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東京地方裁判所八王子支部 平成11年(ヲ)5471号 決定 1999年7月19日

主文

東京地方裁判所八王子支部執行官は、東京地方裁判所八王子支部平成一一年(ワ)第九二三号建物明渡等請求事件の乙山松夫及び丙川竹夫に対する執行力ある債務名義の正本に基づく申立人の申立にかかる強制執行を実施せよ。

理由

一  本件申立の趣旨及び理由は、別紙「執行異議申立書」記載のとおりである。

二  そこで検討するに、本件申立は、執行要件を備え、執行障害となる事実が認められないから、執行官は速かに執行を実施すべきである。

なお付言するに、一件記録によれば、本件申立の目的物件であるマンション(以下「本件マンション」という。)は、もと乙山松夫(以下「松夫」という。)の妻乙山花子(以下「花子」という。)の所有であったこと、そこで、申立外戊田協同組合が申し立てた当庁平成六年(ケ)第一八〇号不動産競売申立事件の現況調査においては、本件マンションは、花子の占有にかかるものであり、同居している夫である松夫はその占有補助者であると認定されたこと、同事件において前記協同組合により申し立てられた売却のための保全処分決定第二項において、花子及び松夫に対して占有移転禁止が命じられ(平成九年(ヲ)第五二七九号事件)、右保全処分は平成九年八月二五日に執行されたが、本件建物の所有者が花子であることから、同女が占有者で、松夫は占有補助者であると認定されたこと(平成九年(執ロ)第六〇五号、第六〇六号。なお、右保全処分申立は平成一一年五月一〇日取り下げられ、そのころ花子及び松夫らに通知された。)、申立人は、前記競売申立事件において、平成一一年一月一二日、本件マンションを買い受け、同月一四日所有権移転登記を受けた上、同年四月一日、松夫及び丙川竹夫(以下「丙川」という。)を債務者として本件マンションにつき占有移転禁止仮処分(当庁平成一一年(ヨ)第一五〇号)を得たこと、同月一三日行われた右仮処分の執行において(平成一一年(執ロ)第二五号、第二六号事件)は、松夫及び丙川が占有者と認定され、さらに花子も「当庁平成九年(執ロ)第六〇五号、六〇六号事件の執行により、」占有者と認められたこと、申立人はさらに松夫及び丙川を被告として右仮処分事件の本案訴訟を提起し、主文掲記の判決を得、本件執行申立に及んだことが認められる。

以上認定の事実を前提に考えるに、前記競売申立事件においては、本件マンションは花子の所有であったものであり、同女が占有者とされ、同女の夫である松夫は占有補助者として取り扱われるべきものであったが、右競売申立事件において申立人は本件マンションを買い受け、花子は本件マンションの所有権を失ったものであるから、本件執行にあたっては、別個に占有認定をすべきものである。そして、申立人が提出する資料によれば、住民票上夫である松夫が所帯主であり、本件マンションには同人の表札がかかっていることが窺われるから、他に特段の事情がない限り、現時点においては、松夫が本件マンションの占有者であり、妻である花子は同人の占有補助者として居住しているものと見るべきものと考えられるところである。

三  よって、主文のとおり決定する。

(裁判官 満田明彦)

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