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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)15726号 判決 1986年2月13日

原告 東光総合リース株式会社(旧商号株式会社大富士総合リース)

右代表者代表取締役 鈴木進

右訴訟代理人弁護士 大林清春

同 池田達郎

同 白河浩

被告 有限会社 露木製作所

右代表者代表取締役 露木貞次

被告 露木貞次

被告 露木孝夫

右被告三名訴訟代理人弁護士 真田淡史

同 佐々木秀一

右訴訟復代理人弁護士 金子穂積

主文

一、被告らは、各自、原告に対し、金二四三七万五〇〇〇円及びこれに対する昭和五五年一二月一日から支払ずみまで日歩四銭の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告らの負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

主文同旨の判決並びに仮執行宣言

二、請求の趣旨に対する被告らの答弁

1. 原告の請求を棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求原因

1. 原告と被告有限会社露木製作所(以下被告会社という。)とは、昭和五五年八月二日、左記約定を主たる内容とするリース契約(以下本件リース契約という。)を締結した。

(一)  原告は、三菱電機株式会社製ワイヤカット放電加工機(DwC一〇〇H-CNC一型)一台(以下本件物件という。)を、訴外株式会社昭和工機(当時の商号トーケン機工株式会社。以下トーケン機工という。)から購入して、被告会社にリースする。

(二)  リース物件の設置場所は、東京都足立区小台二丁目五〇番二二号とする。

(三)  リース期間は借受証発行日から七二か月間とする。

(四)  リース料は月額三七万五〇〇〇円とし、第一月分については借受証発行日に現金にて、第二月分以降については各月の借受証発行の日の応当日を支払期日とする手形六七通を振出交付して、それぞれ支払う。

(五)  被告会社は、リース物件の引渡しを受けたのちこれを検査したうえ、借受証を原告に交付する。

(六)  被告会社は借受証を原告に交付した日からリース物件を使用することができる。

(七)  リース物件の規格・仕様・性能・機能等に不適合、不完全、その他の瑕疵があったときは、被告は直ちに原告にこれを通知し、前記借受証にその旨記載する。被告がこれを怠ったときは、リース物件は完全な状態で引渡されたものとみなし、被告は以後一切の苦情を申立てない。

(八)  被告がリース料の支払いを一回でも遅滞し、又は本リース契約の条項の一つにでも違反したときは、原告は催告をしないで残リース料全部について即時に弁済を請求することができる。

(九)  被告は、本件リース契約による原告に対する金銭の支払いを怠ったときは、原告に対し、日歩四銭の割合による遅延利息を支払う。

2. 被告会社は、昭和五五年八月二日、原告に対し、借受証を提出した。

3. 被告露木貞次(以下貞次という。)及び同露木孝夫(以下孝夫という。)は、昭和五五年八月二日、本件リース契約に関する被告会社の原告に対する1項記載の債務について、原告に対し連帯保証した。

4. 被告会社は、昭和五五年一一月三〇日期日の賦払金の支払をしなかったから、同日前記債務につき期限の利益を喪失した。

5. 原告は、本件リース契約の前払リース料として被告会社から一五〇万円を受領していたので、これをリース料残債権に充当した結果、被告会社に対してリース料残債権金二四三七万五〇〇〇円を、被告貞次及び同孝夫に対しそれぞれ同額の連帯保証債務履行請求権を有している。

6. よって、原告は、被告らに対し、各自右金額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である昭和五五年一二月一日から支払ずみまで日歩四銭の割合による約定遅延損害金の支払を求める。

二、請求原因に対する認否

1. 請求原因1の事実は認める。

2. 請求原因2の事実は、被告会社が原告に対し借受証を提出した点は認めるが、振出したのが昭和五五年八月二日である点は否認する。

3. 請求原因3の事実は否認する。但し、被告貞次、同孝夫がリース契約書に連帯保証人として署名押印したことは認める。

4. 請求原因4及び5の事実は否認する。但し、被告会社が原告に対し前払リース料として金一五〇万円の支払をしたことは認める。

5. 請求原因6の主張は争う。

三、被告らの抗弁

1. 本件リース契約は停止条件付契約であるところ、停止条件が成就せず契約の効力は発生していない。

(一)  被告孝夫が経営する訴外株式会社日本電子部品(以下日本電子部品という。)が訴外神奈川電気株式会社から本件物件を他の二台の機械とともに合計五七五五万円で、代金完済までは神奈川電機株式会社に所有権留保の約定で買受けたが日本電子部品の資金繰りが苦しい状況になったので、被告らは、右売買代金残金の支払資金一八一〇万円を原告から融資してもらうこととし、原告が被告会社に対し本件物件の売買代金名目で金一八一〇万円を融資し被告会社が金二七〇〇万円をリース料名目で分割して弁済することにしその担保として本件物件の所有権を日本電子部品が原告に移転するという形式をとることとして本件リース契約を締結したものであるから、本件リース契約は原告から金一八一〇万円の融資がなされることを停止条件として締結されたものである。

(二)  しかるに、被告会社は原告から右一八一〇万円の支払を受けていないから条件が成就していない。

2. 仮に、本件リース契約が有効に成立しているとしても、同契約は昭和五五年一二月二七日合意解除された。被告会社が原告に支払ずみの金一一二万五〇〇〇円については翌日原告から被告会社に返還された。

四、抗弁に対する認否

1. 抗弁1(一)の事実は知らない。同(二)の事実は否認する。

2. 抗弁2の事実は否認する。

第三、証拠<省略>

理由

一、請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二、<証拠>によれば、被告会社が原告に対し、昭和五五年八月二日、借受証を提出したこと(請求原因2)が認められ、この認定に反する証拠はない。

三、<証拠>によれば、被告貞次及び同孝夫が昭和五五年八月二日、本件リース契約に関する被告会社の原告に対する債務につき原告に対し連帯保証したこと(請求原因3)が認められ、この認定に反する証拠はない。

四、成立に争いのない甲第六号証の一ないし三によれば、被告会社は本件リース代金支払のために提出した額面金額三七万五〇〇〇円の約束手形を満期日である昭和五五年一一月三〇日不渡にし、同日支払期限のリース代金を支払わなかったこと(請求原因4)が認められるから、本件リース契約の約定により期限の利益を喪失したこと(請求原因4)が認められる。

五、抗弁1について判断する。

1. 本件リース契約が原告から被告会社に対し金一八一〇万円の融資がなされることを停止条件として締結されたものであるとの主張事実については、本件全証拠を精査するもこれを認めるに足りる的確な証拠がない。

2. なお、<証拠>並びに前記一記載の当事者間に争いがない事実を総合すれば、本件リース契約が締結されるに至った経緯は、被告孝夫が経営する日本電子部品は、昭和五一年一二月ころ、本件物件を、訴外神奈川電気株式会社から他の二台の機械とともに代金は割賦払いとし物件所有権は代金完済まで売主に留保するとの約定で買受け、その引渡を受けて使用し、昭和五五年六月当時右割賦払金として月々九七万四〇〇〇円を支払っていたものであるが、被告孝夫が、別件リース代金支払の保証をしていた主債務者である訴外興進金型株式会社(以下興進金型という。)が昭和五五年五月ころ倒産して同会社が右リース契約の債権者である原告に対して支払うべき月額六〇万円ずつのリース代金を保証人として支払わねばならなくなったため日本電子部品及びその経営者である被告孝夫の資金繰りが困難な状況に陥ったことから、被告らは、訴外末広商事株式会社(以下末広商事という。)の会長でトーケン機工の実質上の経営者であり又右興進金型の原告に対するリース料支払の保証人でもあった訴外園川秩夫と相談のうえ、本件物件につき被告会社からトーケン機工へ、同社から原告へ売買しこれを原告から被告会社へリースするという契約を締結する形式をとって原告から融資を受けてその金員で神奈川電気株式会社との間の売買代金残金の決済をなし、右融資金に金利等を加算した金員を被告会社が原告に対しリース料として長期にわたり分割で支払うことにより資金難を切り抜けることとして締結されたものであること、本件リース契約締結当時原告の担当者も本件リース契約が実質的に融資の目的で締結されるものであることを知っていたこと、被告会社は本件リース契約に基づき、原告に対し、昭和五五年八月二日に本件物件についての借受証を交付して物件の引渡を受け引続き本件物件を使用していること、他方、原告とトーケン機工は本件物件につき売主をトーケン機工、買主を原告、賃貸先を被告会社とし代金を一八一〇万円とする売買契約を締結し、同月二日、同額の金員が原告からトーケン機工に対し本件物件の売買代金として支払われたこと及び右に関し原告とトーケン機工との間において、原告と被告会社との間の本件リース契約につき被告会社がリース料の支払不能に陥ったときはトーケン機工が被告会社のリース料残金の支払を原告に対して保証する旨の覚書が交わされたこと、被告会社は、本件リース契約に基づき原告に対し、リース料のうち初回金三七万五〇〇〇円と前払リース料として金一五〇万円を支払い(なお、被告会社が原告に対し前払リース料として金一五〇万円を支払った事実は当事者間に争いがない。)、二回目以降のリース料支払のため額面金額各三七万五〇〇〇円の約束手形六七枚を振出交付したことの各事実が認められ、これらの事実によれば、本件リース契約は、形式的にはリース契約としてリース業者である原告が自己の所有する物件を利用者である被告会社に利用させるという内容を有するものではあるが、実質的には被告会社がトーケン機工を介して原告から融資を受けるという消費貸借の性質を有することは否定できず原告、トーケン機工間の本件物件についての売買契約と一連のものとしてなされたものであると認められるから、原告が売買代金を支払わない場合には本件リース契約もその前提を欠くものとして原告が被告会社に対してリース料の支払を求めることはできないという黙示の約定があるものというべきであるけれども、原告は売主であるトーケン機工に対し本件物件の売買代金として金一八一〇万円を支払ったこと右認定のとおりであるから、仮にこの金員がトーケン機工から被告会社へ交付されなかったとしても、その事実のみによって本件リース契約が無効となるわけではないといわざるを得ないから、結局、本件リース契約が無効なものであるとの主張は採用できないことに帰する。

六、抗弁2について判断する。

1. 本件リース契約が昭和五五年一二月二七日に合意解除されたとの事実及び同月二八日原告が一一二万五〇〇〇円を支払った事実は、本件全証拠によるもこれを認めるに足りる証拠はない。

2. なお、<証拠>(但し、後記認定に添う部分に限る。)を総合すれば、本件リース料支払のために被告会社が原告に対し振出交付してあった約束手形のうち支払期日昭和五五年一一月三〇日額面三七万五〇〇〇円の約束手形は取引なし(停止処分済)という理由で不渡りになりその後も本件リース料の支払がなされなかったので原告は被告会社に対しその支払方を催促する内容証明郵便を送付したこと、これに対し被告孝夫が自分の方に金が来ていないなどと原告へ申立てたが、原告側は、その問題は被告孝夫と園川秩夫ないしは末広商事、トーケン機工との間で解決すべきものであるとして取り合わず被告孝夫からの当時の原告代表者石田との面会要請にも応じないでいたところ、被告孝夫が法的手段をとるとか警察に訴え出るとか申立てて面会を強く望んだ結果、石田もやむなく被告孝夫と面談することを承知したこと、そして、昭和五六年一二月二二日ころ、被告孝夫、石田、園川、末広商事の従業員近藤、原告の石渡取締役が一堂に会し、その席上、被告孝夫と園川との間で、園川が被告会社の原告に対する本件リース契約上のリース料支払義務を引受けその履行のために園川ないしは園川の経営する会社が月々のリース料に見あう約束手形を原告に差入れこれを決済していく方法で実質上債務の肩替りをするとの話合いがつき、原告側も園川と被告孝夫との間の右話合いの結果を了承し、園川側が手形を一括して差入れたときには被告会社から振出交付を受けている手形を一括して返還する、又、これまでに決済された三通の約束手形の手形金(初回分から三回分まで。)については園川が原告に支払い原告がこれを被告会社へ返還する旨の一応の合意をみたけれども、その後園川と被告孝夫との間の債務引受の手続や書面の交換もないばかりでなく園川側からの手形の交付もなされなかったこと、その後石田から被告会社がリース料として手形決済により支払った三回分の手形金相当額が被告孝夫に支払われたが、この金員を石田が支払ったのは、石田は、本件リース契約に直接関与したわけではないがそれまでの経緯からみて本件リースに関連してなされた原告とトーケン機工との売買契約に基づいて原告からトーケン機工に支払われた金一八一〇万円が被告会社に対する融資金として被告会社へ交付される予定のものであったのにトーケン機工からは被告会社に対してその一部しか交付されていないことを知ったこと及び園川が前記会合の際の約束を果たさないため決済ずみの約束手形三か月分について原告が被告会社へ返還するわけにいかずそのため被告孝夫が資金繰りに困窮していることを察していたこと並びに被告孝夫から本件を含めて原告が多額の不正融資を行っているといった趣旨の記載のある同被告作成の書面を示され本件を解決しない場合にはこの書面をもって本店へ乗り込むなどと申向けられたために、原告の親会社である訴外駿河銀行にこの問題が持ち込まれた場合には石田自身の地位に影響を及ぼすことが考えられたのでこれを回避しようとして石田個人の出捐で支払い解決を図ったものと推認されることの各事実が認められるけれども、右認定事実からは本件リース契約が合意解除された事実を推認することはできない。

3. 被告孝夫本人尋問の結果中本件リース契約が合意解除された旨の供述部分は右2記載の証拠及び認定事実に照らしてにわかに措信できない。

七、本件リース契約のリース期間は七二か月でリース料は月額三七万五〇〇〇円の約定であることは当事者間に争いがなく右によればリース料総額は二七〇〇万円であると認められるところ、被告会社が原告に対して支払った額は前払リース料金一五〇万円と三七万五〇〇〇円ずつ三回の合計二六二万五〇〇〇円であること前述のとおりであるから昭和五五年一一月三〇日現在の残リース料は二四三七万五〇〇〇円であること計算上明らかで、結局、被告らは、原告に対し、各自、右金額とこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である昭和五五年一二月一日から支払ずみまで日歩四銭の割合による約定遅延損害金を支払う義務がある。

八、よって、原告の被告らに対する本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋祥子)

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