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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)44号 判決 1990年4月10日

アメリカ合衆国 カリフオルニア州 九三〇一〇

キヤマリロ ネイトリー ウエイ 九六

原告

イワン イー モドロビツチ

右訴訟代理人弁理士

新実健郎

村田紀子

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被告

特許庁長官

吉田文毅

右指定代理人通商産業技官

平山孝二

川島利和

田中久喬

同 通商産業事務官

柴田昭夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を、九〇日と定める。

事実

第一  当事者が求めた裁判

一  原告

「特許庁が昭和六〇年審判第八七九四号事件について昭和六三年九月二二日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文第一項及び第二項同旨の判決

第二  請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五二年三月一七日、名称を「安定化された液状酵素試薬組成物」とする発明(以下「本願発明」という。)について、一九七六年三月一七日アメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張して特許出願(昭和五二年特許願第三一〇一六号)をし、昭和五九年一二一月二七日拒絶査定を受けたので、昭和六〇年五月七日査定不服の審判を請求し、昭和六〇年審判第八七九四号事件として審理され、昭和六一年五月七日特許出願公告(昭和六一年特許出願公告第一七四六六号)されたが、特許異議の申立てがあり、昭和六三年九月二二日、特許異議の甲立ては理由がある旨の決定と共に、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は同年一〇月三一日原告に送達された。なお、原告のための出訴期間として九〇日が附加された。

二  本願発明の特許請求の範囲1に記載された発明(以下「本願第一発明」という。)の要旨

酵素一〇〇I.U.以上、

少なくとも室温で液体である、非反応性かつ水混和性の有機溶剤五%以下、及び、

酵素活性を抑制することなくポリマーマトリツクス中に酵素を捕えることができる、水溶性ポリマー〇・〇一%以上を含有する、

酵素が安定化されており、しかも、ビヒクル中酵素がなお活性である水性ビヒクルを含むことを特徴とする、

水性媒体中で不安定な酵素のための、安定化された液状酵素組成物

三  審決の理由の要点

1  本願発明の要旨は、その特許請求の範囲1、9及び13に記載されている、液状酵素組成物及びその製造方法にあるものと認められる。

2  これに対して、昭和四九年特許出願公告第二七七一七号公報(以下「引用例」という。)には、安定化された酵素試験試薬について記載されており、その例2(第四~五欄)には、

「ヘキソキナーゼ〇・〇〇五g、グルコース=六=リン酸デヒドロゲナーゼ〇・〇〇五g、トリエタノールアミン塩酸塩〇・〇五〇g、ポリビニルピロリドン一・〇gを蒸留水九〇ml中に溶解し、稀苛性ソーダ溶液でPHを七・六に調整し、蒸留水によつて一〇〇mlにして、液状酵素組成物を得ること」

が記載されている。

3  本願第一発明と引用例記載の発明を対比すると、

a 引用例記載のヘキソキナーゼ及びグルコース=六=リン酸デヒドロゲナーゼから成る酵素の添加量は、約一五〇〇〇I.U./lに相当するものであり、

b 引用例記載のトリエタノールアミン塩酸塩は、PH七・六の液状組成物中においてはトリエタノールアミンとして存在するが、これは、室温では液体の、非反応性かつ水混和性の有機溶剤の一種であつて、その濃度は約〇・〇四V/V%に相当するものであり、

c 引用例記載のポリビニルビロリドンは、酵素活性を抑制することなくポリマーマトリツクス中に酵素を捕えることができる、水溶性ポリマーの一種であつて、その濃度は約〇・九八W/W%に相当するものであり、

d 引用例記載の液状酵素組成物は、PHを調整し、蒸留水で一〇〇mlにして得られるものであるから、水性ビヒクルを含むものである。

そうすると、本願第一発明と引用例記載の発明は、

「酵素約一五〇〇〇I.U.、室温では液体で非反応性かつ水混和性の溶剤であるトリエタノールアミン約〇・〇四%、及び、酵素活性を抑制することなくポリマーマトリツクス中に酵素を捕えることができる水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドン約〇・九八%を含有する、水性ビヒクルを含む液状酵素組成物」

であるとの基本的な点において一致するが、

「本願第一発明が、液状のままで安定な酵素組成物に関するものであつて、主として凍結保存用に使用されるのに対し、引用例記載の発明は、凍結乾燥して粉末状の酵素試験試薬を得るための液状酵素組成物に関するものであつて、それが安定なものであることは明記されていない」

点において相違する。

4  右相違点について検討するに、引用例には、その液状酵素組成物を凍結乾燥したものが長期にわたつて良好な安定性を示すことが記載されており(第四欄第一五~一七行、第二三~二五行)、このように安定な粉末状酵素は、安定な液状酵素組成物を乾燥処理して得られるのが普通である。したがつて、引用例記載の液状酵素組成物も良好な安定性を示すものとみて差し支えなく、少なくともそのような性状にあることは当業者ならば容易に予測し得た事項である。

そして、液状酵素組成物を凍結して保存することは、凍結乾燥することと同様に周知技術であるから、前記相違点に係る本願第一発明の構成を予測することに困難は認められず、また、右構成に基づく効果も、液状酵素を凍結して保存し得ることを見いだしたというにすぎず、格別なこととはいえない。

5  以上のとおり、本願第一発明は、引用例に記載されている技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第二九条第二項の規定により、特許を受けることができない。

したがつて、本願発明の特許出願は、その特許請求の範囲9及び13に記載されている発明について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。

四  取消事由

引用例に審決認定の技術的事項が記載されていることは争わないが、審決は、引用例記載の技術内容を誤認して、一致点の認定及び相違点の判断を誤つた結果、本願発明の進歩性を誤つて否定したものであつて、違法であるから、取り消されるべきである。

1  一致点の認定の誤り

審決は、「トリエタノールアミン塩酸塩は、PH七・六の液状組成物中では、トリエタノールアミンとして存在する」有機溶媒の一種であると認定している。そして、被告は、この点について、「トリエタノールアミン塩酸塩は、水に溶解すると生じたトリエタノールアンモニウムイオンが水と反応して、トリエタノールアミンを生成する」と主張する。

トリエタノールアミン塩酸塩を水に溶解したとき、生じたトリエタノールアンモニウムイオンの一部がトリエタノールアミンになる可能性は否定しないが、トリエタノールアミン塩酸塩がPH七・六の液状組成物中においてどのような状態で存在するかは、液状組成物中に存在する他の成分の種類及び量、あるいは、トリエタノールアミン塩酸塩の解離定数及び溶液の温度などを勘案しなければ、特定し得ない。したがつて、一般的な平衡式のみに基づく被告の主張は、審決の前記認定の合理的根拠といえない。

なお、トリエタノールアミンは塩基性が強いので、生化学試薬においては、有機緩衝剤として使用されることはあつても、有機溶剤として使用されることはないのであるから、審決の前記認定は誤りである。

2  相違点の判断の誤り

本願第一発明にいう液状酵素試薬組成物の「安定」とは、「品質管理がその製造、包装、貯蔵及び使用のすべてを通じて保証される」(本願公報第四欄第三三行及び第三四行)ことを意味する。そして、原告の供述書(甲第六号証)によれば、本願第一発明の液状酵素試薬組成物が、四~八℃の冷蔵条件下において一八か月以上も酵素活性を実用性ある範囲に保持し得るのに対し、引用例記載の酵素試験試薬は、液状では製造直後の短時間しか酵素活性を実用性ある範囲に保持し得ない(そのためにこそ、引用例記載の発明は、凍結乾燥による安定化を必須の要件としているのである。)。

以上のとおり、本願第一発明にいう「安定」と、引用例記載の発明にいう「安定」は、時間的な尺度を全く異にするものであるから、引用例記載の酵素試験試薬も本願第一発明の液状酵素試薬組成物と同様の「良好な安定性を示す」とする趣旨の審決の認定判断は、誤りというべきである。

第三  請求の原因の認否及び被告の主張

一  請求の原因一ないし三の事実は認める。

二  同四は争う。審決の認定及び判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。

1  一致点の認定について

原告は、審決の「トリエタノールアミン塩酸塩はPH七・六の液状組成物中では、トリエタノールアミンとして存在する」との認定を争つている。

しかしながら、トリエタノールアミン塩酸塩は強酸と弱塩基から成る塩であるから、水に溶解するとトリエタノールアンモニウムイオンを生じ、生じたトリエタノールアンモニウムイオンは水と反応して、左式のようにトリエタノールアミンを生成する。

(HOCH2CH2)3NH++H2O〓(HOCH2CH2)3N+H3O+

このようなトリエタノールアミン水溶液にアルカリを添加してPH七・六にすると、式の平衝は右に傾き、トリエタノールアミンの濃度が更に増加するのであるから、審決の前記認定に誤りはない。

なお、原告は、「トリエタノールアミンは塩基性が強いので、生化学試薬においては、有機溶剤として使用されることはない」とも主張する。

しかしながら、トリエタノールアミンは塩基とアルコールの両反応を示す(すなわち、アミン類であると同時に、アルコール類である)ところ、本願公報にはアルコール類が有機溶剤として有用であることが明記されているのであるから、原告の右主張は失当である。

2  相違点の判断について

原告は、本願第一発明の液状酵素試薬組成物の「安定」とは(例えば、四~八℃の冷蔵条件下において一八か月以上のように)時間的な尺度が長いものであると主張する。

しかしながら、本願公報に「得た酵素試薬組成物を助酵素試薬と結合し、SCOT測定に使用した」(第九欄第二九行及び第三〇行)と記載されているように、本願第一発明の「安定化された液状酵素試薬組成物」は、製造に引き続いて測定に使用するためのものも含んでいる。したがつて、本願第一発明にいう「安定」から、「製造直後の安定」を除外する理由はないから(現に、本願第一発明の特許請求の範囲には、「製造直後にのみ安定」な液状酵素試薬組成物をその発明から除外する旨の記載は存しない。)、原告の右主張は失当である。

第四  証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願第一発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の当否を検討する。

1  成立に争いない甲第三号証(本願発明の特許出願公告公報)によれば、同公報には、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果について、左記のような記載があることが認められる。

(一)  技術的課題(目的)

本願発明は、液体媒体中のレービル酵素(すなわち、不安定な酵素)の安定化に関する(第三欄第三七行ないし第三八行)。

生化学的臨床検査において酵素測定法の利用が非常に増大し、多くのレービル成分の使用が要求され、これらの成分の数は更に増加する傾向にある。そして、精度ある確実な結果を得るためには、品質の厳しい測定管理が必要であるが、現在、酵素試薬の製造において最大の制限となるのは、製品の特徴が一定しないことである(第三欄第三九行ないし第四欄第一〇行)。

酵素の反応活性を安定化するための慣用技術は、凍結乾燥し調合して錠剤化に使用するような乾燥粉末の形にしたり、固形マトリツクス中に酵素の化学構造を封じ込めることによつて不動化する等の方法であるが、これらの方法は、多大の代価を要するのに均質な良質の製品を得ることが困難であるのみならず、製品の有用性が包装様式やその大きさに限定されることになる(第四欄第一一行ないし第二八行)。

本願発明は、右のような従来技術の問題点の解決を課題とする。

(二)  構成

右課題を解決するために、本願発明はその要旨とする構成を採用したものである(第一欄第二行ないし第一〇行、第五欄第一七行ないし第二三行)。

ある種の有機溶剤は、酵素を、微生物の作用を受けて分解することから保護して液媒中に安定化すると考えられる(酵素分子内部の化学構造が保護される必要はなく、反応位置が保護されていれば、酵素の触媒活性は完全に保たれる。)。溶剤の濃度が高ければ酵素は基質に対する触媒活性を有しないが、数か月から数年にわたる長期の貯蔵期間も高水準の活性度を保ち、稀釈状態に戻せば十分活性になる(第六欄一六行ないし第二九行)。

溶剤は、水と混和性があり、中性またはアルカリ性PHを有し、室温及び冷却室の温度において液状であり、酵素の反応位置と静電結合以外の分解的な反応をしないものであることが必要であつて、通常、エーテル類、ケトン類、スルホン類、スルホキシド類及びアルコール類等の極性有機溶剤が有用である(第七欄第三八行ないし第四四行)。

本願発明においては、少なくとも〇・〇五%のポリマーと少なくとも二〇%V/Vの有機溶剤を含む水性酵素基剤に親液化された乾燥酵素を、溶解することによつて、レービル酵素の安定化が達成される。この溶液は、変性点以下の温度に少なくとも三〇分保持された後、水で二〇倍以上に稀釈されるが、この間、更にポリマーを加えて稀釈状態におけるポリマーを〇・〇五%以上の基準に保つ。次いで、一〇〇~一〇〇〇〇I.U./lの適当な酵素濃度に稀釈した溶液を個々の容器に納め、三〇℃以下の温度で冷却貯蔵する(第五欄第二四行ないし第三五行)。

(三)  作用効果

本願発明の液状酵素試薬組成物によれば、レービル酵素が化学的に改良されて反応性が冒されることなく長期間安定となり、製造、包装、貯蔵及び使用を通じて品質が保証されるから、高価格の原因となる凍結乾燥あるいは厳密な包装などを避けることができる(第四欄第三一行ないし第三七行)。

液状の酵素系は扱いやすいから応用範囲が広く、手動の試験に好都合であるのみならず、自動化された器機分析への適用も確実である。また、成分の分離を簡単になし得るので、NAD/NADH系反応の比色測定において着色試薬を分離しなければならない場合に有利であるし、すべての副反応が終わつた後に望む反応を起こさせることも可能である(第四欄第三七行ないし第四一行、第五欄第一行ないし第七行、同欄第一四行ないし第一六行)。

本願発明によつて安定化された液状酵素試薬の感応性及び精度は、新鮮な試薬と比較しても一対一の相関を示した(第四欄第四二行ないし第五欄第一行)。

2  一方、引用例に審決認定の技術的事項が記載されていることは、原告も認めて争わないところである。

3  一致点の認定について

原告は、審決の「トリエタノールアミン塩酸塩は、PH七・六の液状組成物中においてはトリエタノールアミンとして存在する」との認定を争つている。

しかしながら、トリエタノールアミン塩酸塩を水に溶解したとき、生じたトリエタノールアンモニウムイオンの一部がトリエタノールアミンを生成する可能性があることは、原告も認めるところである。のみならず、成立に争いない乙第一号証(西垣貞男著「調剤学」株式会社南山堂発行)第二一一頁、及び、第二号証(化学大辞典編集委員会編「化学大辞典/」共立出版株式会社発行)第三一二頁によれば、強酸と弱塩基からなる塩の水溶液中においては弱塩基と水の反応が生ずること、及び、アミンと塩酸等が生成する塩は一般によく水に溶解し、水酸化アルカリを加えるとアミンを遊離することが認められる。したがつて、審決の前記認定は理論的にも正当と考えられる。

なお、原告は、「トリエタノールアミンは、生化学試薬においては、有機溶剤として使用されることはない」とも主張する。

しかしながら、成立に争いない乙第三号証(前掲「化学大辞典6」)第四三六頁、及び、甲第四号証(「THE MERCK INDEX」)第一〇七二頁によれば、トリエタノールアミンは塩基とアルコールの両反応を示すこと、及び、トリエタノールアミンの用途の一つとして「カゼイン用の溶媒」が挙げられていることが認められるところ、本願公報(第七欄第四一行ないし第四四行)にはその要旨とする有機溶剤としてアルコール類等の極性有機溶剤が有用である旨が記載されていることは前記のとおりであり、また、カゼインは蛋白質の一種であるが、酵素も蛋白質の一種にほかならないことを考慮すれば、引用例記載の発明において、トリエタノールアミンが有機緩衝剤としてのみ使用され有機溶剤としては使用されていないと解しなければならない理由は存しない。したがつて、原告の右主張は失当である。

以上のとおりであるから、審決の一致点の認定に誤りはない。

4  相違点の判断について

原告は、本願第一発明にいう「安定」と引用例記載の発明にいう「安定」は時間的な尺度を全く異にするから、引用例記載の酵素試験試薬も本願発明の液状酵素試薬組成物と同様の良好な安定性を示すとする趣旨の審決の認定判断は誤りであると主張する。

しかしながら、本願第一発明が、その要旨とする「安定」の意味を時間的な尺度をもつて限定していないことは、前記の特許請求の範囲の記載からも明らかであるから、原告の右主張は直ちに肯認し得ないものである。のみならず、成立に争いない甲第二号証(引用例)によれば、引用例記載の発明の例2は、「後処理」として、溶液を「凍結させて凍結乾燥する」処理を施すものであるが(第五欄第一一行、第四欄第四一行ないし第四三行)、凍結乾燥の後処理を施す前の溶液が基本的な構成において本願第一発明の構成と全く同一であると解すべきこと審決認定のとおりである以上、引用例に記載されている(凍結乾燥の後処理を施す前の)酵素試験試薬も本願第一発明の液状酵素試薬組成物と実質的に同一の安定性を有するものと推認することには十分な理由があるというべきであつて、右推認は、原告が援用する甲第六号証(原告の供述書)に記載されている実施例一例のみによつて左右することはできない。付言するに、原告が前掲甲第六号証を援用して主張するような「四~八℃の冷蔵条件下」において保存するとの前提に立つならば、引用例に記載されている(凍結乾燥の後処理を施す前の)酵素試験試薬も、相当の長期間にわたつて酵素活性を実用性ある範囲に保持し得るであろうと予測することは、当業者ならば容易であつたと考えるのが相当である(ちなみに、審決は、本願第一発明の液状酵素試薬組成物は主として凍結保存用に使用されるものであると認定しているが、本願第一発明は「液状」のままで保存し得る酵素試薬組成物に係るものであるから、審決の右認定は誤りである(本願公報第八欄第三三行の「冷凍貯蔵」は、明らかに「冷蔵貯蔵」の誤記であると認められる。)。しかしながら、右の点の誤りは、審決の結論に影響を及ぼすものではない。)。

したがつて、審決の相違点の判断にも誤りはない。

5  以上のとおりであるから、本願第一発明は引用例に記載されている技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとする審決の認定及び判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。

三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間を定めることについて行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第一五八条第二項の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤井俊彦 裁判官 春日民雄 裁判官 岩田嘉彦)

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