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東京家庭裁判所 昭和61年(家)4525号 審判 1997年2月28日

申立人 小田哲也 外3名

相手方 中条広子 外1名

主文

1  被相続人小田慎之介及び小田良枝の各遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙遺産目録1(1)記載の土地を、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が各5分の1、申立人小田涼子及び同小田豊が各10分の1の持分割合で共有取得する。

(2)  別紙遺産目録1(2)記載の土地(共有持分2分の1)を申立人小田哲也が単独で取得する。

(3)  別紙遺産目録1(3)記載の土地を申立人小田貞夫が単独で取得する。

(4)  別紙遺産目録1(4)記載の株式6105株を申立人小田哲也が単独で取得する。

(5)  別紙遺産目録1(5)記載の貸付金債権を相手方中条広子が単独で取得する。

(6)  別紙遺産目録1(6)記載の絵画1枚を相手方佐川日出子が単独で取得する。

2  申立人小田哲也は、1項の遺産取得の代償として本件審判確定の日から3か月以内に次の金員を各支払え。

(1)  相手方中条広子に対して654万円

(2)  相手方佐川日出子に対して1036万円

(3)  申立人小田涼子に対して395万円

(4)  申立人小田豊に対して395万円

3  申立人小田貞夫は、1項の遺産取得の代償として本審判確定後の日から3か月以内に次の金員を各支払え。

(1)  相手方中条広子に対して554万円

(2)  相手方佐川日出子に対して879万円

(3)  申立人小田涼子に対して335万円

(4)  申立人小田豊に対して335万円

4  本件手続費用中、鑑定人浅井公平に支払った鑑定費用(2回分)は、当時者全員にその法定相続分に従って負担させることとし(申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が各24分の5の割合、申立人小田涼子及び同小田豊が各24分の2の割合)、その余の手続費用は各自の負担とする。

理由

本件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断の要旨は、以下のとおりである。

1  相続の開始と相続人及び法定相続分

(1)  被相続人小田慎之介は昭和56年11月1日死亡し、同人の遺産については、妻である被相続人小田良枝、申立人4名(申立人小田哲也、同小田貞夫、同小田涼子及び同小田豊)、相手方2名(相手方中条広子及び同佐川日出子)、及び亡申立人小田利樹がそれぞれ相続した(申立人小田涼子及び同小田豊は代襲相続。)

(2)  相続人亡小田良校は昭和57年2月18日に死亡し、同人の遺産については、上記申立人4名、相手方2名及び亡申立人小田利樹がそれぞれ相続した。

(3)  亡申立人小田利樹は平成5年5月22日ころに死亡し、同人の遺産についても相続が開始したが、同人の相続人である申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子は限定承認の申述をなし、申立人小田豊、同小田涼子は相続放棄の申述をなし、東京家庭裁判所八王子支部において亡小田利樹の遺産については、相続財産管理人として相手方佐川日出子代理人である弁護士金田竜司が選任され、その手続が取られている。

(4)  その結果、被相続人小田慎之介の遺産についての現在の相続人は申立人4名と相手方2名である。また、被相続人小田良枝の遺産は、後記のとおり被相続人小田慎之介の遺産に対する法定相続分(2分の1)のみである。なお、亡小田利樹の被相続人小田慎之介及び被相続人小田良枝の遺産に対する取得割合は、被相続人小田慎之介の遺産についての12分の1(法定相続分)と被相続人小田良枝の遺産についての6分の1(法定相続分、この実質は被相続人小田慎之介の遺産に対する12分の1の持分である)相当分である。

(5)  以上によると、亡小田慎之介の遺産に対する申立人4名と相手方2名の最終的な取得割合は、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が各24分の5(うち、各24分の1は亡小田利樹の承継人としての取得分である)、申立人小田豊及び同小田涼子が各24分の2である。

2  遺産の範囲について

本件遺産分割の対象となる遺産の範囲については、被相続人小田慎之介の遺産については別紙遺産目録1記録のとおり、被相続人小田良枝の遺産については別紙遺産目録2記録のとおりとすることにつき当時者全員が合意をしているから、これを判断の基礎とするのが相当であり、これによれば被相続人らの各遺産は別紙遺産目録1、2記載のとおりと認められる。

3  遺産の評価額について

(1)  鑑定人浅井公平の鑑定の結果(平成5年5月20日付不動産鑑定評価書及び平成9年1月29日付「補充評価書」)によれば、別紙遺産目録記載の土地の現在の評価額は、次のとおりであると認められる。

<1>  別紙遺産目録1の1記載の土地の価額(底地権価額)は2700万円

<2>  別紙遺産目録1の2記載の上地(共有持分2分の1)の価額(使用貸借権付の底地価額)は3869万円

<3>  別紙遺産目録1の3記載の土地の価額(使用貸借権付の底地価額)は4066万円

なお、申立人小田哲也は別紙遺産目録1の1の土地について、小田貞夫は同目録2の土地についてそれぞれ自身が借地権を有している旨主張するが、申立人らが上記土地について借地権を有していることを認めるに足る証拠はなく、申立人らが有している上記土地の利用権は使用貸借権と認めるのが相当である。

(2)  次の遺産については、当事者全員がその評価額について合意をしているから、これを判断の基礎とするのが相当であり、これによれば別紙遺産目録1の4ないし6の各遺産の評価額は、次のとおりである。

<1>  別紙遺産目録1の4の記載の株式の1株あたりの価額は941円であり、遺産である6105株の合計価額は574万4805円である。

<2>  別紙遺産目録1の5の記載の貸付金債権の額については、小田勝に対する貸付債権額が383万4187円である。小田亜紀子に対する貸付債権額が369万0335円である。

<3>  別紙遺産目録1の6記載の絵画の価額は45万円である。

(3)  以上の遺産の評価額の合計は、1億2006万9327円となる。

4  相続分の算定

申立人ら及び相手方らの各法定相続分は、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が各24分の5(うち、各24分の1は小田利樹の承継人としての相続分であり、この分は亡小田利樹の債権者の責任財産となる。)、申立人小田豊及び同小田涼子が各24分の2である。したがって、その具体的相続分は、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子については各2501万4443円(うち亡小田利樹の承継人としての相続分は各500万2888円であり、この額が亡小田利樹の債権者の責任財産となる。)、申立人小田豊、同小田涼子については各1000万5777円となる。したがって、亡利樹相続財産管理人弁護士金田竜司が亡小田利樹の債権者の責任財産として管理すべき分は合計2001万1552円相当分となる。

5  分割方法について

当事者全員は、本件遺産の分割方法については、次のとおり取得することを希望し、その旨合意しているから、この合意に基づき本件遺産を次のとおり分割するのが相当である。

(1)  別紙遺産目録の1の1記載の土地については、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が持分各5分の1、申立人小田涼子及び同小田豊が持分各10分の1の割合で共有取得する。

(2)  別紙遺産目録1の2記載の土地(共有持分2分の1)を申立人小田哲也が単独で取得する。

(3)  別紙遺産目録1の3記載の土地を申立人小田貞夫が単独で取得する。

(4)  別紙遺産目録1の4記載の株式6105株を申立人小田哲也が単独で取得する。

(5)  別紙遺産目録1の5記載の各貸付金債権を相手方中条広子が単独で取得する。

(6)  別紙遺産目録1の6記載の絵画1枚を相手方佐川日出子が単独で取得する。

6  代償金の支払いについて

以上により、遺産を分割した場合の当時者全員の各取得分の価額と具体的相続分との差額は次のとおりとなる。

具体的相続分  取得価額     差額

<1>申立人小田哲也

2501万4443円 4983万4805円 +2482万0362円

<2>申立人小田貞夫

2501万4443円 4606万0000円 +2104万5557円

<3>相手方中条広子

2501万4443円 1292万4522円 -1208万9921円

<4>相手方佐川日出子

2501万4443円  585万0000円 -1916万4443円

<5>申立人小田涼子

1000万5777円  270万0000円  -730万5777円

<6>申立人小田豊

1000万5777円  270万0000円  -730万5777円

したがって、申立人小田哲也及び小田貞夫はその具体的相続分を超えて遺産を取得することになるから、その差額分を代償金としてその余の相続人らに支払うべきものであり、申立人小田哲也及び同小田貞夫が、相手方中条広子、同佐川日出子、申立人小田涼子及び同小田豊に支払うべき代償金額は次のとおりである。

(1)  申立人小田哲也は、次のとおり代償金を支払うべきである。

<1>相手方中条広子に対して

654万0000円 (1万円未満切り捨て)

<2>相手方佐川日出子に対して

1036万0000円 (1万円未満切り捨て)

<3>申立人小田涼子に対して

395万0000円 (1万円未満切り捨て)

<4>申立人小田豊に対して

395万0000円 (1万円未満切り捨て)

(計算式)

<1>相手方中条広子の取得額について

1208万9921円+1916万4443円+730万5777円×2 = 4586万5918円

1208万9921円÷4586万5918円 = 0.2635(26.35%)

2482万0362円×0.2635 = 654万円(1万円未満切り捨て)

<2>相手方佐川日出子の取得額について

1916万4443円÷4586万5918円 = 0.4178(41.78%)

2482万0362円×0.4178=1036万円(1万円未満切り捨て)

<3>相手方小田涼子、同小田豊の取得額について

730万5777円÷4586万5918円 = 0.1592(15.92%)

2482万0362円×0.1592 = 395万円(1万円未満切り捨て)

(2) 申立人小田貞夫は、次のとおり代償金を支払うべきである。

<1>相手方中条広子に対して

554万0000円 (1万円未満切り捨て)

<2>相手方佐川日出子に対して

879万0000円 (1万円未満切り捨て)

<3>申立人小田涼子に対して

335万0000円 (1万円未満切り捨て)

<4>申立人小田豊に対して

335万0000円 (1万円未満切り捨て)

(計算式)

<1>相手方中条広子の取得額について

1208万9921円+1916万4443円+730万5777円×2 = 4586万5918円

1208万9921円÷4586万5918円 = 0.2635(26.35%)

2104万5557円×0.2635 = 554万円(1万円未満切り捨て)

<2>相手方佐川日出子の取得額について

1916万4443円÷4586万5918円 = 0.4178(41.78%)

2104万5557円×0.4178 = 879万円(1万円未満切り捨て)

<3>相手方小田涼子、同小田豊の取得額について

730万5777円÷4586万5918円 = 0.1592(15.92%)

2104万5557円×0.1592 = 335万円(1万円未満切り捨て)

(3) 代償金の支払い時期

前記代償金の支払い時期については、本件審判確定後3か月の猶予期間を置くのが相当である。

7  その他

(1)  限定承認手続と遺産分割手続との関係について

本件においては、前記のように申立人亡小田利樹が本件手続中に死亡し、その相続については、相続人のうち本件の申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が限定承認の申述をなし、相続財産管理人として相手方佐川日出子代理人である弁護士金田竜司が選任されているので、限定承認の手続と遺産分割手続との関係が問題となるが、限定承認の手続が取られた場合にも相続人は相続財産について処分権を失わないものと解されるから(民法921条1号)、遺産分割手続を進行させることができるものというべきである(特に、限定承認の手続については、その清算終了に関する手続の規定がなく、手続の終了時期が不明確であるから、もし、本件のように遺産分割手続中に相続人の1人が死亡して再転相続が発生し、死亡した相続人の相続財産について限定承認の手続が取られたような場合に遺産分割手続の進行ができないとすれば、長期にわたって遺産分割手続を完結することができなくなるという不都合な結果を招く可能性がある)。なお、このような場合に、死亡した相続人(申立人亡利樹)の相続財産(本件では相続分持分割合)についての遺産分割手続を進行させ、調停又は審判により亡利樹の相続財産の帰属が決定されたとしても、亡利樹の相続財産の全部又は一部を処分したものとして法定単純承認とみなされるものではないと解すべきである。

また、申立人小田哲也、同小田貞夫、相手方中条広子及び同佐川日出子が本件遺産分割手続により取得した財産のうち、亡小田利樹の承継人としての相続した各500万2888円相当分が亡小田利樹の債権者の責任財産となることは前記のとおりである。

(2)  特別受益について

本件の当事者全員は最終的には特別受益の主張をそれぞれ撤回しているので、この点について判断を示す必要はないところであるが、念のために本件における特別受益の主張についての当裁判所の見解を述べる。

本件においては、申立人小田涼子及び同小田豊を除くその余の当事者は何れも、相互に特別受益の主張をしているが、そのうち相手方佐川日出子が昭和32年ころに自宅建築資金として100万円を被相続人小田慎之介から贈与されたとの事実を自認している他はこれを認めるに足る証拠がない。

また、本件においては、その審判手続進行中において、遺産の重要部分である新宿区新宿1丁目の不動産が裁判所の了解なく約78億円で売却され、その売却代金については、本件各相続人らにおいて既に高額の分配を受けており、本件遺産の大部分(評価額にして約98パーセント以上)は既に事実上解決済みとなっている。したがって、当事者らの特別受益の主張のうち、相手方佐川日出子が自認する前記100万円の建築資金の贈与の点はもとより、仮に他の相続人が贈与を受けた事実が認められるとしても、これらはいずれも相続財産全体の評価額と比較すれば極く微少な額の贈与に過ぎず、遺産分割に際して相続人間の公平を図るための修正要素として設けられた特別受益制度の趣旨や被相続人小田慎之介の資産額、社会的地位等に照らせば、当然に持ち戻し免除の意思表示があったものと認められるべきものであり、到底採用できないものである。

8  結論よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 小林崇)

別紙 遺産目録<省略>

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