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東京地方裁判所 昭和53年(行ウ)101号 判決 1979年3月28日

原告 石垣食品株式会社

被告 建設大臣

訴訟代理人 成田信子 遠藤洋一 他四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者の求めた判決)

第一請求の趣旨

被告が原告に対し昭和五三年四月一九日付でした裁決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

第二請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

(当事者の主張)

第一請求の原因

一  裁決に至る経緯

1 青森市大字浦町字橋本一三一番九宅地五五八・六七平方メートルについては、施行者を青森県知事とする土地区画整理事業により仮換地の指定がなされていたところ、同土地はその後分筆され、原告は、分筆後の同番九宅地一三六・三三平方メートル(以下「本件土地」という。)を取得した。

2 そこで、原告は、同知事に対し再三にわたり分筆に伴う仮換地変更指定処分の申請を行い、更には昭和四六年五月七日右処分を行わないことを理由とする不作為についての異議申立てを行つた。しかし、同知事は、右申請及び異議申立てになんら応答することなく、昭和五一年三月二三日本件土地につき換地処分(以下「本件換地処分」という。)を行つたが、その内容は、土地区画整理法九〇条により本件土地については換地を定めず清算金一九〇万〇一四五円を交付するというものであり、その通知は同月二九日原告に到達した。

3 これに対し原告は、本件換地処分が無効であることを前提に、同知事が原告の前記申請及び異議申立てになんら応答しない不作為の解消と本件換地処分の取消しを求めて、昭和五一年一〇月九日被告に対し審査請求(以下「本件審査請求」という。)をしたところ、被告は、昭和五三年四月一九日これを却下する裁決(以下「本件裁決」という。)をした。本件裁決の理由とするところは、不作為の解消を求めた部分については、すでに換地処分の公告が行われ、同知事は仮換地の変更指定を行うことができないから、審査請求をする利益はないというものであり、また、本件換地処分の取消しを求めた部分については、審査請求期間を徒過しており、不適法であるというものである。

二  裁決の違法事由

1 行政不服審査法一四条一項によれば、「審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六〇日以内に、しなければならない。」とされているが、換地処分の場合には、処分の公告によつて効力が生じるものであり(土地区画整理法一〇四条)、相手方に対する通知と右公告とが合体して一の処分を構成しているのであるから、換地処分に対する審査請求期間は、処分の通知があつた日ではなく、公告があつた日を基準としてその翌日から起算すべきである。ところで、本件換地処分の公告は昭和五一年八月一〇日になされているので、本件審査請求の請求期間の起算日は、同月一一日とすべきであり、原告に対する通知のあつた日の翌日をもつてその起算日とした本件裁決は、法の解釈を誤つた違法なものというべきである。

2 仮に、一般論としては処分の通知があつた日の翌日をもつて審査請求期間の起算日とすべきであるとしても、本件においては、前記一の1ないし3で述べたような事情があり、青森県知事は、原告が仮換地の指定変更を切望し、本件換地処分の如き内容の処分に不服であることは予め熟知していたものであり、原告としても、前記のような申請及び異議申立ての手続を尽くし、これらに対する判断が示されるものと予想し期待していたのであるから、かかる特別の事情のもとにおいては、その起算日は、処分の通知のあつた日ではなく、公告のあつた日を基準とすべきである。

3 仮に、右の主張が容れられないとしても、原告が本件審査請求の請求期間を遵守できなかつたことについては、次のような行政不服審査法一四条一項但し書にいう「やむをえない理由」があつた。

(一) 原告は、本件審査請求以前にすでに前記の申請及び異議申立てをしていたことによつて、本件換地処分に対しても不服申立ての意思を表示していたものということができる。

(二) 青森県知事が、原告の前記の申請及び異議申立てに対しなんらの処分、判断をなすことなく本件換地処分をなすことは、その事務取扱上重大な瑕疵があり、かかる処分に対する審査請求期間の起算日を公告の翌日とすることは、信義則上正当な理由がある。

(三) 被告が、本件審査請求を昭和五一年一〇月九日に受理しながら、本件裁決がなされた昭和五三年四月一九日まで約一年六か月の間、その判断を保留していたことは、期間徒過の宥恕事由を認めていたものと解すべきである。

4 仮に、以上の主張がすべて理由がないとしても、原告の前記申請及び異議申立ては本件換地処分に対する審査請求とみるべきものである。すなわち、青森県知事が原告の前記申請に対し仮換地の変更指定をしなかつたのは、本件土地に対し換地を定めないようにするためであつて、仮換地変更指定をしないことと本件換地処分とは一体をなすものである。したがつて、前記申請及び異議申立ては、本件換地処分に対する不服の意思表示でもあり、かかる点からすれば、前記申請及び異議申立ては、実質的には、本件換地処分に対する審査請求と評価すべきものである。

三  以上のとおりであるから、本件審査請求のうち本件換地処分の取消しを求める部分について期間徒過を理由に不適法とした本件裁決は違法であるから、その取消しを求める。

第二請求原因に対する認否及び主張

一  請求原因一の事実は認めるが、同二の主張は争う。

二  本件裁決が、本件審査請求のうち本件換地処分の取消しを求める部分を不適法としたのは、本件審査請求が本件換地処分の通知が原告に送達された昭和五一年三月二九日の翌日から起算して六〇日を経過してなされたものであるからである。

(証拠)<省略>

理由

一  請求原因一の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件審査請求のうち本件換地処分の取消しを求める部分が審査請求期間を徒過したものであるか否かについて判断する。

1  行政不服審査法一四条一項によれば、行政処分に対する審査請求は、「処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六〇日以内に、しなければならない。」とされているが、ここに「処分があつたこと」とは、当該行政処分が内部的に成立しただけでなく、告知により外部に表示され、処分として効力が生じたことをいうものであつて、それ以上に、当該処分の目的とする法的効果が発生するに至つたことまでを必要とするものではないと解すべきである。

ところで、土地区画整理法一〇三条一項は、「換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとする。」と規定しているから、これに基づいて換地処分の通知書が処分の相手方たる権利者に送達されたときは、右送達により、当該換地処分が外部に表示され、相手方に対する処分として効力を生じたものということができる。もつとも、同法一〇三条四項及び一〇四条一、二項によれば、換地処分については、相手方に対する通知のほかに公告をすべきこととされ、換地計画に定められた権利の移転若しくは消滅等の効果は右公告をまつて発生するものとされているが、これは換地処分に伴う権利関係の変動の全体的統一的実現のために処分の実体的効果の発生を公告にかからしめたにすぎず、処分としての効力そのものは前記通知によつてすでに生じているものというべきである。そうであるとすれば、換地処分に対する審査請求の期間の起算日は、換地処分の公告があつた日の翌日ではなく、通知があつた日の翌日であるというべきである。もともと、換地処分についても、権利者ごとに各別に審査請求をし又はしないことが認められている以上、その請求期間の起算を公告にかからしめて全員につき合一に期間を進行させなければならない実質的理由は全くなく、他方、処分の通知があつた日を基準としても、権利者に不服申立てのうえで特段の不利益を生じる虞れがあるということもできないのである。

そうしてみると、本件においては、本件換地処分の通知書が原告に送達されたのが昭和五一年三月二九日であり、これに対し原告が本件審査請求をしたのが右送達の日の翌日から起算して六〇日を経過した同年一〇月九日であることは当事者間に争いがないのであるから、本件換地処分の取消しを求める部分については法定の審査請求期間を徒過したものといわなければならない。

2  原告は、本件においては、右起算日を公告の翌日とすべき特別の事情があると主張する。しかしながら、その主張に係る特別の事情なるものをみても、前述した審査請求期間の起算日を動かすことを首肯せしめるに足りるものとはとうてい認めがたく、原告の主張は失当である。

3  原告は、審査請求期間を遵守できなかつたことについて行政不服審査法一四条一項但し書の「やむをえない理由」があつたと主張する。しかし、原告が本件で主張する事実は、いずれも右「やむをえない理由」に該当するものということはできない(本件審査請求から本件裁決まで約一年六か月の期間を経過したとしても、そのことのみから当然に本件審査請求の請求期間徒過を被告が宥恕していたものとみることはできない。)。

4  原告は、本件審査請求以前に青森県知事に対し仮換地変更指定処分の申請及びこれをしない不作為についての異議申立てをしたことをもつて、本件換地処分に対する審査請求と評価すべきであると主張する。しかしながら、仮換地指定処分と換地処分とは、同じく区画整理事業達成に向けられた一連の手続内の処分とはいえ、法的には一応別個独立の処分であるばかりでなく、原告の前記申請及び異議申立ては、事業の施行者である青森県知事に対してなされているのであるから、これをもつて被告に対する審査請求と評価する余地はない。

三  以上のとおりであるから、本件裁決が、本件換地処分の取消しを求める審査請求について審査請求期間徒過を理由にこれを却下したのは、適法であり、その取消しを求める原告の本訴請求は理由がない。

よつて、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐藤繁 佐藤久夫 川崎和夫)

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