大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和62年(少)4576号 決定 1987年4月17日

少年 D・K子(昭48.3.24生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(虞犯事由及び虞犯性)

少年は、昭和61年11月26日付け警視庁○○警察署長からの虞犯通告により、東京都台東児童相談所から教護院横浜家庭学園に入所措置され、同年12月25日以降同学園で指導を受けていたが、再三同学園を無断で外出し、昭和62年3月24日午前2時ころ同学園を脱出した際は、その後家庭にも戻らないで、上野、池袋、新宿等で連日、行きずりの男性からの呼びかけを受けてホテルに宿泊して性交を行い、時には対償としての金銭を受け取り食事代にあてるなどの乱れた生活を送っていたもので、保護者の正当な監督に服さず、自己の徳性を害する行為をする性癖があり、その性格、環境に照して将来売春防止法違反等の罪を犯すおそれがある。(少年法3条1項3号イ、ニ該当)

(処遇)

少年は、両親の離婚により母親と生活を共にしていたが、中学入学後急速に生活態度が崩れ、不良交友、不純異性交遊、登校拒否等の問題行動が多発し、中学1年の3学期ころには、テレフォンクラブで知り合った成人男性とそのアパートへ泊り込んで性交するようになり、その結果妊娠し、昭和61年4月(中学2年次)、妊娠中絶手術を受けるに至り、その後も不登校、家出、不純異性交遊を繰り返し、同年11月26日前記のとおり児童相談所への身柄付通告があり、教護院入所措置となったが、横浜家庭学園在園中も、その指導に不満を持ち、無断外出を繰り返していたが、昭和62年3月24日の脱出の際は、帰家しないで昼間はデパートで時間を潰し、夜になるとその日の宿を得るために街で声をかけてくる男性を待ってホテルで性交を行い、時には対償としての金銭を受け取り、食事代を支弁するなど放浪生活を送っていた。

少年は、幼少時から家庭内の葛藤、父母の離婚等で受容体験が乏しく、基礎的生活習慣が身につかず、性格の偏倚もあり、幼稚園時代からしばしばいじめの対象となり、被害感、対人不信感も強い。他方、他人より抜きんでて見返してやろうとの自己顕示欲求も強い。

その他、調査、審判の結果明らかとなった少年の性格、行動傾向、生活史、家庭の保護能力等諸般の事情を総合考慮すると、この際は少年を少年院に収容して性格の矯正、非行性の除去を図り、職員との日常的触れ合いの中で情緒の安定化を進め、基礎的生活訓練を施し、学校教育へのつながりを持たせる指導を行うことが必要であり、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条2項を適用して主文のとおり決定し、なお少年の年齢、非行性の程度、本人の高校進学の希望等を考慮すると、その処遇は比較的短期間で足りるものと思料する。

(裁判官 西村尤克)

〔参考〕 処遇勧告書

昭和62年少第4576号

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例