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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)6405号 判決 1980年3月31日

原告 富士製粉株式会社

右代表者代表取締役 河村喜典

右訴訟代理人弁護士 石井成一

同 小沢優一

同 小田木毅

同 桜井修平

同 川崎隆司

同 妹尾佳明

右石井訴訟復代理人弁護士 阿部正史

被告 株式会社ダイエー

右代表者代表取締役 中内功

右訴訟代理人弁護士 山下義則

被告 有限会社八洲食品

右代表者清算人 戸井田士郎

右訴訟代理人弁護士 鍜治勉

被告 中田康仁

右訴訟代理人弁護士 新原一世

被告 羽入田中

右訴訟代理人弁護士 逸見安雄

被告 ユニオンソース株式会社

右代表者代表取締役 井草政吉

被告 川口信用金庫

右代表者代表理事 相澤喜代松

右訴訟代理人弁護士 立崎亮吉

被告 十条セントラル株式会社

右代表者代表取締役 岩井英夫

右訴訟代理人弁護士 満園勝美

同 満園武尚

主文

一  被告らは原告が被告株式会社ダイエーにおいて昭和五二年二月二八日東京法務局昭和五一年金第一五三六四七号をもって供託した金一、六一九万一、一六〇円のうち金三二一万五、五一七円の払渡請求権を有することを確認する。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らはいずれも原告が被告株式会社ダイエーにおいて昭和五二年二月二八日東京法務局昭和五一年度金第一五三六四七号をもって供託した金一六、一九一、一六〇円のうち金三、二一五、五一七円の払渡請求権を有することを確認する。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告有限会社八洲食品(以下「被告八洲食品」という。)は、被告株式会社ダイエー(以下「被告ダイエー」という。)に対し、昭和五一年一月一日から同年二月一二日までの間にお好み焼、たこ焼、焼ソバ、鯛焼、ジュース、アメリカンドッグ等の商品を売渡し、右二月一二日現在でダイエーに対し合計一六、一九一、一六〇円の売掛残代金債権(以下「本件債権」という。)を有していた。

2  原告は被告八洲食品に対し昭和四七年五月二六日から昭和五一年二月まで小麦粉等を継続的に売渡し、同二月現在で金三二一万五、五一七円の売掛残代金債権を有していたが、被告八洲食品は同月二一日右売掛残代金の支払のために本件債権のうち金三二一万五、五一七円を原告に譲渡し、この債権譲渡を同月一四日到達の内容証明郵便をもって被告ダイエーに通知した。

3  しかし、本件債権については、別表のとおり、債権譲渡及び債権差押命令等の通知が被告ダイエーに送達されている。

4  そこで、被告ダイエーは昭和五二年二月二八日真の債権者を確知することができないとして、民法四九四条及び民事訴訟法六二一条一項に基づき、被告八洲食品、同中田康仁、同羽入田中、同ユニオンソース、同菊池章、原告を被供託者として東京法務局に対し同法務局昭和五一年度金第一五三六四七号をもって本件債権全額を供託した。

5  しかしながら、原告に対する本件債権の一部譲渡は有効にされたものであり、しかも右債権譲渡の通知は確定日付のある内容証明郵便をもってされ、その被告ダイエーに対する通知の到達は第3項の原告以外のいずれの債権譲渡及び債権差押命令等の送達よりも優先している。

6  よって、原告は被告らに対し、原告が供託中の本件債権のうち金三二一万五、五一七円の払渡請求権を有することの確認を求める。

二  被告ダイエー、同川口信用金庫の請求原因に対する認否

1  第1項は認める。

2  第2項のうち、原告の主張のとおり譲渡通知が到達したことは認めるが、その余は不知。

3  第3項は認める。

4  第4項は認める。

5  第5項は否認する。

三  被告八洲食品、同羽入田の請求原因に対する認否

1  第1項は認める。

2  第2項は否認する。

3  第3項の別表のうち(3)、(5)ないし(8)の事実は認めるが、(1)(2)(4)の事実は否認する。

4  第4項は認める。

5  第5項は否認する。

四  被告中田の請求原因に対する認否

1  第1項は認める。

2  第2項は不知。

3  第3項のうち別表(1)は不知、その余は認める。

4  第4項は認める。

5  第5項は否認する。

五  被告ユニオンソースの請求原因に対する認否

1  第1項は認める。

2  第2項のうち、原告が債権譲渡を受けた事実は否認、その余は不知。

3  第3項のうち別表(4)は認めるが、その余は不知。

4  第4項は認める。

5  第5項は否認。

六  被告十条セントラルの請求原因に対する認否

1  第1項は認める。

2  第2項は不知。

3  第3項のうち別表(8)は認めるが、その余は不知。

4  第4項は認める。

5  第5項は不知。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1項及び4項の事実は、当事者間に争いがない。

二  まず、本件債権の譲渡の通知の優劣(先後)について争いがあるので、この点について検討する。

(一)  《証拠省略》によると、請求原因第3項の事実及び同項別表(1)(2)の確定日付のある通知はいずれも同じ昭和五一年二月一四日午後一五時一〇分に被告ダイエーに送達されていることを認めることができ(もっとも、原告と被告ダイエー、同川口信用金庫との間では請求原因第3項別表の事実については争いがなく、被告中田との間では同別表は(1)を除いて争いがなく、また被告八洲食品、同羽入田との間では同別表(3)、(5)ないし(8)は争いがなく、被告ユニオンソースとの間では同別表(4)は争いがなく、被告十条セントラルとの間では同別表(8)は争いがない。)、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二)  次に被告八洲食品から原告に対する本件債権の譲渡の効力自体について争いがあるので、この点について検討する。

《証拠省略》によると、次の事実を認めることができる。

1  原告は明治製菓の紹介で被告八洲食品と昭和四六年ころから取引をはじめ、特別に特約店を通さず直接取引の方法で主として小麦粉を継続的に販売したが、当初から被告八洲食品の支払が遅れ勝ちであったので、昭和四七年五月二六日商品取引契約公正証書を作成した。

2  そして、原告は昭和四八年二月被告八洲食品から代金支払のために交付を受けていた約束手形のジャンプを求められるようになったので、覚書を取交わし、右取引により被告八洲食品が原告に対し現在及び将来負担する商品の売買代金等一切の債務を担保するために被告ダイエーに対し有する売掛代金債権その他一切の債権を被告八洲食品から譲受け(当時、右売掛代金債権だけが被告八洲食品において担保に供することができる主要な資産であった。)、原告が被告八洲食品に代って被告ダイエーに対し右債権譲渡の通知を出すことができるように、金額と日付を空白し被告八洲食品の署名・捺印のある譲渡通知書の交付を予め受けた。

3  前記商品取引契約六条及び七条によれば、原告は被告八洲食品が本件取引に基づく商品代金その他の債務のうち一つでも履行を遅怠したとき、又は振出した手形、小切手の支払を拒絶したときには、本件取引に基づく債務全額につき期限の利益を失うとともに被告八洲食品から提供を受けた担保権を何等の催告の手続を要しないで実行できることが約定されている。

4  原告は被告八洲食品に対し本件取引に基づき昭和五〇年一二月末迄に売渡した商品代金の支払のために約束手形四枚を受領していたが、被告八洲食品は昭和五一年一月七日に額面金八五万円の約束手形を不渡としたため、原告は担保権の実行として、前述の予め被告八洲食品から交付を受けていた被告ダイエーに対する債権譲渡通知書を差出そうとしたところ、右通知書に記載されていた原告代表者名が旧代表者の表示のままであり、また被告八洲食品の住所の表示も本店移転前の旧表示のままであったことから、原告の担当者高久直文は被告八洲食品代表者にその旨を説明し、すでに交付を受けている前記債権譲渡通知書と同趣旨の債権譲渡通知書を改めて作成できるように、白紙に被告八洲食品の代表者印を押捺したものを同人から交付を受けた。

5  被告八洲食品はその後右約束手形の支払をしたので、原告は被告ダイエーに対し債権譲渡通知書を差出すのを一時保留し、昭和五一年二月初旬まで被告八洲食品に対し更に代金合計九〇万四、〇〇〇円の小麦粉等の商品を売渡したが、被告八洲食品は同年二月七日になって支払期日を同日、金額一二一万四、〇〇〇円の約束手形を決済することができなかったため、原告は同月一二日右約定どおり被告八洲食品に対する小麦粉等の売掛残代金債権金三二一万五、五一七円について、同被告より担保として受取っていた同被告の被告ダイエーに対する売掛債権のうち金三二一万五、五一七円につき担保権を実行することとし、前記のとおり被告八洲食品の代表者印の押捺してある白紙を使用して旧債権譲渡通知書と全く同趣旨の債権譲渡通知書を作成し、これに同日現在の原告代表者名と被告八洲食品の本店所在地、原告の被告八洲食品に対する売掛債権残高及び譲受債権額を記入し、右同日を差出日とし、これを前記約定に従い被告八洲食品に代って被告ダイエーに対し内容証明郵便をもって発送した。

《証拠判断省略》

以上の認定事実によると、被告八洲食品から原告に対し昭和四八年二月に債権担保のためになされた本件債権の譲渡は有効であり、また昭和五一年二月一二日付で右担保の実行として、原告が被告八洲食品に代って被告ダイエーに対してなした右確定日付による本件債権の譲渡の通知も有効なものと認められる(債権担保の目的で、現在及び将来にわたって継続的に生ずる特定の売掛債権を譲渡し、信用を悪化させる事由が発生した場合に、譲渡債権額を確定すべく、譲受人が譲渡人に代って第三債務者に譲渡通知ができるように日付、金額等を空白にした譲渡通知書を予め譲受人に交付するような譲渡契約も違法なものではないと解される。)。

(三)  次に、被告八洲食品から被告中田に対する本件債権の譲渡の効力自体について争いがあるので、この点について検討する。

《証拠省略》によると、次の事実を認めることができる。

1  被告八洲食品代表者戸井田士郎(以下「戸井田」という。)は昭和四九年一一月三〇日同人の義兄にあたる被告中田に対し会社の運転資金が不足したので金三〇〇万円の融通をたのみ、被告中田から金三〇〇万円を期間二か月、無利息の約定で貸与を受けた。

被告八洲食品は期間経過後も返済をせず、右返済は延滞していた。

2  被告八洲食品は前述のとおり昭和五一年一月七日約束手形の返済ができず、第一回の不渡を出したが、戸井田はその時急いで被告中田を訪ねて、同月二七日になれば被告ダイエーから売掛代金二、二〇〇万円の支払が受けられるのでこれで返済をするということで短期の融資を依頼し、被告中田から同月八日から同年二月七日まで一か月間に一〇数回にわたり合計金一、二三五万円を無利息の約定で貸与を受け、これと引換えに支払期日を昭和五一年一月二七日とする約束手形又は小切手を振出して交付した(従前の分と合せて貸付金の合計額は、一五三五万円)。被告八洲食品は右貸付金をもって不渡手形の買戻、支払手形の決済、借入利息、給料等の支払に充てた。

3  昭和五一年一月二七日被告八洲食品は被告ダイエーから売掛金約二、二〇〇万円の入金を受けたが、右入金は被告中田への返済には回されず、強く返済を求めていたホクエイ工事こと被告菊池宛の手形を返済するのに充てられてしまい、被告中田に対しては約束手形、小切手の支払期日を一か月延期することを求め、約束手形、小切手を書替えた(これらの約束手形、小切手はいずれも支払期日に不渡となっている。)。

4  同年二月以降被告八洲食品は被告中田の援助を受け、第二会社を作ることを考えたりしながら何とか会社の営業の継続を画策したが、同月一二日になって突如被告ダイエーから契約の継続を拒否され店舗を閉鎖するよう通告を受けたので、戸井田は戸惑い、同日夜被告中田に相談し、同人に対する多額の借金の返済に苦慮したが、被告中田に対し、「被告ダイエーからおりる金が一、五〇〇万円ほどあるのでこれを早く取れるようにしてくれ。」と申入れ、翌一三日妹の戸井田由美子に被告八洲食品の実印を持たせて、被告中田のところへ行かせた。

5  被告中田は、戸井田から同人に対する債権の回収をまかされ、会社の実印を受取ったので、同月一三日弁済の一部に充てるため本件債権のうち金一、五〇〇万円の譲渡を受けることとし、同日右実印を使用して債権譲渡の通知書を作成し、右通知を被告八洲食品に代って被告ダイエーに対し内容証明郵便をもって発送した(もっとも、昭和五一年二月一〇日付「債権譲渡証書」、同日付「借用証書」は、いずれもその日付に作成されたものではなく、同月一九日頃に作成され作成日付を遡らせたものと認められるが、これらの書類はいずれも、戸井田が同月一六日頃被告ダイエーに対して「被告菊池に対する債権譲渡だけが本当で、他はすべて戸井田の妻が勝手にやった無効なものである。」と申立てたので、被告中田の妻の幸恵が早速同月一九日頃に大宮の戸井田宅を訪ね、同人に債権譲渡の事実を確認し、これらを作成したものであり、この日付を遡らせた事実は、右債権譲渡ないしその通知に関するさきの認定を左右するものではない。)。

《証拠判断省略》

以上の認定事実によると、被告八洲食品から被告中田に対し昭和五一年二月一三日に貸金の支払のためにされた本件債権の一部金一、五〇〇万円の債権譲渡は有効であり、同日被告中田が被告八洲食品に代って被告ダイエーに対してなした債権譲渡の通知も有効なものと解される。

(四)  以上の次第であるので、原告に対する債権譲渡と被告中田に対する債権譲渡はそれぞれ有効なものであり、その確定日付のある通知は被告ダイエーに昭和五一年二月一四日の同日時に到達し、これらの通知は他の被告らに対する債権譲渡及び債権差押決定の各通知より優先しているものと認められる。

そうすると、原告と被告中田は他の被告らに対する関係で優先し、それぞれ同順位で債権者たる地位を有効に取得し、互いに右譲受債権について自己を債権者として主張することができるものと解される(債務者である被告ダイエーとしては、同順位の譲受人のうちのいずれか、もしくは両名に対して債務全額を弁済すればその債務は消滅するのであり、また同順位の譲受人相互の法律関係は、その終局的解決としては、互いに債権を独占できる地位にないことの必然的な帰結として、債務額(あるいは供託にかかる払渡請求権の金額)が同順位の譲受債権の合計額を下回るときには、譲受債権額の割合で清算がなされるべきものである。)。

三  よって、原告の本訴請求は正当であるのでこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山田二郎)

<以下省略>

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