大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和63年(ヨ)2224号 決定 1989年3月24日

申請人

古岡秀人

申請人

古岡滉

右申請人両名訴訟代理人弁護士

青山周

宮本光雄

被申請人

東京ふじせ企画労働組合

右代表者執行委員長

三巻義明

被申請人

国分真一

被申請人

竹内輝夫

被申請人

岩崎治

被申請人

三巻義明

右被申請人ら訴訟代理人弁護士

山口広

森井利和

中光弘治

主文

一  被申請人らは、次に掲げる各行為を、自らなし、あるいは被申請人東京ふじせ労働組合の組合員または支援団体の団体員らをしてなさしめてはならない。

1  申請人古岡秀人に対し、

(一)  別紙一1記載の同申請人の居宅に赴き、インターホンを連打するなどして面会を強要すること。

(二)  右居宅の門前またはその付近路上において、拡声器を用いて演説を行い、またはシュプレヒコールを反覆連呼するなどして喧騒音を発すること。

2  申請人古岡滉に対し、

(一)  別紙一2記載の同申請人の居宅に赴き、インターホンを連打するなどして面会を強要すること。

(二)  右居宅の門前またはその付近路上において、拡声器を用いて演説を行い、またはシュプレヒコールを反覆連呼するなどして喧騒音を発すること。

(三)  右居宅の門前またはその付近路上において同申請人を取り囲み、その身体につかみかかるなどして、同申請人の右居宅からの出入通行を妨害し、または同申請人の乗車する自動車の進路に立ち塞がったり、ボンネットに乗るなどして、その走行を妨害すること。

二  被申請人国分真一、同竹内輝夫、同岩崎治及び同三巻義明は、申請人古岡秀人に対し、同申請人の前記居宅の門前またはその付近路上において、同申請人を取り囲み、その身体につかみかかるなどして、同申請人の右居宅からの出入通行を妨害し、または同申請人の乗車する自動車の進路に立ち塞がったり、ボンネットに乗るなどしてその走行を妨害してはならず、また、他の被申請人東京ふじせ労働組合の組合員または支援団体の団体員をして、右同様の各妨害行為をなさしめてはならない。

三  申請人らのその余の申請をいずれも却下する。

四  申請費用は被申請人らの負担とする。

理由

第一当事者の求めた裁判

(申請の趣旨)

一  被申請人らは、自らもしくは所属組合員あるいは外部団体員らをして、次に掲げる行為をし、もしくは、させてはならない。

1 申請人古岡秀人に対し、

(一)別紙一(略)1記載の居宅に赴き、インターホンを連打するなどして面会を強要すること。

(二) 右居宅の門前、あるいはその付近路上において、ハンドマイク等の拡声器を用い誹謗中傷する演説を行い、又は「老いぼれ、出てこい!」、「秀人!団交に出てこい」等のシュプレヒコールを反覆連呼したりするなど喧騒音を発して同申請人の住居の平穏を害すること。

(三) 右居宅の門に組合旗・横断幕を掲示したり、ビラ・ステッカーなどを貼付したりすること。

(四) 右居宅の門前あるいは付近路上に座り込んだり、滞留したりして同申請人および家族(使用人を含む)ならびに来訪者等が右居宅の門からする出入通行することを著しく困難ならしめ又は妨害すること。

(五) 同申請人が外出するために自動車に乗車するのを、その進路を扼するなどして妨害したり、その自動車の進路前方に立ちはだかって走行を妨害したりすること。

(六) その他これらに類する行為で、同申請人の私的生活の平穏および行動の自由を害する一切の行為。

2 申請人古岡滉に対し、

(一) 別紙物件目録(略)一2記載の居宅に赴き、インターホンを連打するなどして面会を強要すること。

(二) 右居宅の門前、あるいはその付近路上において、ハンドマイク等の拡声器を用い誹謗中傷する演説を行い、又は「ヒロシ!出てこい!」、「古岡社長は団交に出てこい」等のシュプレヒコールを反覆連呼したりするなど喧騒音を発して同申請人の住居の平穏を害すること。

(三) 右居宅の門に組合旗・横断幕を掲示したり、ビラ・ステッカーなどを貼付したりすること。

(四) 右居宅の門前あるいは付近路上に座り込んだり、滞留したりして同申請人および家族(使用人を含む)ならびに来訪者等が右居宅の門からする出入通行することを著しく困難ならしめ又は妨害すること。

(五) 同申請人が外出するために自動車に乗車するのを、その進路を扼するなどして妨害したり、その自動車の進路前方に立ちはだかって走行を妨害したりすること。

(六) その他これらに類する行為で、同申請人の私的生活の平穏および行動の自由を害する一切の行為。

二  申請費用は被申請人らの負担とする。

(申請の趣旨に対する答弁)

一  本件仮処分申請をいずれも却下する。

二  申請費用は申請人らの負担とする。

第二当裁判所の判断

一  本件疎明資料及び審尋の結果によれば、次の各事実を一応認めることができ、これを左右するに足りる疎明資料はない。

1  申請人古岡秀人(以下、申請人甲という)は、昭和二二年三月、申請外株式会社学習研究社(以下、申請外学習研究社という)の代表取締役社長に就任し、その後、昭和五七年一一月、代表取締役会長に就任し、現在に至るものである。

また、申請人甲は、別紙一1記載の土地・建物を所有して、これを住居として妻および家事使用人とともに居住しているが、申請人甲の住居は、別紙二の図面のとおりであり、住居から外部への出入り通行は門を通るしかなく、それ以外は、隣家の敷地を横断しなければならない。

申請人古岡滉(以下、申請人乙という)は、昭和五七年一一月申請外学習研究社の代表取締役社長に就任し、現在に至っている。

また、申請人乙は、別紙一2記載の土地・建物を所有して、これを住居として妻、長男夫妻、家事使用人とともに居住しているが、申請人乙の住居は、別紙三の図面のとおりであり、住居からの外部への出入通行は門、および勝手口前出入口、ガレージ北側・南側出入口などに限定されている。

被申請人東京ふじせ労働組合(以下、「被申請人ふじせ労組」という。)は、申請外株式会社東京ふじせ企画(以下、「申請外東京ふじせ」という。)の従業員をもって組織する労働組合であったが、後記のとおり申請外東京ふじせが倒産し、昭和五三年一月二〇日従業員全員が解雇された後も、同社の元従業員若干名が組合員として残り、存続している。

被申請人国分真一(以下、「国分」という。)、同竹内輝夫(以下、「竹内」という。)、同岩崎治(以下、「岩崎」という。)及び同三巻義明(以下、「三巻」という。)は、いずれも、申請外東京ふじせの従業員として被申請人ふじせ労組に加入した者であり、右倒産・解雇後も同労組に組合員として残る者である。

2  申請外東京ふじせは、申請外学習研究社の編集業務の受託会社であった申請外株式会社ふじせ企画(以下、申請外ふじせという)から、更に業務を再受託していたが、昭和五三年一月二〇日従業員全員を解雇して、同年二月八日自己破産の申立を行ない、同年三月九日申請外東京ふじせに対する破産宣告がなされた。

被申請人ふじせ労組は、申請外東京ふじせは申請外学習研究社の組合対策のため申請外ふじせが設立したものであって、申請外学習研究社の労務支配の下に同社の業務を行っていたのであるから、同社も被申請人ふじせ労組の組合員の使用者にあたるとして、同社に、申請外ふじせと協力して申請外東京ふじせに対する業務発注を再開し、右組合員の雇用の場を作ることを求め、そのための団体交渉の開催を求めてきたが、これに対して、申請外学習研究社は、自社は、同組合組合員の使用者にはあたらないとして、右団体交渉を拒否している。

そこで、被申請人ふじせ労組は、昭和五三年一一月、東京都地方労働委員会に、申請外学習研究社を相手方として、団体交渉応諾、原職復帰等の救済命令申立を行ったが、これとともに、被申請人らは、同社を被申請人らの求める団体交渉に応じさせるための実力行使として、別紙四1ないし57記載の各行為(以下、「本件各行為」という。)を行った。

二  ところで、個人の生活の平穏、行動の自由等の生活上の利益は、人格権の一内容として保護されるべきものであり、これらの生活上の利益が社会通念上受忍すべき限度を超えて侵害され、今後もそのような侵害がなされる蓋然性が高い場合には、被害者は、右侵害行為の差止を求めることができるものと解すべきである。

しかるところ、本件各行為のうち、申請人らの居宅のインターホンを連打するなどして申請人らに面会を強要する行為及び右居宅の門前またはその付近において、拡声器を用いて演説を行い、またはシュプレヒコールを反覆連呼するなどして喧騒音を発する行為は、申請人らの私生活の平穏を侵害するものであり、また、申請人らの居宅の門前またはその付近路上において、申請人らを取り囲み、その身体につかみかかるなどして、申請人らの居宅からの出入通行を妨害し、または申請人らの乗車した自動車の前に立ち塞がったり、ボンネットに乗るなどしてその走行を妨害する行為は、申請人らの行動の自由を侵害するものということができる。そして、右各行為の態様や、これが行われてきた期間、頻度に加えて、右各行為は、前記のとおり申請外学習研究社を被申請人ふじせ労組の求める団体交渉に応じさせるためになされてきたものであるところ、仮に同社が同組合組合員の使用者であったとしても、申請人らが私生活の場である住居において被申請人らとの面会に応じなければならない理由はなく、右各行為は申請人らに義務なき行為を強いるものであること、これによって、申請人らには、相当な生活上の支障が生じており、また、少なからぬ不安や苦痛も与えられているものと推認し得ることなどを併せ考えれば、右各侵害は、社会生活上受忍すべき限度を超えるものということができる。

また、右各行為は、本件の申立後も続けられているものであり、更に、本件疎明資料によれば、本件の審尋終了後も同様の行為が繰り返されていることが一応認められ、これが止む見通しもないことからすれば、今後も右のような侵害が生ずる蓋然性は高いというべきである。

したがって、申請人らは、それぞれ、被申請人らに対し、右各行為の差止請求権を有するというべきである。

そして、右に述べた侵害の状況や今後の侵害の蓋然性等に鑑みれば、申請人らは、右差止請求の本案判決をまっていては、著しい損害を被るものと認めることができる。

ただ、右各行為のうち、被申請人ふじせ労組の申請人甲に対する居宅からの出入通行妨害及び乗車した自動車の走行妨害の各行為については、既に右各妨害行為を禁止する仮処分決定(東京地方裁判所昭和五七年(ヨ)第二三五六号事件決定)が出されていることが本件疎明資料により一応認められ、現段階において、重ねて同内容の命令を発する必要は認められないから、この限度においては、保全の必要を欠くものといわざるを得ない。

三  これに対して、本件各行為のうち、申請人らの居宅の門に赤旗、横断幕等を掲出する行為は、右横断幕の記載内容を考慮に入れても、未だ申請人らの人格権を侵害するものということはできない。ただ、右行為は、申請人らの前記各土地・建物に対する所有権の侵害となるものであり、右所有権に基づき、右行為の差止を認める余地はある。しかしながら、右所有権侵害によって、申請人らに本案判決をまつことができない著しい損害が生ずるものとは考え難く、右差止請求について保全の必要を認めることはできない。

また、申請人らは、被申請人らが申請人らの居宅の門にビラ、ステッカーなどを貼付する行為の差止も求めるのであるが、右貼付行為がなされたことを一応認めるに足る疎明資料はないから、右行為の差止請求権を認めることはできない。

四  以上に認められる被保全権利と保全の必要性の範囲内で、本件仮処分申請の目的を達するに必要な処分としては、主文第一項及び第二項のとおりの処分が相当である。

五  よって、本件仮処分申請は、主文第一項及び第二項の限度で理由があるから、保証を立てさせないで右限度内でこれを認容し、その余は失当であって、疎明に代えて保証を立てさせることも相当でないから却下することとし、申請費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条但書、九三条一項本文を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 川添利賢)

別紙一~三(略)

別紙四

1 昭和五七年一一月二六日午前八時頃、国分、竹内、三巻、佐竹ら合わせて約一〇名が申請人乙宅門前に集まり、石塀に赤旗三枚をテープで貼りつけ、掲出した。

そして、折から外出のため門から出た申請人乙の長男に対し、全員で取り囲み、「新社長は家にいるだろう!」、「取り次げ!」、「新社長に面会させろ!」と口々に叫び、執拗にまとわりつき、車に乗った後も、これを取り囲んだので車はしばらく発進できなかった。

同八時三五分過頃、申請人乙が株主総会に出かけようとして門を出たところ、右被申請人らは、「新社長、おい何とかしろ!」、「われわれと団交しろ!」などと怒鳴りながら申請人乙を取り囲んだり、掴みかかろうとしたりして、車までの一〇メートルほどの間まとわりつき、警備に当たった申請外学習研究社社員がこれを制止しようとしたのに対し逆に食ってかかり、体当たりをしたり、小突いたりした。この状況に、気付いた近隣の住民数名が窓から顔を出したり、外へ出たりし、「おまえ達、うるさいぞ!」、「やるならあっちに行ってやれ!」などと抗議をした。

申請人乙が、車に乗った後も国分、竹内、外部団体員二名らが車の前に立ち塞がり、車を手で押さえたり、ボンネットの上にうつ伏せになって乗るなどして車の発進を妨害し、やっとのことで動きはじめても右被申請人らはなおも車の前に出たり、手を掛けたりして、中原街道へ出るまで度々停車させ、その進行を妨害した。

そして、被申請人らは、車が中原街道へ出た後、同八時四〇分過ぎ立ち去った。

2 昭和五九年二月一五日午前九時頃、竹内、岩崎、三巻、佐竹ら約二〇名が携帯用拡声器や赤旗を携え、申請人乙宅前に集まり、インターホンを使用して東京ふじせ労組の者であり、社長に面会に来たので取り次いでほしい旨申し立てた。申請人乙は、海外出張のため不在だったので、家事使用人が「只今社長は出かけていて留守ですので、お引きとりください」と答え、インターホンを切ったところ、執拗にブザーを連打し続けた。あまり煩わしいので家事使用人が再びインターホンに出たところ、「団交要求書を持ってきた。受け取って渡してくれ」とか、「ここまで受け取りに来い!」などと大声で怒鳴り、家事使用人が、「社長は只今留守ですから受け取るわけには参りません。会社のことは、会社へ行ってください」と答えても、右被申請人らは、なおも、団交要求書を受け取れなどと同じことを繰り返し怒鳴ったりして面会、および文書の受領を強要した。

そして、拡声器を使って大声で、「社長がいるのはわかっているのだ、出て来い!」、「出て来て要求書を受け取れ!」、「ふじせ労組と団交を開け!」、「ふじせ争議を解決しろ」、「三名を職場に戻せ」などとなおも執拗に面会、および文書の受領を強要した後、同九時一〇分過ぎ頃、申請人甲宅方向に立ち去った。

その後右被申請人らは、同九時一五分頃から申請人甲宅前に押しかけ、石垣に赤旗を掲出し、拡声器を使って「会長は出て来て団交に応じろ」「逃亡は許さないぞ」などと叫んだ後、同一一時三〇分頃立ち去った。

3 同年四月九日、国分、竹内、岩崎、佐竹ら二五名程が、午前九時一五分頃から申請人甲宅に順次押しかけ、石垣に赤旗を掲出し、同一一時頃まで門前において「この場に出て我々と話し合いをしろ」、「出て来い!」などと拡声器でいったり、シュプレヒコールをあげたりした。

その後、右被申請人らは、午前一一時過ぎ頃、申請人乙宅に押しかけ、声高に、「団交を開け!」、「争議を解決しろ!」などとシュプレヒコールを行なったり怒鳴ったりした後、数分後に立ち去った。

4 同年六月一八日午前九時頃から、国分、竹内、三巻らを含む九名は、申請人乙宅に順次押しかけ、その石塀に赤旗を掲出し、その前に立ち並んで、拡声器を使い声高に、「古岡社長!この場に出て我々と話し合いをしろ!」、「こそこそ隠れていないで出て来い!」などと叫んで面会を強要した。

また、申請人乙が外出するため、車が玄関前に着いたところ、右被申請人らは、口々に、「社長!出て来い!」、「車が来たよ!」、「団交要求書を受け取れ!」などと怒号し、さらに乗車を妨害しようとして進行方向右側(門扉の側)に立ちはだかったり、あるいは車の前方に立ち、バックミラーに手をかけるなどして、その進行を妨害したため、申請人乙は、やむをえず勝手口前出入口から、右被申請人らの隙を見て、外出せざるを得なかった。

右被申請人らは、申請人乙の外出後も、「古岡社長はふせじとの団交に応じろ!」、「団交に出て争議を解決しろ!」などとシュプレヒコールを行ない、同九時三五分頃立ち去った。

その後、右被申請人らは、同九時四〇分頃から、申請人甲宅へ押しかけ、申請人甲宅前にいた岩崎、佐竹らと合流し、携帯用拡声器を使って「団交要求書を受けとりに来るまでここで待機します」などと叫んだり、シュプレヒコールをしたりした後、同一〇時五〇分頃立ち去った。

5 同年七月五日午前九時前から、国分、竹内、三巻ら二十数名が、申請人乙宅に順次押しかけ、その石塀に赤旗を掲出し、「社長は出て来い!」、「社長は早く出て来て団交要求書を受け取れ!」などと叫んだり、同九時三〇分頃から三巻が、約一〇分間ほど拡声器の音量を一段とあげてアジ演説を行ったり、全員で、「古岡社長は団交要求書を受け取れ!」、「古岡社長は団交に応じろ!」」などとシュプレヒコールを繰り返し行なうなどして、面会、および文書の受領を強要した後、同九時五〇分頃申請人甲宅に押しかけ、岩崎らもこれに加わり、門扉に赤旗を掲出し、同一〇時二五分頃まで携帯用拡声器を使って声高に、「会長は私たちの要求に応じなさい」といったり、シュプレヒコールを行うなどした。

6 同年九月二五日午前八時五〇分頃から、国分、竹内、三巻ら十数名は、申請人乙宅に順次押しかけ、同人宅前に立ち並んで、申請人乙宅に向かって、「団交に応じろ!」、「ここまで出て来て団交要求書を受け取れ!」、「社長!出て来い!」、「文書を受け取れ」、「いることはわかっているヨ」などと怒鳴ったりした後、同一〇時一〇分頃立ち去った。

一方、午前九時一〇分頃、岩崎、および被申請人らの支援団体員(以下、「外部団体員」という。)ら十数名が、申請人甲宅にも押しかけていたが、同九時二五分頃、申請人宅に押しかけていた十数名のうち竹内ら七、八名が申請人甲宅前に合流し、門扉に赤旗二枚を掲示したり、携帯用拡声器を使って声高に、「これからここであなたが出て来るのを待っています」などといったり、「会長は出て来い!」、「不当な仮処分申請を許さないぞ!」、「会長宅闘争を貫徹するぞ!」などとシュプレヒコールを行なったりして、同一〇時四五分頃まで騒ぎ続けた。

7 同年一〇月八日午前八時三〇分頃、申請人乙は、外出のため申請人乙宅から迎えの車に乗って東南方向へ直進し、長原街道へ出る交差点(東京都大田区南千束一丁目三番地、および同五番地)で赤信号により停車したところ、国分が、突然車の前方に飛び出して来て、大声で「ヒロシ!」、「団交に応じろ!」などと叫びながら、車のボンネットを叩き、続いて車の後部左座席に座っていた申請人乙の側の窓のところに来て、車内を覗き込みながら、車の窓ガラスや屋根を手でバンバンと強く叩きながら、「ヒロシ!団交に応じろ!」と大声で怒鳴った。

やがて信号が青になったが、国分は、車の前方に回り込み車体にしがみつくようにして執拗に車の発進を妨害していたが、やっと発進できた直後、岩崎、申請外学研労組の水谷が、車に向かって全力で走り寄って来たが、車の速度を徐々にあげこの状況から脱することができた。

その後同八時三〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻、佐竹らが、申請人甲宅門前に押しかけ、拡声器の音量をあげて争議を解決するよう演説を行ったり、シュプレヒコールを行ったりした。

8 同月一五日午前八時頃から、国分、竹内、岩崎、三巻、佐竹ら十数名は、申請人乙宅に順次押しかけ、インターホンを使用し、「社長いますか……社長に会いたい」と面会の申入れをし、これに応対した家事使用人が、「ただ今社長はお留守です」と答えたところ、なおも執拗に、「社長がいないなら奥さんに会いたい」等と繰り返した。なお、右申請人らは、申請人乙宅門扉には赤旗を掲出していた。

また、同九時四〇分頃、申請人乙宅に電気工事のために訪れた工事人が勝手口前出入口から中に入ろうとしたところ、門前に座り込んでいた竹内ら三名があとを付いてきたため、右工事人が留守であったように装い中に入るのをやめて帰ろうとしたところ、このうちの一名が、「社長は中にいるよ。呼んでやるよ」と言ってインターホンを押して勝手口を開けさせ、右工事人が勝手口から入つたところ、右三名は、靴を勝手口の扉と柱の間に挟み込み、扉を押えて閉まらないようにしてから、首を勝手口の中に突っ込んで大声で、「社長!いないのか?……居留守使っているんだろ?……」など怒鳴り、家事使用人に向かって、「合わせろよ!……早く取り次げ!」と脅すようにいい、家事使用人が申請人乙の不在を告げても、なおも申請人乙との面会を求め、ようやく右工事人が勝手口の扉を閉めた後も、ドンドン扉を叩き、「開けろ!」、「聞きたいことがある」などと大声で騒ぎたてた。

その後同一〇時四〇分過ぎ頃より、国分が拡声器を使い、その音量をあげ、「通行中の皆様、私達は……ふじせ労働組合と、その支援の者です。学研経営は……一切の責任を取ろうとせず、最高責任者である古岡滉社長は私達の団交要求も受けようとせず……」等と声高に演説をしたり、全員で、「学研闘争に勝利するぞ!」、「ふじせ労組は闘争勝利まで闘うぞ!」、「古岡社長は団交に出て来い!」などとシュプレヒコールを繰り返したりして、同一〇時五〇頃立ち去った。

9 同年一二月二四日午前八時頃から、国分、三巻、竹内ら十数名は、申請人乙宅に順次押しかけ、インターホンを使用し、「東京ふじせ労組ですが、社長に団交要求に来ました。社長はいますか……」と面会の申し入れを行ない、これに応対した申請人乙の妻が、当日請人乙が留守であったため、「留守でございます」と答えたところ、なおも、「いや社長はいるんでしょう。出て来てくださいヨ」等と繰り返した。また、右被申請人らは申請人乙宅の門扉に赤旗を掲出し、同九時二〇分頃より、三巻が、拡声器の音量をあげ、声高に約五分間演説を行い、同九時四五分頃、国分ら二名を残して申請人甲宅の方に移動し、同一〇時過ぎ頃、右二名も立ち去った。

右被申請人らは、午前九時五〇分頃、申請人甲宅前にいた岩崎、佐竹らと合流し、門扉に赤旗を掲出したり、拡声器を使って声高に、「……私たちは、あなたが争議解決を受諾するまで粘り強く何度でもふじせ争議の解決を求めて情宜に来るつもりでおります」などと演説したり、「会長は団交に出て来い!」、「古岡会長の逃亡を許さないぞ!」などとシュプレヒコールを行なったりして、同一〇時三〇分頃ようやく立ち去った。

10 昭和六〇年一月二一日午前八時頃から、国分、竹内、三巻ら十数名は、申請人乙宅に順次押しかけ、インターホンを連打し、「東京ふじせ企画労組の者ですが、社長に会いたくて来ました。いますか」などと二、三度繰り返した。なお、右被申請人らは、申請人乙宅の門扉に赤旗を掲出していた。

やがて、右被申請人らは、拡声器を使い、申請人乙宅の中で会話ができないほどの大きな音量で、声高に、「古岡社長の逃亡を許さないぞ!」、「社長は出て来い!」など数分間にわたり、シュプレヒコールを行なって申請人乙との面会を求めた後、同九時四五分頃立ち去った。

その後、右被申請人らは、同九時五〇分過ぎ頃、申請人甲宅に押しかけ、これに岩崎も合流して、申請人甲宅の門扉に赤旗を掲出したり、拡声器を使つて五〇メートル離れたところでも良く聞こえるほど声高に演説したり、「古岡会長は出て来い!」、「出て来て団交に応じろ!」などシュプレヒコールを行なったりした後、同一〇時三〇分頃ようやく立ち去った。

11 同年二月二七日午前八時二〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら一二名が、申請人乙宅門前周辺に順次押しかけ、申請人乙宅の門扉に赤旗を吊り下げて掲出し、同八時半頃インターホンを連打し、「社長はいますか」と面会を求め、申請人乙の妻が、「主人は今朝早く出かけました」と答えたところ、「てめえ見ていたのにおかしいじゃないか」と怒鳴り、更に同九時頃インターホンを連打し、申請人乙の妻が出たところ、拡声器をインターホンの通話口にあて、突然高音でガガーという雑音をさせたので、驚いてスイッチを切つた。その後、同九時過ぎ頃、またインターホンを連打するので、申請人乙の妻が「主人は会社に出ているので会社を調べて下さい」と言ったが、「それでは会社からこっちに呼べ」などと威嚇し、さらにその後も二、三回インターホンを連打し、同九時二〇分頃から一一時頃まで、拡声器を申請人乙宅に向け、「古岡社長は我々の前に出てくるよう要求する……」、「古岡社長は最高責任者として、争議を解決すべきだ……我々の前に出てくるよう要求する!」などと演説を行なったり、全員で「社長は出てきて団交に応じろ!」、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」などのシュプレヒコールを繰り返したりした。

12 同年三月二五日午前八時三〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら約二〇名が、申請人乙宅門前に順次押しかけ、インターホンを連打して、「東京ふじせ企画労働組合の者ですが、古岡社長はいますか」と面会を求め、家事使用人が、「会社に行きました」と答えたところ、「嘘いってはいけないよ!社長はいるんだろ」などと威圧的にいって、申請人乙に対する面会を強要し、また申請人乙宅の門扉には、その開閉に支障をきたす状態で赤旗を吊り下げて掲出した。

同九時二五分頃から、三巻が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「私たちの争議も八年をむかえましたが、この間私たちは何回も会社に行って、団体交渉によって争議を解決するよう申し出を行なってきました。これに対して学研は応じてくれません。……私たちと話し合いによって争議を解決するよう要求する……私たちは学研に対し損害賠償等の訴訟を提起してきたのであります。……学研は我々とは関係ないのだと言っていますが、この様な言い逃れは認められません……労働組合をつぶすような学研のやり方は、前近代的なものであり、社会的に通用するものではありません……」などと演説をしたり、同一〇時一〇分頃全員で、「社長は団交に応じろ!」、「社長の逃亡をゆるさないぞ!」などのシュプレヒコールを繰り返した後、同一〇時二〇分頃立ち去った。

13 同年四月一一日午前八時三〇分頃から、国分、竹内、三巻ら十数名が、申請人乙宅門前に順次押しかけ、インターホンを連打して、「社長はいますか」と面会を求め、家人が、「社長は出かけております」と答えると、「いつもそんなことを言っているんじゃないか、何時に出たんだ」などといい、「いや出張していて今日はいません」と答えた後も執拗に、何回にも亘ってインターホンを連打して申請人乙への面会を強要し、また、右被申請人らは、申請人乙宅の門扉には赤旗を吊り下げて掲出し、申請人乙宅前に滞留を続け、同九時頃、申請人乙の妻が所用で外出したところ、右被申請人らの一人が直ぐ二、三メートル後を、しばらく尾行した。

同九時三〇分頃からは、国分と三巻が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「……本日もこの学研の最高責任者である古岡滉社長の自宅の前に来て、争議の解決に向けて話し合うよう要求をしているところです。……」、「南千束の住民の皆さん、私たちは古岡滉社長の自宅前に来て……団体交渉の要求を行なっているところです……」などと代わる代わる演説したり、同一〇時三〇分頃、国分が拡声器を使って大声でリードして、全員で、「古岡滉社長は団交に応じろ!」、「古岡社長は出てこい!」などとシュプレヒコールを繰り返した後、国分と外部団体員一名を残して、他の右被申請人らは、申請人甲宅の方に立ち去った。

一方、申請人甲宅では、同人宅門前にいた岩崎のところに、同一〇時三五分頃申請人乙宅から移動した右被申請人らが加わり、一〇数名程が、インターホンを使って申請人甲への面会を求め、門扉に赤旗をくくりつけて掲示したり、携帯用拡声器を使って演説したり、シュプレヒコールを行なったりした後、同一一時二五分頃立ち去った。

14 同年五月二〇日午前八時三〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら八名が、申請人乙宅門前に順次押しかけ、同九時頃インターホンを連打し、「古岡滉社長、おられますか」と尋ね、家事使用人が「出かけています」と答えたところ、「何時頃ですか、いるでしょう、社長!、会社の車が待っていますよ」と言い、「早く出られました」と答えても、「いつも嘘つくんだから、社長いるんなら出てきて下さいよ」などと執拗に面会を強要し、さらに家事使用人が、ゴミ袋を持って家の外に出たところ、「……さっきインターホンに出た人ですか……、インターホンで社長はいないと言っているが、……とても信じられない。……いないとわかっても調べて下さいよ、一度……念のため調べて下さいよ」などと執拗につきまとって申請人乙への面会取次ぎを求めた。

同九時一五分頃からは、竹内が拡声器を使い、声高に、「……学習研究社は、私達に一度たりとも団体交渉に応じない……いくら社長が居留守を使って我々から逃れようとしても、我々は何回でも団交を求めて……」などと演説をしたり、同九時四五分頃からは、国分のリードにより全員で、「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「古岡社長は団交に出てこい!」、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」などのシュプレヒコールを繰り返した後、同九時五〇分頃立ち去った。

15 同年七月八日午前八時半少し前頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら一〇名程が、順次申請人乙宅前に押しかけ、インターホンを連打して、「社長はいますか」と面会を求め、申請人乙の妻が不在である旨答えると、再三に亘り同人を怒鳴りつけ、その後も繰り返しインターホンを連打し、今度は家事使用人に対し、「社長に取りついで下さい。古岡滉社長いるんでしょ!いるとこ教えて下さいよッ!会社へ行ったって全然取りついでくれないんだからこっちへ来たんですよ!いるとこ教えて下さいよッ!」、「あんたの方では会社にいるというが、会社に行っても全然取りついでくれないんだから!それじや会社に連絡取って下さいよ!」、「朝早くから来てるのを知ってるじゃないかよう!」などと執拗に面会を求め、最後には、「でたらめを言うな!」、「嘘をつけッ!」などと怒鳴りちらした。また申請人乙宅の門南側の石塀に赤旗や、門北側敷地内の二本の松の枝に、「暴力企業学研の下請プロ労働者使い捨て粉砕!」、「古岡秀人会長滉社長親子の逃亡を許さないぞ!」などと大書したおよそ縦一・五メートル、横五メートル大の横断幕をくくりつけて掲出し、同九時二〇分頃からは、三巻が拡声器を使い、声高に、「学研の古岡社長、東京ふじせ労働組合です。本日は八年にわたる労働争議の解決を求めて……申し出に来ています。……」、「……私達は、何回でも古岡社長に対し、争議を解決するよう申し入れをしていく……」と演説をし、同九時三〇分頃からは、竹内が同様に拡声器で声高に、「……私達は、学研の経営者が誠意を持って話し合いの場に出てくるまで闘い続けるつもりです。」などと演説を行ない、さらに同九時四〇分過ぎ頃には、国分が拡声器でリードして、全員で、「古岡社長は団体交渉に出てこい!」、「親会社の責任を追及するぞ!」、「古岡社長の責任を追及するぞ!」などとシュプレヒコールを繰り返した後、同九時四五分頃立ち去った。

申請人乙宅を立ち去った右被申請人らは、その後申請人甲宅に向かい、申請人甲宅の門扉に赤旗を、石塀には白旗を掲示したり、拡声器を使用して演説、シュプレヒコールを繰り返した後、同一一時一五分頃立ち去った。

16 同月一五日午前七時四〇分頃から、国分、竹内ら一〇名程が、申請人乙宅に順次押しかけ、申請人乙宅のインターホンを連打し、「社長いますか」というので、家事使用人が不在である旨を答えると、「社長いるんだろう!」、「いないなんて嘘言うな!」と怒鳴り、その後も何回かインターホンを連打した。また、申請人乙宅門南側の石塀に、赤旗を掲出し、門北側の石塀には、前同様の横断幕を両端を竹竿にくくり付けて掲出し、同九時一八分頃からは、竹内が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「……しかしながら、私達はこの様な学研の申請に怯むことなく現場で、自宅で、会社で学研闘争……するまで闘います……」などと演説を始め、同九時四五分頃には国分が声高にリードして、全員で、「古岡社長は団交に応じろ!」、「学研は団交に応じろ!」、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」などとシュプレヒコールを繰り返した後、同九時五〇分頃やっと立ち去った。

この日申請人甲宅にも、既に同八時二〇分頃には岩崎が現れ、申請人甲宅を見張っていたが、同一〇時五分前頃には、申請人乙宅から竹内、国分らも移動して来て、申請人甲宅の門扉に、横断幕を横向きに棒で結び付けて、日除けのテント代わりにし、被申請人らはこの下に座り込み、その後、拡声器を使って演説したり、シュプレヒコールを行なった後、同一一時三〇分頃立ち去った。

17 同年九月一七日午前八時五〇分頃から、国分、竹内、岩崎ら一一名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、門から北側の石塀に、前同様の横断幕の両端を竹竿にくくり付け掲出し、同九時一五分頃からは、国分が拡声器を使って、「古岡社長は我々の前に出てきて、団体交渉に応ずることを要求する……」等の演説を五分程行ない、同九時二五分頃全員で、「社長は出てきて団体交渉に応じろ!」などのシュプレヒコールを行ない、引続き国分が演説を行なったりしたのち、同九時五〇分頃再び、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」等のシュプレヒコールをした後、全員が、申請人甲宅方向に立ち去った。

その後右被申請人らは、同九時五五分頃申請人甲宅前に押しかけ、前同様の横断幕を同宅の石垣に掲示したり、拡声器を使って演説したり、シュプレヒコールをしたりした後、同一〇時二〇分頃立ち去った。

18 同月三〇日午前八時頃、国分、三巻が申請人乙宅門前に来て、インターホンを鳴らして、「社長いますか」と面会を求め、不在である旨を答えても、「社長はいるんだろう!」などと怒鳴り、その後もインターホンを何回も連打した。また、申請人乙宅の門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹の棒に結び付け、立てかけて掲出し、同九時五分頃から国分が、拡声器を使って、「古岡社長は我々の前に出て来て、団体交渉に応ずることを要求する……」等の演説をした後、同一〇時三〇分頃立ち去った。

19 同年一〇月二一日午前八時頃、国分、岩崎、三巻ら一五名が、申請人乙宅門前に押しかけ、インターホンを何回も何回も連打した。また、申請人乙宅の門北側の石塀に前同様の横断幕の両端を竹竿にくくり付け掲出し、同八時四五分頃から、国分が拡声器を使い、声高に、「……社長は我々の前に出てきて、団体交渉に応じろ……」等の演説を行ない、同九時一〇分頃から、再び国分が拡声器を使い演説を行なった後、全員で「社長の責任を追及するぞ!」、「学研闘争に勝利するぞ!」などシュプレヒコールを行って、同九時二〇分頃、全員申請人甲宅方向に立ち去った。

そして、右被申請人らは、申請人甲宅前で、外部団体員らとともに、横断幕を申請人甲宅の石垣に掲示し、拡声器を使って演説し、シュプレヒコールを行ない、同一〇時一〇分頃立ち去った。

20 同月二八日午前八時二〇分頃、国分、岩崎ら三名が、申請人乙宅門前に来て、インターホンを何度も何度も執拗に連打し、また、同人宅門の北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿にくくり付け掲出し、同九時五分頃、国分が拡声器を使い、声高に、「……社長は、我々と団体交渉に応じ……争議を解決しろ……」等のアジ演説を五分程行なった後、同九時二五分頃立ち去った。

21 同年一一月一一日午前八時頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら約二〇名が、順次申請人乙宅門前に押しかけ、竹内や三巻らがインターホンを何度も連打し、また、同人宅門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿にくくり付け掲出し、同九時二五分頃外部団体員小野寺が申請人乙宅の勝手口前出入口付近から、申請人乙宅に向けて、「社長は早く出てきて我々と団体交渉に応じろ!」などと怒鳴り、同九時三〇分頃からは、国分が拡声器を使い、「古岡社長が宅内にひそんでいて、……私達の団交要求行動に対し、逃亡しようとの体制を取っています。この様な学研の暴力的な組合つぶしと……これに協力する警察権力と……古岡社長に対し争議の解決を要求していきたいと思います」とか、「先程より東調布警察が労働争議に介入し、……この様な古岡社長の対応……私達はこれに対し明らかにしたいと思います」、「学研の古岡社長、私達の……要求に応え、直ちに……私達の前に出てきて……話し合いによる……重ねて要求します」、「……古岡社長は、話し合いに応ずることなく、先程からこの様な……断固抗議の声をぶつけていきたいと思います」等の演説を断続的に行なった。

そして、同九時四五分過ぎ頃、申請人乙の乗る自動車が門前に着くと、国分は、拡声器を使って声高に、「古岡が出てくるようなので、正面に結集し、断固要求をつきつけて……」等と指示したため、右被申請人らは一斉に車の周りに集り、一部の者は申請人乙宅の玄関の方へ押し入ろうとし、同九時五〇分頃、申請人乙が、申請人乙宅の門から外に出たところ右被申請人らは、一斉に大声をあげ、申請人乙に飛びかかろうとし、申請人乙が車に乗りこんだあとも、車内の申請人乙に罵声を浴びせ、前進しようとする車に取りつき、前に立ち塞がり、ボンネットの上に飛び乗ったり、両側のバックミラーにしがみついたり、車の前方、左右の脇に密着して窓ガラスや天井をバンバン叩き、申請人乙に対して大声で罵声を浴びせたりして、車の発進を完全に妨害し、近くにいた警察官が、被申請人らに対し注意警告しても一向に聞きいれず、一〇分間以上も申請人乙を車の中に閉じ込めていた。

同一〇時を少し過ぎた頃、警察官の指導により、車を後方に移動させたが、右被申請人らは、その後も車の窓ガラスや天井を叩いたり、車内の申請人乙に罵声を浴びせながら依然として車を取り囲み、車内に閉じ込めた状態で、団交要求書を受けとることを要求し、受領するまで申請人乙を解放しないといって、さらに一〇分間以上もこの様な状態が続いた。

その後同一〇時一〇分を少し過ぎた頃、車のすぐ横で三巻が拡声器を使い、声高に文書を二分間程読み上げたのを合図に被申請人らがやっと車から離れたので、車は、同一〇時一五分頃、ようやくのことで現場から発進することができた。

その後も被申請人らは、申請人乙宅前に集合し、国分のリードで「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「学研闘争に勝利するぞ!」、「学研労組と共に闘うぞ!」等とシュプレヒコールを行ない、同一〇時二〇分頃立ち去った。

22 同月一八日午前七時四〇分頃、国分、岩崎が、申請人乙宅門前に来て、インターホンを何回も何回も連打し、申請人乙宅の門北側石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出し、門前路上において、ビラを通行人に配布したり、申請人乙宅近隣の家の郵便受けにそのビラを投函したりした後、同九時三〇分頃、ようやく二人は、申請人乙宅前から立ち去った。

23 同月二九日、午前八時過ぎ頃、国分ら二名が、申請人乙宅門前に来て、インターホンを何度も何度も連打し、同人宅門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出し、同九時頃、これに竹内も加わって、国分が拡声器を使い、「古岡社長は、我々の前に出てきて団交に応じろ!」等の演説を行なった後、同九時一七分過ぎ頃立ち去った。

その後右三名は、申請人甲宅門前にもやって来て、前同様の横断幕を申請人甲宅の石垣に立てかけ拡声器を使って、「会長は、われわれとの団交に応じ、早く争議を解決しろ!」などと演説して、同九時三〇分頃立ち去った。

24 昭和六一年一月二二日午前九時頃から、国分、岩崎ら一六~七名が、順次申請人乙宅門前に押しかけ、何回もインターホンを連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出し、拡声器を使い、家の中までうるさく聞こえるような大声で、演説やシュプレヒコールを繰り返していたが、同九時五五分頃、国分が拡声器を使い、声高に、「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「学研闘争に勝利するぞ!」等と全員でシュプレヒコールを行なった後、二名を残して、同一〇時頃、被申請人らは申請人甲宅の方に立ち去った。

その後右被申請人らは、同一〇時過ぎ頃申請人甲宅門前に押しかけ、前同様の横断幕を申請人甲宅の石垣に掲示したり、拡声器を使って演説したり、「学研闘争に勝利するぞ!」、「争議団は闘うぞ!」、「勝利するぞ!」など数分間にわたってシュプレヒコールを行ない、同一〇時一〇分頃立ち去った。

25 同年二月二四日午前八時一五分頃から、国分、岩崎、三巻ら一三名が、順次申請人乙宅門前に押しかけ、インターホンを何度も連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出し、同九時三〇分頃から、国分が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「……社長は、……直ちに団体交渉に応じ……争議を解決しろ……」等の演説をし、同一一時七分頃、国分が拡声器を使い、声高にリードし、「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」等のシュプレヒコールを大声で繰り返した後、一人を見張り役に残し、他の被申請人らは申請人甲宅方面に立ち去り、その一人も同一一時四〇分頃申請人乙宅門前から立ち去った。

一方、右被申請人らの一部は、申請人甲宅にも押しかけており、午前八時四五分頃、申請人甲が外出のため門扉を開けて外に出たところ、突然門扉脇から二名が現れ、申請人甲の前に立ちはだかり、文書の受領を迫ったため、申請人甲は、外出を取り止め門内に戻った。その後、同一〇時少し過ぎた頃、前記申請人乙宅門前から移動して来た者も加わり、拡声器を使って声高にシュプレヒコールを繰り返した後、同一一時三〇分頃立ち去った。

26 同年三月三一日午前七時四〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら一八名が、順次申請人乙宅門前に押しかけ、インターホンを何度も何度も連打し、申請人乙宅の門から北側の石塀にかけて、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、国分が拡声器を使って、大声で、「……社長は、我々の前に出てきて団体交渉に応じろ……」などと演説を行なったりした後、同一一時一〇分頃、国分が拡声器を使い声高に全員をリードし、「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「学研闘争に勝利するぞ!」、等のシュプレヒコールを行なった後、国分と外部団体員二名を見張役として残し、あとの全員は、申請人甲宅方向に立ち去った。

その後、右被申請人らが申請人甲宅門前に押しかけ、それまで申請人乙宅の石塀に掲出していた右横断幕の両端の竹竿を二人で持ち、申請人甲宅の石塀に立てかけて掲出し、同一一時一八分頃、国分のリードで拡声器を使い、「会長の責任を追及するぞ!」等のシュプレヒコールを、声高に何回も繰り返した後、同一一時二〇分頃、全員立ち去り、申請人乙宅前に居残った被申請人らも同一一時三〇分頃立ち去った。

27 同年四月一七日午前七時四〇分頃から、国分、岩崎ら四名が、申請人乙宅門前にやって来て、インターホンを何回も連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、申請人乙宅を見張り、路上に滞留していたが、同一〇時頃立ち去った。

28 同月一五日午前八時四〇分頃から、国分、岩崎ら四名が、申請人乙宅門前にやって来て、インターホンを連打して面会を強要し、申請人乙宅の門から北側の石塀にかけて、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出した。

同九時一〇分頃、申請人乙が、やむを得ず被申請人らがいない勝手口の方から出て、待たせていた車に乗り込み、車が一五メートル程進んだ辺りで、岩崎が、車の進行方向の左側から現れ、申請人乙の座っている左側後部座席の窓ガラスを片手でバンバンと強打しながら、「社長!、社長!、団交ヤレ!」と怒鳴りながらしばらく併走したが、車は、徐々にスピードをあげこの状態から逃れることができた。

その後、国分が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「古岡社長は、勝手口より逃走しました。……」等の演説をした後、同九時二五分頃立ち去った。

29 同月二一日午前八時五〇分頃から、国分、岩崎、三巻ら七名が、申請人乙宅の門前に押しかけ、申請人乙宅の門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、門前、北側四つ角、勝手口前出入口付近などに分かれて申請人乙宅を見張っていたが、同一〇時頃、全員立ち去った。

30 同年六月一六日午前六時三五分頃から、国分、岩崎、三巻ら六名程が、申請人乙宅門前に押しかけ、家事使用人に対し、「社長、いるんでしょう。取り次ぎなさいよ!」、「何時にでかけたの」、「いつも嘘言ってるんだから」、「本当のこと言えヨ!タメにならないよ!」などしつこく申請人乙への面会を強要したり、「警察を呼んだろう。上等じゃないの。そっちがその気なら……」と言って、怖い顔をして家人を脅したりした。また、同九時七分頃から、右申請人ら八~九名が申請人乙宅の門から北側の石塀にかけて、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出したり、警備のため申請人乙宅に赴いた申請外学習研究社の社員が、「……地裁の決定で、こんなことやっちゃいけないと言っているだろう……」と解散を促したのに対し、三巻が、「来ちゃいけないと言ってないじゃないか……言ってないよ……仮処分で負けたんだろ……シュプレヒコールだって、アジ演説、それ以上に来ることだって差し止められちやいないよッ……」と大声で怒鳴ったり、国分が拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「団体交渉の要求に対して何ら答えることなく、そして不当な裁判所への仮処分申請においても私達のこうした……団体交渉の要求行動の中で……窮地に追い込まれた古岡社長が裁判所からも見捨てられ、そして多くの労働者から糾弾の声が上がる中で、このように警察権力を使い、そして学研の御用暴力社員を多数使い……古岡社長に抗議の声をあげていきたい……」などの演説をしたり、「学研闘争に勝利するぞ!」、「学研の下請潰しを許さないぞ!」、「学研の使用者責任を追及するぞ!」、「学研の御用社員は帰れ!」などシュプレヒコールを行なったりした。

そして、同九時一五分頃、申請人乙が外出しようとして、申請人乙宅の門扉から出たところ、右被申請人らは、一斉に大声をあげ、罵声を浴びせながら申請人乙を目がけて突進し、取り囲み、身体に手を掛けようとしたが、申請外学習研究社の社員がこれらを制止したので、どうにか車に乗り込んだところ、右被申請人らは、車に駆け寄り、外部団体員二名が車の前に立ち塞がり、車のボンネットに両手をかけて車の進行を止めたので、警備に当っていた私服の警察官が、この外部団体員を車の脇に排除したので、同九時一六分頃車は、やっと発進できた。

その後、右被申請人らは、警察官に対し、罵声を浴びせたり、国分が拡声器を使い、声高にリードして、「古岡社長の責任を追及するぞ!」、「学研闘争に勝利するぞ!」等のシュプレヒコールを何回も繰り返し行なったりした後、同九時四五分頃、立ち去った。

一方、同日、岩崎は、申請人甲宅門前に赴き、同九時五分頃、門内から出て、専用車まで行こうとした申請人甲に対し、「古岡、早く争議を解決しろヨ!」、「これからどうするつもりだ!」などと大声をあげながら、申請人甲目がけて詰め寄り、警備に赴いた申請外学習研究社の社員が、押しとどめる間、「古岡、逃げるな!待て!」、「今度は会社の方にも行くからな!」などと罵声を浴びせるなどした。そして、九時五五分過ぎ頃、オートバイに乗って申請人乙宅の方向へ立ち去った。

31 同年七月八日午後五時四〇分頃、国分、竹内、三巻ら約三〇名が、宣伝カーで申請人甲宅前に順次押しかけ、インターホンを連打して面会を強要し、門扉に赤旗を吊り下げて掲出し、同宅の石垣に前同様横断幕を、両端を竹竿に括りつけて掲出した。

午後五時四三分頃、国分が宣伝カーの拡声器で声高に、「……ただ今から、学研の古岡会長に対して、この間、長期にわたって争議責任を取らないまま逃げ回っている古岡会長を、直ちに……私達の争議を解決するように申入れ行動を行なっていきたいと思います。」、「東京地裁は、去る六月一〇日、……古岡会長が行なった自宅闘争の差止めを行なう不当な仮処分申請に対して、……そのほとんどを却下する決定を出しました。」、「古岡会長が自ら引き起こしている、この事態、この争議に対して私達が、この門前に来て、面会を求めることや……ハンドマイク、横断幕等を張って、争議の解決を求める行為全てを差止めて欲しいという、裁判所への不当な古岡会長の申請というものが、基本的に却下された訳です。私達はこの状況をふまえて、本日古岡会長に対して、争議の全面解決を求める行動を行なっていきたいというふうに考えています……。」などと、約三分間にわたり演説を行なった。

午後五時四六分頃からは、申請外全学研労働組合(以下、「学研労組」という。)の塚田が拡声器を使ってリードし、声高に、「古岡会長は申入れに応じろ!」、「争議解決のための申入れに応じろ!」、「古岡会長は、争議の全面解決をはかれ!」、「古岡会長は、全学研の一四名の解雇を徹回し、原職に戻せ!」、「古岡会長は、ふじせ労組との団交に応じろ!」、「業務を再開して、解雇を徹回せよ!」、「全員を原職に戻せ!」、「団交を開いて争議を解決しろ!」などのシュプレヒコールを繰り返した。

午後五時四九分頃からは、学研労組の安西が、拡声器で声高に、「……結集された皆さん。それに南千束にお住まいの皆さん。学研の労働組合です……」、「……古岡秀人会長は、会長の自宅にこの様な形で、争議の解決をはかるための申入れに来ている私達の行動について、こういった正当な行動を何とか止めさせようと、極めて不当な形で差止めの裁判をおこしました。しかし、いかに古岡秀人会長が争議の責任から逃れようとしても、裁判所当局が古岡秀人会長の言い分を入れて判断を下す訳がなく、既に私達の正当な申入れ活動については、古岡秀人の請求を却下する、こういった決定が下された訳であります。従っていかに古岡秀人会長が責任を逃れようとして、あれこれ手を打っていったとしても、もはや逃れられるすべはない訳です。……」などと約一〇分間にわたり演説した。

その後、三巻が、拡声器で声高に、「東京ふじせ企画労働組合より、古岡会長に争議の全面解決をするよう訴えていきたいと思います。……」と約四分間演説をした後、「プロニカ・パート闘争支援共闘会議」と「中央公論社労働組合有志」と称する外部団体員の二名が、次々に立って演説を続けた。

午後六時二〇分頃、国分が拡声器で声高に、「私達は、先程一度面会要求を行なって、……末だ何の応対もありません。再度争議解決に向けた申入れ行動を両当該の代表で行なっていきたいと思います。」、「……予想されたことですが、何の応対もありません。何時も私達は、……『もう出かけてしまっていて、いない』こういった形で……お手伝いさんに居留守を使わせる。……実際、私達がここで待っていると、中で痺れをきらした会長や社長が、いないはずだった訳ですけれども、実は中にいて、東調布署や学研の御用社員を呼び寄せて、私達に乱暴を働かせて逃げて行く、そういったことが繰り返されている。……今回の仮処分の裁判以降、益々こう言った対応の方に古岡会長は頼らざるを得なくなっている訳ですけども、本日の両当該の申入れについて、ここで古岡会長自身に聞こえるように、申入書の朗読を行なっていきたいと思います。」と演説した。

午後六時二一分頃、申請外学研労組の窪田が拡声器で、申入文書を五分間程読み上げ、この間、再びインターホンを何度も連打した。

午後六時二六分頃、再び国分が、宣伝カーの拡声器を使って、「古岡会長!」、「あなたが申入書を受取らないので、申入書をこの様な形で読み上げました。そして、同文を今ポストの方に入れときましたので、一語一句を噛みしめて、後でゆっくり読んでもらいたい。」と演説し、午後六時二七分頃、国分のリードで、宣伝カーの拡声器や携帯用の拡声器を使い、全員で大声で、「古岡会長は、団交に応じろ!」、「古岡会長の逃亡を許さないぞ!」、「古岡会長は、話し合いを行なえ!」、「話し合いで争議を解決しろ!」、「最高責任者の逃亡を許さないぞ」、「学研の下請組合潰しを許さないぞ!」、「親会社の責任を追及するぞ!」、「ふじせ企画の再開を勝ちとるぞ!」などの、シユプレヒコールを三分間にわたり繰り返し行ない、門の郵便受けに申入書を投函したのち、午後六時三〇分頃立ち去った。

32 同月一四日午前八時五〇分頃から、国分、岩崎ら一一、二名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、インターホンを何度も何度も連打し、申請人乙宅の門南側の石塀に赤旗を上から掛けるようにして吊り下げ、門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ、塀に立てかけて掲出し、国分が、拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「このように、学研の御用暴力社員を多数使い、私達に対し……」などと演説をしたり、「社長の責任を追及するぞ!」などのシュプレヒコールを繰り返していた。そして同九時三〇分頃、申請人乙が勝手口前出入口から出て、申請外学習研究社の社員が作った人垣の通路の中を通り車に乗り込もうとしたところ、「古岡社長、団交要求を受け取れ!」、「ヒロシ!逃げるな!」などと罵声を浴びせながら、申請人乙目がけて一斉に押し寄せ、社員の列を後ろから力一杯押したため、通路が塞がれ、申請人乙は、途中でしばらく身動きがとれなくなった。右被申請人らは、「ヒロシ!オレたちと話しろ!」、「この(団交)要求を受け取れ!」、「逃げるな!話し合えツ!」などと怒鳴りながら、申請人乙に掴み掛かろうとしたが、社員や付近に出向いていた警察官が、被申請人らを排除し、やっとのことで申請人乙は、車に乗り込むことができた。

ところが車が発進しようとすると、外部団体員一名が、車の前部ボンネットの上に両手をかけて車の前に立ち塞がり、その進行を妨害したが、社員がその外部団体員を車の横に引き離し、同九時三三分頃、やっと発進した。その後、右被申請人らは、拡声器を使い、その音量をあげ、申請人乙宅内で耳が痛くて聞き取れないほどの大声でシュプレヒコールを行ない、同九時五〇分頃申請人乙宅前から立ち去った。

33 同月二一日、午前八時頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら一五名が、申請人乙宅門前に順次押しかけ、門前にいた申請人乙の妻に対し、「社長いますか?」、「いるんでしょう!会わせて下さい!」と詰め寄って申請人への面会取り次ぎを強要し、インターホンを連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ、塀にたてかけ掲出し、国分らが、拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「私達の団交要求行動に対し、学研は多数の暴力社員を動員し……」等の演説を行なった。

同九時一〇分頃、申請人乙が勝手口から現れたところ、勝手口付近の路上に集まっていた右被申請人らは、「社長!……ヒロシ」、「社長!……」、「逃げないでここで話し合え!」、「逃げるな!団交しろ!」、「何度でも来るぞ!」などと大声で罵声をあげながら、勝手口前出入り口の扉にしがみつき、扉の内側に押し入ろうとして、申請人乙が、路上に出るのを暫くの間妨害し、申請人乙が、路上に出た後も、被申請人らは、「ヒロシ!話し合いしよう!」、「社長!団交を開け!」「逃げるな!」、「逃げてもだめだ!」などと怒号しながら一斉に申請人乙目がけて飛び掛かろうとして、申請人乙を揉みくちゃにし、同九時一二~三分頃、申請人乙が、やっと車に乗り込み発進した後、同九時二〇分頃、右被申請人らは、立ち去った。

34 同年八月二日午前八時一〇分頃、国分、竹内ら七、八名が、申請人甲宅門前に順次押しかけた。

午前八時二〇分頃、申請人甲は、右被申請人らによって門扉の通路を塞がれ外出できなかったが、同三〇分頃、警察のパトカーが申請人甲宅の門前に現われたので、同三五分頃、申請人甲が、申請人甲の妻、娘と家事使用人三人らに守られ、門扉から外へ出て車に乗り込もうとしたところ、国分、竹内らが申請人甲目がけてつめ寄り、申請人甲の身体に手をかけ身体ごと押し、申請人甲を門の扉に押し付けた。

そして、右被申請人らは、申請人甲と右被申請人らの間に入って申請人甲をかばおうとした申請人甲の妻の背中や後頭部を力まかせに叩き、さらに申請人甲の娘や家事使用人を石垣にぐいぐい押しつけて、家事使用人一人の左腕を捻じりあげたり、「良い家に住んでいるんじゃない。飲み屋で金払わないの……」などと悪態をつき、見かねた一人の警察官が右被申請人を排除したので、申請人甲は車にやっと乗り込むことができた。

その直後、女性の外部団体員が車の進路前方に立ち塞がってその走行を妨害したが、警察官がこの女性を排除し、車は午前九時頃やっと発進することができた。

その後、午前九時五分頃、右被申請人らは申請人甲の家の前から立ち去った。

35 同年九月二九日午前八時四〇分頃から、国分、岩崎、三巻ら一〇名程が、申請人乙宅門前に順次押しかけ、インターホンを連打して、「社長はいるんでしょう」、「社長に会いたい!」、「社長!いるのは分かっている!出てきて下さい」など申請人乙への面会を強要し、その後もインターホンを連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ、立てかけ掲出し、国分が、拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「……学研は、このように社員を使って、社長の強行突破をしようとしています。……」等の演説を行なったりした。

同九時一五分頃、申請人乙が門扉を開けて外に出たところ、右被申請人らは、一斉に、「ヒロシ、待て!」、「逃げるのか」、「ここで団交しろ!」、「社長!話し合いしろ!」などと罵声を浴びせながら申請人乙目がけて突進し、申請人乙に掴みかかろうとしたりして申請人乙を暫く立往生させたが、警備にあたっていた警察官が拡声器を使って右被申請人らに対し、「暴力行為はやめなさい!」と警告を連呼した結果、申請人乙はやっとのことで車に乗り込むことができた。しかし、三巻ら二~三名は、車の前に立ちはだかって、車の走行を妨害したので、申請外学習研究社の社員が排除し、同九時二〇分頃車はやっと発進することができた。

その後右被申請人らは、拡声器を使い、その音量をあげて、全員で「社長の逃亡を許さないぞ!」などシュプレヒコールを繰り返し、同九時三〇分を少し過ぎた頃立ち去った。

36 同年一一月一〇日午前七時三〇分頃から、三巻ら約四〇名が、申請人乙宅に順次押しかけ、門扉に赤旗を、また門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ、立て掛けて掲出し、同九時頃拡声器を使い、その音量をあげ声音に、『……社長は、団交に応じろ……!」等とアジ演説や、シュプレヒコールを行なったりして、申請人乙に対する面会を求めた。

そして、同九時三〇分頃、申請人乙宅への来客を取り囲み、「社長はいるか!」、「社長はいる筈だ、出てくるよう言ってよ!」、「社長は悪い奴でオレたちを首にして、自分は逃げ回っている」などと執拗に絡み、申請人乙宅の中に入るのを妨害し、同一〇時一〇分頃、車で外出しようとした申請人乙の妻に対しても大勢で取り囲み、車のドアーを足で押さえて閉めさせなくしたので、同人が、「何故、こんなことをするのですか!」、と抗議すると、大勢で口々に「社長に会わせないからだ!」、「社長に取り次げ!」、「社長を出せ!」などと怒鳴りつけ、恫喝するなどの行為を繰り返した。

その後同一〇時三五分頃、全員で拡声器を使い、その音量をあげ声高にシュプレヒコールを行なって、やっと立ち去った。

37 同年一二月八日午前八時三〇分頃から、国分、岩崎、三巻ら約一〇名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、インターホンを何回も連打し、同九時二五分頃から、国分が拡声器を使って、申請人乙宅において電話での会話ができないほどの音量で、声高に「私達は、社長に団交の申し入れのためここに来ている……」などと演説を行なった。

申請人乙は、危険を避けて、暫く外出を見合わせていたが、予定時間が過ぎ外出せざるを得なくなったので、同九時三五分頃、門扉より外に出たところ、右被申請人らは、携帯用拡声器を使って、「ヒロシ!」、「社長!」、「団交要求を受けとれ!」など大声で怒号しながら申請人乙目がけて突進し、文書の受領を強要して、押したり掴み掛かったりし、申請人乙の身体の自由を奪い揉みくちゃにした。

申請人乙は、申請外学習研究社の社員の援護を受け、やっと車に乗り込んだが、三巻ら二~三人がなお執拗に車の前方に立ち塞がったり、更に右被申請人らが乗ってきた車を道路中央に停車させて、申請人乙の乗車した車の走行を、警察官から注意されるまでの暫くの間妨害した後、同九時四〇分頃立ち去った。

38 昭和六二年一月二六日午前八時頃から国分、岩崎、三巻ら約二〇名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、同八時三〇分頃からインターホンを何度も連打し、門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時五分頃から拡声器を使って、申請人乙宅内での会話が出来ないほどの音量で声高に、「南千束の地域の皆さん……御用社員によって、……古岡社長を外出させようとしています。……」など演説を行なったりした。

また、同九時二五分頃、門扉から外出しようとした申請人乙に対し、拡声器を使って、声高に「団交に応じろ!」など大声で怒鳴りながら突進し、掴み掛かろうとしたり、揉みくちゃにして申請人乙の身体の自由を奪い、現場に居合わせた警察官が右被申請人らを排除するまでしばらく立ち往生させた。

また、車に乗り込んだ後も、三巻らは、車の前面に立ち塞がって走行を妨害し、再度警察官が排除するまで車は動けない状態であった。

右被申請人らは、同九時四〇分頃立ち去った。

39 同年二月二三日午前九時一五分頃、申請人乙が外出するため門から外に出たところ、国分ら四名が、申請人乙に対し「社長、団交に応じろ!」など大声で怒鳴りながら突進し、申請人乙をとりかこみ、前後左右から抱き付いたり、身体を引っ張ったり、押したり、突いたりして、申請人乙が車に乗り込むのを妨害した。

申請人乙は、妻と長男及び運転手の助けを借り、やっとのことで車に乗り込むことができたが、右四名は、なおも車の前に立ち塞がり、その走行を妨害するなどの行為を繰り返した後、しばらく申請人乙宅門前に屯していたが、午前九時五〇分頃やっとのことで立ち去った。

40 同年三月三〇日午前八時一五分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら二五~二六名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、同八時三〇分頃インターホンを何度も連打し、門北側の石塀に前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時二分頃から国分が携帯用拡声器を使い、その音量をあげ声高に、「……古岡社長、何時までこのような対応を続けるのか。私達は、このような逃亡を絶対許さない。……この間、古岡秀人会長に対してもあらゆる逃亡先に私達が攻撃したように、古岡社長がこのような行動をとり続けている限り、ますます自分が自分の首を絞めていく、こうした事態に陥っていく。……私達は、古岡社長に対して実力で思い知らせていきたいと思う。……ふじせ労組の団交要求に応じろ……」などと演説を行ない、玄関前の門前及び勝手口前出入口に分かれて、申請人乙の外出をあくまで妨害する構えをとった。

この状況下で同九時八分頃、申請外学習研究社の社員数名が、勝手口から申請人居宅に入ろうとしたところ、勝手口前出入口の扉に張り付いていた四名が、「今日は誰も中に入れさせないぞ」など怒鳴り、胸や腹を押すなどの暴力を振い、しばらく中に入るのを妨害した。

その後国分は、拡声器を使い、「何人かの社員が社長宅内に入り、暴力的に突破する態勢をとろうとしています。……今日は、古岡社長の逃亡を絶対に許すことなく、我々の団交要求を貫徹していきたい……」と演説した。

このため、同九時一六分頃申請人乙は、危険を避けてガレージ南側出入口から出て、車に乗り込んだところ、右被申請人らが、「あ!社長だ!」、「社長、待て!」などと叫びながら走り寄り、車の前面に立ち塞がり、ボンネットに飛び乗ったり上体を預けたりして車の進行を妨害し、一方、被申請人らは、車の両脇に群がり、車に身体を密着させ、車の屋根を強打しながら、車内の申請人乙に罵声を浴びせた。

申請外学習研究社の社員が、車の進行を妨害する右被申請人らを排除したが、またすぐに、右被申請人らは車の前方に立ち塞がって走行を妨害するため、申請人宅から約七〇~八〇メートル程離れた中原街道付近まで車の走行が妨害された。

その後も右被申請人らは、申請外学習研究社の社員にまとわりつき、因縁をつけたり、暴行を加えたりして、申請人乙居宅付近を騒然とした状態にし、同九時三〇分頃やっと立ち去った。

41 同年四月六日午前八時三〇分頃から、国分、岩崎、三巻らが、申請人甲宅の門前に押しかけ、インターホンを何度も連打し、申請人甲への面会を強要し、申請人甲の家事使用人が不在の旨答えたにもかかわらず、立ち去ることなく、状況把握のため申請人甲宅前に赴いた申請外学習研究社の社員に対し、「会長はいるんだろ!」と何度も威迫し、国分らが拡声器を使って声高に、「私達への妨害行為を行なって、暴力的に古岡会長を……させようとする体制がとられています……」などと、演説を行ない、同九時四〇分頃、シュプレヒコールを行なった後、立ち去った。

42 同年五月一五日午前八時三〇分頃より、国分、竹内、岩崎、三巻ら一六~七名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、同九時頃からインターホンを何度も連打し、申請人乙宅門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時一三分頃から、国分が拡声器を使い声高にリードして、申請人乙宅内での会話が出来ないほどの音量で、「古岡社長に団交に応じろ!」、「社長の逃亡を許さないぞ!」、「社長の逃亡を粉砕するぞ!」、「古岡社長は出てこい!」、「ふじせ闘争に勝利するぞ!」などとシュプレヒコールを繰り返し、更に拡声器を使用して、申請人乙宅内での会話が出来ないほどの音量で、「御用社員を使って、今日も私たちの前から社長は逃亡しようとしています。社長が出てきたら断固として団交要求を突き付けていきたい!……」、「……今、この前で私たちふじせ労組の団交要求を受け入れ、争議を解決しろと……。古岡滉社長に抗議を……」などと講説を行なった。

そして、右被申請人らは、申請人乙宅の出入口をすべて見張り、人が出入りするのを制する構えを見せていたが、同九時一五分頃、申請外学習研究社の社員が申請人乙宅に入ろうとするところを妨害し、同九時二二分頃、申請人乙が玄関前の門扉から外に出ようとしたところ、「社長!」、「古岡滉!逃げるな!」「団交に応じろ!」、「古岡!」、「ヒロシ!」などと罵声を浴びせながら申請人乙目がけて殺到し、申請人乙の前に立ち塞がったり、掴み掛かったりして、乗用車に乗ろうとするのを実力で妨害して立往生させ、申請人乙が車に乗り込んだ後も、三巻ら二~三名が、車の前に立ち塞がって車の走行を妨害した。

その後同九時四〇分頃右被申請人らは、拡声器を使用して大声でシュプレヒコールを繰り返した後、やっと解散した。

43 同年六月一六日午前八時一〇分頃より、国分、竹内、三巻ら一九名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、申請人乙宅門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出した後、同八時五七分頃から、竹内が拡声器を使用し、その音量をあげて声高に、「……ふじせ企画労働組合と私達の闘いを応援してくれている労働者のものです。私達は、本日も南千束一の六の一に住んでいる学研の社長古岡滉社長の自宅前で争議解決の団体交渉の申し入れ行動を行っています。」、「……現在、学習研究社は一切の回答を拒否し、関係の無い会社、全ての責任を回避して私達の争議解決の要求を無視し続けています。私達は、この一〇年間……行動を行なっています。」「しかしながら学研の会長、社長が……私達の正当な要求行動を無視し……本日も、私達の団体交渉の要求行動に対して学習研究社は、社長のみを救出し、……行動に出ています。……」等の演説を行った。

そして、右被申請人らが申請人乙宅のすべての出入口を見張る状況の中で、同九時頃から竹内がインターホンを連打しながら、拡声器を申請人乙宅の方に向け、その音量を上げて、「学研の古岡社長さん……古岡滉社長さん……私達の団交要求に応じて、直ちに争議解決のための話合いに出てきて下さい。」、「古岡社長さん……古岡社長さん……、東京ふじせ企画労働組合が団体交渉の申入れに参りました。……直ちに応対して下さい。」等と面会を求め、その後も同九時三〇分頃、九時四五分頃、一〇時頃の三回に亘り拡声器による演説や、シュプレヒコールを繰り返し、同一〇時五分頃立ち去った。

この間申請人乙は、右被申請人との無用なトラブルを恐れて外出を差し控えており、実際に外出できたのは、同一〇時三〇分頃であった。

44 同年九月二二日午前八時三〇分頃より、竹内、岩崎、三巻ら一六、七名が、申請人乙宅前に順次押しかけ、インターホンを何度も連打し、門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時二分頃から、竹内が拡声器を使用し、その音量をあげて声高に、「……学習研究社、古岡秀人、古岡滉ら南千束に住む最高責任者に抗議の声を上げていきたい……私たちの要求を貫徹すべく闘っている……会社を倒した不法行為を許さない……とことん解決まで闘っていく。……学研社長古岡滉、団体交渉の申入れに出てきなさい。……」などと演説を行なった。

そして、右被申請人らは申請人乙宅のすべての出入口を見張っていたが、同九時五分頃、申請外学習研究社の社員が申請人乙宅内に入ろうとすると妨害し、更に同時刻頃申請人乙の娘が外出しようとすると力づくで妨害して、ついに外出を断念させこれを見ていた竹内は、「東京ふじせ企画労働組合は、団体交渉の申入れをしています。社長の家では、自分の息子、娘、更に奥さんまでも使って、労組に敵対させることを繰り返している。先程の申入れ行動に対して、古岡滉の娘を使って暴力的に敵対させる……」などと拡声器を使い声高に怒鳴っていたが、その後同九時一五分頃から、竹内が拡声器を使い声高に、「古岡社長!団交に応じろ!」、「直ちに出てきて、団体交渉の要求書を受けとれ!」、「……ちゃんと出てきて説明しろ!」、「どう説明するのか。……おかしいじゃねえか!」、「えーッ、団体交渉の申入れを受けていながら!」、「えーッ、話し合え!」、「えーッ……」などと罵声をあげ、門扉前をぎっしり固めて、申請人乙の外出をあくまで妨害する構えを見せたため、申請人乙は暫く外出を見合わさざるを得なかった。

その後同一〇時頃、右被申請人らは拡声器を使い、家の中まで響く程の大声で何度もシュプレヒコールを繰り返した後立ち去った。

45 同月二八日午前九時頃から、三巻、岩崎ら四名が、申請人甲宅門前に押しかけ、インターホンを押して、「会長はいますか」と面会を求め、家事使用人が不在である旨答えたところ、右四名はそのまま門前を占拠し、門扉上部の透かし格子に赤旗を括りつけ、潜戸の扉を塞いで掲示し、扉を背にして、座り込み、門からの人の出入り通行を妨げた。

さらに、拡声器を使って、声高に、「会長は団交に応じろ!」などの演説を行なった後、午前一〇時三〇分頃、立ち去った。

46 同年一一月二七日午前七時三〇分頃から、国分、竹内、三巻他一名が申請人乙宅に押しかけ、インターホンを連打し、同八時近くになって、国分が拡声器を使い、大声で、「古岡社長は学研の最高責任者……」「四名の解雇事件……解決していません。私たちの……申入れ……阻止しています……」などと演説を始め、演説終了後には突然、「しっかりやれよ!」、「今日の株主総会しっかりやれよ!」、「古岡社長!社長自身が出て来なきゃァ何んら『ふじせ』は解決しないんだヨッ!」などと怒鳴るなどした。

同八時過ぎ、申請人乙の妻が第四一回定時株主総会に出席する申請人乙を車で送って戻り、車庫入れしようとするのを認め、三巻、竹内ら四名が取り巻き、車を降りた申請人乙の妻に対し、竹内が、「社長いるんでしょ」と尋ね、「出かけて留守です」と答えても、女性の外部団体員が、「いつも嘘言っているんだから」と悪態をつくなどした。申請人乙の妻は、「今日は、株主総会で出かけていますよ。一〇時(総会の始まる時間)になれば私の言っていることが本当か嘘か分かるでしょう」と言って、家の中に入った。

右被申請人らは、なおも疑って、引き続き出入口を見張っていたが、同八時三〇分頃に三名が、残りの労組員らも同八時五〇分頃に立ち去った。

47 同年一二月四日午後六時頃から、国分、竹内ら約二〇名が、申請人甲宅前に順次押しかけ、同六時一五分頃から、学研労組の塚田が拡声器を使い、大きな声で、「本日は、全学研労組とふじせ企画労組共同による申入れ行動を行なっています……都労委が不当な命令を出しました。……デタラメな認定をしました」など演説を始め、終わると全員で大声で「会長は出て来い!」、「古岡秀人会長は出て来い!」、「出て来て速やかに争議を解決しろ!」、「学研が責任をもって業務を再開しろ!」、「都労委反動命令を乗り越えて闘うぞ!」など数分間にわたりシュプレヒコールを行い、次いで学研労組の安西が、「……古岡秀人会長は今年七九才という高齢に達しております。そして、おそらくは経営者として活動できるのも、後僅かであると言えると思います……会長の責任を追及し、争議全面解決まで闘い続けますし、会長の自宅に対しましても、今後とも申入れを行なって参ります……」、また、三巻が「……古岡会長が逃げ回っている先にも申入れ行動を行なってきました」、再び塚田が「会長、あるいは社長、あるいは社前闘争を通じて、今後も闘って参ります……」など演説を行ない、この後も二、三人が声高に演説を行なった。

そして、学研労組の水谷が警備のため申請人甲宅前に赴き、写真の撮影をしていた申請外学習研究社鈴木人事部主査に対し、突然駆け寄り、同主査の両肩を拳で激しく突き、突っかかったり、同六時四〇分一寸過ぎ頃、田園調布署のパトロールの警察官が写真撮影をしたところ、労組員ら数名が、警察官の前面に立って怒号を発したり、両手を挙げて撮影妨害をしたりした。

その後、インターホンを押して、「最高責任者を出しなさい」、「……ちゃんと対応できる人を出しなヨ!」などと言い、「申入書」を読み上げた後、郵便受に投げ入れ、同六時五二分頃、「古岡会長は争議を解決しろ!」、「古岡会長は団交に応じろ!」、「古岡会長の逃亡を許さないぞ」、「都労委反動命令を粉砕するぞ!」、「会長宅闘争を闘うぞ!」、「社長宅闘争を闘うぞ!」、「田園調布署は帰れ!」などとシュプレヒコールを行ない、立ち去った。

48 同月一四日午前八時三〇分頃から、国分、竹内、三巻、岩崎ら約二〇名は、順次申請人甲宅門前に押し掛け、インターホンを押し、応対した家事使用人に対し、「古岡秀人いるか!」と怒鳴りつけ、さらに右申請人らは、その後も、何度もインターホンを連打し、申請人甲宅の門に向かって右側の石垣に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出し、国分が拡声器を使って、大声で「会長は団交に応じろ!」、「会長は責任を取れ!」などの演説を行った後、同一〇時頃、門前から立ち去った。

49 昭和六三年一月二五日午前八時三〇分頃から、三巻、国分、岩崎、竹内ら一八名は、順次申請人甲宅に押し掛け、突然拡声器を使って声高に演説を始め、その後も断続的に拡声器を使って大声で演説を行なっていたが、警備に来た申請外学習研究社の社員が姿を見せるや、国分は、拡声器を使って声高に、「学習研究社の暴力社員がやってきて、私達の……を妨害しようとしています。……」等の演説をしたが、同一〇時ころシュプレヒコールを行ない、同一〇時五分頃解散し、申請人甲宅前から立ち去った。

50 同年二月二二日午前七時三〇分頃から、三巻、国分、岩崎ら一一名は、申請人甲宅に順次押し掛け、同九時頃インターホンを連打し、申請人甲に面会を強要したが、家事使用人が不在である旨答えたが、被申請人らは門前にとどまり、国分は、拡声器を使って、「……学習研究社が、下請組合潰しの……私達はこの責任を追及して、闘っていきます。しかしながら、学研の最高責任者である古岡秀人会長、この南千束の一の二一の九に住んでいる古岡秀人、そして古岡滉が私達の団体交渉の要求をかたくなに拒んで、私達の前から逃亡を繰り返しています……」等の演説を声高に行なった。

そして、被申請人らは、同一一時頃シュプレヒコールを何回も繰り返した後、立ち去った。

51 同月二九日午前七時五〇分頃から、国分、竹内、岩崎、三巻ら一九名は、順次申請人乙宅に押し掛け、インターホンを何度も執拗に連打し、申請人乙宅の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ掲出した。

当日申請人乙は、同九時過ぎには外出を予定していたので、申請外学習研究社社員が、警備のため同九時五分頃申請人乙宅前に到着したが、それを認めた国分が、拡声器を使って、声高に、「……また学研の総務部の社員がやってきて、……妨害しようとしています……」等の演説を行ない、指示を受けるため勝手口から申請人乙宅内に入ろうとする申請外学習研究社社員に対し、勝手口前を固めていた岩崎と外部団体員二名が、勝手口の扉の前に立ち塞がり、執拗に入るのを妨害した。

このため申請人乙は、予定していた外出をしばらく見合わさざるを得なかった。

一九名の被申請人らは、シュプレヒコールを行なった後同一〇時五分頃、立ち去った。

52 同年三月一四日午前八時頃から、国分、岩崎、三巻ら二〇名は、順次申請人乙宅に押し掛け、門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけ、立て掛けて掲出し、申請人乙宅の住居の門前、勝手口前出入口、ガレージ北側・南側出入口など、全ての出入口に被申請人らが張り付き通行を妨げ、同九時二分過ぎには、申請外学習研究社の社員が、申請人乙宅の勝手口前出入口から中に入ろうとするのを、国分が執拗に妨害するなどし、申請人乙宅への出入りを全て阻止する構えを見せた。

申請人乙は、この日同九時過ぎには外出を予定していたが、このため、被申請人らとの無用の紛争を避けるため、外出を一時差し控えた。

その後同九時六分頃から、国分が拡声器の音量をあげて声高に、「学研の古岡滉社長、私達東京ふじせ企画労働組合の団体交渉の申し入れに応えて、直ちに争議解決の話し合いを持つべく、応対をしてもらいたいと思います……」などと演説を断続的に繰り返していたが、右被申請人らは、同一〇時過ぎ頃大声でシュプレヒコールを繰り返した後、二名を残して大半が立ち去り、同一〇時三〇分頃には、残っていた二名も立ち去った。

53 同月二二日国分、竹内、岩崎の三名は、午前八時五分頃から、申請人甲宅に押しかけ、その門前に屯しながら申請人甲が外出するのを待ち構え、同九時二〇分頃、申請人甲が門から外に出て、待たせていた車に乗ろうとしたところ、国分、岩崎の二人が、申請人甲を目がけて、「オーナー」、「オーナー」などと叫びながら詰め寄り、申請外学習研究社の社員四人が懸命に制止したにもかかわらず、岩崎が、申請人甲が乗った車のドアをつかんで閉めるのを妨害し、さらに、国分は、「待て!」と叫びながら、申請人甲が乗った車を追いかけ、手に持っていた傘の先で、車の右側後部ドアのガラス部分を叩いたりした。

一方、午前九時五分過ぎから、三巻と外部団体員二名が、申請人乙宅に押しかけ、その門前に屯しながら申請人乙が外出するのを待ち構え、同九時一五分頃、申請人乙が、ガレージ北側出入口から外に出て、待たせていた車に乗り込もうとしたところ、三巻ら三人が、「社長!団交に応じろ!」などと罵声を浴びせながら申請人乙に掴みかかり、申請人乙が首に巻いていたマフラーや手に持っていた傘を引っ張って、雨に漏れた地面に落とすなどの暴力を振るい、申請人乙が車に乗り込むのを妨害した。

54 同年四月一三日、国分、竹内、三巻の三名とこれを支援する外部団体員一一名は、午前八時三〇分頃から、順次申請人乙宅に押しかけ、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時過ぎ、申請外学習研究社の社員に対し怒鳴りつけたり、申請人乙宅の勝手口からの出入り通行を妨害したりしていたが、同九時一〇分頃から国分が、携帯用拡声器を使い、その音量をあげ、「古岡会長は、学研から御用社員を呼んで、正当な争議行為として、展開されている私達の行動に対して、妨害を繰り返しています」、「面会強要、文書受領の強要、外出妨害の禁止、こうした形で、東京地方裁判所に、また仮処分申請を行なってきています。……これは全く不当なもので……」などと演説を行ない、さらに、警備のため申請人乙宅の前にいた申請外学習研究社の社員に対して、三巻が、「今度の陳述書には、会長や社長に対して、我々の言ってもいないようなことを書いてあるではないか!」などと大声をあげたり、竹内が、「学研の手で、会社が潰されたんじゃないか! 仮処分申請をしても、我々は、何度でも社長宅に来るからな!」などと大声で脅したり、また同九時二〇分頃には、申請人乙宅の勝手口に向かい、「社長さん、社長さん、出てきて下さいよ!」などと叫んだりして、申請人乙宅の門前や勝手口前などに屯しながら申請人乙が外出するのを待ち構えていた。

申請人乙は、この日午前九時過ぎに、外出する予定であったが、右被申請人らが押しかけているために外出できず、同九時三〇分頃になって、被申請人らが立ち去り、漸く外出できた。

55 同年五月三〇日、午前八時頃から国分、竹内、三巻とこれを支援する外部団体員一四名らが、申請人乙宅に順次押しかけ、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時二三分頃から同一〇時頃までの間に、国分が拡声器の音量をあげ声高に、一~三分の演説を、断続的に三回ほど繰り返したり、シュプレヒコールを声高にあげたりして、申請人乙の外出を待ち受けていたが、同一〇時五分頃右被申請人らは立ち去った。

申請人乙は、この日、申請外学習研究社の重要会議に出席するため、午前九時過ぎに、出かける予定であったが、右被申請人らが押しかけているため、予定の時刻に外出できなかったものであるが、同一〇時二五分頃、右被申請人らが、門前から姿を消したので、立ち去ったものと判断し、申請人乙が、迎えの車を申請人乙宅に呼んだところ、国分と竹内が申請人乙宅前に再び現れたりしたため、またも外出時間を延期し、結局、被申請人国分らが立ち去ったことが確認できた午前一一時過ぎ、やっとのことで外出することができた。

一方、この日、午前八時四〇分頃から、被申請人竹内とこれを支援する外部団体員二名は、申請人甲宅に押しかけて申請人甲の外出するのを待ち受け、同八時五〇分頃には、申請人甲宅の門のインターホンを押し、申請人甲の家人が応対に出ると申請人甲の所在を確かめたりした後、同九時頃、申請人甲が外出のため門扉のくぐり戸から外に出て、待たせていた車に乗り込もうとすると、竹内ら三人は、口々に「古岡!」、「古岡!」、「オイ! 古岡!」、「オイ!」などと叫びながら申請人甲目がけて突進し、警備に当たった申請外学習研究社の社員らがガードしたところ、これを押しのけて更に詰め寄ろうとした。そして、申請人甲の乗った車が出発し、警備に当たっていた申請外学習研究社の社員が、申請人甲宅の門前からいなくなると、門扉の内側にいた申請人甲の家人に対し、「ちゃんといるんじゃねえか!何が出かけただヨ! ウソつき!」、「ご免なさいじゃネーヨ!」、「人の話を取次いでからそんなこと言いなさいヨ!」、「取次がないからそういうことになるんだ!」、「ウソつき!」などと怒鳴りつけたり、くぐり戸を膝頭で外からドン、ドンと蹴りながら何回か開けたりした後、同九時二分頃右被申請人らは、申請人甲宅から立ち去った。

56 同年六月一三日、午前八時頃から、国分、竹内、三巻とこれを支援する外部団体員約一三名らは、申請人乙宅に順次押しかけ、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端竹竿に括りつけて掲出し、同九時一〇分頃から同一〇時頃までの間に、国分が拡声器の音量をあげ声高に、二~三分の演説を、断続的に二~三回ほど繰り返しながら申請人乙の外出を待ち受けていたが、同一〇時頃大声でシュプレヒコールを何回か繰り返した後、立ち去った。

この日、申請人乙は同九時頃には外出する予定であったが、被申請人らが押しかけているため外出できず、また、同一〇時一五分頃、申請人乙の妻と娘が外出しようとしたところ、国分と竹内更に外部団体員二名が、突然門前に現れ、申請人の妻と娘に対して、「社長も出て来るのか」、「社長に取りつげヨ!」などと言いながら詰め寄って来たため、申請人乙の妻と娘は外出を取り止めた。申請人乙は、右の四名が立ち去った同一〇時四〇分過ぎに、漸く外出することができた。

一方、この日午前八時過ぎから、竹内とこれを支援する外部団体員四名が、申請人甲宅前に現れ、申請人甲宅を見張ったり、近くに隠れたりしながら申請人甲の外出を待ち受けていたが、同九時頃、申請人甲が、車に乗り外出しようとしたところ、竹内ら五名が急に現われ、申請人甲が乗った車の前に立ち塞がり、車の走行を停めて立往生させ、申請人甲が乗った車が、竹内らの妨害を避けるため、西側方向へバックさせたところ、竹内らは、この車を追いかけ車は方向転換するため、約三〇メートル先の十字路を越した地点で一旦停止したが、竹内らは再び車に追いつき、車の前や側面に取りついたり、南側に方向転換することを予想し、路上南側に立ち塞がり、進行を妨害したが、車は、竹内らの隙を縫って、反対の北側に走り去り、竹内らは、同九時過ぎ、申請人乙宅方向へ立ち去った。

57 同年七月一八日、午前八時頃から竹内、三巻とこれを支援する外部団体員一二名らが、申請人乙宅に順次押しかけ、インターホンを連打し、申請人乙宅の門北側の石塀に、前同様の横断幕を両端を竹竿に括りつけて掲出し、同九時三一分頃から、被申請人竹内が拡声器の音量をあげ声高に、「学研の古岡社長、先程も……、話し合いの申出に応じて出て来るよう訴えます。先程は……応対してくれませんでしたけど、……社長は……私達を、混乱状態を作り出して……」などの内容の演説を二分程行ない、次いで品川臨職の佐久間が、同様に拡声器の音量をあげ声高に、「学習研究社は、私達に対して、社員をこの自宅前に呼び寄せて私達に対する……私達の前から逃亡しようとしています。……地域住民の皆さん……」などの演説を二~三分程行ないながら、申請人乙の外出を待ち受けた。

同九時三〇分頃から、申請外学習研究社の社員が、二台の車で申請人乙宅の警備に赴き、同九時三五分頃、「申請人が禁止してほしいなどという不当な申立を行なっています。私達は、この様な学研の古岡会長のやり方を、絶対に容認することはできません。……」、「南千束の皆さん、……学習研究社に対して、是非とも抗議の声をぶつけていただきたい……という風に考えます。」、「私達は、学習研究社が、我々と無関係であるなどという言い草は全く認めないし、団交を拒否するのであれば、私達の争議を益々拡大し、学研が私達との話し合いの場に出て来るまで、私達の当然の争議を継続していくものです。」、「そのことによって、古岡会長は、あたかも私達の、この自宅前での当然の申入れに対して、そのために会社に出社して行けないなどという申立を裁判所に行なっています。全く、私達は、当然のこととして話し合いを求めて、……そうした事を求めているにすぎないにも拘らず、そのことが外出妨害などという訴えを行なって、自分で勝手に、私達との話し合いを拒んで、この様に、自宅にたてこもっている。こうした会長の姿勢というものは、何ら私達の当然の争議行為、それと因果関係を有するものではありません。」「裁判所に不当な申請を行なって、古岡会長は、私達が会長のこの自宅に申し入れしてくることさえ禁止してほしい、そういう事を言っておりますけど、前回の仮処分決定でも、古岡会長のこうした申立のほとんどが却下され、私達のこうした自宅への申入行動を裁判所も禁止することはできなかった訳です。私達は、それにも拘らず今度、重ねて古岡会長が私達への不当な仮処分というものを、息子の古岡滉社長と二人がかりで、今度は申立ててくる、……」などの演説を、約一〇分近く行ない、その後も時々、二~三分程の演説を行なっていたが、同一〇時三〇分頃、シュプレヒコールを繰り返して、国分を残して、申請人甲宅前から立ち去った。

この日、申請人甲も午前九時過ぎには、申請外学習研究社の定例の会議に出席するため、外出する予定であったところ、右被申請人らが押しかけているため、外出を見合わせていたものであるが、同一〇時四五分頃、申請人甲が迎えの車を呼び、門扉から外に出て、車に乗り込もうとした際、国分が申請人甲目がけて詰め寄ろうとして、申請外学習研究社の社員に制止された後、国分もまもなく立ち去った。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例