すると、商品の区分第1類の「薬剤」とは、取引者、需要者の間で、医薬品、医薬部外品、農薬として取り扱われて取引の対象となっている薬品を意味するものと解するのが相当である。

(3)  そこで、これを本件についてみるに、本件全証拠によっても、原告が、厚生大臣から医薬品又は医薬部外品の製造業の許可を受けていることを窺わせるものはなく、また、前記2認定のとおり、本件商品は、抗菌、防カビ、防ダニ、防臭の用途に用いられるものであるが、原告が同商品について薬事法の医薬品又は医薬部外品として製造の承認を受けたことを窺わせる証拠はなく、更に、本件商品が、医薬品、医薬部外品として取り扱われて取引されていることを窺わせる証拠もない。

そうすると、本件商品は、無機又は有機の工業薬品であり、抗菌、防カビ、防ダニ、防臭の用途に用いられるものであるから、商品の区分第1類の「化学剤」に属するものであって、商品の区分第1類の「薬剤」に属するものではないものというべきである。

4  原告は、商品の区分第1類の「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」には、「抗菌剤」も含まれているとして、本件商品は抗菌性のある薬剤である旨主張する。しかしながら、仮に原告主張のとおり、「殺菌剤」に「抗菌剤」か含まれるとしても、本件商品は、前記認定のとおり、商標注の商品の区分上、第1類の「薬剤」に当たらないのであるから、原告の主張は、失当というほかはない。

また、原告は、本件商品のように人体に直接投与せず、繊維に付与することを目的とする商品は、厚生省の製造認可を必要としない薬剤に当たるものである旨主張するが、前記認定判断に照らせば、上記原告の主張も、採用することができないことは明らかである。

5  以上によれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、指定商品中「薬剤」について使用していたものということはできず、本件商標の登録は、商標法50条1項の規定により指定商品中「薬剤」について取り消すべきものとした審決の判断は、正当である。

第3  よって、審決には原告主張の違法はなく、その取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成10年11月12日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 春日民雄 裁判官 宍戸充)

結論

登録第2029855号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録を取り消す、その余の指定商品についての審判請求は、却下する。

審判請求書の費用は、これを二分し、その一を被請求人の負担とし、その余の一を請求人の負担とする。

理由

1.本件登録第2029855号商標(以下「本件商標」という。)は、「バイオファーム」の文字を横書きしてなり、第1類「防カビ剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和60年12月18日登録出願、同63年3月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2.請求人は、「本件商標の指定商品中『薬剤、医療補助品』について登録を取消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第6号証を提出している。

(1) 本件商標は、継続して3年以上「薬剤、医療補助品」について使用されていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、上記指定商品につきその登録を取り消されるべきである。

一方請求人は、同書・同大のローマ字にて左横書きに「BIOFERM」と書した商標を、第5類「薬剤」を指定商品として平成6年7月7日付けで登録出願したところ(商願平6-20086)、本件商標と抵触するという理由で平成7年10月27日付け拒絶理由通知が発送されたので、請求人は本件商標の指定商品中「薬剤、医療補助品」についてその登録を取り消すことについて、重大な利害関係を有するものである。

(2) 請求人は、指定商品「医療補助品」について取消を要求する利害関係がない、との被請求人による指摘については、争わない。

また請求人は、本件商標の実際の使用者が被請求人自身による他、株式会社千代田屋及び東邦化学工業株式会社等であることは、答弁書に添付された契約書をはじめとする取引書類の写しにより立証されたものと考えるが、本件商標が請求に係る指定商品「薬剤」について使用されているかの点では、大いに疑義を持つものである。

(3) 手元の国語辞典によれば、「殺菌」とは『細菌をはじめとする微生物、特に病原菌を死滅させること』とあり、「殺菌剤」とは『殺菌に用いる薬剤の総称』とある(甲第3号証)。

本件商標の登録出願時に適用された先の「商品区分」に基づく類似商品審査基準によれば、「殺菌剤」は第1類の「薬剤」の小分類の第30番目の項「農業用又は公衆衛生用薬剤」の一つとして列挙してある(甲第4号証)。ちなみに、平成4年4月1日より施行の「商品及び役務の区分」に基づく類似商品・役務審査基準の新第5類でも同様に、「殺菌剤」は「薬剤」の項の第30番目に列挙してある(甲第5号証)。この「殺菌剤」には、人間の体に直接つけて菌を殺す「外皮用薬剤」は除外され、農業用・公衆衛生を目的として用いられる殺菌剤が該当する。

一方、「抗菌剤」の「抗菌」とは、先の辞書によれば『抗生物質のもつ細菌の発育や増殖を阻止する性質』とあり、菌等を死滅せしめる殺菌より弱い作用と見受けられる。

被請求人は使用中の商品について答弁書内で自ら「抗菌剤」と言及し、具体的には「商品名『バイオファーム』品番『BF-545』なる商品を繊維に後加工して抗菌、防かび性のある繊維にして販売」云々と述べているが、ここで使用されている商品は用途・性質からいって上記殺菌剤とは明らかに別ものといえる。

第1類の化学剤とは、化学的製品を用途的にとらえたものであり、薬剤や、他の類の用途、例えば染料・顔料・せっけん類、香料類等に使用される場合を除いたものと解釈される(甲第6号証)。本品は繊維を事後的に抗菌加工処理する化学的製品と理解され、「薬剤」ではなく「化学品」の一群である「化学剤」の範疇に属するとするのが相当である。

(4) また、被請求人が使用している「防かび剤」の旧商品区分・現行商品区分内での帰属先か「化学品」であることは、更に明白である。「防かび剤」は先の商品区分第1類化学品の小分類の四「化学剤」の例示列挙の一つとして明記されているほか(甲第4号証)、新商品区分第1類でもこれを踏襲した考え方に基づき、第1類「化学品」の項第27番目の「化学剤」内に例示列挙されている(甲第5号証)。

(5) このように、被請求人の答弁の内容からは、取消に係る商標が、継続して3年以上日本国内において商標権者・使用権者のいずれかにより使用されたことは認められるものの、その請求にかかる指定商品(本件の場合は「薬剤」)についての立証とはいえないため、商標権者はその請求に係る指定商品に係る商標登録の取消を免れない。

3.被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。

(1) 本件商標は、商公昭64-8804(商標登録第2181590号として設定登録)との連合商標の関係になっていることは乙第1号証の1及び乙第1号証の2として提出する公告公報の記載並びに甲第2号証の記載から明らかである。いずれにしろ、本件商標は、連合関係にある少なくとも一方の登録商標が、請求の登録前3年以内に1度でも使用されてれば取消を免れるものである。因みに、被請求人は、乙第2号証として提出する被請求人の登記簿謄本の写しから明らかなように、本店を、平成7年1月18日付けで千葉県市川市4丁目2番10号に移転しているが、営業活動については「東京都千代田区岩本町1-4-7」に所在の支店で行っている。

(2)請求人の利害関係の有無について

請求人が利害関係の根拠としている商願平6-20086の登録出願は、その願書の写し(甲第1号証)の記載から判断して指定商品を「薬剤」とのみ記載したものであると認められる。

そこで被請求人は、請求人が指定商品「薬剤」について取消し審判を請求することに利害関係があることは認めるが、甲第1号証の願書の写しに記載がない「医療補助品」は商願平6-20086の登録出願の指定商品ではなく、利害関係があるとは認められない。

(3)指定商品「薬剤」での使用

<1>本件商標は、乙第5号証乃至乙第9号証に示す証拠から明らかなように、指定商品「薬剤」のうちの「抗菌剤、防カビ剤」について使用されている。つまり被請求人若しくは通常使用権者は、「薬剤」である「抗菌剤、防カビ剤」について商品名を「バイオファーム」若しくは「BIOPHARM」と称して本件審判の請求前3年間のあいだ何度も販売することで使用している事実があり、これらのいくつかについて、以下、証拠と共に立証する。

ところで、被請求人が販売する「抗菌剤、防カビ剤」は、薬剤において一般であるように不定形であるが故に、これを袋詰めや缶詰め等の詰物にして販売していることを予め申し述べておく。

<2>まず、乙第5号証で示すカタログは、被請求人が提供するものであるが、このもののなかには「BIOPHARM」、「バイオファーム」及び「バイオファーム加工」なる文言が明らかにあるが、特に表紙を第1頁としたときに第6、7頁では「抗菌」、「防カビ」、「防ダニ」及び「防臭」との記載が、「BIOPHARM」、「バイオファーム」及び「バイオファーム加工」なる記載と共にあり、ここからこれら商標を付した商品は「抗菌」、「防カビ」、「防ダニ」及び「防臭」の効能があるものと判断できる。

なお、乙第5号証のカタログは印刷年月日の明示はないが、前述の乙第2号証の本店移転前の住所が最終頁に記載されていることから、当該移転前に印刷されたものであると認められる。そしてこのものは現在も使用している。

さらに乙第2号証の目的1の項において、被請求人は「バイオテクノロジーを応用した抗菌、抗カビ材の製品化に関する開発および製品の製造販売」を目的にしていることが認められる。

<3>次に乙第6号証の1において、被請求人が、株式会社千代田に「抗菌、防かび剤」を商品名「バイオファーム」とし、そのうちの品番「BF-233、226」について平成5年5月以降、今日に至るまで継続的に販売供給していることが確認される。

また、乙第6号証の2として被請求人と株式会社千代田とのあいだに取り交わした契約書の写しを提出するが、その第1条(定義)の項で「バイオファーム」は「バイオ(株式会社バイオ技研の略称であることは冒頭記載から明らか)が開発した一連の不織布用抗菌・防カビ剤『バイオファーム』シリーズをいう。」旨の記載があり、ここから「バイオファーム」とされる商品は不織布用の「抗菌・防カど剤」であることが明らかである。

そして乙第6号証の3にあるように平成7年10月17日付けの納品書において実際に該当品番の商品が取引されていることが証明される。また乙第6号証の1において確認された写真に写されている袋に被請求人である「バイオ技研」のレッテルが貼付されていることが確認できるが、ここに小さく「バイオファーム」の文字があることが認められる。斯るレッテルと同じものを乙第6号証の4として提出する。

これらによって、薬剤である「抗菌、防かび剤」について、商品名を「バイオファーム」と称して取引されていることが立証され、本件審判の請求の登録前3年以内に薬剤の一つである「抗菌、防かび剤」について「バイオファーム」が使用された事実があると認められる。

<4>次に、乙第7号証の1において、被請求人が、東邦化学工業株式会社に「抗菌、防かび剤」を商品名「バイオファーム」とし、そのうちの品番「BF-913」について平成5年5月以降、今日に至るまで継続的に販売供給していることが確認されている。

そして乙第7号証の2には、東邦化学工業株式会社に販売する際の商社である西澤株式会社が、品番「BF-913」の商品を平成6年3月24日に川口薬品株式会社の志村工場に出荷することを被請求人に対し平成6年3月7日付けの契約書で注文し、それに対応すべく被請求人では、乙第7号証の3にあるように同年同月22日に納品書を作成すると共に、これを乙第7号証の4にあるようにトナミ運輸に発送依頼をし、乙第7号証の5にあるように同年同月23日付けの物品受領書により、受領されたことが確認されている。また乙第7号証の1において確認された写真に写されている袋には、被請求人である「バイオ技研」のレッテルが貼付されていることが認められ。ここに小さく「BIOPHARM」の文字があることが確認されるが、斯るレッテルと同じものを乙第7号証の6として提出する。これらによって、「抗菌、防かび剤」について商品名を「BIOPHARM」と称して取引されていることが立証され、ここにおいても、本件審判の請求の登録前3年以内に薬剤の一つである「抗菌、防かび剤」について商品名を「BIOPHARM」が使用された事実があることが認められる。

<5>ところで東邦化学工業株式会社は、商品名を「BIOPHARM」品番「BF-913」なる商品を、商品名「バイオファーム」品番「BF-545」の商品に加工して販売するメーカーで、川口薬品株式会社は、東邦化学工業株式会社から依頼を受けて実際に加工ずるメーカーである。従って、被請求人は、商品名「バイオフアーム」品番「BF-545」の商品を購入し、さらにこれを販売するという事例がある。

まず乙第8号証の1において被請求人が、株式会社富士セイセンに「抗菌、防かび剤」を商品名「バイオファーム」とし、そのうちの品番「BF-545」について平成5年5月以降、今日に至るまで、継続的に販売供給していることが確認されている。

そして当該商品について、乙第8号証の2は平成8年5月1日付けの納品書、乙第8号証の3は当該商品の輸送を富岳通運株式会社に依頼した依頼書であり、前記乙第6号証及び同第7号証の場合と同様、取引されたことが実証されるが、乙第8号証の4の平成6年3月7日付けの連絡書によると東邦化学工業株式会社ではロット番号E-03の「BF-545」2トンを平成6年4月8日に生産することが記載され、これを受けるようにして乙第8号証の5の平成6年4月11日付けの連絡書によると4月9日付けでロット番号E-03の「BF-545」を2トン製造し、追浜倉庫に入庫した旨の連絡があり、実際に製造されていることが立証される。

さらに乙第8号証の4には「ラベル120枚」送付してくれの記載がある。この「ラベル」は、乙第8号証の1の写真に写されている缶に貼付の「ラベル」のことを意味し、これと同じものを乙第8号証の6として提出する。

そしてここには図案化された「バイオファーム」の商標が記載されており、これらのことから、「バイオファーム」が使用されている事実が立証される。因みに、株式会社富士セイセンは、商品名「バイオファーム」品番「BF-545」なる商品を繊維に後加工して「抗菌、防かび剤」性のある繊維にして販売するメーカーで、この様に加工されたものを「バイオファーム加工」と称して使用することを被請求人は許諾している。

<6>さらに乙第9号証の1から同号証の2においてもイーストライズ株式会社とのあいだで取引された事実があることを立証できる。つまりこれらの証拠ではイーストライズ株式会社は、被請求人から抗菌、防かび剤である「バイオファーム」、品番「BF-421」を継続的に販売供給されていることが確認されると共に、そのことが納品書によって立証される。

(4)これら証拠から明かなように、被請求人は、本件審判の請求が登録される前3年の間に、指定商品「薬剤」の一つである「抗菌、防かび剤」について「バイオファーム」または「BIOPHARM」と称して使用している事実があり、また指定商品の「医療補助品」については請求することの利害関係がない。

(5)請求人は、被請求人が販売する「抗菌剤」は指定商品中の「薬剤」に該当しない旨、主張しているが、斯る主張は、つぎに述べる理由から明らかなように全く失当である。

<1>請求人が提出した甲第3号誰を見ると「抗菌性」について「抗生物質のもつ、細菌の発育や増殖を阻止する性質。」と意味付けされ、「抗菌性物質」については「抗性物質」を参照するように記載されている。つまり甲第3号証からは「抗菌性物質」が、指定商品「薬剤」に含まれる「抗性物質製剤」であることが意図される。

さらに被請求人は、被請求人の手元にある普通の国語辞典で「抗菌」若しくは「抗菌性」という文言について調べてみたところ、つぎのようであった。

まず「大辞林」(1988年11月3日株式会社三省堂発行)の814頁(乙第10号証の1)には「抗菌性」について「細菌、特に病原菌の増殖を阻止する物質」と意味付けされ、「抗菌性物質」について「抗菌性を持つ物質。抗生物質やサルファ剤」と意味付げされている。

また「広辞苑第4版」(1991年11月15日株式会社岩波書店発行)の第856頁(乙第10号証の2)には「抗菌性」について「抗生物質などの薬剤が細菌の発育を阻止する性質」と意味付けされ、「抗菌性物質」について「抗生物質に同じ」と意味付けされている。ここには「抗生物質などの薬剤」とまで明記されていることは極めて意味深いものである。

さらに「新選国語辞典第4版」(1994年1月1日株式会社小学館発行)の第381頁(乙第10号証の3)には「抗菌」について「有害な細菌のふえるのを防ぐこと。」と意味付けされ、「抗菌性物質」について「抗菌力をもつ物質。ペニシリンなど。」と意味付けされている。

つまり、請求人が提出した甲第3号証並びに被請求人の手元にある各国語辞典の記載から「抗菌性物質」は抗生物質、サルファ剤等の薬剤であり、本件商標の指定商品中の「薬剤」にそのまま該当するものである。

ここで請求人は「抗菌性」、「抗菌性物質」と「抗菌剤」とは相違する旨、主張するやもしれないが、請求人が「殺菌剤」について「殺菌に用いる薬剤の総称」という意味合いであるとの弁駁に徹すると、「抗菌剤」は「抗菌に用いる薬剤の総称」で、「抗菌」性のある薬剤、すなわち前記乙第10号証から抗生物質等の薬剤であること、また明白である。

<2>また請求人は「抗菌剤」は「菌等を死滅させる殺菌よりは弱い作用と見受けられる」から「殺菌剤」ではないような主張をしているが、この点についても反論する。 前述した甲第3号証及び乙第10号証で「抗菌性物質」の例として挙げられいる「抗生物質」について「微生物工学技術ハンドブック」(1990年5月20日株式会社朝倉書店発行)の第222頁~第224頁(乙第11号証)にその総論が記載されている。そしてここの冒頭で記載されるようにWaksmanは、「抗生物質」を「微生物によって生産される化学物質で、希薄溶液で他の微生物の生育を阻害したり、死滅させる活性を有するもの」と定義した旨の記載があることが認められ、斯る乙第11号証の記載から「抗菌剤」である「抗生物質」のなかには「微生物を死滅させる」ほどの能力、つまり請求人が弁駁書で「殺菌剤」について主張する死滅させるに至る「抗菌力」を有するものも存在することが認められ、請求人が「抗菌剤」は微生物を死滅させる能力に欠けるものであるから、「殺菌剤」に該当しない云々の主張は明らかに失当である。

ところで、この乙第11号証にはその第223頁第7行目に「抗菌物質」、同頁第22行目に「抗細菌物質」、同頁第24行目に「抗真菌物質」、第224頁末行に「抗菌力」等、「抗菌」に関連する内容の記載があり、斯る記載からも本件商標の指定商品の「抗菌剤」は「抗生物質等の抗菌性のある薬剤」であることは明らかで、指定商品「薬剤」に該当しないとする請求人の主張には誤りがあり失当である。

さらに乙第11号証には「抗生物質」が、「薬剤」に含まれる「化学療法剤」、「獣医薬」、「畜産の分野の医薬」、「農薬」及び「腐敗防止」等、各種の「医薬」及び「農薬」、つまり指定商品である「薬剤」として用いられる旨の記載があり、ここからも被請求人が「バイオファーム」と称して販売している「抗菌剤」は指定商品中の「薬剤」に該当すること、また明らかである。

<3>また請求人は、被請求人が販売証明をした「抗菌剤」の使用は「薬剤」でなく「化学剤」である旨、主張する。しかしながら「抗菌剤」を繊維に後加工する目的が、単なる原材料程度としての目的ではなく、繊維に対して「抗菌」機能を付与することを目的としたもので、斯る機能が付与された繊維「imidas 1993年版」(株式会社集英社発行)の第1011頁(乙第12号証)に記載される「抗菌防臭繊維」、つまり「繊維に抗菌剤を付着させるなど、特殊な加工を施し、・・・細菌の増殖を抑え、・・・防汚性を備えた繊維・・・。」として意味づけられる繊維にまさにそのまま該当する。

そして、被請求人が先に使用証明をした「抗菌剤」は、繊維に「抗菌、防かび」機能を付与するための用途目的に使用されることを明確に意図して取引きしたもので、そしてこの様な「抗菌、防かび」という機能を繊維に付与することに使用される「抗菌剤」は、単なる「化学剤」としての加工処理剤ではなく、繊維に抗菌、防かび機能を付与する「抗菌性のある薬剤」としての使用目的および概念があるもので、被請求人が使用証明をした「抗菌剤」は、そのような使用目的に用いられることを前提として取引きされたものであれば、「殺菌剤」が「衣料殺菌」という公衆衛生上の用途があるとして「公衆衛生用薬剤」と認められるのに倣えば、被請求入が使用証明をした「抗菌剤」について、例えば「衣料抗菌」とか「繊維抗菌」とかいうような公衆衛生上の用途目的のために明らかに使用されるものであるとして「殺菌剤」の場合と同じように「公衆衛生用薬剤」の一つとして認められるべきで、これを「薬剤」でなく、「薬剤」としての使用目的がなく単なる加工処理剤にすぎない「化学剤」としての使用であるとする請求人の主張は明らかに失当といえる。

なお、乙第12号証の「抗菌防臭繊維」の食用例として「靴下」のように直接皮膚に触れるものと「布団綿」のように皮膚に直接触れない使用、さらには「ブラウス」のように皮膚に直接触れる部分と触れない部分とが混在するものがあり、これらをどの様に扱うかについてここで議論するつもりはないが、被請求人が使用証明をした「抗菌剤」が、例えば「靴下」に用いられることで結果的には皮膚に直接触れることになるのだからこの場合には「外皮用薬剤」に属するものであると認定されたとして、それは依然として「薬剤」の使用であるから被請求人は別段に依存ないところである。

4.そこで、当事者間において利害関係つき争いがあるので、この点についてみるに、請求人が「BIOFERM」の文字を横書きしてなる商標を平成6年3月1日に登録出願(商願平6-20086)し、該登録出願が本件商標を引用して拒絶の理由が通知され、現在審査に係属中であることは、請求人の提出に係る甲第1号証、同第2号証及び職権による調査にて確認し得た。

しかしながら、該登録出願の指定商品は、第5類「薬剤」のみであって、請求人が本件審判において請求している本件商標の指定商品中の「医療補助品」を指定しているものではないから、請求人は、該「医療補助品」について、法律上の利害関係を有するものとは認められないものであり、また他に利害関係を有するとする証拠の提出もないし、請求人もこの点について争わない旨述べている。

したがって、本件審判請求中の本件商標の指定商品「医療補助品」の部分についての取り消しを求める請求は、不適法なものであるから商標法第56条において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものとする。

つぎに、本件審判請求中の「薬剤」について取り消しを求める請求ついて判断する。

被請求人の提出に係る乙第1号証乃至乙第12号証(枝番を含む。)を徴するに、被請求人が本件商標と社会通念上同一の範囲内と認め得る「バイオファーム」の文字よりなる商標を、商品カタログ(乙第5号証)、商品の納品書の写し(乙第6号証の3)及び商品を販売している旨の商品の写真つき確認書(乙第7号証の1及び乙第8号証の1)に掲載もしくは表示し、該商標を商品「抗菌、防かび剤」に本件審判請求の登録前3年以内の平成7年(1995年)10月頃より販売していたことを認め得るところである。

しかしながら、乙第2号証(被請求人の登記簿謄本の写し中の目的の項1)の「バイオテクノロジーを応用した抗菌、抗カビ材の製品化に関する開発および製品の製造販売」という記述、乙第5号証(被請求人の使用するカタログ、表紙を第1頁としたときの第6頁及び第7頁)の「バイオ加工4つの機能」という記述及び乙第6号証の2(被請求人と株式会社千代田屋の契約書の写し中の第1条)の「バイオが開発した一連の不織布用抗菌・抗カビ剤『バイオファーム』シリーズを言う」という記述よりすれば、被請求人が本件商標を使用しているとする「抗菌、防かび剤」は、不織布等に抗菌、抗かび加工するために用いられる「化学剤」の一種であって、「薬剤」中の公衆衛生用薬剤に含まれる「殺菌剤」等とは、その取引系統、用途、目的等を全く異にする商品といわなければならない。

してみれば、本件商標は、被請求人の提出に係る乙各号証を総合勘案するも、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、指定商品中「薬剤」について使用されていたものということはできない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る指定商品中「薬剤」について取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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