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東京地方裁判所八王子支部 昭和58年(コ)1号 決定 1984年8月10日

申立人(債務者)

大槻利衛

右の者申立の昭和五八年(コ)第一号和議開始申立事件につき、当裁判所は、職権により(昭和五九年(モ)第一七七一号)和議開始前の処分として、保証を立てさせないでつぎのとおり決定する。

主文

一、申立人につき、保全管理人による管理を命ずる。

二、前項の保全管理人として

東京都千代田区麹町一丁目三番地麹町第二センタービル六〇二

弁護士 赤坂裕彦

を選任する。

三、保全管理人は、左の行為をするには、当裁判所の許可を得なければならない。

(一)  申立人所有の別紙目録記載の物件について、所有権の譲渡、担保権、賃借権の設定その他一切の処分

(二)  つぎのものを除く一切の和議債権についての支払および担保の提供。

(1)  昭和五八年六月二五日以降に申立人が「大槻病院」において使用するために購入する薬品および医療材料費、たゞし毎月二五日から翌月二四日の間において金一〇〇〇万円を超えない範囲とする。

(2)  前同日以降に申立人が「大槻病院」において使用するために、リースした医療機器のリース代。たゞし毎月二五日から翌月二四日の間において金五五〇万円を超えない範囲とする。

(3)  公祖公課、電気、ガス、水道、電話料ならびに従業員との雇傭契約関係にもとづき生じた債務。

(4)  浄化槽清掃、汚物処理、消防施設点検、補修に要する費用。

(5)  従業員用宿舎、従業員および来客用駐車場ならびに患者用寝具等の賃借料。

(6)  従業員の交通費、新聞代その他雑費。たゞし毎月二五日から翌月二四日の間において金二〇万円を超えない範囲とする。

(三)  借財(名目方法の如何を問わない。)

(四)  訴の提起及和解。

(五)  保全管理人は、その管理する財産、業務特に各月毎の収支の状況を翌月中に当裁判所および整理委員に報告しなければならない。

(裁判官 安田実)

〔物件目録(一)〕

一、所在 町田市中町壱丁目

地番 四六六番壱

地目 宅地

地積 851.77平方メートル

二、所在 町田市中町壱丁目四六六番地壱

家屋番号 四六六番壱

種類 病院

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根地下壱階付参階建

床面積

壱階 519.30平方メートル

弐階 519.30平方メートル

参階 461.57平方メートル

地下壱階 260.46平方メートル

三、所在 町田市中町壱丁目

地番 四六八番参

地目 宅地

地積 264.46平方メートル

四、所在 町田市中町壱丁目四六八番地参

家屋番号 四六八番参の弐

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造瓦葺地下壱階付弐階建

床面積

壱階 105.22平方メートル

弐階 101.23平方メートル

地下壱階 75.84平方メートル

五、所在 相模原市文京一丁目

地番 七六五番壱七

地目 宅地

地積 859.50平方メートル

六、所在 右同所

地番 七六五番参

地目 宅地

地積 1791.96平方メートル

七、所在 相模原市文京一丁目七六五番地壱七

家屋番号 七六五番壱七

種類 幼稚園

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根弐階建

床面積

壱階 366.84平方メートル

弐階 348.84平方メートル

八、所在 相模原市文京一丁目七六五番地参

家屋番号 七六五番参

種類 幼稚園

構造 木造亜鉛メッキ鋼板交葺弐階建

床面積

壱階 451.23平方メートル

弐階 39.66平方メートル

一〇、所在 町田市旭町弐丁目

地番 壱六九九番六四

地目 宅地

地積 69.98平方メートル

一一、所在 右同所

地番 壱六九九番六七

地目 宅地

地積 7.88平方メートル

一二、所在 町田市旭町弐丁目壱六九九番地六四

家屋番号 壱六九九番六四

種類 店舗居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建

床面積

一階 36.35平方メートル

二階 34.70平方メートル

上申書

〔上申の趣旨〕

現在債務者大槻利衛が請求・受領している社会保険、国民健康保険、労働者災害保険及び自動車賠償保険からの各診療報酬について、爾後、右債務者大槻による請求・受領を禁じ、御庁の選任する然るべき者に右請求・受領及びその支出の管理を命ぜられたい。

〔上申の理由〕

(はじめに)

債務者大槻利衛は、後に詳述するように、昭和五八年六月二〇日御庁に対し本件和議開始決定の申立を行い、同月二五日、その経営する病院の運営に欠かせない費用を除く一切の和議債権についての弁済禁止の保全命令を受けたにも拘らず、暴力金融筋の強硬な取立てに抗しきれず、自ら申立てて得た右命令に反して、多額の不法な支払いを続け、かえつて、右命令において支払いが認められている病院の運営に必要な医療機器のリース料の支払いをしなくなつている。

そして、同債務者の代理人赤坂弁護士は、右不法を監督・是正すべき立場にあるにも拘らず、これを拱手傍観するばかりか、御庁に対し右事実を報告せず、極めて不可解な内容の報告書を提出し、更に近時にはこのような報告書の提出さえ怠つている。

更に、ここへ来て、新生日本協議会なる右翼団体が大槻病院に入り込み強硬な取立てを始めており、このままの状態を放置すれば、裁判所の保全命令を無視し、強硬に違法な暴力的取立てをする一部の街金融業者に対してのみ弁済がなされて、債務者の財産は流失してしまい、かえつて、右保全命令によつても支払われるべき債務の支払いすらなされないという著しい不公平、不正義が行われることは確実である。

このような不公平、不正義を防ぎ、債務者の財産流失をくい止め、各債権者間の平等を図り更には債務者の申立てた和議開始を可能ならしめるためには、債務者の最大の収入源である各種保険診療収入を不法に支出されることのないよう確実に管理することが必要であり、そのためにはもはや従前のような単に債務者に弁済を禁ずる保全命令では足りず、然るべき管理人を選任してその管理に委ねる他はないと思料されるため、本上申に及ぶものである。

一、当事者

1 上申人

上申人は、頭書事件の申立人大槻病院こと債務者大槻利衛に対し、CTスキャナー断層装置等約一億円相当(残債ベース)をリースしているリース会社であるが、右和議事件の保全命令においても弁済すべきものとされている月々のリース料を同債務者が街金融筋への不法な支払いに流用して支払わず、上申人の再三の催告を無視するため、巳むを得ず、約定に従つて本年六月七日リース契約を解除した。

この解除により、上申人は債務者大槻に対し残債務相当額(約一億円)の規定損害金債権を有するものである。

また、後記のように、債務者大槻が昭和五九年六月一五日頃、右翼団体新生日本協議会に上申人の所有にかかる右リース物件を含む病院設置の全医療機器の処分を委ねる旨の念書を差入れたことから、上申人は、機器の持去り等による莫大な損害を避けるため巳むを得ず、同年七月五日御庁に対し医療機器搬出等仮処分を申請し、現在御庁に係属中である(御庁昭和五九年(ヨ)第三八三号)。

2 債務者大槻利衛

債務者大槻は東京都町田市中町一丁目二八番一〇号において大槻病院を経営する個人開業医であるが、昭和五八年六月二〇日御庁に対し、経営不振を理由として本件和議開始決定の申立てを行い、同月二五日には病院運営に欠かせない費用を除く一切の和議債権についての弁済禁止の決定を得た(昭和五八年(モ)第一二一一号)。さらに、翌七月二九日には大槻病院労働組合の申立てにより、不動産につき処分禁止の決定(昭和五八年(モ)第一四五九号)が発せられた。

二、債務者の保全命令違反行為等

1 上申人の有するリース料債権については、右弁済禁止の保全命令によつても、病院で日々使用する薬品および医療材料費・電気・ガス・電話料・従業員の給料などと共に、「本日以降に申立人大槻利衛が大槻病院において使用するためにリースした医療機器のリース代。ただし毎月二五日から翌月二四日の間において金五五〇万円を超えない範囲とする」として除外事例に挙げられており、支払うべきものとされていた。なお、右決定で支払いを許されたリース料の月額は、上申人に対するリース料の合計二、八九八、七〇〇円を含め、現実に病院で使用する医療機器一切のリース料を支払うに足る額として、債務者大槻の御庁に対する申述に基づき決定されたものである。

2 右和議開始決定の申立てに際し、債務者大槻が御庁に上申したところによれば、街金融に対する債務が四億七千万円余、正規の金融機関に対する債務が約七億八千万円あるが、病院の収入は月間四〇〇〇万ないし五〇〇〇万円あつて、諸経費(人件費・薬品材料費・電気ガス代と共に医療機器のリース代がこれに含まれることは自明である)を差引いても約一〇〇〇万円の利益を計上することができることになつている。

従つて、和議が成立するまで金融関係の支払いを保全命令によつて止めるならば、リース料を含む諸経費は余裕を以て支払うことができ、なお余剰金を蓄積できる筈であつた。

3 然るに、債務者大槻は暴力金融筋の取立てに抗しきれず、自ら申立てて得た弁済禁止の保全命令に反して、多額の不法な支払いを続けていることが確実であり、その結果、資金不足に陥り、上申人に対するリース料の支払いをしなくなつた。

そこで、上申人は、再三口頭で支払い方の督促を行つたが、一向に反応がないので、昭和五八年一〇月四日付内容証明郵便にて厳重に催告すると共に、誠意ある回答のないときは、リース物件を引き揚げざるを得ない旨警告した。

然るところ、一〇月二一日一ケ月分の支払いがなされ、その後は債務者大槻の代理人である赤坂裕彦弁護士を相手とした支払交渉に移行したが、同弁護士は本件リース料の支払いの必要性を認めつつも、資金難を理由に継続的な支払いを留保し、現在に至るまでわずかに二回分(同年一二月二八日、本年二月二五日)が払い込まれたのみである。

本年五月頃から、同弁護士が具体的に日時を指定してなした支払約束を債務者大槻が公然と無視するようになり、同弁護士を介した交渉は無意味と判断されるようになつた。上申人としては巳むを得ず、直接債務者大槻に対し、昭和五九年五月二八日付内容証明郵便で、リース料の支払い方の催告をなし、債務者がそれに応じない場合は物件の引き揚げを行う旨通告したが、債務者大槻は一向に誠意ある対応をせず、相変らず街金融に対する違法な弁済を続けている模様である。そこで、上申人は、同年六月七日、内容証明郵便により本件リース契約を解除したものである。

4 債務者大槻は、以上詳述したように、街金融筋からの暴力的な取立てにあつて、再三に亘り御庁の保全命令に違背して支払いをしていたものであるが、本年六月一五日頃街金融から債権の譲渡を受けたと自称する右翼団体新生日本協議会が病院に入り込み、同債務者をして、六月二一日までにまとまつた金額を同団体に支払わないときは、病院に設置されている全ての医療機器につき、リース物件であると否とを問わず、同団体にて処分されても議なき旨の念書を作成交付させた。そして支払期日である六月二一日に至り、胸に日の丸のマークをつけた一見右翼風の男五、六名が同病院に押しかけ、今にも医療機器に手を触れんばかりの気勢を示して大声をあげ、債務者大槻につきまとつて脅したが、結局最終的には支払期限を七月中旬頃に延期してようやく退去させた模様である。

新生日本協議会は、暴力団山口組系といわれており、金融、総会屋などを手がけ、いわゆる行動右翼に属する団体である。自ら政治結社を名乗り街頭宣伝活動を積極的に行つているが、その資金源は専ら債権の取立てであると推測される。

5 このように、御庁の保全命令に拘らず、債務者大槻は街金融からの取り立てに抗し切れず不法な弁済を続けており、これに対処すべき立場にある同債務者の和議事件代理人赤坂弁護士はこれを拱手傍観するばかりか、御庁に対し、右事実を報告せず、不可解な報告書を提出している。

即ち、同弁護士作成の報告書によれば、和議開始申立以降の収入は昭和五八年六月および七月が四〇〇〇万円強、同年八月から一一月まで三六〇〇万から三八〇〇万円台で推移し、同年一二月は五五〇〇万円台となつている(昭和五九年については一月および二月分の収支報告が出されてはいるが、従来とは記載方法を変え収入額を特定することは困難である)。然しながら、この収入額は病院における業務繁閑の状況を直接知り得る立場にある大槻病院労働組合の推計と全く異なり、昭和五八年一二月分を別とすれば、いずれも五〇〇万円ないし一五〇〇万円低額となつているのである。この差額は病院収入の過少報告と考えられる。また、同じく支払賃料(リース料)は、昭和五八年六月以降同年一二月まで上申人に対するリース料の支払いをした月でも四〇〇万円強に過ぎなかつたにも拘らず、本年一月になつて突如一二〇〇万円を超えるようになり、同年二月にも同額以上の支払いがなされたことになつている(別表参照)。この点についての同弁護士からの釈明は全くなく、その他どの資料をみても、右支払いの根拠となるような事項は見当らない。そして、三月以降についてはこのような収支報告書すら提出されていない現状である。

街金融筋への違法な支払いについていえば、大槻病院労働組合によつて、暴力的な取立ての状況の一部が目撃されており、再三支払いがなされていることは確実であるが、赤坂弁護士からの御庁への報告は一切ない。

三、新たな保全処分の必要性

以上、明らかなように、債務者大槻は一部街金融業者の強硬な暴力的取立てに対しては全く無力であり、なす術無く不法な支払いを繰り返しており、債務者の代理人もまた、これに対し有効な手段を採り得ず拱手傍観するばかりか、これを糊塗する不可解な内容の報告書を御庁に対し提出してきている。

このようなこれまでの経緯に鑑みるに、もはや、債務者大槻には御庁による弁済禁止の保全命令を活用して財産の流失を防いでいく能力は失われていると断ぜざるを得ず、このままの状態を放置すれば、今後とも右保全命令に違反した一部暴力金融筋への弁済が続けられて、債権者間の不公平を著しく拡大させながら破産という事態にたち至ることは確実である。

このような不公平、不正義を防ぎ、債務者の財産の流失をくい止め、各債権者間の平等を図り、更には債務者の申立てた和議の開始を可能ならしめるためには、債務者の最大収入源である各種保険診療収入を、これが不法に支出されることのないよう、一部暴力金融筋の手の届かない所で確実に管理することが是非とも必要である。そしてそのためには、もはや従前のような単に債務者に弁済を禁ずるのみでは実効性に乏しく、御庁において職権により然るべき財産管理人を選任してその管理に委ねる他はないと思料する次第である。

(別表)

年月

支払賃借(リース)料

備考

58年1月

3,892(千円)

<左記金額の原資料>

○58年1月~12月については,東京地方裁判所八王子支部昭和58年(コ)第1号和議開始申立事件の申立人(大槻利衛)代理人弁護土赤坂裕彦,同鈴木輝雄作成59年2月20日付経過報告書添付の「大槻病院収支一覧」の内のリース料欄。

○59年1月については,上記事件の赤坂裕彦弁護士作成の59年3月23日付「金銭収支状況報告書」別紙の賃借料欄。

○59年2月については,同作成の59年4月2日付「金銭収支状況報告書」別紙の賃借料欄。

2月

4,649(〃)

3月

4,649(〃)

4月

4,649(〃)

5月

6,698(〃)

6月

578(〃)

7月

472(〃)

8月

916(〃)

9月

1,756(〃)

10月

4,124(〃)

11月

1,355(〃)

12月

4,303(〃)

59年1月

12,169,130

2月

12,419,830

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