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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)187号 判決 1999年10月07日

原告

コーマ株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

阪本政敬

青木秀篤

同弁理士

【B】

【C】

被告

マニファチュラ マリオ コロンボ アンド シー.エス.ピー.エー.

代表者

【D】

訴訟代理人弁理士

【E】

【F】

主文

特許庁が平成7年審判第7984号事件について平成10年5月7日にした審決のうち、登録第447171号商標の指定商品中「洋服、コート」、「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽」、「和服」、「ずきん、ヘルメット、帽子」、「ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト」以外の指定商品についての登録を取り消した部分を取り消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  原告の求めた裁判

「特許庁が平成7年審判第7984号事件について平成10年5月7日にした審決を取り消す。」との判決。

第2  事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

原告は、指定商品を旧々第36類「被服、手巾、釦紐及び装身用『ピン』の類」とし、別紙本件商標のとおりの構成から成る登録第447171号商標(昭和28年8月13日出願、昭和29年6月29日登録、昭和51年8月9日、昭和59年7月17日及び平成6年8月30日各更新登録。本件商標)の商標権者である。

被告は、平成7年4月14日、商標法50条に基づき、原告を被請求人として、本件商標の指定商品中「洋服、コート」、「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽」、「和服」、「ずきん、ヘルメット、帽子」、「ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト」について商標登録取消しの審判を請求し(平成7年5月16日予告登録)、平成7年審判第7984号事件として審理されたが、平成10年5月7日、登録第447171号商標の指定商品中「被服、手巾、釦紐及び装身用『ピン』の類」についてはその登録は、取り消す、との審決があり、その謄本は同月25日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  当事者の審判における主張等

別紙審決理由抜粋のとおりである。

(2)  利害関係についての審決の判断

当事者間に利害関係について争いがあるので、まずこの点についてみるに、被告が本件審判を請求するについて利害関係を有すると主張する根拠としている商標登録出願(平成6年商標登録願第128142号。被告によるもの)は、平成10年1月16日付けで本件商標に類似する登録第1958297号商標(本件商標の連合商標であったもの)を引用した拒絶理由通知がなされており、現在も審査に係属中である。してみれば、被告は、本件審判請求について利害関係を有するものである。

また、原告は、本件不使用取消審判は信義誠実の原則に反し権利の濫用である旨主張しているが、原告が主張するような事情があったとしても、そのことから直ちに被告による本件審判請求が権利の濫用になるものということはできない。

(3)  本案についての審決の判断

そこで本案に入って判断するに、まず、美津濃株式会社の使用が本件商標の使用に当たるか否かについて検討する。(本判決の判断の都合上、項目ごとに(a)などの符号を付した。)

(a) 原告が本件商標(あるいはその連合商標)の使用をしているものとして提出した審判乙第4号証の1及び2(美津濃株式会社のカタログ)、同第6号証の1ないし10(スキー関連の雑誌)、同第7号証(83 INVERNO HIVER WINTER COLMAR 1983年 美津濃株式会社発行)及び同第13号証の1ないし56(スキー関連の雑誌)には「COLMAR」の商標が付された競技用のスキー用特殊衣服、その他のスキー用特殊衣服、スキー用特殊手袋、スキー用特殊ヘアーバンド、スキー用特殊帽子などが掲載されていた事実を認めることができる。

(b) しかしながら、美津濃株式会社による使用は、審判乙第1号証の1ないし17の契約事項にもあるとおり、専ら、イタリア国COLMAR社(被告)から輸入して販売する「COLMAR」商標のスキー用被服等、あるいはイタリア国COLMAR社と技術提携契約(審判乙第8号証の1及び2)に基づいて製造販売する「COLMAR」商標のスキー用被服等に限られていたものである。そして、前記したカタログあるいはスキー関連の雑誌等をみるに、当該スキー用衣服等には「COLMAR」商標とともにCOLMAR社の所有する図形商標が併せて使用されていることが認められる。

(c) ところで、審判乙第7号証によれば、コルマー社は、1923年2月、ミラノ郊外モンツァに創立されて以来、1952年にはイタリア、オーストリア、スウェーデン、ドイツ等のナショナルスキーチームのオフィシャル サプライアーになり、それまでの背広姿のスキーウェアーに対し、ラスティックバンドをつけたウェアーを考案、1960年代には、ワールドスキーヤーである【G】、【H】選手の協力の下に、現在のスキーウェアーの原型ともいえるワンピース型スキーウェアーを開発し、イタリアスキーウェアー界のビッグワンとして君臨しており、今日、「イタリアンコルマーを知らねばスキーウェアーについて何も語れない」、「スキーを愛する者でなければ、コルマーに袖を通してはならない」状況に至っている旨の記述がなされており、審判甲第4号証の1ないし28によれば、被告は、「COLMAR」商標を米国、カナダ、中国、フランス、スイス、ドイツ、オーストリア、イタリア等29か国において登録又は出願していることを認めることができる。

(d) そしてまた、前記したカタログあるいはスキー関連の雑誌をみても、「COLMAR」については、「イタリアに生まれ世界的に愛好者を持つコルマー」「イタリアのセンスの結晶ともいえるコルマー」「イタリアの力、コルマー」「イタリアの魅力、コルマー」「イタリアの血統、コルマー」等々のごとく記述されていることが認められる。

上記の各事実に照らしてみれば、我が国においても「COLMAR」、「コルマー」といえば被告会社の所有に係る商標として、スキー用衣服等の取引者・需要者間において、広く知られていたものとみるのが相当である。

(e) そうとすれば、美津濃株式会社によって使用されていた上記「COLMAR」あるいは「コルマー」商標は、あくまでも輸入元あるいは技術導入契約を締結していたイタリア国COLMAR社の業務に係る商品の出所を表示するものとして使用され、機能していたものであり、これに接するスキー用衣服等の取引者・需要者にとってもイタリア国COLMAR社の業務に係る商品の出所を表すものとして理解・認識されていたものというべきである。

(f) してみれば、本件商標あるいはその連合商標(登録第1958297号商標)がCOLMAR社の商標とほとんど同じであるからといって、美津濃株式会社による当該商標の使用が本件商標あるいはその連合商標であった使用にも該当するということにはならないことは明らかである。

(g) なお、原告と美津濃株式会社との間における本件商標あるいは連合商標についての使用許諾契約にしても、その契約条項をみれば、美津濃株式会社がコルマー社の「COLMAR」商標を使用(輸入及び工場生産)するために、スキー用被服等の売上に比例した一定割合の使用料を原告に支払っていたというにすぎないものというべきであり、本来的意味における本件商標あるいはその連合商標をその指定商品に使用するための使用許諾契約とはいい難いものであるから、美津濃株式会社が原告に使用料を支払っていたからといって、美津濃株式会社による当該商標の使用が本件商標あるいはその連合商標の使用に該当することにならないことは前記したとおりである。

(h) 次に、審判乙第11号証の1の1ないし同号証の6の7によって、原告が本件商標を「丸首半袖シャツ」について使用していたものといい得るか否かについてみるに、原告の主張を総合してみると、原告は、株式会社フジボウアパレルから丸首半袖シャツを購入し、社内即売会において、その購入したシャツに本件商標が付されたシールを貼付し、招待客がサンプルを手にとってみて気に入れば商品を購入するという方式をもってシャツを販売したものであり、その販売の事実は、審判乙第11号証の4の1ないし4及び同第11号証の6の1ないし7に示す取引書類のとおりであるとしている。

(i) 確かに、審判乙第11号証の3の1ないし3及び同号証の5の1及び2によれば、原告は株式会社フジボウアパレルから丸首半袖シャツを購入したことを認めることができる。また、企業内において社内即売会を開催している事例も見受けられるところから、同第11号証の2により(同号証自体は、事後の同種のものであるとしても)、原告においても社内即売会を開催したであろうことは推測し得るところである。

(j) しかしながら、現実に販売された商品と同一の商品の写真であるとして提出された審判乙第11号証の1の1ないし3をみるに、「丸首半袖シャツ」の襟首内側に貼付された本件商標が印刷された紙製のシールは、商品全体に比し異常に大きく、その切口も不揃いであり、このようなシールが社内即売会において販売された丸首半袖シャツの襟首内側に貼付されていたとみるのはいささか不自然さを否めないところである。

(k) また、審判乙第11号証の1の4の「半袖丸首シャツの包装箱」の写真については、本件商標及び商品名「紳士肌着」が表示されているのは認められるにしても、同号証の存在をもって直ちに本件商標が「紳士肌着」について使用されていたものと認めることはできない。

(l) そしてまた、販売の事実を示すものとして提出された審判乙第11号証の4の1ないし4の「出庫伝票」「荷渡受取書」については、株式会社フジボウアパレルから丸首半袖シャツを購入し、社内即売会において、シャツにも包装箱にもその原材料名を表示することなく、招待客が展示されたサンプルを手にとってみて気に入れば商品を購入するという販売方式の下において、原告が主張するように、これらの取引書類がその売上数量等を把握するために「拡大社販」あるいは「社販」の名義あてに発行している程度のものであるならば、シャツの売上数量が確認できる事項が表示されていれば足りるとみるのが自然であって、品番欄に殊更商標まで表示していたとすることにはいささか疑問の残るところである。

(m) さらに、原告は「多数の購入者に対してはその都度取引書類を作成することが困難である」と主張しながら、審判乙第11号証の6の1、2、6及び7によれば、単価400円の丸首シャツ3枚ないし6枚を購入した個人に対しても出庫伝票、荷渡受取書を発行したことになっており、安価な商品の小売りの実情に照らしてみても不自然さを否めないものである。

(n) そして、原告は、取引書類の全体をもって本件商標を使用したことを立証する旨主張しているが、審判乙第11号証の1の1ないし3(半袖丸首シャツの写真)のシールには品番の表示はなく、審判乙第11号証の3の1(出荷案内書)に表示されている品番は「0133」「0733」であり、審判乙第11号証の4の1ないし4及び同第11号証の6の1ないし7(出庫伝票、荷渡受取書)に記載されている品番は「S101」となっており、これらの証拠からは一連の商品の流れを把握することはできない。

(o) してみれば、審判乙第11号証の1の1ないし同号証の6の7の内容の信憑性については全体として強い疑いを持たざるを得ないものであるから、同号各証によっては、原告が本件商標を「丸首半袖シャツ」について使用していたものと認めることはできない。

(p) 次に、審判乙第12号証の1ないし3の新聞あるいは雑誌に広告を掲載したことが本件商標についての原告自身による「作業ズボン、シャツ」等の商品についての使用に当たるか否かについて検討する(なお、原告は、本件商標と連合する登録第1341591号商標「コルマ」についても言及しているが、登録第1341591号商標と本件商標とは連合商標として登録されていない。)。

(q) 審判乙第12号証の1ないし3の新聞あるいは雑誌に掲載されている広告をみるに、確かに本件商標及びそれに対応すると思われる「作業ズボン、シャツ」等の商品が記載されていることを認めることはできる。

(r) しかしながら、該広告中にはそれ以外にも3つないし5つ程度の商標及びそれに対応する商品が羅列されているばかりでなく、上部には「大阪府品質管理推進優良工場」あるいは「喜ばれる品質で奉仕する靴下の一貫メーカー」の文字が書され、中央部には「コーマ株式会社」の文字が大きく書され、その下に「取締役社長 【A】」あるいは「代表取締役 【A】」の文字、さらにその下部に会社の住所、電話番号等が書されており、加えて審判乙第12号証の3には工場の全景写真が大きく表されている。

(s) このような態様のものであることからすると、該広告は、原告の営業内容を含めた原告会社自体の広告とみるのが相当であり、特定の商標を付した具体的な商品の販売を目的としてなされた広告とみることはできないから、審判乙第12号証の1ないし3の広告をもってしては、本件商標を「作業ズボン、シャツ」等の商品について使用していたものとはいえず、また、使用に当たるとしても、名目的使用の範疇を出ないものというべきである。

(t) してみれば、審判乙号各証をもってしては、本件審判の請求に対して、原告は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標(あるいはその連合商標)をその請求に係る指定商品について使用していたことを証明したものということはできない。

(4)  審決の結論

したがって、本件商標の登録は、結論掲記の商品について、商標法50条の規定により取り消すものとする。

第3  原告主張の審決取消事由

1  申立外の登録取消しの誤り

前記特許庁における手続の経緯から明らかなように、審決は被告(審判請求人)の申立ての範囲を越えて本件商標を取り消しており、誤りである。

2  利害関係についての誤り

審決は、被告(審判請求人)には、本件審判請求についての利害関係があると認定したが、誤りである。

原告は、昭和48年5月に、美津濃株式会社との契約により、同社に対して、同社がイタリア国COLMAR社(被告)から輸入販売する「COLMAR」商標のスキー用被服等について、本件商標に類似する商標「COLMAR」を使用することを許諾し、また、同社がCOLMAR社との技術提携契約に基づいて製造販売するスキー用被服等について商標「COLMAR」を使用することを許諾した。この契約は毎年更新されて現在に至っている。

そして、原告は昭和62年5月29日、「colmar」の商標につき本件商標の連合商標として登録(登録第1958297号)を受けた。

言い換えれば、被告は、「COLMAR」商標のスキー用被服等の商品を、当時本件商標の連合商標であった登録第1958297号商標について原告から使用許諾を受けた美津濃株式会社を通じて日本国内に輸入販売しており、また被告との技術提携により美津濃株式会社が製造した商品も、同じく、原告の使用許諾に基づき「COLMAR」の商標を付して日本国内において販売されている。このようにして、「COLMAR」商標の商品を日本国内において販売しようとする被告の目的は、美津濃株式会社を通じて達成されている。すなわち、「COLMAR」商標を日本国内において使用しようとする被告の意思は何ら妨げられておらず、したがって、被告は本件不使用取消審判を請求する利益を有さない。

3  権利濫用についての誤り

審決は、本件不使用取消審判の請求が権利の濫用にならないとしたが、誤りである。

原告は、昭和29年に、旧々第36類(大正10年商標法による商品区分)に属する本件商標につき登録を受け、これを靴下について継続使用するとともに、昭和40年ころからの多角経営の傾向にかんがみて、一般衣料品、スポーツウェアなどについてもこの商標を使用しようと企図していたところ、昭和48年に、被告の「COLMAR」商標を付したスキー用衣服を美津濃株式会社が日本市場で販売することを認めた。その後、原告は、本件商標の保護を厚くし、ひいては美津濃株式会社が有する「COLMAR」商標についての使用権の保護を厚くするために、本件商標と類似する商標2件について出願をし、それぞれにつき登録を受けた。すなわち、登録第1341591号商標と登録第1958297号商標である。

原告は、「COLMAR」商標について美津濃株式会社に使用許諾した以上、これら登録商標をその指定商品中の広範なものについて急ぎ使用して使用義務を尽くす必要もないと考え、また、自らの顧客である美津濃株式会社の立場も考慮して、最近に至るまで、本件商標を敢えて靴下のみについて使用するにとどめた。のみならず、原告は、甲第6号証などの契約書の第2条の合意を誠実に遵守して、本件商標を第三者に許諾することもしなかった。

美津濃株式会社と被告との提携関係からして、被告がこのような事情を知っていたことは明らかであり、被告は、前記のような原告の配慮を奇貨として不使用取消審判請求の挙に出たものである。被告のこのような所為は著しく信義誠実の原則に反し、取消審判の請求権の濫用にほかならない。

4  美津濃株式会社による使用を否定した誤り

審決は、美津濃株式会社の使用が本件商標の使用に当たらないとしたが、誤りである。

(1)  審決は、美津濃株式会社によって使用されていた「COLMAR」あるいは「コルマー」商標は、イタリア国COLMAR社の業務に係る商品の出所を表示するものとして使用され、機能していたものであり、取引者・需要者にとっても同社の業務に係る商品の出所を表すものとして理解・認識されていたものというべきであるとの判断(審決の理由の要点(3)の(e)。判断A)を根拠として、「本件商標あるいはその連合商標(登録第1958297号商標)がCOLMAR社の商標とほとんど同じであるからといって、美津濃株式会社による当該商標の使用が本件商標あるいはその連合商標の使用にも該当するということにはならないことは明らかである。」と判断している(審決の理由の要点(3)の(f)。判断B)。

(2)  そもそも、「COLMAR」あるいは「コルマー」商標が被告の商品の出所を表示するものとして取引者・需要者間において広く知られていた事実は存せず、美津濃株式会社が「COLMAR」あるいは「コルマー」商標を使用していたのは、原告が本件商標あるいは連合商標について美津濃株式会社に対して使用許諾を与えていたからであり、「COLMAR」商標は、被告の業務に係る商品の出所を表示するものとして使用され、機能していたものではない。

すなわち、原告の登録商標である本件商標あるいは連合商標について使用許諾を受けた美津濃株式会社が、商標の使用に際してカタログあるいはスキー関連雑誌において「イタリアの、……」という表現を用いていたとしても、取引者・需要者間においては被告「マニファチエラ マリオ コロンボ アンド シー.エス.ピー.エー.」の名前は全く知られておらず、もちろん「COLMAR」あるいは「コルマー」商標が被告の業務に係る商品の出所を表示するものとして知られていた事実は存しない。あくまでも、本件商標あるいは連合商標について使用許諾を受けた商標としての「COLMAR」が使用された結果、この商標が取引者・需要者間において知られたものであり、これはすなわち原告の本件商標あるいは連合商標の使用の結果、当該商標が取引者・需要者間において知られるようになったものである。したがって、判断Aは誤りである。

(3)  仮に判断Aが正しいとしても、そのことを根拠として判断Bを導いたのは誤りである。

すなわち、美津濃株式会社によるイタリア国COLMAR社の業務に係るスキー用衣服の輸入販売や同社との業務提携に基づくスキー用衣服の製造販売は、一方では、「COLMAR」あるいは「コルマー」商標の使用にほかならないが、他方では、本件商標の使用にも当たる。

そうだとすれば、美津濃株式会社が使用する「COLMAR」あるいは「コルマー」商標がCOLMAR社の業務に係る商品の出所を表示するものとして使用され、機能しているとしても、そのことから直ちに、美津濃株式会社による当該商標の使用が本件商標あるいはその連合商標の使用に該当しないということはできない。

したがって、審決が美津濃株式会社の使用が本件商標の使用に当たらないとした判断は誤りである。

5  原告による使用を否定した誤り

審決は、原告が本件商標を使用していたものとは認められないとしたが、誤りである。

(1)  審決は、審判乙第11号証の1の1ないし4(本訴甲第7号証の1~4)につき、「紙製のシールは商品全体に比し異常に大きく、その切口も不揃いであり、このようなシールが社内販売会において販売された丸首半抽シャツの襟首内側に貼付されていたとみるのはいささか不自然さを否めないところである。」と判断した(審決の理由の要点(3)の(j))

しかしながら、甲第7号証の1~4から明らかなように、前記シールは、その横方向の幅が、これに隣接して貼付されたLの文字を記した楕円形のシールに比して少しだけ長いにすぎず、また、縦方向の幅は棟方向の幅の2/3程度であり、したがって、このシールが「異常に大きい」というのは当たらない。また、切口もほぼ直線状であり、曲がっておらず、さらに、2組の対向する2辺もそれぞれほぼ平行であるから、「その切口も不揃いであり」というのも当たらない。

(2)  審決は、審判乙第11号証の4の1ないし4(本訴甲第8号証の1~4)の「出庫伝票」「荷渡受取書」について、「品番欄に殊更商標まで表示していたとすることにはいささか疑問の残るところである。」と判断しているが、この点は、本件商標の使用の証拠として残しておいた甲第8号証の1~4により誤りであることが明らかである。

(3)  審判乙第12号証の1ないし3(本訴甲第11号証の1~3)のいずれの広告においても、複数の商標と多数の商品が混然と記載されているのではなく、複数の商標のおのおのについて、その真横にその商標が使用される商品が列挙されている。そして、本件商標の真横には「作業ズボン、シャツ」等の具体的な商品が記載されている。そうだとすれば、この広告においては、「作業ズボン、シャツ」等の具体的な商品についての広告がなされ、そして、そのような具体的な商品について本件商標が表示されているから、この広告においては、本件商標が「作業ズボン、シャツ」等の商品について使用されているというべきである。

これに反する審決の認定は誤りである。

(4)  その他、本件商標の使用に関して原告が提出した審判乙号各証についてした審決の証拠評価も誤りである。

第4  審決取消事由に対する被告の反論

1  取消事由1(申立外の取消し)について

争わない。

2  取消事由2(利害関係)について

被告が販売目的を達しているか否かの問題は、被告が取消審判を請求する利益があるか否かの問題とは無関係である。

被告は、世界28カ国で商標「COLMAR」の登録を得ている。日本においてもこの商標を自由に使用し、商標登録を受けることを求めるのは自然なことである。

原告の本件商標が登録されていることにより、被告は、自らの商標「COLMAR」の使用を無断で行うことができず、その商標登録を受けることもできない状況にあり、本件商標についての取消しを求める不使用取消審判の請求を行うについて利益を有している。

3  取消事由3(権利濫用)について

原告が美津濃株式会社に「COLMAR」の使用を認めることとした契約書(甲第6号証)は、原告自らの登録商標の使用義務を免れ得るような内容のものではない。

被告自身は、商標の使用に関して原告とは何らの合意や取決めを行っている事実もなく、被告が上述の請求の利益の下に取消審判の請求を行ったことが、権利の濫用に当たるものではない。

4  取消事由4(美津濃株式会社の使用)について

原告が、美津濃株式会社を通常使用権者であると考えている根拠は、甲第6号証の契約書と考えられる。しかしながら、この契約書は、原告が有する本件商標権に関するものであり、その商標の類似範囲の商標の使用に関して美津濃株式会社がこれを行うことを許諾する内容となっている。すなわち、登録商標の類似範囲である「COLMAR」商標の使用に対して禁止権を行使しないことを約束したものである。

また、この甲第6号証の契約書(平成7年)は、昭和48年5月から毎年1年契約で締結された契約書の17回目のものであり、本件商標の類似範囲についての商標を対象とする契約書であることは、第1回目から甲第6号証の17回目の契約書まで変更されていない。この基本事項は、登録第1341591号商標(カタカナ「コルマ」)及び登録第1958297号商標(「colmar」(小文字))の商標登録が行われた後も何ら変わっていない。

すなわち、上記契約書は、専用使用権や通常使用権を設定許諾する内容のものでないことは明らかである。美津濃株式会社は、原告との上記禁止権を行使しないことを内容とする契約書に基づいて、イタリア国COLMAR社(正確には被告)の商標の使用を行っていたものである。

5  取消事由5(原告の使用)について

審決がした審決の証拠評価に誤りはなく、原告の主張は理由がない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(申立外の取消し)について

前記特許庁における手続の経緯からすれば、審決に、取消事由1の誤りがあることは明らかであるから、被告が申し立てた以外の指定商品について本件商標登録を取り消した審決部分は取消しを免れない。

2  取消事由2(利害関係)について

被告がした商標登録出願(平成6年商標登録願第128142号)において、平成10年1月16日付けで、本件商標に類似する登録第1958297号商標を引用した拒絶理由通知がされ、同出願は現在も審査に係属中であること自体について、原告は明らかに争わないので、自白したものとみなす。そして、上記登録第1958297号商標は「colmar」の欧文字を書して成るものであることは、当裁判所の別件(平成10年(行ケ)第189号事件)において顕著な事実である。この事実によれば、被告が、本件審判請求について利害関係を有することは明らかである。

原告は、被告は、「COLMAR」商標のスキー用被服等の商品を、本件商標の連合商標であった登録第1958297号商標について原告から使用許諾を受けた美津濃株式会社を通じて日本国内に輸入販売しており、また被告との技術提携により美津濃株式会社が製造した商品も、原告の使用許諾に基づき「COLMAR」の商標を付して日本国内において販売されているから、「COLMAR」商標の商品を日本国内において販売しようとする被告の目的は、美津濃株式会社を通じて達成されていると主張するが、この主張事実は、本件商標権の禁止権の範囲の一部についてのものにすぎないから、この事実をもってしても、本件審判請求について被告が有する利害関係を否定することはできず、他にこれを否定すべき事実関係は認められない。

したがって、被告に本件不使用取消審判請求についての利害関係を肯定した審決の判断に誤りはない。

3  取消事由3(権利濫用)について

原告が権利濫用等の主張の根拠として挙げるのは、原告は、「COLMAR」商標の使用を美津濃株式会社に許諾したことから、最近に至るまで、本件商標を敢えて靴下のみについて使用するにとどめ、第三者にも本件商標の使用を許諾したことはなかったのに、被告の本件不使用取消審判請求は、原告のこのような配慮を奇貨としたものであるという点にある。

しかしながら、ここで主張されているのは、本件商標自体が美津濃株式会社に使用許諾されてきたとの事実ではない。しかも、原告と美津濃株式会社との間で取り交わされたのは、後記4で判示するとおり、本件商標に関する禁止権の範囲に属するものと認識されていた「COLMAR」商標に関するものにとどまり、同社が原告に支払うべきものとされてきたのは、本件商標の使用料というべきものではない。

そして、上記契約は原告ではなく第三者である美津濃株式会社との間で締結されたものにとどまることも勘案すると、原告主張事実をもってしても、被告の本件不使用取消審判の請求が信義に反し、あるいは権利の濫用に該当するものと認めることはできない。他にこれら原告主張の点を裏付ける事実関係は認められず、同旨の審決の判断に誤りはない。

4  取消事由4(美津濃株式会社の使用)について

(1)  原告は、美津濃株式会社が使用していた「COLMAR」あるいは「コルマー」商標をもって、本件商標の使用に該当するとし、同社との間に取り交わした契約書によって、本件商標の使用が行われてきたと主張するものであるが、これらの商標が「R」の文字を含まない「Colma」の欧文字(「C」を除く文字は小文字)と「コルマ」の片仮名から成る本件商標と同一の商標とは認められないことは明らかであり、特段の事情のない限り、美津濃株式会社が使用してきたと原告が主張する上記商標の使用をもって、本件商標の使用があったと認めることはできず、このような特段の事情は本件において認められない。

(2)  ところで、原告が昭和62年5月29日に「colmar」の欧文字(小文字)を書して成る商標につき本件商標の連合商標として登録を受けたこと(登録第1958297号)は、当裁判所の別件(平成10年(行ケ)第189号事件)において顕著な事実であり、原告の主張中には、美津濃株式会社の「COLMAR」商標の使用は、この連合商標であった登録第1958297号商標の使用に該当するとの趣旨の部分もあるので、以下に検討する。

(a) まず、審決が認定した次の事実関係は、原告も争わず、被告も有利に援用しているものと認められる。

○ 美津濃株式会社による使用は、専ら、イタリア国COLMAR社(弁論の全趣旨によれば、被告の通称と認められる。)から輸入して販売する「COLMAR」商標のスキー用被服等、あるいはイタリア国COLMAR社との技術提携契約に基づいて製造販売する「COLMAR」商標のスキー用被服等に限られていたこと(審決の理由の要点(3)の(b))、

○ 当該スキー用衣服等には「COLMAR」商標と共にCOLMAR社が権利を有する図形商標が併せて使用されていること(同(b))、

○ 美津濃株式会社のパンフレットやスキー関連雑誌に、コルマー社は、1923年2月、ミラノ郊外モンツァに創立されて以来、1952年にはイタリア、オーストリア、スウェーデン、ドイツ等のナショナルスキーチームのオフィシャル サプライアーになり、それまでの背広姿のスキーウェアーに対し、ラスティックバンドをつけたウェアーを考案、1960年代には、ワールドスキーヤーである【G】、【H】選手の協力の下に、現在のスキーウェアーの原型ともいえるワンピース型スキーウェアーを開発し、イタリアスキーウェアー界のビッグワンとして君臨しており、今日、「イタリアンコルマーを知らねばスキーウェアーについて何も語れない」、「スキーを愛する者でなければ、コルマーに袖を通してはならない」状況に至っている旨の記述があること(同(c))、

○ 被告は、「COLMAR」商標を米国、カナダ、中国、フランス、スイス、ドイツ、オーストリア、イタリア等29か国において登録又は出願していること(同(c))、

○ さらに、カタログあるいはスキー関連の雑誌に、「COLMAR」については、「イタリアに生まれ世界的に愛好者を持つコルマー」「イタリアのセンスの結晶ともいえるコルマー」「イタリアの力、コルマー」「イタリアの魅力、コルマー」「イタリアの血統、コルマー」などのように記述されていること(同(d))、

(b) また、甲第62ないし第65号証によれば、美津濃株式会社が被告からのライセンスを得て日本国内で発行し「COLMAR」商標が描かれているパンフレットには、「COLMAR」商標が独特の字体で描かれ、これがスキーウエアにも表示されてきていることが認められる。

(c) 上記の各事実に照らしてみれば、我が国においても「COLMAR」、「コルマー」といえば、イタリアの企業が権利を有する商標として、スキー用衣服等の取引者及び需要者間において、広く知られていたものと認められるのであり、欧文字の小文字から成る連合商標の「colmar」とは、截然と区別して認識されるに至っていたものということができる。

(d) 原告は、美津濃株式会社が被告からライセンスを受けて輸入、製造、販売していた「COLMAR」商標は、原告からの使用許諾を得ていたものであると主張する。

なるほど、甲第6、第22ないし第27、第37、第39ないし第44、第46、第49及び第57ないし第61号証並びに原告代表者尋問の結果によれば、原告と美津濃株式会社との間で「COLMAR」商標の使用に関して締結された契約は昭和48年5月から始まり、昭和52年まで継続したこと、この契約は昭和59年4月から再開され、現在まで継続していることが認められるが、これらの契約書の前文には、「(原告と美津濃株式会社とは、原告)の所有に係る第447171号商標「Colma」の類似商標「COLMAR」を乙(美津濃株式会社)に使用許諾するに当り、次の通り取り決め契約を締結する。」と記載されているのであり(ただし、本件商標の表記方法は年度によって異なる。)、「COLMAR」商標は本件商標の使用ではなく、それに類似する商標として契約当事者間に認識されていたものであることが明らかである。

このような契約上の文言及び当事者の認識からすれば、上記契約は、本件商標の禁止権を行使することを一部放棄する趣旨のものとして取り交わされたものというべきである。

(e) そして、「COLMAR」商標が「R」の文字を含まない「Colma」の欧文字(「C」以外は小文字)と「コルマ」の片仮名から成る本件商標と同一の商標とは認められないことは前記のとおりであるから、これらの契約により美津濃株式会社が「COLMAR」商標を使用していたとしても、これをもって、同社が本件商標を使用していたものとすることはできない。

(3)  以上のとおりであり、美津濃株式会社により本件商標の使用の事実があったことを主張する取消事由4は理由がない。

5  取消事由5(原告による使用)について

(1)  まず、原告は、審決の理由の要点(3)の(j)の判断の誤りを主張するので、この点について判断する。

なるほど、甲第7号証の1ないし4によれば、原告が販売していたとする半袖丸首シャツの襟首内側貼付された本件商標が印刷された紙製のシールは、審決の認定とは異なり、形状も整っていて大きさも商標を表すものとして特に異常ではないと認められる。

しかし、その貼付態様は不自然で、シールの印刷時期を認めるべき客観的証拠もない。甲第13号証は、当該シールを原告に昭和58年7月に納入したことを証明する株式会社コンピューターサプライの平成11年2月18日付け証明書であるが、原告が本訴において、登録商標の使用についてはその証拠を残すように努めていると主張しているのに(第1回準備書面14頁)、証明内容の真偽を問われてもやむを得ない本訴提起後作成の第三者の証明書である甲第13号証を提出していること、社内即売会において本件商標を使用した商品の販売が行われたのならば、その様子を、本件商標使用の証明のために明確に写真に撮影することは簡単にできたはずなのに、提出された写真は甲第17号証の1、2のような来客が大勢写っていて商品の詳細は明確でない写真だけであり、その他、即売会の関係の客観的証拠としては、顧客名簿の甲第18号証、招待状の甲第19号証が提出されたにとどまることなど、本訴における商品販売に関する証拠提出の態様の一切にかんがみると、甲第13号証の証明書が記載する事項は、採用し難いところである。

以上のとおり、上記各書証によっては、上記紙製シールが本件商標権一部取消審判の予告登録前に原告販売のシャツに貼付されていたと認めることはできない。

本訴で更に提出された甲第79号証の1ないし7、第91、第92号証、第93号証の1ないし5についても、以上の証拠評価と同様であり、これらによっても上記事実を認めることができない。

したがって、本件商標審決の理由の要点(3)の(j)の判断中、本件商標が描かれたシールが、社内即売会において販売された丸首半袖シャツの襟首内側に貼付されていたとみるのはいささか不自然さを否めないところであるとした点には、その理由付けは別として結論に誤りは認められない。

(2)  その他、甲第7号証の1ないし4、甲第8号証の1ないし4、第9号証の1ないし7、第10号証の0ないし4によっても、原告が主張する本件商標の使用の事実を認めることはできない。この理由は、これら甲号各証に対応する審判乙号各証につき、審決が理由の要点(3)の(k)ないし(o)において説示しているとおりであり、当裁判所としても、その判断に誤りを認めない。

原告は、本訴における新たな証拠として、上記した以外に甲第14号証の1ないし3、第15、第16号証を提出するが、これらも、本件商標の使用の事実を客観的に直接証明するものではなく、これらをもってしても、原告主張の本件商標の使用のあった事実を認めることはできない。もとより、原告代表者の供述も客観的な証拠ではなく、採用することができない。

(3)  次に、新聞あるいは雑誌に広告を掲載したことにより原告主張の本件商標の使用の事実が認められるか否かについてみるに、甲第11号証の1ないし3によれば、「松原市老連」と題する新聞、平成5年8月9日の日本染色新聞及び大阪府品質管理推進協議会発行の「中小企業と品質管理」第22号に本件商標ないしそれに類似すると思われる商標と共に本件商標の指定商品に属する「作業ズボン、シャツ」が原告が製造する商品の種類として記載されていることが認められる。

しかしながら、当該広告中には、それ以外にも3つないし4つ程度の商標及びそれに対応する商品の種類が羅列されており、その上部に「大阪府品質管理推進優良工場」あるいは「喜ばれる品質で奉仕する靴下の一貫メーカー」の文字が書され、中央部には「コーマ株式会社」の文字が大きく書され、その下に「取締役社長 【A】」あるいは「代表取締役 【A】」の文字、さらにその下部に会社の住所、電話番号等が書されており、さらには「中小企業と品質管理」第22号には工場の全景写真が大きく掲げられていることが認められる。

この事実に、前記のとおり、原告において、本件商標をその指定商品に付するなどの態様で自ら使用してきたことの事実が認められない点も合わせ考えれば、上記広告は、原告の取り扱う商品の種類を紹介して原告の営業内容を宣伝することを主眼とする原告会社自体の広告とみるのが相当であり、特定の商標を付した具体的な商品の販売を目的とする広告とみるのは相当でない。したがって、上記各広告をもってしては、本件商標を原告が主張する商品について使用していたものとはいえない。

本訴で新たに提出された甲第80号証の1、2、第81ないし第86号証の広告によっても、上に判断した広告の態様を超えて商品の使用に当たるものとすべき広告がされていたとの事実は認めることができない。

(4)  その他、本件全証拠によっても、本件商標につき、原告主張の使用の事実は認めることができず、取消事由5も理由がない。

第6  結論

以上のとおり、原告主張の審決取消事由は一部理由があるが、その余は理由がないので、主文のとおり判決する。なお、訴訟費用の負担につき、行訴法7条、民訴法64条ただし書を適用。

(平成11年8月26日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

<省略>

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