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東京地方裁判所 昭和54年(行ウ)90号 判決 1980年3月24日

原告

西原武

被告

特許庁長官

上記当事者間の昭和54年(行ウ)第90号実用新案権登録抹消請求事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

1  原告

(1)  被告は、実用新案登録第725044号を実用新案登録原簿より抹消せよ。

(2)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

2  被告(本案前の答弁)

主文と同旨の判決

第2当事者の主張

(1)  原告(請求の原因)

別紙のとおり

(2)  被告(本案前の答弁の理由)

本件訴えは、以下に述べるとおり、不適法であつて却下を免れない。

①  すなわち、本件訴えは、実用新案登録第725044号(権利者住友商事株式会社)を実用新案登録原簿から抹消することを求めるというものであるが、上記登録は、昭和41年5月29日上記登録にかかる実用新案権が登録料不納により消滅したため、すでに昭和45年1月13日実用新案登録原簿から抹消されている。したがつて、本件訴えは訴えの利益を欠くものである。

②  なお、仮に本件訴えが上記登録を無効にすることを求める趣旨であるとしても、これまた不適法である。

けだし、実用新案法第37条の規定は、実用新案登録を無効とすることについては審判を請求することができるものとし、更に、同法第47条第2項において準用する特許法第178条第6項の規定は、「審判を請求することができる事項に関する訴は、審決に対するものでなければ、提起することができない。」ものとしているからである。

理由

当裁判所は、本件訴えは不適法であつてこれを却下すべきものと判断する。その理由は次のとおりである。

本件訴えは、被告に対し、実用新案登録第725044号(登録にかかる実用新案権の権利者・住友商事株式会社)を実用新案登録原簿から抹消することを求めるというものである。しかして、原告がその請求の原因として主張するところは、その趣旨が必ずしも明らかではないが、概ね次のとおりと考えられる。すなわち、実用新案登録第725044号についての出願の願書に添附した明細書の考案の詳細な説明には、いわゆる当業技術者が容易にその考案の実施をすることができる程度にその考案の目的、構成及び効果を記載しなければならないのに、不十分な記載しかされていないうえ、上記願書に添附した明細書及び図面の記載の態様も実用新案法施行規則所定の様式に違反するものであつて、上記出願については本来登録がされるべきではなかつたのであるから、前記登録は実用新案登録原簿から抹消されるべきである、というものである。

しかしながら、実用新案登録出願につきひとたび登録が経由されたときは、仮にその登録に何らかの瑕疵がある場合であつても、原則として、その登録は当然に無効とはならず、その登録を無効とすることについて審判を請求し(実用新案法第37条)、その登録を無効にする旨の審決が確定して初めてその登録にかかる実用新案権は当初から存在しなかつたものとみなされ(同法第41条、特許法第125条)、したがつてまた、その登録も初めから無効とされることになると解すべきものである。そして、審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、これを提起することができないのである(実用新案法第47条第2項、特許法第178条第6項)。

しかるに、本件訴えは、その実質において、上記に述べた登録を無効にすることについての審判を請求するという手続を踏むことなく、直接、前記登録を無効にすることを訴求するというに相等しく、実用新案法第47条第2項において準用する特許法第178条第6項の規定の趣旨を潜脱するものであつて、不適法というべきである。

よつて、本件訴えを不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。

(秋吉稔弘 野崎悦宏 安倉孝弘)

<以下省略>

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