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東京地方裁判所 昭和57年(行ウ)62号 判決 1990年10月05日

原告

児玉譽士夫承継人

児玉睿子

児玉譽士夫承継人

児玉博隆

児玉譽士夫承継人

児玉守弘

児玉譽士夫承継人

児玉雅世

児玉譽士夫承継人

児玉弘美

児玉譽士夫承継人

児玉由美子

児玉譽士夫承継人

児玉義昭

右原告ら訴訟代理人弁護士

渡辺留吉

横井治夫

被告

玉川税務署長

佐藤鉄雄

右指定代理人

鈴木芳夫

外七名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が児玉譽士夫の昭和四六年分所得税について昭和五二年一月二一日付けでした更正のうち総所得金額一億一八八八万七五二八円、納付すべき税額六一一〇万八八〇〇円を超える部分並びに昭和五一年三月一三日付け及び昭和五二年一月二一日付けでした各重加算税賦課決定を取り消す。

2  被告が児玉譽士夫の昭和四七年分所得税について昭和五二年五月一七日付けでした更正のうち総所得金額二億七五八七万〇〇〇九円、納付すべき税額一億八〇三二万九三〇〇円を超える部分並びに同日付けでした昭和五一年三月三一日付け重加算税賦課決定の増額変更決定及び重加算税賦課決定を取り消す。

3  被告が児玉譽士夫の昭和四八年分所得税について昭和五二年五月一七日付けでした更正のうち総所得金額二億〇一八六万〇二一九円、納付すべき税額一億二六二六万四一〇〇円を超える部分並びに昭和五一年九月三〇日付けでした重加算税賦課決定(ただし、その後昭和五二年一月二一日付けで変更決定済み)及び昭和五二年五月一七日付けでした重加算税賦課決定を取り消す。

4  被告が児玉譽士夫の昭和四九年分所得税について昭和五二年五月一七日付けでした更正のうち総所得金額一億四三七一万〇六一六円、納付すべき税額八〇一三万七四〇〇円を超える部分並びに昭和五一年九月三〇日付けでした重加算税賦課決定(ただし、その後昭和五二年一月二一日付けで変更決定済み)及び昭和五二年五月一七日付けでした重加算税賦課決定を取り消す。

5  被告が児玉譽士夫の昭和五〇年分所得税について昭和五二年一月二一日付けでした更正のうち総所得金額一億九〇三四万七八八五円、納付すべき税額一億二〇〇〇万四六〇〇円を超える部分及び同日付けでした重加算税賦課決定を取り消す。

6  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  (処分等の経緯)

児玉譽士夫(以下「児玉」という。)の昭和四六年分ないし昭和五〇年分の各所得税に係る処分等の経緯は、別表一の1ないし5記載のとおりである(以下、それぞれの最終の更正を「本件更正」、それぞれの重加算税賦課決定(増額変更決定を含む。)を「本件決定」という。)。

2  (違法事由)

しかしながら、児玉の昭和四六年分所得税の本件更正のうち総所得金額一億一八八八万七五二八円、納付すべき税額六一一〇万八八〇〇円を超える部分、昭和四七年分所得税の本件更正のうち総所得金額二億七五八七万〇〇〇九円、納付すべき税額一億八〇三二万九三〇〇円を超える部分、昭和四八年分所得税の本件更正のうち総所得金額二億〇一八六万〇二一九円、納付すべき税額一億二六二六万四一〇〇円を超える部分、昭和四九年分所得税の本件更正のうち総所得金額一億四三七一万〇六一六円、納付すべき税額八〇一三万七四〇〇円を超える部分及び昭和五〇年分所得税の本件更正のうち総所得金額一億九〇三四万七八八五円、納付すべき税額一億二〇〇〇万四六〇〇円を超える部分は、いずれも原告の所得を過大に認定したものであるから違法であり、これを前提とする本件決定も違法である。

3  (相続)

児玉は、昭和五九年一月一七日死亡し、原告らがこれを相続した。

4  よって、原告らは、被告に対し、請求の趣旨記載のとおり、本件更正及び本件決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び3は認める。

2  同2は争う。

三  被告の主張

1  本件更正の適法性

(一) 昭和四六年分の総所得金額二億九九四八万七五二八円

(1) 児玉の修正申告に係る所得金額五一〇八万六三六八円

(2) 右所得金額に対する加算額 二億四八四〇万一一六〇円

その内訳は、別表二の1記載のとおりであり、その算出根拠は次のとおりである(①ないし③を加算する。)。

① 事業所得の金額 一億二九〇〇万円

児玉が昭和四六年中にロッキード・エアクラフト(アジア)リミテッド(以下「LAAL」という。)の社長兼東京事務所代表者であるジョン・ウイリアム・クラッター(以下「クラッター」という。)を介して同人から交付を受けるという方法で米国法人ロッキード・エアクラフト・コーポレイション(以下「ロッキード社」という。)から受領した報酬の合計金額であり、その受領日及び受領金額は、別表三記載のとおりである。

すなわち、所得税法上、事業所得とは「対価を得て継続的に行う事業」から生ずる所得(所得税法二七条一項、同法施行令六三条一二号)であって、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい」(最高裁昭和五六年四月二四日第二小法廷判決・民集三五巻三号六七二頁)、また、右の業務は、特に人的物的要素を結合した経済的組織体によるものであることを必ずしも必要とせず、本来の業務あるいは職業としてなされる場合であると、副業としてなされる場合であるとを問わないものと解するのが相当である(名古屋高裁金沢支部昭和四三年二月二八日判決・行裁例集一九巻一号二九七頁、東京高裁昭和四七年九月一四日判決・訟務月報一九巻三号七三頁、静岡地裁昭和五〇年一〇月二八日判決・税務訴訟資料八三号一七一頁、東京高裁昭和五一年九月一三日判決・税務訴訟資料八九号六四三頁等)。

これを本件についてみると、児玉は、昭和四四年以降ロッキード社との間にマーケッティング・コンサルタント契約、同修正契約を締結して、同社に対し種々の角度から援助することにより、同社の日本国内における航空機(L―一〇一一型機)の販売に協力することを約し、その対価として報酬の支払を受けることを合意したものであり、以来、ロッキード社の求めに応じて日本の航空会社における機種選定に関する動向などにつき情報を提供し、全日本空輸株式会社(以下「全日空」という。)に対する売込みにつきセールスポイント等を教示して助言するなど、長期間にわたり継続的にコンサルタントとしての役務を提供したことが認められ、かつ、ロッキード社の売込みの最高責任者であった同社副社長アーチボルト・カール・コーチャン(以下「コーチャン」という。)もコンサルタントとしての児玉の力の大きさを十分に評価していること等を総合すると、児玉の右コンサルタントとしての業務は、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務に該当するというべきである。そして、児玉は、ロッキード社から右コンサルタント契約に基づいて継続的に一定額の報酬を受領していたものであって、児玉のコンサルタントとしての役務の提供は、右コンサルタント契約に基づいて必要に応じ反復継続して行われていたのであるから、右報酬額がその対価であることはいうまでもない。したがって、児玉がロッキード社から受領したコンサルタント報酬が事業所得に該当することは明らかである。

② 雑所得の金額 一七八〇万一一六〇円

次のアないしエを加算し、オを減算した金額である。

ア 武元忠義から受領した謝礼 六〇万円

イ 本州製紙株式会社(以下「本州製紙」という。)から受領した謝礼 五七七万八〇〇〇円

ウ 東海興業株式会社(以下「東海興業」という。)から受領した謝礼 一〇〇〇万円

エ 乙女鉱山開発株式会社(以下「乙女鉱山開発」という。)から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

オ 必要経費認容(採掘権賃貸収入に係る鉱区税) △七万六八四〇円

(△は、減算すべき金額を意味する。以下同様。)

③ 譲渡所得の金額 一億〇一六〇万円

児玉は、昭和四三年五月、北海道炭礦汽船株式会社(以下「北海道炭礦汽船」という。)から北星海運株式会社(以下「北星海運」という。)の株式五一〇万株を一株当たり三〇円、総額一億五三〇〇万円で取得し、これを所有していたが、昭和四六年四月に至り、右全株式を北炭商事株式会社ほか二社に対し一株当たり五〇円、総額二億五五〇〇万円で譲渡した。

ところで、北星海運の発行済株式総数は、一〇〇〇万株であり、児玉はその五一パーセントに当たる五一〇万株を所有し、これを譲渡したものであるから、右株式の譲渡は、所得税法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)九条一項一一号ハ及び所得税法施行令(昭和五四年政令第六九号による改正前のもの)二八条所定の要件に該当することが明らかである。したがって、右株式の譲渡について次の計算により算出した額が譲渡所得の金額となる。

ア 収入金額 二億五五〇〇万円

イ 取得費 一億五三〇〇万円

ウ 譲渡所得の特別控除額 四〇万円

エ 譲渡所得の金額(ア―イ―ウ)一億〇一六〇万円

(二) 昭和四七年分の総所得金額一三億六二八七万〇〇〇九円

(1) 児玉の修正申告に係る所得金額四六四八万一二六九円

(2) 右所得金額に対する加算額 一三億一六三八万八七四〇円

その内訳は、別表二の2記載のとおりであって、その算出根拠は次のとおりである(①、③及び④を加算し、②を減算する)。

① 事業所得の金額 一一億八七〇〇万円

児玉が昭和四七年中にロッキード社から受領した昭和四六年分と同様の報酬の合計金額であり、その受領日及び受領金額は、別表三記載のとおりである。

② 配当所得の金額 △一万五〇〇〇円

児玉は、東京瓦斯株式会社の株式に係る配当金一五万円を申告せず、逆に、小玉株式会社(以下「小玉」という。)の株式に係る配当金一六万五〇〇〇円を申告しているが、右小玉の株式に係る配当金については、租税特別措置法の規定に基づく配当所得の源泉分離選択課税の申告書を提出しているので申告を要しない。したがって、右加算すべき一五万円と右減算すべき一六万五〇〇〇円との差額一万五〇〇〇円は、申告に係る配当所得の金額から減算すべきものである。

③ 不動産所得の金額 一一万九四六九円

児玉が博栄商事株式会社(以下「博栄商事」という。)に賃貸した神奈川県三浦郡葉山町一色字真名瀬二五一二番の九ほか六筆の土地(以下「葉山町の土地」という。)の賃貸料収入について、申告に係る必要経費のうち、一一万九四六九円は、必要経費ではないからこれを否認する。

④ 雑所得の金額 一億二九二八万四二七一円

次のアないしキを加算した金額である。

ア 武元忠義から受領した謝礼 六〇万円

イ 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

ウ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

エ 青葉建設株式会社(以下「青葉建設」という。)から受領した謝礼 二〇〇万円

オ ジャパンライン株式会社(以下「ジャパンライン」という。)から受領した謝礼 一億円

カ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

キ 必要経費否認 一八万四二七一円

児玉は、申告において雑所得に係る必要経費として二六万一一一一円を控除しているが、雑所得に係る必要経費は右採掘権賃貸収入に係る鉱区税七万六八四〇円のみであるから、右申告額二六万一一一一円との差額一八万四二七一円を否認する。

(三) 昭和四八年分の総所得金額四億五〇五四万二七一九円

(1) 児玉の確定申告に係る所得金額四六五〇万七一二四円

(2) 右所得金額に対する加算額 四億〇四〇三万五五九五円

その内訳は、別表二の3記載のとおりであり、その算出根拠は次のとおりである(①及び③ないし⑤を加算し、②を減算する。)。

① 事業所得の金額 一億三八〇〇万円

児玉が昭和四八年中にロッキード社から受領した昭和四六年分と同様の報酬の合計金額であり、その受領日及び受領金額は、別表三記載のとおりである。

② 配当所得の金額 △一万五〇〇〇円

昭和四七年分と同様の理由による。

③ 不動産所得の金額 五四万三八八七円

昭和四七年分と同様、葉山町の土地の賃貸料収入について、申告に係る必要経費のうち、五四万三八八七円は、必要経費ではないからこれを否認する。

④ 雑所得の金額 二億六五一〇万六七〇八円

次のアないしケを加算し、コを減算した金額である。

ア 武元忠義から受領した謝礼 六〇万円

イ 東海興業から受領した謝礼 八〇〇〇万円

ウ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

エ 東郷民安から受領した謝礼 二一四〇万円

オ 矢飼督之から受領した謝礼 二〇〇〇万円

カ ジャパンラインから受領した謝礼 一億二一八八万円

児玉は、ジャパンラインから、同社と三光汽船株式会社(以下「三光汽船」という。)との間の株式買占め問題を解決した謝礼として、昭和四八年中に四〇〇万円相当の純金製茶釜、八八万円相当の腕時計、一六〇〇万円相当の東山魁夷制作の絵画「緑汀」(以下三点の価額は、いずれもジャパンラインの購入価額により評価した。)及び現金一億〇一〇〇万円の合計一億二一八八万円相当の金品を受領した。

キ 曾根啓介から受領した謝礼 一五〇〇万円

ク 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

ケ 原稿料等 四万五五八二円

コ 必要経費認容 △三一万八八七四円

児玉は、申告において雑所得に係る必要経費として七万五四六六円を控除しているが、雑所得に係る必要経費は、次の(ア)及び(イ)の合計額三九万四三四〇円と認められるので、右申告額七万五四六六円との差額三一万八八七四円を認容する。

(ア) 児玉は、前記クの採掘権賃貸収入に係る鉱区税七万六八四〇円を支払った。

(イ) 児玉は、前記カのジャパンラインからの謝礼収入に係るジャパンラインと三光汽船との紛争を解決する際、そごう株式会社社長水島廣雄(以下「水島」という。)及び野村證券会長瀬川美能留(以下「瀬川」という。)の協力を受け、その謝礼として右両名にダイヤモンド付指輪を各一個贈呈した。右ダイヤモンド付指輪は、いずれも児玉が戦時中に取得したものであり、その取得価額が明確でないので、当時の評価額、すなわち、水島分三〇万円、瀬川分一万七五〇〇円の合計三一万七五〇〇円を雑所得に係る必要経費となるべき取得価額とする。

⑤ 給与所得の金額 四〇万円

(四) 昭和四九年分の総所得金額六億七〇一一万〇六一六円

(1) 児玉の修正申告に係る所得金額五二〇六万四〇二三円

(2) 右所得金額に対する加算額 六億一八〇四万六五九三円

その内訳は、別表二の4記載のとおりであり、その算出根拠は次のとおりである(①及び③ないし⑤を加算し、②を減算する。)。

① 事業所得の金額 七一〇〇万円

児玉が昭和四九年中にロッキード社から受領した昭和四六年分と同様の報酬の合計金額であり、その受領日及び受領金額は、別表三記載のとおりである。

② 利子所得の金額 △四六万五〇〇〇円

児玉は、博栄商事からの貸付金利息収入四六万五〇〇〇円を利子所得として申告しているが、貸付金利息収入に係る所得は、利子所得ではなく雑所得とすべきものであるので、右四六万五〇〇〇円を利子所得の金額から減算する。

③ 配当所得の金額 四二万五〇〇〇円

児玉は、株式会社国民相互銀行(以下「国民相銀」という。)からの配当金五〇万円及び東京瓦斯株式会社からの配当金一五万円の合計額五九万円を申告せず、逆に、昭和四七年分と同様の理由により申告を要しない小玉からの配当金一六万五〇〇〇円を申告しているので、右申告していない配当金五九万円と右申告を要しない配当金一六万五〇〇〇円との差額四二万五〇〇〇円を配当所得の金額に加算する。

④ 不動産所得の金額 七万四一四八円

申告に係る必要経費のうち、八万一七二八円は、必要経費ではないからこれを否認し、さらに賃貸料収入の過大申告分七五八〇円を差し引き、七万四一四八円を減算する。

⑤ 雑所得の金額 五億四七〇一万二四四五円

次のアないしコを加算した金額である。

ア 武元忠義から受領した謝礼 六〇万円

イ 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

ウ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

エ 曾根啓介から受領した謝礼 五〇〇万円

オ 水谷文一から受領した謝礼 五〇〇〇万円

カ 博栄商事から受領した謝礼 三〇五万四〇〇〇円

キ 台糖株式会社から受領した謝礼 四億五五四〇万円

児玉は、昭和四九年五月一五日ころ、自己の所有する熱海観光道路株式会社(以下「熱海観光」という。)の株式一六万五〇〇〇株と引換えに台糖株式会社(以下「台糖」という。)から五億三七九〇万円(一株当たり三二六〇円)の支払を受けたが、右株式の一株当たりの取引価額は額面の五〇〇円と認めるのが相当であるから、右五億三七九〇万円のうち、四億五五四〇万円(一株当たり三二六〇円から五〇〇円を差し引いた二七六〇円に引き渡した株式数一六万五〇〇〇株を乗じた金額)は、台糖から株式売買代金に上乗せして支払われた謝礼と認めるのが相当である。すなわち、児玉は、台糖の代表取締役社長武智勝(以下「武智」という。)から同社の株主で東洋郵船株式会社社長である横井英樹(以下「横井」という。)についての対策の支援を依頼されこれに応じたが、その条件として、自己の所有する熱海観光の株式が当時の通常の取引価額として額面の五〇〇円以上であるとは考えていなかったのに、右の横井対策支援に対する謝礼相当額を含めた一株当たり三〇〇〇円以上の価格で買い取るよう台糖に要求し、これに対し、台糖も、熱海観光の株式を取得すべき事実上の必要性もなく、かつ、同株式は額面五〇〇円を超える価値はないと認識していたにもかかわらず、児玉に対する前記謝礼としての額を加味したところにより、一株当たり三二六〇円という通常の取引価額を著しく上回る価格で引き取ることを応諾し、前記のとおり児玉に合計五億三七九〇万円を支払ったものである。

ク 乙女鉱山開発株式会社から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

ケ 貸付金利息 六一一万〇八〇〇円

コ 必要経費認容 三四万七六四五円

児玉は、申告において雑所得に係る必要経費として九二万四四八五円を控除しているが、雑所得に係る必要経費は、前記クの採掘権賃貸収入に係る鉱区税七万六八四〇円と後藤寿夫に支払った著書編集費五〇万円の合計額五七万六八四〇円と認められるので、右申告額九二万四四八五円との差額三四万七六四五円を否認する。

(五) 昭和五〇年分の総所得金額四億〇九八四万七八八五円

(1) 児玉の確定申告に係る所得金額一億三四四六万六九二五円

(2) 右所得金額に対する加算額 二億七五三八万〇九六〇円

その内訳は、別表二の5記載のとおりであり、その算出根拠は次のとおりである(①、③、⑥及び⑦を加算し、②、④及び⑤を減算する。)。

① 事業所得の金額 二億九九五〇万円

児玉が昭和五〇年中にロッキード社から受領した昭和四六年分と同様の報酬の合計金額であり、その受領日及び受領金額は、別表三記載のとおりである。

② 利子所得の金額 △九九〇万二七〇〇円

児玉は、博栄商事からの貸付金利息収入九七三万九五〇〇円及び日総建設株式会社からの貸付金利息収入一六万三二〇〇円の合計額九九〇万二七〇〇円を利子所得として申告しているが、貸付金利息収入に係る所得は、利子所得ではなく雑所得とすべきものであるので、右九九〇万二七〇〇円を利子所得の金額から減算する。

③ 配当所得の金額 七八万一〇〇〇円

児玉は、国民相銀からの配当金五〇万円及び金谷ホテル観光株式会社からの配当金四一万三〇〇〇円の合計額九一万三〇〇〇円を受領しているが、これを申告せず、逆に、昭和四七年分と同様の理由により申告を要しない小玉からの配当金一三万二〇〇〇円を申告しているので、右申告していない配当金九一万三〇〇〇円と右申告を要しない配当金一三万二〇〇〇円との差額七八万一〇〇〇円を配当所得の金額に加算する。

④ 不動産所得の金額 △三六六万三四四二円

賃貸料収入の過大申告分三七八万八一〇〇円から申告に係る必要経費のうち、必要経費ではない一二万四六五八円を差し引いた額である三六六万三四四二円を加算する。

⑤ 雑所得の金額 △二四三八万一三九八円

次のアないしエ、キないしケを加算し、オ及びカ、コないしシを減算した金額である。

ア 武元忠義から受領した謝礼 六〇万円

イ 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

ウ 水谷文一から受領した謝礼 二四〇万円

エ 殖産住宅相互株式会社(以下「殖産住宅」という。)から受領した謝礼九五〇万円

オ 野村證券から受領した謝礼 △一〇〇万円

カ 博栄商事から受領した謝礼 △三〇五万四〇〇〇円

キ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

ク 貸付金利息 一二七三万八五七七円

ケ 印税等 四万七六六五円

コ ロッキード社からの報酬 △二五〇〇万円

児玉は、昭和五〇年中にロッキード社から二五〇〇万円の報酬の支払を受けたとして、これを雑所得として申告しているが、前記のとおり、右報酬は事業所得と認められるので、雑所得の金額からこれを減算する。

サ 絵画の売却収入 △四二〇〇万円

児玉は、昭和五〇年中に東海興業に対して絵画を譲渡し、その譲渡収入四二〇〇万円を雑所得として申告しているが、右譲渡収入は譲渡所得と認められるので、雑所得の金額からこれを減算する。

シ 必要経費認容 △一一万三六四〇円

児玉は、申告において雑所得に係る必要経費として八八万六三六〇円を控除しているが、雑所得に係る必要経費は、後藤寿夫に著書編集費として支払った一〇〇万円と認められるので、右申告額八八万六三六〇円との差額一一万三六四〇円を雑所得に係る必要経費として認容し、これを加算する。

⑥ 譲渡所得の金額 一二七五万円

児玉は、昭和五〇年一一月、東海興業に対し絵画六点を譲渡したところ、次の算式により算出した額を譲渡所得の金額(総所得金額に算入する額)として加算する。なお、譲渡した絵画六点は、いずれも児玉が昭和四四年以前に取得した(長期譲渡所得となる)ものであり、取得価額が明らかでないため、取得費の額は昭和四四年当時の評価額によった。

ア 収入金額 四二〇〇万円

イ 取得費 一六〇〇万円

ウ 譲渡所得の特別控除額 五〇万円

エ 譲渡所得の金額(ア―イ―ウ)×1/2 一二七五万円

⑦ 一時所得の金額 二九万七五〇〇円

児玉は、昭和五〇年二月に本州製紙株式会社から病状回復の祝いとして一〇九万五〇〇〇円相当(同社の購入価額により評価した。)の時計を贈与されたが、当該受贈益は一時所得と認められるので、右一〇九万五〇〇〇円から一時所得の特別控除額五〇万円を控除し、その二分の一の額二九万七五〇〇円が一時所得の金額(総所得金額に算入する額)となる。

(六) 以上のとおり、児玉の総所得金額は、昭和四六年分が二億九九四八万七五二八円、昭和四七年分が一三億六二八七万〇〇〇九円、昭和四八年分が四億五〇五四万二七一九円、昭和四九年分が六億七〇一一万〇六一六円、昭和五〇年分が四億〇九八四万七八八五円であって、右同額を児玉の総所得金額とした本件更正は、いずれも適法である。

2  本件決定の適法性

(一) 重加算税の計算の基礎となる税額に係る所得金額

(1) 昭和四六年分

重加算税の計算の基礎となる税額に係る所得金額(以下「重加基礎所得金額」という。)は、次の①ないし③の合計金額二億四二〇二万三一六〇円である。

① 事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬) 一億二九〇〇万円

② 雑所得の金額 一一四二万三一六〇円

その内訳は、次のとおりである。

ア 東海興業から受領した謝礼 一〇〇〇万円

イ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一四二万三一六〇円

採掘権賃貸収入一五〇万円から右収入に係る必要経費である鉱区税七万六八四〇円を控除した金額である。

③ 譲渡所得の金額(北星海運の株式譲渡によるもの) 一億〇一六〇万円

(2) 昭和四七年分

重加基礎所得金額は、次の①及び②の合計金額一三億一五四二万三一六〇円である。

① 事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬) 一一億八七〇〇万円

② 雑所得の金額 一億二八四二万三一六〇円

その内訳は、次のとおりである。

ア 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

イ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

ウ 青葉建設から受領した謝礼 二〇〇万円

エ ジャパンラインから受領した謝礼 一億円

オ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一四二万三一六〇円

(3) 昭和四八年分

重加基礎所得金額は、次の①及び②の合計金額四億〇一五〇万五六六〇円である。

① 事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬) 一億三八〇〇万円

② 雑所得の金額 二億六三五〇万五六六〇円

その内訳は、次のとおりである。

ア 東海興業から受領した謝礼 八〇〇〇万円

イ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

ウ 東郷民安から受領した謝礼 二一四〇万円

エ 矢飼督之から受領した謝礼 二〇〇〇万円

オ ジャパンラインから受領した謝礼 一億二〇六八万二五〇〇円

ジャパンラインから受領した謝礼一億二一八八万円のうち、腕時計分八八万円を除いた一億二一〇〇万円から、右収入に係る必要経費(水島及び瀬川に贈呈したダイヤモンド付指輪の評価額)三一万七五〇〇円を控除した額である。

カ 曾根啓介から受領した謝礼 一五〇〇万円

キ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一四二万三一六〇円

(4) 昭和四九年分

重加基礎所得金額は、次の①及び②の合計金額六億〇七八二万三一六〇円である。

① 事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬) 七一〇〇万円

② 雑所得の金額 五億三六八二万三一六〇円

その内訳は、次のとおりである。

ア 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

イ 野村證券から受領した謝礼 五〇〇万円

ウ 曾根啓介から受領した謝礼 五〇〇万円

エ 水谷文一から受領した謝礼 五〇〇〇万円

オ 台糖から受領した謝礼 四億五五四〇万円

カ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一四二万三一六〇円

(5) 昭和五〇年分

重加基礎所得金額は、次の①及び②の合計金額三億〇七九〇万円のうち、本件更正により増加した所得金額である二億七五三八万〇九六〇円である。

① 事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬) 二億七四五〇万円

事業所得の金額二億九九五〇万円から、児玉がロッキード社から受領した報酬の額のうち雑所得として申告した二五〇〇万円を控除した金額である。

② 雑所得の金額 三三四〇万円

その内訳は、次のとおりである。

ア 東海興業から受領した謝礼 二〇〇〇万円

イ 水谷文一から受領した謝礼 二四〇万円

ウ 殖産住宅から受領した謝礼 九五〇万円

エ 乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入 一五〇万円

(二) 隠蔽又は仮装

児玉は、その確定申告においては、前記重加基礎所得金額に関し、次のとおり、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき、右所得金額を除外したところで確定申告書を提出した。

(1) 国税通則法(以下「通則法」という。)六八条一項は、「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装した」場合に重加算税を賦課する旨を定めているが、右の「隠ぺいし、又は仮装し」とは、取引の名義を仮装し、又は二重帳簿を作成するなどして、正当に納付すべき税額を過少にして、その差額を免れることはもちろん、これにとどまらず、納税者が真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額を殊更に過少にして申告した内容虚偽の確定申告書を提出し、正当な納税義務を過少にしてその不足税額を免れる行為も含まれるものと解すべきである(最高裁昭和五二年一月二五日第二小法廷判決・税務訴訟資料九一号五四頁及びその原審の福岡高裁昭和五一年六月三〇日判決・行裁例集二七巻六号九七五頁参照)。

(2) これを本件についてみると、児玉は、従前から児玉宅に出入りしていた不動産業者福島秀夫(以下「福島」という。)に対し、昭和四〇年ころから、自己の所得について申告金額を口頭で説明して給与等の支払者から送付された給与等の源泉徴収票等を渡し、これに従って毎年の確定申告書を作成させたうえ、福島から申告金額等の説明を受けて了承を与え、同人に右申告書を提出させていたものであり、昭和四六年分ないし昭和四九年分も同様であった。ところが、昭和五〇年分の確定申告については、児玉が昭和五一年二月一二日に脳梗塞の発作を起こして自宅で療養中であったため、福島が児玉の秘書大刀川恒夫(以下「大刀川」という。)に対し相談したところ、大刀川は福島に対し、ロッキード社からの収入として二五〇〇万円のみを計上しておくよう指示するとともに、右指示内容について児玉の了承を得て、再度その旨を福島に伝え、同人はこれに従って確定申告書を作成して、同年三月一五日これを提出した。

(3) 右確定申告の内容についてみると、次のことが明らかである。

① 昭和四六年分については、配当所得は九名分、雑所得は講演料として一名分、給与所得は一五名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二五名)。

② 昭和四七年分については、配当所得は七名分、雑所得は講演料、原稿料として二名分、給与所得は一五名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二四名)。

③ 昭和四八年分については、配当所得は七名分、不動産所得は一名分、雑所得は原稿料ほかとして三名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二五名)。

④ 昭和四九年分については、利子所得は一名分、配当所得は六名分、不動産所得は二名分、雑所得は原稿料、保証料として六名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二九名)。

⑤ 昭和五〇年分については、利子所得は二名分、配当所得は五名分、不動産所得は二名分、雑所得は、原稿料、保証料、絵画売却収入及び謝礼(ロッキード社分二五〇〇万円を含む。)として八名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計三一名)。

(4) すなわち、児玉は、昭和四六年分ないし昭和五〇年分については、毎年二〇名以上の相手方から種々の収入があって、これを申告しながら、前記のとおり、契約に基づき毎年多額の収入があった事業所得(ロッキード社からの報酬)についてはこれを全く申告せず(昭和五〇年分については、雑所得として二五〇〇万円のみ申告)、雑所得については、毎年継続して受領したもの、顧問的立場で関与し謝礼として受領したもの、あるいは、紛争を解決する謝礼として受領したもの等で、かつ、いずれもその金額が多額であるから、児玉もこれらの収入の存在を十分認識していたものと認められるにもかかわらず、これを申告していなかった。また、児玉は、昭和四六年分の北星海運の株式譲渡収入については、前記のとおり、同社の発行済株式の五一パーセントを所有し、これを譲渡したものであるから、所得税法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)九条一項一号ハ及び所得税法施行令(昭和五四年政令第六九号による改正前のもの)二八条所定の要件に該当することは明らかであるのにこれを申告していなかった。

(5) 以上のことから明らかなとおり、児玉が前記の重加基礎所得金額を記載しないで内容虚偽の確定申告書を提出し、右所得を殊更に秘匿してこれを申告しなかったことは、単なる所得計算の違算や失念と認めることは到底できないものであって、児玉が正当な税額の納付を回避する意図のもとになしたものと認めるのが相当である。ところで、右児玉の「真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額を殊更に過少にした内容虚偽の確定申告書を提出し、正当な納税義務を過少にして、その不足額を免れる」過少申告行為は、通則法六八条一項に定める所得税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装した場合に該当するものというべきであり、そのうえ、本件においては、次の事実、すなわち、

① ロッキード社からの報酬については、

ア 児玉は、ロッキード社に対し、同人とロッキード社との間のコンサルタント契約に係る契約書を作成しないこと、右コンサルタント報酬を現金で支払うこと、右契約の存在や報酬の支払について一切公表しないことを強く要望し、その結果、児玉への支払は、いわゆる運び人を使うなど金銭の授受の形跡が残らない方法によりなされたこと

イ 児玉は、同人がロッキード社から受領したドル小切手が盗難に遭った際、警察署に盗難被害届済証明願を提出したが、右証明願には、被害物件として右小切手を明示せず、単に「重要書類」等の記載にとどめており、これは、コンサルタント報酬の受領の事実を秘匿するためであったと認められること

ウ その後、ロッキード社が児玉に対するコンサルタント報酬の支払事実について公表せざるを得なくなった際、児玉は、約束が違うと憤慨し、ロッキード社が児玉の身代わりを立てるか若しくは児玉の税金を負担すべきである旨を述べていたこと

② 北星海運の株式五一〇万株の譲渡による利益については、右利益が非課税所得であるとして課税を免れるため、右のうち二六万七〇〇〇株が萩原吉太郎に帰属するものであると偽り、自己の売買株式数があたかも発行済株式総数の五〇パーセント未満であるかのように仮装したこと

③ 台糖から受領した謝礼金については、前記のとおり、右謝礼金を熱海観光の株式の売買代金に上乗せすることによって右謝礼金収入の事実を隠蔽し、又は仮装したこと

以上の事実は明らかである。したがって、被告が通則法六八条一項に基づいてなした本件決定は、いずれも適法である(なお、本件決定の各処分日別内訳は、別表四の1ないし5記載のとおりである。)。

四  被告の主張に対する認否・反論

1  被告の主張1(本件更正の適法性)について

(一) (一)(昭和四六年分の総所得金額)について

(1) (児玉の修正申告に係る所得金額)は認める。

(2) (右所得金額に対する加算額)の②(雑所得の金額)は認める。①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和四六年中にロッキード社から五〇〇〇万円を受領したこと、被告主張の法令の定め及び判例があること、児玉がロッキード社の求めに応じて日本の航空会社における機種選定に関する動向などにつき情報を提供したことは認めるが、その余は否認する。③(譲渡所得の金額)のうち、児玉が昭和四三年五月に北海道炭礦汽船から北星海運の株式四八三万三〇〇〇株を取得し、これを昭和四六年四月に譲渡したこと、北星海運の発行済株式総数が一〇〇〇万株であったことは認めるが、その余は否認する。

(二) (二)(昭和四七年分の総所得金額)について

(1) (児玉の修正申告に係る所得金額)は認める。

(2) (右所得金額に対する加算額)の②(配当所得の金額)、③(不動産所得の金額)及び④(雑所得の金額)は認める。①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和四七年中にロッキード社から一億円を受領したことは認めるが、その余の事実は否認する。

(三) (三)(昭和四八年分の総所得金額)について

(1) (児玉の確定申告に係る所得金額)は認める。

(2) (右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)は否認する。②(配当所得の金額)、③(不動産所得の金額)及び⑤(給与所得の金額)は認める。④(雑所得の金額)のうち、アないしケ及びコの(ア)は認める。コの(イ)のうち、児玉がジャパンラインと三光汽船との紛争を解決する際、水島及び瀬川の協力を受け、その謝礼として右両名にダイヤモンド付指輪を各一個贈呈したこと、右ダイヤモンド付指輪はいずれも児玉が戦時中に取得したものであることは認めるが、その余は否認する。

(四) (四)(昭和四九年分の総所得金額)について

(1) (児玉の修正申告に係る所得金額)は認める。

(2) (右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)は否認する。②(利子所得の金額)、③(配当所得の金額)及び④(不動産所得の金額)は認める。⑤(雑所得の金額)のアないしカ及びクないしコを認める。キのうち、児玉が昭和四九年五月一五日ころ自己の所有する熱海観光の株式一六万五〇〇〇株と引換えに台糖から五億三七九〇万円(一株当たり三二六〇円)の支払を受けたこと、児玉が台糖の代表取締役社長である武智から横井についての対策の支援を依頼されてこれに応じたことは認めるが、その余の事実は否認する。

(五) (五)(昭和五〇年分の総所得金額)について

(1) (児玉の確定申告に係る所得金額)は認める。

(2) (右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和五〇年七月末ころロッキード社から八〇〇〇万円を受領したことは認めるが、その余は否認する。②(利子所得の金額)、③(配当所得の金額)及び④(不動産所得の金額)は認める。⑤(雑所得の金額)のアないしケは認める。コのうち、児玉が昭和五〇年中にロッキード社から受領した二五〇〇万円を雑所得として申告していることは認めるが、その余は否認する。サ及びシは認める。⑥(譲渡所得の金額)及び⑦(一時所得の金額)は認める。

2  被告の主張2(本件決定の適法性)について

(一) (一)(重加算税の計算の基礎となる税額に係る所得金額等)について

(1) (昭和四六年分)

① (事業所得の金額)のうち、五〇〇〇万円は認めるが、これを超える部分は否認する。②(雑所得の金額)は認める。

(2) (昭和四七年分)

① (事業所得の金額)のうち、一億円は認めるが、これを超える部分は否認する。②(雑所得の金額)は認める。

(3) (昭和四八年分)

① (事業所得の金額)は否認する。②(雑所得の金額)のアないしエ、カ及びキは認める。オのうち、一〇〇〇万円は認めるが、これを超える部分は否認する。

(4) (昭和四九年分)

① (事業所得の金額)は否認する。②(雑所得の金額)のアないしエ、カは認める。オは否認する。

(5) (昭和五〇年分)

① (事業所得の金額)のうち、八〇〇〇万円は認めるが、これを超える部分は否認する。②(雑所得の金額)は認める。

(二) (二)(隠蔽又は仮装)について

(1) (1)のとおり法令の定め及び判例があることは認める。

(2) (2)のうち、児玉が従前から児玉宅に出入りしていた不動産業者福島に対し昭和四〇年ころから自己の所得について申告金額を口頭で説明して給与等の支払者から送付された給与等の源泉徴収票等を渡しこれに従って毎年の確定申告書を作成させたうえ福島から申告金額等の説明を受けて了承を与え同人に右申告書を提出させていたものであり、昭和四六年分ないし昭和四九年分も同様であったこと、昭和五〇年分の確定申告について児玉が昭和五一年二月一二日に脳梗塞の発作を起こして自宅で療養中であったため、福島が児玉の秘書大刀川に対し相談したこと、大刀川が指示内容について児玉の了承を得て再度その旨を福島に伝えて福島がこれに従って確定申告書を作成して同年三月一五日提出したことは認めるが、大刀川が福島に対しロッキード社からの収入として二五〇〇万円のみを計上しておくよう指示したという事実は否認する。当時、大刀川は、右のロッキード社からの収入金額だけでなく、他の国内関係の収入金額についても総て計上するよう福島に指示していた。なお、当時、大刀川は、昭和五〇年中におけるロッキード社からの受領金額八〇〇〇万円のうち、児玉の同年分所得金額となるのは同年上半期分の顧問料に相当する二五〇〇万円のみであると認識していたので、その金額を雑所得として計上するよう福島に指示したのである。

(3) (3)の事実は認める。

(4) (4)及び(5)は、前記のとおり重加算税の計算の基礎となる税額に係る所得金額等として認める範囲内では認めるが、その余は否認する。

3  原告らの反論

(一) ロッキード社から受領した金員について

児玉は、昭和四四年二月ころ、ロッキード社からの申出を受けて同社の顧問に就任し、年間五〇〇〇万円程度の顧問料を受領することになったが、L―一〇一一型機に限定して、その日本国内における販売に協力することを約したことはなく、また、ロッキード社との間で被告が主張するようなマーケッテイング・コンサルタント契約や同修正契約を締結したこともない。そして、児玉は、時折、クラッターらの相談相手として助言等をしていたのみであり、契約に基づく役務を反復継続して提供したことはない。また、ロッキード社から受領した金員の受領時期は不定期であり、契約に基づく一定額の報酬を継続的に受領したこともない。したがって、児玉がロッキード社から受領した金額は、事業所得ではなく、雑所得に該当するというべきである。

なお、被告が証拠の申出をしている児玉とロッキード社との間のマーケッティング・コンサルタント契約書や児玉名義の領収証等は、総てロッキード社側が児玉に対する支払の仮装資料として偽造したものであって、ロッキード社は、これを利用して裏資金操作を実行していたものである。

(二) 北星海運株式の譲渡について

児玉が昭和四三年五月に北海道炭礦汽船から取得し、昭和四六年四月に譲渡した北星海運の株式総数は、五一〇万株ではなく、四八三万三〇〇〇株である。残りの二六万七〇〇〇株については、児玉は単に取引名義を提供したに過ぎず、これに相当する買受資金八〇〇万円も拠出していない。そして、児玉が取引をした四八三万三〇〇〇株は、北星海運の発行済株式総数一〇〇〇万株の五〇パーセント未満であるから、その株式譲渡益は、非課税所得であって、譲渡所得の金額となるわけではない。

(三) ダイヤモンド付指輪の取得価額について

児玉がジャパンラインと三光汽船との間の紛争を解決する際に協力者に謝礼として贈与したダイヤモンド付指輪二個につき、必要経費となるべき取得価額は、その取得時ではなく、贈与時における取得価額の評価額によることが相当である。そして、右のダイヤモンド付指輪二個の贈与時における取得価額の評価額は、合計一億一一〇〇万円である。したがって、右一億一一〇〇万円と被告の主張に係る金額三一万七五〇〇円との差額である一億一〇六八万一一〇〇円をも必要経費として認容すべきである。

(四) 熱海観光株式の譲渡について

台糖が児玉に熱海観光の株式を譲渡して五億三七九〇万円の支払を受けた当時、台糖側は、児玉に対し横井対策を抽象的に依頼していただけであるから、謝礼の金額や支払方法は未定であった。したがって、その謝礼の金額を譲渡代金額に含めることは不可能であった。また、被告は右株式の正当な売買単価が五〇〇円であると主張するが、一株当たり三二六〇円という売買単価は、買主である台糖側の査定に基づいて決定された妥当な金額である。そうすると、児玉が台糖から株式売買代金に上乗せして謝礼の支払を受けた事実はないというべきである。、

第三  証拠

一  証拠関係<省略>。

二  原告らのいわゆる証拠抗弁について

1  原告らは、証拠抗弁と称して次のとおり主張している。

(一) 原本の写しのみによる書証の申出は不適法である。

(1) 文書の提出は、原本、正本又は認証謄本をもってしなければならず、写しをもってすることはできないから、写しのみによる証拠の申出は不適法である。ただし、相手方が写しをもって代用することに異議がなく、かつ、その成立につき争いがなければ、写しの提出でも差し支えない。そして、最近のように複写技術が進歩している情況では、相手方が原本の存在したこと、その成立及び変造を争わない場合は、原本の代わりにその写しを提出することを認めるべきであると解するのが相当である。

(2) ところが、乙第二〇号証ないし第二六号証、第二七号証の六ないし五二、第二八号証の三、第二九号証の二及び三、第三七号証の一の3ないし30、第八五号証の一ないし六、第一八四号証、第一八五号証並びに第一八七号証の六、一一及び一八は、いずれもフォトコピーであるところ、乙第二〇号証ないし第二六号証については、いずれも原本の成立に争いがあり、かつ、原本との関連性が明らかでないという理由により、第二七号証の六ないし五二、第二八号証の三、第二九号証の二及び三並びに第八五号証の一ないし六については、いずれも原本の成立に争いがあるという理由により、第三七号証の一の3ないし30については、いずれも原本を正確に移していないという理由により、第一八四号証、第一八五号証並びに第一八七号証の六、一一及び一八については、いずれも作成名義人の署名の筆跡又は捺印の印影が顕出されていないことなどのため原本によらなければ成立を判定することができないという理由により、いずれも写しのみによる書証の申出は不適法である。

(3) なお、写したる原本を提出する場合であっても、原本そのものが存在すること及び当該書証がその原本を正確に写したものであることが適法要件であると解すべきであるから、被告の右各書証の申出が写したる原本を提出してこれを行う趣旨であるとしても、その申出は不適法である。

(二) コーチャンらの証人尋問調書を書証として援用することは許されない。

(1) そもそも人証の尋問に代えて別事件における証人尋問調書を書証とすることは、要証事実に対して最も直接的な証拠方法を利用すべきであるという直接主義の原則に反するものであるから、右の調書は、本来書証としての能力はなく、相手方の同意がある場合に限って書証としての援用を認めるべきである。

(2) 乙第三八号証ないし第四四号証は、コーチャンに対する証人尋問調書、乙第四五号証ないし第四八号証及び第四九号証の一は、クラッターに対する証人尋問調書、乙第五〇号証の一は、ケリーに対する証人尋問調書であるが、原告らは、これらの証人尋問調書を被告が書証として援用することには異議がある。

(3) そのうえ、右証人尋問は、我が国裁判官の嘱託により外国において実施されたものであるが、その証人尋問の実施に当たって、児玉及びその代理人の立会いが認められず、したがって、反対尋問の機会を全く与えられていなかったのであるから、その証人尋問調書を書証として援用することは、民事訴訟法の基本理念である当事者対等の原則あるいは公平の見地からしても到底許されないところである。したがって、被告がコーチャンらの供述を必要とするのであれば、同人らの証人尋問を申し出るべきである。

2  これに対し、被告は、次のとおり反論している。

(一) 原告らの主張(一)について

原本の提出に代えて写しを提出することが原則として許されないことは、原告主張のとおりである。しかし、原本の提出に代えて写しを提出するのではなく、写しそれ自体を書証(写したる原本)として提出することは何ら差し支えない。すなわち、書証として証拠調べの対象となるのは、当該文書の原本そのものではなく、その写し自体なのである。したがって、原告らが指摘する事項は、いずれも各書証のいわゆる形式的証拠力又は実質的証拠力に関する事柄であって、被告がした写しによる書証の申出を不適法とするものではない。

(二) 原告らの主張(二)について

民事訴訟においては、原則として、書証の証拠能力に制限はないのであり、原告らの主張は独自の見解に基づくものであって正当とはいえない。また、証人尋問の手続において児玉側の立会いや反対尋問が許されていなかった等の点も、実質的証拠力に影響を及ぼすことがあり得る事柄ではあっても、当該証人尋問調書の証拠能力や形式的証拠力とは全く関係のない事柄である。

理由

一請求原因1(処分等の経緯)及び3(相続)の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二まず、本件更正及び本件決定の適法性を検討する前提として、原告らのいわゆる証拠抗弁について判断する。

1  原告らは、原本でなくその写しによる書証の申出は不適法であるという前提に立って、被告の乙第二〇号証ないし第二六号証、第二七号証の六ないし五二、第二八号証の三、第二九号証の二及び三、第三七号証の一の3ないし30、第八五号証の一ないし六、第一八四号証、第一八五号証並びに第一八七号証の六、一一及び一八の各書証の申出は、いずれも不適法であると主張している。

確かに、民事訴訟法三一一条は、「書証ノ申出ハ文書ヲ提出シ又ハ之ヲ所持スル者ニ其ノ提出ヲ命セムコトヲ申立テ之ヲ為スコトヲ要ス」と規定し、これを受けて、同法三二二条一項は、「文書ノ提出又ハ送付ハ原本、正本又ハ認証アル謄本ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス」と規定しているから、書証の申出を原本、正本又は認証謄本によることなく、単なる写しの提出によって行うことは不適法であるというべきである。もっとも、実務上、原告らが主張するように、相手方が写しをもって原本の代用とすることに異議がなく、かつ、原本の存在及び成立について当事者間に争いがない場合には、写しを提出することが許されている。この場合は、証拠調べの対象となるのは、あくまで当該写しの原本であり、その意味で、法文の例外を認めているものということができる。

しかしながら、証拠調べの対象となる文書を原本でなく写しそれ自体とする趣旨のもとに、写しそれ自体を提出して書証の申出をすることは、当該写しが民事訴訟法三二二条一項所定の「原本」(いわば「手続上の原本」というべきもの)であるから、当然に許容されるべきものである。この場合は、証拠調べの対象となるのは、当該写し自体であり、当該写し自体の成立につき、当事者間に争いがない場合又は証明がある場合に、当該写しに形式的証拠力が与えられることになる。したがって、当該写しの原本(当該写しのもととなった文書のことであって、いわば「真の原本」というべきもの)の存在又は成立につき当事者間に争いがあったとしても、あるいは、当該写しが原本を正確に写したものではないとしても、それは、書証の申出自体を不適法とする事情ないしその形式的証拠力に影響を及ぼすべき事情ではなく、その実質的証拠力に影響を与える可能性を有する事情にすぎないものというべきである。そうすると、被告の写しのみによる前記各書証の申出は、写しをいわゆる手続上の原本として提出するという趣旨において適法なものであり、これを不適法であるという原告らの主張は採用することができない。

2 次に、原告らは、我が国裁判官の嘱託により外国においてされた証人尋問の調書を書証として提出して行う書証の申出は不適法であるという立場に立って、被告の乙第三八号証ないし第四八号証並びに第四九号証及び第五〇号証の各一の書証の申出は、原告らの同意がないから不適法であると主張している。

しかしながら、民事訴訟法上、原則として、総ての文書は書証として証拠能力を有し証拠調べの対象となり得るものであって、我が国裁判官の嘱託により外国においてされた証人尋問の調書であるという理由だけではその例外とならないものというべきである。したがって、原告らが主張するように相手方の同意がなければ、右嘱託に基づく証人尋問調書について書証の申出をすることができないと解すべきではない。また、原告らは、右嘱託に基づく証人尋問の手続において、立会いや反対尋問が認められていなかったことが当事者対等の原則等に反すると主張しているが、そのようなことは、当該証人尋問調書の実質的証拠力に影響を及ぼし得る事情であって、書証の申出自体を不適法とする事柄ではないというほかない。したがって、被告の前記各書証の申出は適法であるというべきであり、原告らの主張は採用することができない。

三そこで、本件更正が適法であるかどうかについて検討する。

1  昭和四六年分の総所得金額について

(一)  被告の主張1(本件更正の適法性)の(一)(昭和四六年分の総所得金額)については、(1)(児玉の修正申告に係る所得金額)、(2)(右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和四六年中にロッキード社から五〇〇〇万円を受領したこと、被告主張の法令の定め及び判例があること、児玉がロッキード社の求めに応じて日本の航空会社における機種選定に関する動向などにつき情報を提供したこと、②(雑所得の金額)、③(譲渡所得の金額)のうち、児玉が昭和四三年五月に北海道炭礦汽船から北星海運の株式四八三万三〇〇〇株を取得し、これを昭和四六年四月に譲渡したこと、北星海運の発行済株式総数が一〇〇〇万株であったことは、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  そこで、まず、右事業所得の金額について検討する。

(1) ロッキード社からの受領金額について

① 被告は、児玉がロッキード社から昭和四六年一月一四日に二五〇〇万円、同年二月一日に二五〇〇万円、同年三月一七日に三〇〇〇万円、同年六月二五日に三七〇〇万円、同月二九日から翌七月一日ころに四〇〇〇万円、同年一二月八日に八〇〇万円(以上合計一億二九〇〇万円)を受領したと主張している。これに対し、原告らは、児玉がロッキード社から昭和四六年中に五〇〇〇万円を受領したことは認めるものの、その受領時期、受領方法等の詳細は明らかにしていないうえ、残りの七九〇〇万円については受領自体を否認している。したがって、争点は、児玉がロッキード社から右七九〇〇万円を受領したかどうかである。

② この点に関し、<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。

ア ロッキード社は、一九六八年(昭和四三年)にL―一〇一一型機(愛称トライスター)の設計・製造を開始し、翌一九六九年(昭和四四年)にはその世界的な販売活動を開始したが、ロッキード社副社長のコーチャンは、日本における販売活動を展開するに当たって、自ら来日し、以前F―一〇四型戦闘機スター・ファイターの日本における販売に協力してこれを成功に導いた児玉にその自宅で会い、L―一〇一一型機の日本における販売活動に対するコンサルタントとしての協力を依頼し、その対価として年間五〇〇〇万円の報酬を二五〇〇万円ずつ二回に分けて支払うという条件でコンサルタント契約の申込みをした。これに対し、児玉は、その旨を承諾したが、同人が当該契約の公表及び契約書の作成をしないことを望んだため、そのような扱いをすることとなった。なお、福田太郎(以下「福田」という。)は、児玉とは長年の付き合いがあり、そもそも福田が児玉をロッキード社に紹介したことから児玉とロッキード社との関係が始まったのであり、右のコーチャンと児玉との面談も、福田及びクラッターが設定したものであって、同人らもその面談に同席した。クラッターは、ロッキード社の日本における事業活動に関するサービスを業務とするLAALの社長兼東京事務所代表者であり、以後、ロッキード社と児玉との右契約に関し、ロッキード社側を代表して児玉と直接的な交渉や現金の授受等を担当した。また、児玉がほとんど英語を解さないため、児玉とコーチャン又はクラッターとの面談等には、ほとんど常に福田が同席して通訳をしていた。

イ その後、ロッキード社と児玉との間で、ロッキード社は、L―一〇一一型機の日本国内における販売につき、三機ないし六機に対する最初の確定注文を受けたとき、児玉に対し五億二〇〇〇万円を支払うこと、小佐野賢治(以下「小佐野」という。)の協力を得るために五億円を児玉に支払うこと、一九七一年(昭和四六年)及び一九七二年(昭和四七年)には各七五〇〇万円を追加して支払うこと、福田に対する報酬に充てるための五〇〇〇万円を児玉に支払うこと等の合意に達したが、右アの合意と同様に契約書は一切作成されなかった。

ウ ロッキード社は、右契約に基づき、児玉から日本における航空機販売活動上のさまざまな助言等の役務の提供を受けた。すなわち、例えば、コーチャンは、一九七二年(昭和四七年)一〇月、「DC―一〇型機を全日空に、ボーイング・エアクラフト・コーポレイション製大型ジェット旅客機を日航にという政府決定があった。」との情報を福田から知らされて驚愕し、この政府決定を覆そうと企図して児玉に会い、同人に右情報を伝え、政府の右決定を覆すように助力を要請したところ、児玉はこれを承諾し、その翌日には、コーチャンは、福田を通じて児玉から、状況が元に戻った旨の連絡を受けた(コーチャンは、この際の児玉の働きを「児玉がしてくれた最大の無類の事」と評価している。)。また、児玉は、我が国においては空港騒音問題が深刻であることから、L―一〇一一型機のセールスポイントとして、同機の騒音が低い点を宣伝して全日空に売り込むように進言し、ロッキード社は一九七二年(昭和四七年)七月の同機の日本におけるデモフライトの際に「ささやくジェット機」のキャッチフレーズのもとに騒音の低い点を宣伝した。さらに、児玉は、L―一〇一一型機の競争相手であるDC―一〇型機が一九七二年(昭和四七年)五月から七月にかけて連続してエンジン脱落等の事故を起こしたことから、クラッターに対して、右事故の写真を収集し、同型機が将来も同種の事故を起こしかねないことを強調して、全日空にL―一〇一一型機を売り込むように助言した。

このような児玉の役務の提供に対して、ロッキード社は、外貨建て小切手ないし日本円の現金を交付するという方法で、継続して児玉に報酬を支払ったが、大部分の支払は、児玉の要望に応じ日本円の現金を東京のクラッターに送金し、同人が児玉に交付し、児玉から領収証を受け取るという方法でなされたものである。すなわち、児玉は、ロッキード社にコンサルタント報酬等を日本円の現金で支払うように強く要望していたため、ロッキード社では、ドル資金を系列会社に調達させ、その財務担当者を介してデイーク・アンド・カンパニー・ロスアンゼルス(以下「ロス・ディーク社」という。)に対し、クラッターあてに日本円の現金による送金を委託し、ロス・ディーク社は、電信により、ディーク・アンド・カンパニー(ホンコン)リミテッド(以下「香港ディーク社」という。)に対し、東京へ送金する円の買い注文を発し、送金日時及び送金先を指示し、香港ディーク社は、香港その他で日本円の現金(日本の銀行振出の自己宛小切手を含む。)を購入し、ロス・ディーク社の指示どおり、右現金を運び人に携帯させて日本国内に搬入させ、クラッターにおいてこれを受け取っていた。クラッターは、受領した現金を東京都千代田区大手町のロッキード社東京事務所に保管し、これを特別勘定として他の資金と区別し、この特別勘定に関する収支メモ(<証拠>、以下「クラッターの「摘要」」という。)に現金の受領、支払の年月日等をその都度記入していた。クラッターは、児玉に現金を支払う場合には、あらかじめ児玉と日時を打ち合わせた上、帯封等で結束した一万円札を大型封筒、アタッシュケース、段ボール箱等に入れて福田とともに児玉のところに持参し、これを児玉に交付し、これに対して、児玉は、あらかじめ作成していた領収証を封筒に入れてその場でクラッターに交付し、またはその後間もなく領収証を作成してクラッターに交付していた。

なお、児玉は、一九七二年(昭和四七年)一一月六日に受領した六億円相当の自己宛小切手のうち五億円相当分が盗難にあったため、その穴埋めとして、ロッキード社から一九七三年(昭和四八年)五月二四日に一億二五〇〇万円、同年六月四日に一億七五〇〇万円、同月一二日に一億四〇〇〇万円の合計四億四〇〇〇万円を現金で受領している。

エ 一九七三年(昭和四八年)に至り、ロッキード社の会計監査委員会において、前記各契約につき、契約書が作成されていないことが問題視された。そして、当該契約書を作成するようにとの指示を受けたコーチャンは、クラッターに対し、児玉との間で契約書を作成するように指示し、その作成権限を授与した。そこで、クラッターは、福田とともに児玉宅に赴き、児玉に対し、契約書の作成を要請したところ、児玉がこれに応じたため、児玉とともに、マーケッティング・コンサルタント契約書(<証拠>)及び同契約書・修正第一号(<証拠>)を作成した。

マーケッティング・コンサルタント契約書(<証拠>)には、次のとおり記載されている。「児玉は、ロッキード社に対しコンサルタントの義務として、(1) 日本国内においてロッキード社の製品の販売見込みと市場開拓のために最善を尽くす。(2) ロッキード社の販売活動に協力、援助する。(3) 日本国内におけるロッキード社の製品の販売に影響する政治的、経済的及び競争的な諸条件並びに将来の顧客の需要、要望及び財政能力について助言する。(4) 現実の又は将来の顧客との接触をするに際し指針を与える。(5) 日本国内におけるロッキード社の製品の販売に付随する法令規則及び営業慣行について勧告し、助言する。(6) 右(1)から(5)に関連する情報を含む報告書を要求があれば提出する。ロッキード社は、これに対して、コンサルタントのサービスに対する報酬として、児玉に対し年間五〇〇〇万円を毎年一月一日に二五〇〇万円及び七月一日に二五〇〇万円あて支払う。」

右の作成に至る経緯に鑑み、右各契約書は日付けを一九六九年(昭和四四年)に遡らせて作成されているうえ、マーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号においては、前記イの合意に基づく支払として既に児玉に支払済みであった合計一二億二〇〇〇万円すべてが、ロッキード社がL―一〇一一型機の日本国内における販売について三機ないし六機に対する最初の確定注文を受けたときに児玉に対して支払う報酬という名目にされ、また、同一の購入者が七号機から一五号機までの購入注文をした場合は、航空機引渡時に一機当たり一二万米ドル(又は三六〇〇万円を超えない相当額の円)を児玉に対して支払うことなどの条項も明記された。

さらに、ロッキード社と児玉は、一九七三年(昭和四八年)一一月三〇日、前記アのマーケッティング・コンサルタント契約につき、ロッキード社が児玉に対して支払う報酬額を一年間当たり六〇〇万円増額して五〇〇〇万円から五六〇〇万円とする旨を合意し、同日付けで、その旨のマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第五号(<証拠>)を作成した。

オ その後、ロッキード社は、児玉に対し、前記と同様の方法で右エの契約に基づく支払を続けた。なお、右各契約に直接基づく支払のほかにも、一九七五年(昭和五〇年)三月四日の五〇〇〇万円の支払のように、児玉が追加支払を要求したためにロッキード社がこれに応じて支払うといった追加的な支払等もあったが、これらも含め、児玉がロッキード社から受領した金員は、別表三記載のとおりである。

③ ところで、原告らは、②の冒頭において提示した書証のうち、写しを手続上の原本として提出して申出が行われたものにつき、前記のとおり書証の申出自体を不適法として争っているうえ、当該文書は偽造文書であるとして、その原本の存在及び成立も強く争っている。これは、前記のとおり、当該書証の形式的証拠力の問題でなく、実質的証拠力の問題であるが、原告らは、ロッキード社側が当該文書を偽造したという前掲に立って、ロッキード社がこれを利用して裏資金操作をしていたと主張しているのであるから、当該文書が偽造文書であるかどうかは、原告らの主張の帰趨を決する重大な争点である。そこで、問題の重要性に鑑み、以下において、当該文書の原本の存在及び成立について判断することにする。

ア 乙第二〇号証(マーケッティング・コンサルタント契約書)、第二一号証(マーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号)及び乙第二五号証(マーケッティング・コンサルタント契約書・修正第五号)について

(ア) まず、コーチャンは、前掲乙第三九号証の一(証人尋問調書)において、一九七三年(昭和四八年)二月頃、ロッキード社の会計監査委員会に出席してロッキード社の児玉に対するコンサルタント報酬の支払状況を説明した際、児玉との間のコンサルタント契約につき契約書が作成されていないことが問題となったため、児玉の希望により契約書が作成されなかったという経緯を説明しつつ、L―一〇一一型機の日本における販売活動における児玉の必要性を強調したこと、同委員会から、児玉の重要性は理解することができるが、契約書は作成するようにという指示を受けたため、クラッターに対し、児玉に対する最善の影響力を使って契約書を作成するようにという指示をしたこと、その後、クラッターから児玉が契約書作成に同意したという報告を受け、クラッターに対し、契約書作成の権限を授与したこと、そして、児玉とクラッターとの間でマーケッティング・コンサルタント契約書(乙第二〇号証)及びマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号(乙第二一号証)が作成されたことを証言している。

(イ) 次に、クラッターは、前掲乙第四七号証の一(証人尋問調書)において、コーチャンからロッキード社の内部監査上必要であるという理由で児玉とのコンサルタント契約につき契約書を作成するようにとの指示を受け、児玉と交渉のうえ、マーケッティング・コンサルタント契約書(乙第二〇号証)のほか、特にその時点までに児玉に支払済みの報酬を総て包含する形式を取ったマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号(乙第二一号証)を作成するに至ったこと、また、一九七三年(昭和四八年)一一月三〇日ころ、児玉とマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第五号(乙第二五号証)を作成したことを証言している。

(ウ) さらに、福田は、前掲乙第五二号証及び第五九号証(いずれも供述調書)において、英文で書かれているマーケッティング・コンサルタント契約書(乙第二〇号証)やマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号(乙第二一号証)等の作成に際しては、クラッターと英語を解しない児玉との面談に同席し、右乙第二〇号証等を日本語に翻訳して児玉に説明したところ、児玉は、これらの契約書を作成することに同意し、自ら署名したうえ、「児玉」という丸印及び「児玉譽士夫」という記名印を押捺したことを供述している。

(エ) 児玉自身も、前掲乙第一一一号証、乙第一一八号証及び第一二四号証(いずれも供述調書)において、マーケッティング・コンサルタント契約書(乙第二〇号証)及びマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号(乙第二一号証)につき、福田の通訳によりその内容を概ね理解していたこと、マーケッティング・コンサルタント契約書(乙第二〇号証)及びマーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号(乙第二一号証)の各末尾にある「児玉譽士夫」という署名を自ら行ったうえ、「児玉」という丸印を押捺したこと等を供述している。

(オ) 以上の証拠によれば、その証拠間に原告らが指摘するような多少の齟齬があるとしても、乙第二〇号証(マーケッティング・コンサルタント契約書)、第二一号証(マーケッティング・コンサルタント契約書・修正第一号)及び第二五号証(マーケッティング・コンサルタント契約書・修正第五号)の原本の存在及び成立は、いずれもこれを認めることができるものといわなければならない。

イ 乙第二七号証の六ないし五二、第二八号証の三並びに第二九号証の二及び三(いずれも児玉名義の領収証)について

(ア) まず、クラッターは、前掲乙第四六号証の一、第四七号証の一及び第四八号証の一(いずれも証人尋問調書)において、前記のとおり、児玉に対し、現金等で報酬を支払った後(ただし、一九七三年(昭和四八年)一一月三日の五三〇〇万円の支払は、児玉の要請によって、小佐野に対して二〇万米ドルをロス・アンゼルス空港で手渡すという方法で行われた。)、即日又は数日後に、児玉から領収証の交付を受けていたこと、その領収証は、報酬の支払に対して逐一沿うものではなく、例えば、二回以上の支払に対して一通の領収証の交付を受け、また、一回の支払に対して二通以上の領収証の交付を受けるということもあったが、全体としては、支払った報酬額に相当するものであったこと、児玉から交付を受けた領収証をロッキード社に送付していたこと等を証言している。

(イ) そして、前記のとおり、ほとんど総ての場合においてその報酬の支払の場に通訳として同席していたと認められる福田も、前掲乙第五二号証、第五三号証、第五七号証及び第五八号証(いずれも供述調書)において、児玉がクラッターに対して領収証を交付していたこと、その交付の数日後、クラッターから児玉名義の領収証の翻訳を依頼されてこれを受け取り、英訳文とともにクラッターに返還していたこと、その領収証が乙第二七号証の六等であることなどを供述している。

(ウ) なお、児玉自身も、乙第一一七号証(供述調書)において、ロッキード社から現金等を受け取った場合は、その都度、領収証を交付していたことを認める供述をしている。

(エ) そのうえ、乙第二九号証の二及び三の領収証の日付欄には、「昭和五十」「七」「二十九」という手書きの部分が存在するが、<証拠>によれば、右手書き部分は児玉の秘書であった大刀川によって書かれたものと認められるところ、右の二通の領収証に押捺されている「児玉」という丸印及び「児玉譽士夫」という記名印の印影が、乙二七号証の六ないし五二及び第二八号証の三の各領収証に記載されている「児玉」という丸印及び「児玉譽士夫」という記名印の印影と同一であり、さらに、前掲乙第二〇号証、第二一号証及び第二五号証(いずれも契約書)に記載されている「児玉」という丸印及び「児玉譽士夫」という記名印の印影とも同一である。そのうえ、<証拠>によれば、右の「児玉」という丸印の印影は、原本の存在及び成立を含めて成立に争いのない乙第三二号証(盗難被害届出済証明願)に記載されている「児玉」という丸印の印影とも同一であると認められる。そして、児玉がその内容を概ね理解したうえで前掲乙第二〇号証等の契約書に署名及び押印をしたことは前記認定のとおりであり、<証拠>によれば、大刀川は、昭和四八年二月二日、児玉が普段は使用していない丸印を児玉から預かって使用して乙第三二号証の盗難被害届出済証明願を作成し、これを玉川警察署に提出した後、右丸印を児玉に返還したことを認めることができる。

(オ) 以上の証拠及び事実関係によれば、乙二七号証の六ないし五二、第二八号証の三並びに第二九号証の二及び三(いずれも児玉名義の領収証)の原本の存在及び成立は、これを認めることができるものといわなければならない。

以上のとおり、原告らが偽造文書であるとして争っているマーケッティング・コンサルタント契約書及び児玉名義の領収証等の原本の存在及び成立が証拠上認められるのであるから、児玉は、別表三記載のとおり、昭和四六年一月から昭和五〇年七月までの間にロッキード社から合計一八億二四五〇万円の報酬を受け取ったものといわなければならない。なお、原告らは、被告が昭和四四年六月から昭和五〇年七月までの間にロッキード社から受領したと主張する総計二三億六八八〇万のうち約三億三〇〇〇万円を受領したことは認めるが、残りの約二〇億円余は、ロッキード社側が児玉に支払ったことを仮装したその裏資金操作の金額であると主張し、「二〇億円余の資金が実際に動いた形跡がない。」「二〇億円余の「手数料」等を原告に支払う原因がない。」「二〇億円余の「手数料」等の支払に関する被告の主張事実には、極めて異常なものが多く、到底、真実の支払とは認められない。」等と主張するが、右のとおり、マーケッティング・コンサルタント契約書及び児玉名義の領収証等が真正に成立したものとして存在することが認められる以上、原告らのこれらの主張は、いずれも証拠に基づかない単なる憶測にすぎないか、あるいは証拠を片寄り見ての推測にすぎないものというべく、到底採用することができないものといわなければならない。

④ なお、乙第二八号証の二(クラッターの「摘要」)につき、原告らは、その原本の存在は認めているものの、成立は否認している。しかしながら、前掲乙第四五号証及び第四六号証ないし第四九号証の各一(いずれもクラッターの証人尋問調書)によれば、右「摘要」(乙第二八号証の二)はクラッターの個人的な記録であって、クラッターは、ロッキード社から資金を受け取り、これを児玉らに支払う都度、その資金の領収及び支払の年月日、金額、支払先等をできる限り正確に「摘要」(乙第二八号証の二)にのみ記載していた(その他の記録は一切作成していなかった。)ことが認められるのであるから、乙第二八号証の二(クラッターの「摘要」)の原本の成立は明らかであるというべきであり、右のような成立の過程、とりわけ資金の授受の詳細に関するクラッターの唯一の記録であることを考慮すると、その内容が正確であるとしてこれを信頼することができるものというべきである。

⑤ 以上のとおり、児玉がロッキード社から別表三記載のとおり金員を受領していたことが認められるから、昭和四六年中においては、昭和四六年一月一四日に二五〇〇万円、同年二月一日に二五〇〇万円、同年三月一七日に三〇〇〇万円、同年六月二五日に三七〇〇万円、同月二九日から翌七月一日ころに四〇〇〇万円、同年一二月八日に八〇〇万円の以上合計一億二九〇〇万円を受領したことになる。

(2) ロッキード社からの受領金員の法的性質について

① 被告は、児玉がロッキード社から受領した金員は事業所得に該当すると主張しているが、原告らは、当該金員は雑所得に該当すると主張している。したがって、争点は、右金員が事業所得に該当するかどうかである。

② そこで、検討すると、まず、所得税法二七条一項は、「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と規定し、これを受けて、所得税法施行令六三条一二号は、所得税法二七条一項に規定する政令で定める事業の一つとして、同令六三条一号ないし一一号に掲げるもののほか、「対価を得て継続的に行う事業」を規定しているが、ある所得が事業所得であるというためには、それが自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得である必要があるものと解すべきである。

③ これを本件についてみると、児玉は、前認定のとおり、昭和四四年において、ロッキード社との間で、ロッキード社が製造、販売するL―一〇一一型機の日本における販売活動につき、コンサルタント契約を締結し、以後、昭和五〇年に至るまで、その契約及びこれに付随する契約に基づき、別表三記載のとおり、対価として報酬を受け、継続的にコンサルタントの業務を行っていたのであるから、当該事業が「対価を得て継続的に行う事業」に該当することは明らかであるというべきである。

(3) 以上のとおり、児玉の事業所得は、一億二九〇〇万円であると認めることができる。

(三)  次に、譲渡所得の金額について検討する。

(1) 児玉の取引株式数について

① 被告は、児玉が昭和四三年五月に北海道炭礦汽船から取得して昭和四六年四月に譲渡した北星海運の株式の数は五一〇万株であると主張しているが、原告らは、児玉が取引をした株式の数は四八三万三〇〇〇株であって、この余の二六万七〇〇〇株については、児玉は単に取引名義を提供したに過ぎないと主張している。したがって、争点は、児玉が右の二六万七〇〇〇株を実際に取引したのかどうかである。

② <証拠>によれば、児玉は、北海道炭礦汽船との間において、昭和四三年五月三一日、児玉が北海道炭礦汽船から北星海運の株式五一〇万株を代金一億五三〇〇万円(一株当たり三〇円)で買い受ける旨の契約を締結し、代金全額を支払い、その株券の引渡しを受け、同年六月四日、右五一〇万株総てにつき、児玉名義に書き換えたこと、児玉は、右の代金一億五三〇〇万円のうち、一億四五〇〇万円は北星海運から借り受け、その余の八〇〇万円は自己資金で賄ったが、約二か月後には、更に当該五一〇万株等を担保にして銀行から一億四五〇〇万円を借り入れて右借入金は返済したこと、その後、昭和四六年四月に至り、児玉は、右五一〇万株のうち、二五〇万株を八洲観光開発株式会社に対し代金一億二五〇〇万円(一株当たり五〇円)で、二〇〇万株を札幌テレビ放送株式会社に対し代金一億円(一株当たり五〇円)で、六〇万株を北炭商事株式会社に対し代金三〇〇〇万円(一株当たり五〇円)でそれぞれ売却したが、その際、右代金合計二億五五〇〇万円全額を児玉自身が現金で受領したことを認めることができる。なお、証人山崎文助は、北海道炭礦汽船からの買受代金一億五三〇〇万円全額を北星海運が調達したのであって、児玉は北星海運の五一〇万株全部の譲渡について名義を貸しただけであると証言しているが、右証言は、児玉が少なくとも四八三万三〇〇〇株については実質的な取引をしたという原告らと被告との間で争いがない事実と矛盾するうえ、前掲の各証拠に反する証言であるから、到底採用することはできない。

(2) 譲渡所得の金額について

北星海運の発行済株式総数が一〇〇〇万株であることは、当事者間に争いがない。そして、児玉は、右認定のとおり、北星海運の株式五一〇万株を譲渡したものであるところ、右五一〇万株は発行済株式総数一〇〇〇万株の五一パーセントに当たり、右株式の譲渡は、所得税法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)九条一項一一号ハ及び所得税施行令(昭和五四年政令第六九号による改正前のもの)二八条所定の要件を充たすから、右株式の譲渡について、次の計算により算出した額である一億〇一六〇万円が譲渡所得の金額である。

① 収入金額 二億五五〇〇万円

② 取得費 一億五三〇〇万円

③ 特別控除額 四〇万円

④ 譲渡所得の金額(①―②―③)一億〇一六〇万円

(四)  以上のとおり、児玉の昭和四六年分の総所得金額は、その修正申告に係る所得金額である五一〇八万六三六八円に対して事業所得の金額一億二九〇〇万円、雑所得の金額一七八〇万一一六〇円及び譲渡所得の金額一億〇一六〇万円を加算して算出される二億九九四八万七五二八円である。

2  昭和四七年分の総所得金額について

(一)  被告の主張1(本件更正の適法性)の(二)(昭和四七年分の総所得金額)については、(1)(児玉の修正申告に係る所得金額)、(2)(右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和四七年中にロッキード社から一億円を受領したこと、②(配当所得の金額)、③(不動産所得の金額)及び④(雑所得の金額)は、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  そこで、右事業所得の金額について検討する。

(1) 被告は、児玉が昭和四七年中においてロッキード社から別表三記載のとおり、合計一一億八七〇〇万円を受領したと主張している。これに対し、原告らは、児玉が昭和四七年中においてロッキード社から一億円を受領したことは認めているが、その受領時期、受領方法等の詳細は明らかにしていない。

(2) しかしながら、前記のとおり、児玉は、ロッキード社から別表三記載のとおり金員を受領していることが認められるのであるから、昭和四七年中には、一月二六日に二〇〇〇万円、三月一三日に一五〇〇万円、四月一〇日に一〇〇〇万円、六月一〇日に三七〇〇万円、七月一八日に三〇〇〇万円、九月二一日に二〇〇〇万円、一〇月五日に五〇〇万円、同月二〇日に五〇〇万円、同月三一日に四五〇〇万円、同日三億九〇〇〇万円、一一月六日に六億円、一二月一九日に一〇〇〇万円の合計一一億八七〇〇万円を受領したことになる。

(3) また、前記のとおり、右受領に係る金員は事業所得に該当するものというべきであるから、児玉の昭和四七年分の事業所得は、一一億八七〇〇万円であると認めることができる。

(三)  以上のとおり、児玉の昭和四七年分の総所得金額は、児玉の修正申告に係る所得金額である四六四八万一二六九円に対して事業所得の金額一一億八七〇〇万円、不動産所得の金額一一万九四六九円及び雑所得の金額一億二九二八万四二七一円を加算し、配当所得の金額一万五〇〇〇円を減算して算出した金額である一三億六二八七万〇〇〇九円である。

3  昭和四八年分の総所得金額について

(一)  被告の主張1(本件更正の適法性)の(三)(昭和四八年分の総所得金額)については、(1)(児玉の確定申告に係る所得金額)、(2)(右所得金額に対する加算額)の②(配当所得の金額)、③(不動産所得の金額)、④(雑所得の金額)のうち、アないしケ及びコの(ア)、コの(イ)のうち、児玉がジャパンラインと三光汽船との紛争を解決する際、水島及び瀬川の協力を受け、その謝礼として右両名にダイヤモンド付指輪を各一個贈呈したこと、右ダイヤモンド付指輪はいずれも児玉が戦時中に取得したものであること及び⑤(給与所得の金額)は、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  そこで、まず、事業所得の金額について検討する。

(1) 被告は、児玉が昭和四八年中においてロッキード社から別表三記載のとおり合計一億三八〇〇万円を受領したと主張しているが、原告らは、これを否認している。

(2) しかし、前記のとおり、児玉は、ロッキード社から別表三記載のとおり金員を受領していることが認められるから、昭和四八年中には、六月一四日に七〇〇万円、八月一一日に五〇〇〇万円、一一月三日に五三〇〇万円、一二月一二日に二八〇〇万円の合計一億三八〇〇万円を受領したことになる。

(3) また、前記のとおり、右受領に係る金員は事業所得に該当するものというべきであるから、児玉の昭和四八年分の事業所得は、一億三八〇〇万円であると認めることができる。

(三)  次に、ダイヤモンド付指輪贈呈の必要経費の金額について検討する。

(1) 被告は、当該ダイヤモンド付指輪の取得時における評価額である水島分三〇万円及び瀬川分一万七五〇〇円の合計三一万七五〇〇円が必要経費となるべき取得価額であると主張している。これに対し、原告らは、当該ダイヤモンド付指輪の贈与時における評価額である一億一一〇〇万円が必要経費となるべき取得価額であると主張している。

(2) 所得税法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)三七条一項は、「その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。」と規定しているところ、当該費用の支出に代えて物を費消した場合は、原則として、その物を取得した時に支出した金額によって費用の額を計算するものと解すべきである。

(3) これを本件についてみると、児玉が前記ダイヤモンド付指輪二個を取得した時に支出した額を直接認めることができる証拠はないが、<証拠>によれば、右ダイヤモンド付指輪二個を児玉が取得した時における市価は、水島に贈与されたものが三〇万円、瀬川に贈与されたものが一万七五〇〇万円であることが認められるから、特段の事情がない限り、児玉が右ダイヤモンド付指輪二個を取得した時に支出した金額は右の三〇万円及び一万七五〇〇円であると推認することができる。したがって、右ダイヤモンド付指輪贈呈の必要経費は、その取得費と認められる三一万七五〇〇円であるというべきである。

(4) 児玉は、雑所得に係る必要経費として七万五四六六円を控除して申告しているが、雑所得に係る必要経費は、当事者間に争いがない採掘権賃貸収入に係る鉱区税七万六八四〇円及び右認定に係る必要経費三一万七五〇〇円の合計金額三九万四三四〇円であると認められるから、右申告に係る金額七万五四六六円と右三九万四三四〇円との差額である三一万八八七四円を必要経費として認めるべきである。

(5) そうすると、雑所得の金額は、二億六五一〇万六七〇八円となる。

(四)  以上のとおり、児玉の昭和四八年分の総所得金額は、児玉の確定申告に係る所得金額である四六五〇万七一二四円に対して事業所得の金額一億三八〇〇円、不動産所得の金額五四万三八八七円、雑所得の金額二億六五一〇万六七〇八円及び給与所得の金額四〇万円を加算し、配当所得の金額一万五〇〇〇円を減算して算出した金額である四億五〇五四万二七一九円である。

4  昭和四九年分の総所得金額について

(一)  被告の主張1(本件更正の適法性)の(四)(昭和四九年分の総所得金額)については、(1)(児玉の修正申告に係る所得金額)、(2)(右所得金額に対する加算額)の②(利子所得の金額)、③(配当所得の金額)、④(不動産所得の金額)及び⑤(雑所得の金額)のうち、アないしカ、キのうち、児玉が昭和四九年五月一五日ころ自己の所有する熱海観光の株式一六万五〇〇〇株と引換えに台糖から五億三七九〇万円(一株当たり三二六〇円)の支払を受けたこと、児玉が台糖の代表取締役社長である武智から同社の株主で東洋郵船株式会社社長である横井についての対策を依頼されてこれに応じたこと、クないしコは、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  そこで、まず、事業所得の金額について検討する。

(1) 被告は、児玉が昭和四九年中においてロッキード社から別表三記載のとおり、合計七一〇〇万円を受領したと主張しているが、原告らは、これを否認している。

(2) しかし、前記のとおり、児玉は、ロッキード社から別表三記載のとおり金員を受領していることが認められるから、昭和四九年中には、二月二五日に一五〇〇万円、五月三一日に二八〇〇万円、一二月一九日に二八〇〇万円の合計七一〇〇万円を受領したことになる。

(3) また、前記のとおり、右受領に係る金員は事業所得に該当するものというべきであるから、児玉の昭和四九年分の事業所得は七一〇〇万円であると認めることができる。

(三)  次に、台糖から受領した謝礼について検討する。

(1) 被告は、児玉が台糖との間で熱海観光の株式を取引した当時、右株式の一株当たりの取引価額は五〇〇円であり、児玉に支払われた五億三七九〇万円のうち、四億五五四〇万円(一株当たり三二六〇円から五〇〇円を差し引いた二七六〇円に一六万五〇〇〇を乗じた金額)は、台糖が児玉から横井対策の支援を受けたことに対して支払った謝礼とみるべきであると主張している。これに対し、原告らは、児玉が台糖から株式売買代金に上乗せして謝礼の支払を受けた事実はないとして、これを争っている。

(2) <証拠>によれば、次の事実を認めることができる。

① 横井は、昭和三九年ころから台糖の株式の買占めを開始し、昭和四八年ころには、発行済株式総数の約三四パーセントに当たる約一四〇〇万株を所有するに至っていた。台糖は、横井が大量の持株を背景に経営や人事に介入してくることに困惑していたが、昭和四九年三月初めころ、横井所有の台糖の株式のうち大阪証券信用株式会社に担保として提供されていた五〇〇万株が担保流れとなったため、その機会に右五〇〇万株を引き取ることを企図し、台糖が資金を融資して、その五〇〇万株のうち、株式会社東食に二〇〇万株、三和企業株式会社に三〇〇万株を取得させた。

② ところが、横井は、右株式の取得に強く反対し、台糖に乗り込んだうえ、右五〇〇万株の取得を強く非難するといった出来事が何回もあったため、台糖の役員らは、危害を受けるかもしれないと危惧し、警備保障会社に依頼して身辺警護を図ったりしたが、最終的には、横井に対する対策を児玉に依頼することになり、同年三月下旬ころ、台糖の社長であった武智は、常務取締役であった江戸又次(以下「江戸」という。)とともに児玉の事務所に赴き、大刀川が同席する場で児玉に対し事情を説明したうえ、横井対策の支援を依頼した。児玉は、その前に逆に横井から前記熱海観光の五〇〇万株を強奪されたのでこれを取り返してほしいという依頼を受け、その際に事情を調査した結果、横井の主張が無理であるとしてその依頼を断ったという経緯があったため、武智の依頼をその場で直ちに承諾し、台糖を支援することを約した。

③ そして、同年四月ころ、児玉は、右支援の謝礼という含みで、大刀川を介して、台糖に対し、児玉が所有する熱海観光の株式一六万五〇〇〇株を一株当たり三〇〇〇円以上で買い取ってほしい旨の申入れをした。武智の指示を受けた江戸と児玉の指示を受けた大刀川が直接交渉を重ね、また台糖内部で協議を経た末、台糖は、熱海観光が一〇年間も無配であり、その株式に額面金額である五〇〇円以上の価値がないことは十分承知していたものの、児玉の右横井対策の支援についての謝礼という趣旨で右申入れに応じざるを得ないものと判断し、翌五月ころ、児玉から熱海観光の株式一六万五〇〇〇株を一株当たり三二六〇円(合計五億三七九〇万円)で買い取ることを決定し、右の価格につき児玉側の承諾を得たうえ、右買受けを実施し、同月一五日右株券と引換えに児玉に対し五億三七九〇万円を支払った。

④ その後、同月二八日に開催された台糖の株式総会が横井によって混乱させられて延期となったため、武智は、その直後、児玉に会ってその報告をし、その指導を求めた。これに対し、児玉は、児玉が台糖側を支援していることを公表し、また、特殊警備員を使用して次の株主総会を開催することなどを指導した。その結果、翌月開催された株主総会に横井は出席せず、同総会は無事終了し、以後、横井の妨害行為は消失した。

⑤ なお、熱海観光は、自動車道事業の経営を目的として昭和三八年に設立されたが、主として、昭和四〇年八月に完成した熱海ビーチラインと称される道路(全長六〇六八メートル)の経営に当たっていた。右道路の開設には約二三億七〇〇〇万円を要し、当初から多額の借入金を負い、設立以来、経営状態は芳しくなく、昭和五一年の合併に至るまで無配を続けていた。また、昭和三九年から昭和四八年二月までの間に熱海観光の株式が売買された事例は、少なくとも二七件あったが、その売買価格は、そのうち二四件において一株当たり五〇〇円であり、その余の一件において一株当たり四〇〇円、二件において六〇〇円であった。さらに、熱海観光は、昭和五一年五月、三井観光開発株式会社に吸収合併されたが、その際、熱海観光の株式は一株当たり五〇〇円と評価されて合併手続が行われた。

(3) 以上の事実によれば、台糖は、児玉からその所有に係る熱海観光の株式一六万五〇〇〇株を、当時の相当な価格は一株当たり額面の五〇〇円(総額八二五〇万円)であったにもかかわらず、横井対策の支援に対し児玉に謝礼をする意図で、一株当たり三二六〇円(総額五億三七九〇万円)で買い受けたものであって、その差額である四億五五四〇万円は、児玉が右謝礼として受領したものと認めることができる。

(4) なお、雑所得の金額は、前記当事者間に争いがない分に右四億五五四〇万円を加算して計算すると、合計五億四七〇一万二四四五円となる。

(四)  以上のとおり、児玉の昭和四九年分の総所得金額は、児玉の修正申告に係る所得金額である五二〇六万四〇二三円に対して事業所得の金額七一〇〇万円、配当所得の金額四二万五〇〇〇円、不動産所得の金額七万四一四八円及び雑所得の金額五億四七〇一万二四四五円を加算し、利子所得の金額四六万五〇〇〇円を減算して算出した金額である六億七〇一一万〇六一六円である。

5  昭和五〇年分の総所得金額について

(一)  被告の主張1(本件更正の適法性)の(五)(昭和五〇年分の所得金額)については、(1)(児玉の確定申告に係る所得金額)、(2)(右所得金額に対する加算額)の①(事業所得の金額)のうち、児玉が昭和五〇年七月末ころロッキード社から八〇〇〇万円を受領したこと、②(利子所得の金額)、③(配当所得の金額)、④(不動産所得の金額)、⑤(雑所得の金額)のアないしケ、コのうち、児玉が昭和五〇年中にロッキード社から受領した二五〇〇万円を雑所得として申告していること、サ及びシ、⑥(譲渡所得の金額)及び⑦(一時所得の金額)は、当事者間に争いがない。

(二)  そこで、右事業所得の金額について検討する。

(1) 被告は、児玉がロッキード社から昭和五〇年三月四日に五〇〇〇万円、同年五月七日に八一三四万円、同年七月二九日に一億六八一六万円の合計二億九九五〇万円を受領したと主張している。これに対し、原告らは、児玉が同年七月末ころ八〇〇〇万円を受領したことは認めるものの、その余の受領は否認している。

(2) しかしながら、前記のとおり、児玉は、ロッキード社から別表三記載のとおり金員を受領していることが認められるのであるから、昭和五〇年三月四日に五〇〇〇万円、同年五月七日に八一三四万円、同年七月二九日に一億六八一六万円の合計二億九九五〇万円を受領したことになる。

(3) そして、前記のとおり、児玉が右のとおり受領した金員は事業所得に当たるものというべきであるから、児玉の昭和五〇年分の事業所得は、二億九九五〇万円であると認めることができる。

(三)  次に、雑所得について検討すると、児玉が昭和五〇年中にロッキード社から受領した二五〇〇万円を雑所得として申告していることは、当事者間に争いがないが、前記のとおり、ロッキード社から受領した金員は事業所得と認められるから、右二五〇〇万円を雑所得の金額から減算することが相当である。

(四)  以上のとおり、児玉の昭和五〇年分の雑所得金額は、児玉の確定申告に係る所得金額である一億三四四六万六九二五円に対して事業所得の金額二億九九五〇万円、配当所得の金額七八万一〇〇〇円、譲渡所得の金額一二七五万円及び一時所得の金額二九万七五〇〇円を加算し、利子所得の金額九九〇万二七〇〇円、不動産所得の金額三六六万三四四二円、雑所得の金額二四三八万一三九八円を減算して算出した金額である四億〇九八四万七八八五円である。

6  右のとおり、児玉の総所得金額は、昭和四六年分が二億九九四八万七五二八円、昭和四七年分が一三億六二八七万〇〇〇九円、昭和四八年分が四億五〇五四万二七一九円、昭和四九年分が六億七〇一一万〇六一六円、昭和五〇年分が四億〇九八四万七八八五円となる。そうすると、本件更正は、いずれも、右と同額を児玉の総所得金額としているものであるから、適法であるということができる。

四次に、本件決定が適法であるかどうかについて検討する。

1  重加基礎所得金額について

(一)  昭和四六年分

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(一)(重加算の計算の基礎となる税額に係る所得金額)の(1)(昭和四六年分)の①(事業所得の金額)のうち五〇〇〇万円、②(雑所得の金額)は、いずれも当事者間に争いがない。

(2) 前記認定のとおり、右の事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬)は一億二九〇〇万円であり、譲渡所得の金額(北星海運の株式譲渡によるもの)は一億〇一六〇万円である。

(3) したがって、重加基礎所得金額は、合計二億四二〇二万三一六〇円である。

(二)  昭和四七年分

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(一)(重加算の計算の基礎となる税額に係る所得金額)の(2)(昭和四七年分)の①(事業所得の金額)のうち一億円、②(雑所得の金額)は、いずれも当事者間に争いがない。

(2) 前記認定のとおり、右の事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬)は一一億八七〇〇万円である。

(3) したがって、重加基礎所得金額は、合計一三億一五四二万三一六〇円である。

(三)  昭和四八年分

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(一)(重加算の計算の基礎となる税額に係る所得金額)の(3)(昭和四八年分)の②(雑所得の金額)のアないしエ、オのうちの一〇〇〇万円、カ及びキは、いずれも争いがない。

(2) 前記認定のとおり、事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬)は一億三八〇〇万円であり、また、ジャパンラインからの謝礼の収入に係る必要経費として認められるのは三一万七五〇〇円であるから、ジャパンラインから受領した謝礼のうち、一億二〇六八万二五〇〇円が重加基礎所得金額に該当する。

(3) したがって、重過基礎所得金額は、合計四億〇一五〇万五六六〇円である。

(四)  昭和四九年分

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(一)(重加算の計算の基礎となる税額に係る所得金額)の(4)(昭和四九年分)の②(雑所得の金額)のアないしエ及びカは、いずれも当事者間に争いがない。

(2) 前記認定のとおり、事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬)は七一〇〇万円であり、また、台糖から受領した謝礼は四億五五四〇万円である。

(3) したがって、重加基礎所得金額は、合計六億〇七八二万三一六〇円である。

(五)  昭和五〇年分

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(一)(重加算の計算の基礎となる税額に係る所得金額)の(5)(昭和五〇年分)の①のうち八〇〇〇万円、②(雑所得の金額)は、当事者間に争いがない。

(2) 前記認定のとおり、事業所得の金額(ロッキード社から受領した報酬)は二億九九五〇万円であるところ、児玉が雑所得として申告していた二五〇〇万円を控除した二億七四五〇万円が重加基礎所得金額となる。

(3) したがって、重加基礎所得金額を右合計三億〇七九〇万円のうちの二億七五三八万〇九六〇円とすることは相当である。

2  隠蔽又は仮装について

(一)  国税通則法六八条一項は、更正等があった場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは重加算税を課する旨を定めている。そして、納税者が真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額をことさらに過少にした内容虚偽の申告書を提出した場合は、右事実の一部を隠蔽し、その隠蔽したところに基づき納税申告書を提出したものと解すべきである。

(二)  所得税の申告の事実関係について

(1) 被告の主張2(本件決定の適法性)の(二)(隠蔽又は仮装)の(2)のうち、児玉が従前から児玉宅に出入りしていた不動産業者福島に対し昭和四〇年ころから自己の所得について申告金額を口頭で説明して給与等の支払者から送付された給与等の源泉徴収票等を渡しこれに従って毎年の確定申告書を作成させたうえ福島から申告金額等の説明を受けて了承を与え同人に右申告書を提出させていたものであり、昭和四六年分ないし昭和四九年分も同様であったこと、昭和五〇年分の確定申告について児玉が昭和五一年二月一二日に脳梗塞の発作を起こして自宅で療養中であったため、福島が児玉の秘書大刀川に対し相談したこと、大刀川が指示内容について児玉の了承を得て再度その旨を福島に伝えて福島がこれに従って確定申告書を作成して同年三月一五日提出したことは、いずれも当事者間に争いがない。

(2) 被告は、大刀川が福島に対しロッキード社からの収入として二五〇〇万円のみを計上しておくよう指示したと主張しているが、原告らは、大刀川が福島に対しロッキード社からの二五〇〇万円のほか、他の国内関係の収入金額についても総て計上するよう福島に指示していたと主張している。

しかしながら、<証拠>によれば、大刀川は福島に対しロッキード社からの収入として二五〇〇万円、東海興業に対する絵画の売却収入四二〇〇万円等につき指示を与えただけであって、ロッキード社からの収入で右の二五〇〇万円以上の分、東海興業から受領した謝礼二〇〇〇万円、水谷文一から受領した謝礼二四〇万円、殖産住宅から受領した謝礼九五〇万円及び乙女鉱山開発から受領した採掘権賃貸収入一五〇万円の合計二億七五三八万〇九六〇円については何らの指示も与えなかったことが認められる。

(三)  児玉の確定申告の内容について

昭和四六年については、配当所得は九名分、雑所得は講演料として一名分、給与所得は一五名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二五名)こと、昭和四七年分については、配当所得は七名分、雑所得は講演料、原稿料として二名分、給与所得は一五名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二四名)こと、昭和四八年分については、配当所得は七名分、不動産所得は一名分、雑所得は原稿料ほかとして三名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二五名)こと、昭和四九年分については、利子所得は一名分、配当所得は六名分、不動産所得は二名分、雑所得は原稿料、保証料として六名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計二九名)こと、昭和五〇年分については、利子所得は二名分、配当所得は五名分、不動産所得は二名分、雑所得は、原稿料、保証料、絵画売却収入及び謝礼(ロッキード社分二五〇〇万円を含む。)として八名分、給与所得は一四名分をそれぞれ申告している(収入の相手方合計三一名)ことは、いずれも当事者間に争いがない。

(四)  以上の事実関係に照らせば、児玉は、昭和四六年分ないし昭和五〇年分の所得税の申告に際し、毎年二〇名以上の相手方から収入がある旨を申告しておきながら、前記認定のとおり、ロッキード社から毎年多額の報酬を受領していた収入については、昭和五〇年に雑所得として二五〇〇万円を申告したほかは、一切の申告をせず、また、前記のとおり重加基礎所得金額とされた雑所得あるいは北星海運の株式譲渡による譲渡所得も、いずれも多額のものであるにもかかわらず、一切申告していなかったものであって、真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、前記のとおり福島を介して、所得の金額を殊更に過少にして申告した内容虚偽の申告書を提出したものと認めることができる。したがって、児玉は、昭和四六年分から昭和五〇年分の所得税の申告に際し、その所得税の課税標準又は税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠蔽し、その隠蔽したところに基づき納税申告書を提出していたものというべきである。

3  以上のとおりであるから、被告が国税通則法六八条一項の規定に基づいてした本件決定は、いずれも適法である。

五よって、原告らの請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官小林昭彦 裁判長裁判官宍戸達德及び裁判官北澤晶は、いずれも転補のため署名捺印することができない。裁判官小林明彦)

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