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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)10977号 判決 1980年11月28日

原告 帝人教育システム株式会社

右代表者代表取締役 志賀政雄

右訴訟代理人弁護士 大澤一正

被告 藪内一男

<ほか一名>

主文

一  被告らは、原告に対し、各自、金三九万五、〇〇〇円及びこれに対する昭和五四年一二月一日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項について、仮に執行することができる。

事実

原告は、「一、被告らは、原告に対し、各自、金四九万九、一四〇円及び内金三九万五、〇〇〇円に対する昭和五四年一二月一日から、内金一〇万四、一四〇円に対する昭和五五年一一月九日から、各支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。二、訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、請求の原因を次のとおり述べた。

「一 原告は、語学教育機器の販売、教育プログラムの開発実施を主たる業とする会社である。

二 被告らは、昭和五三年七月六日、原告に対し、原告が企画、主催する昭和五三年度アメリカ・コロラド英語研修旅行にその子藪内聡を参加させることを申し込み、右旅行参加費用三九万五、〇〇〇円を同月一五日までに支払うことを約した。

三 しかし、右旅行参加費用の支払がなかったため、原告は、被告らの依頼に基づき、昭和五三年七月一五日までにその全額を立て替えて旅行会社に支払い、藪内聡を右旅行に参加させた。

四 被告らは、昭和五四年七月二四日、原告に対し、右旅行参加費用を連帯して同年八月から一〇月までの各月末日に一〇万円ずつ、同年一一月三〇日に九万五、〇〇〇円に分割して支払うことを約した。

五 原告は、被告らに対する右旅行参加費用を請求するため、その督促費用として左記のとおりの費用の支出を余儀無くされ、これと同額の損害を被った。

昭和五四年七月二三日、二四日及び昭和五五年二月二〇日、二一日の二回にわたって支出した。

1 航空運賃 六万八、〇〇〇円

2 宿泊代 一万四、四〇〇円

3 列車交通費 八、八〇〇円

4 タクシー交通費 七、三九〇円

5 督促郵便料金 五、五五〇円

六 よって、原告は、被告らに対し、各自、立替金、損害金、の合計額四九万九、一四〇円及び立替金三九万五、〇〇〇円に対する昭和五四年一二月一日から、損害金一〇万四、一四〇円に対する昭和五五年一一月九日(訴状送達の日の翌日)から、各支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

被告らは、適式の呼出しを受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しない。

理由

被告らは、民事訴訟法第一四〇条第三項によって請求原因事実を自白したものとみなす。

右の事実によれば、原告の本件立替金の請求は理由があるが、本件損害金の請求は理由がない(後者の点について説明を加えるに、民法第四一九条第一項は、金銭債務の遅滞による損害賠償の額は、約定又は法定の利率によるべきことを規定するので、その結果として、債権者は、それ以上の損害を被ったことを挙証しても、法律に特別の定めがあるときを除いては、その賠償を請求できないと解されるし、同法第四八五条にいう弁済の費用は、運送費、荷造費、為替料、関税など、債務を履行するために要する費用を意味するものであって、原告が主張するような債権取立てのための費用は、右弁済費用には含まれないと解される。したがって、他に特別の事由がない以上、原告は、被告らに対し、その主張するような金員を請求できないというべきである。)。

よって、原告の本件立替金の請求を認容し、本件損害金の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条本文、第九三条第一項本文を、仮執行の宣言について同法第一九六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安達敬)

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