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東京家庭裁判所 平成8年(少)3765号 決定 1996年9月26日

少年 N・K(昭和52.10.24生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

第1  遊び仲間のA、B、C、D、Eらと、帰宅途中の女性をナンパして姦淫しようと企て、平成8年7月3日午後11時35分ころ、東京都豊島区○○×丁目×番×号所在の○○ビル先路上を帰宅途中のF子(当時18歳)に対し、「送っていくから乗れよ」等と声をかけ、A所有の自家用普通乗用自動車(○○××た××××)に強引に乗車させ、翌4日午前1時30分ころ、前記A、Bらと、同女を強いて姦淫することを共謀の上、埼玉県和光市○○××番地先の○○河川敷内に停車させた前記車両内において、少年及びBにおいて同女を押え付け、その着衣を脱がせようとするなどの暴行を加え、同女の反抗を抑圧して強いて姦淫しようとしたが、同女が激しく抵抗したため、その目的を遂げなかった

第2  Bらと共謀の上、前記F子の所持品を強取しようと企て、前同日午前2時ころ、前記○○河川敷内において、少年において同女の背後から両腕を押さえるなどの暴行を加え、その反抗を抑圧した上、Bにおいて同女が所持していた現金約1万円及び定期券1枚ほか5点在中のショルダーバッグ1個(時価合計約13万0400円相当)を取り上げ、これを強取した

ものである。

(法令の適用)

第1の事実について、刑法60条、179条、177条前段

第2の事実について、刑法60条、236条1項

(処遇の理由)

本件は、中学校時代からの遊び仲間らと夜遊びを続けていた少年らにおいて、ナンパと称してA所有の車両に被害者を強引に乗車させた上、人気がなく強姦可能な場所としてかねて仲間内で了解していた○○河川敷に被害者を連行した上、同女に対し執拗に暴行を加え姦淫しようとしたという強姦未遂事犯と、その際に行った強盗事犯を内容とするものであるが、少年は、実行行為を直接かつ積極的に担当していたものである。

少年は、平成7年5月から、ネフローゼ症候群により10か月におよぶ入院生活を余儀なくされたが、その際抑圧され不自由な生活を送ったとの思いから、退院後は、投薬を受けながら連日夜遊びに耽けるという不健全な生活を続ける中で本件に至ったもので、親においても、その間適切な指導を行なわないまま経過したものである。

少年がこのような行動に至った背景としては、自己を抑圧してきた少年の生育歴と、自分を受け入れてくれる仲間との関係を重視し、その中で自己を受け入れられたいとして軽佻に振る舞ってきたことなどによるものと認められるが、このような交友関係の問題性についての受け止め方は未だ十分であるとは言い難い。

上記のような本件非行の内容、保護者の監護能力が十分とは言い難いこと、少年が本件非行の重大性をさほど深くは認識しておらず、内省も表層的とみられることなど考慮すると、少年がこれまで保護処分を受けた経験を有していないことを考慮しても、少年に対しては、健全な価値観を植え付けるため、この際矯正施設へ収容し強力な働き掛けを行う必要があると思料するが、現在もネフローゼ症候群により加療中であることを考慮し、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条により、少年を医療少年院に送致することとする。なお、本件において果たした少年の役割と共犯少年の処分状況に加えて、現在は離縁しているとはいえ父親役をつとめる事実上の義父を含め、少年の家庭において、少年の更生への意欲を示していることなどの事情も認められるので、これらの事情を勘案し、医療少年院への送致ではあるが、別途少年院に対し、短期集中的な指導を求めるものである。

(裁判官 古田浩)

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