大判例

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東京地方裁判所 昭和50年(行ウ)11号 判決

原告 田中藤吉郎

〈ほか七一名〉

原告ら訴訟代理人弁護士 秋田瑞枝

同 遠藤昭

同 大川宏

同 小口恭道

同 木村壮

同 久保利英明

同 菅野泰

同 仙谷由人

同 高原勝哉

同 中根洋一

同 庭山正一郎

同 野島信正

同 増田修

同 森本宏一郎

同 山田勝昭

同 中平健吉

原告ら訴訟復代理人弁護士 河野敬

被告 東京都知事

右指定代理人 大川之

〈ほか二名〉

主文

1  別紙原告目録記載の原告らのうち、番号51ないし72の原告らの訴えをいずれも却下する。

2  その余の原告らの訴えのうち、被告が昭和四九年一二月二五日付でした土地立入許可処分の取消しを求める訴えを却下する。

3  同原告らのその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告が昭和四九年一一月六日付及び同年一二月二五日付で、訴外帝都高速度交通営団に対してした地下高速鉄道第七号線(目黒~桐ヶ丘間)建設工事の事業準備のための土地立入許可処分は、いずれもこれを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

1  本案前につき

主文第一、第二項と同旨の判決

2  本案につき

原告らの請求をいずれも棄却する。

との判決

3  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決

第二原告らの請求原因

一  被告は、訴外帝都高速度交通営団(以下「営団」という。)の申請に基づき営団に対し、土地収用法(以下「法」という。)第一一条第二項の規定により、昭和四九年一一月六日付及び同年一二月二五日付で、次のように事業準備のための土地立入を許可した(以下、昭和四九年一一月六日付の許可を「本件第一の処分」、同年一二月二五日付の許可を「本件第二の処分」といい、右各処分を合わせて「本件各処分」という。)。

1  本件第一の処分

(一) 起業者の名称 営団

(二) 事業の種類 地下高速鉄道第七号線(目黒~桐ヶ丘間)(以下「本件地下鉄七号線」という。)建設工事(以下「本件事業」という。)

(三) 立ち入ろうとする土地の区域(以下「立入区域」という。) 東京都北区岩渕町、赤羽一丁目、赤羽三丁目、赤羽台一丁目、赤羽台二丁目、赤羽台三丁目、赤羽北一丁目、桐ヶ丘一丁目、桐ヶ丘二丁目、赤羽西五丁目、赤羽西六丁目、西が丘一丁目及び西が丘三丁目地内

(四) 立入期間 昭和四九年一一月六日から昭和五二年一一月五日まで

2  本件第二の処分

(一) 起業者の名称・事業の種類は右1(一)、(二)に同じ。

(二) 立入区域 東京都北区赤羽台四丁目、赤羽西四丁目地内

(三) 立入期間 昭和四九年一二月二五日から昭和五二年一一月五日まで

二  しかしながら、本件各処分は、後記第四の三記載の理由により違法であるから、その取消しを求める。

第三被告の答弁

一  本案前の申立ての理由

別紙原告目録記載の原告らのうち番号51ないし72の原告ら(以下「51ないし72の原告ら」という。以下同様に別紙原告目録記載の番号で表示する。)は、本件第一の処分における立入区域に住居を有しないから、自己の占有地へ立入を受けることはなく、したがって、同原告らは本件第一の処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。また原告ら全員は、本件第二の処分における立入区域にいずれも住居を有しないから、自己の占有地へ立入を受けることはなく、したがって、同原告らは本件第二の処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。すなわち、

本件各処分は、営団が昭和四九年一〇月二四日付及び同年一二月一一日付でした各申請(以下、同年一〇月二四日付申請を「本件第一の申請」、同年一二月一一日付申請を「本件第二の申請」といい、右各申請を合わせて「本件各申請」という。)に対してされたものであるが、立入区域は土地立入許可申請書の添付図面により特定されており、したがって、右各申請に対してされた本件各処分によって許可された立入区域も右申請書及び土地立入許可証により表示された地域のうち、右図面によって特定された区域に限られるのである。このことは、本件各処分及び公告において、各町及び各丁目「地内」と表示されていることからも明らかであって、立入区域が右各町及び各丁目の一部であることを示しているのである。

なお、土地立入許可申請書ないし許可書の文言と添付図面との不一致がある場合には、その一致する範囲で許可の効力が発生するものと解すべきである。

ところで51ないし72の原告らは本件第一の処分において右図面上で特定された立入区域に住居を有しないし、原告ら全員は本件第二の処分において右図面上で特定された立入区域に住居を有しない。

二  請求原因に対する認否

請求原因一の事実は認めるが、同二の主張は争う。

三  主張

1  本件各処分をするに至った経緯

(一) 本件第一の処分について

昭和四九年一〇月二四日被告に対して営団から同日付土地立入許可申請書が提出され、同月二八日被告は右申請を許可することとし、同年一一月六日営団に土地立入許可証を交付し、同日付東京都公報で公告した。

(二) 本件第二の処分について

昭和四九年一二月一三日被告に対して営団から同月一一日付土地立入許可申請書が提出され、同月一七日被告は右申請を許可することとし、同月二五日営団に土地立入許可証を交付し、同日付東京都公報で公告した。

2  本件各処分の適法性

被告が本件各処分をするに際し考慮すべき事項は、事業が法第三条各号の一に掲げる事業であるかどうか、立入区域が必要な範囲であるかどうか、立入期間が必要な範囲であるかどうかの三点に限られるところ、本件各処分はいずれも右の要件を充たしているから適法である。すなわち、

(一) 本件事業の性格

営団が行う本件事業は、法第三条第八号に該当する事業であって、事業準備のための土地立入許可処分の対象となるものである。

(二) 立入区域の必要性

立入区域の範囲の必要性を判断する一般的な許可基準はないが、過去の許可例を参考にしながら、具体的事案毎に、申請に係る事業の性格、本件事業の施行予定地の状況を総合的に検討して決定した。営団が立入許可を受けて行う調査、測量等の具体的内容は、立入区域内に車庫及び引込線(以下「本件車庫」「本件引込線」という。)を建設するため土地建物等の現況及び平面を測量するものであるが、申請に係る立入区域は、営団の申請書添付の図面によれば、おおむね幅約二〇〇メートルの帯状の地域であり、数か所において若干の広がりがみられる。被告は右図面及び営団の説明により右図面に示された区域を本件事業の準備のための立入区域として必要な範囲と認めたのであるが、その際考慮した事項は、次のとおりである。

イ 被告において過去に立入を許可した地下鉄建設事業においては、計画予定線を中心にして狭い所で幅約二〇〇メートル、広い所で約六〇〇メートルとなっていること、起業者は、事業計画作成のための資料となる施行予定地の実測平面図(現況平面図)を作成することとなるが、地下鉄建設事業の場合事業が大規模でその影響する範囲も広いので、単に計画予定線上の土地・物件のみでなく、ある程度の広がりを持った地域の中の土地・物件の状況を把握する必要があること

ロ 工事施行認可の際必要とされる線路実測図は、縮尺二五〇〇分の一以上で、線路の左右それぞれ二〇〇メートル以内の地勢、市街、村落、公園、道路等を記し、都府県郡市町村の境界及び方位を示すことになっていること(地方鉄道法第一三条、同法施行規則第一一条)

ハ 立入区域が住宅密集地である場合には、測量の技術上(測量のため必要なポイントの見通しがきかないなど)、また、一般に水道下水道管等の埋設物が複雑であることなどの理由から相当な範囲が必要とされること

ニ 右水道管・下水道管(特に、本件車庫の予定地の防衛庁敷地内には幹線下水道管が埋設されている)の切廻しに当たり、付近の道路状況についての測量が必要であるため、それに要する区域を含めたこと

ホ 土地の適正かつ合理的な利用を図るため、計画予定線付近の地形・工作物の測量に必要とされる区域を含めたこと

ヘ 工事施行方法等の技術的な検討のため及び地表部分の利用等の検討のために必要とされる区域を含めたこと

以上のような事項を考慮した結果、被告は、営団の申請に係る立入区域は、本件事業の準備のために必要な範囲であると認めたものである。

(三) 立入期間の必要性

立入期間に関する一般的基準はないが、本件各処分の場合に三か年としたことは、計画段階の立入許可であること、対象地の地形が複雑であり調査に当たり技術上困難が伴うこと、営団が立入測量に当たり地元住民との協議を行うこと等を総合的に判断して、三か年は必要な期間であると認めたものである。

第四被告の主張に対する原告らの認否及び反論

一  原告らの認否

1  第三の一のうち、51ないし72の原告らが本件第一の処分の被告の主張する立入区域に住居を有しないこと、原告ら全員が本件第二の処分の被告の主張する立入区域に住居を有しないことは認める。しかし、51ないし63の原告らは本件第一の処分で立入区域として公告された各町丁目に、64の原告は本件第二の処分で立入区域として公告された町丁目に住居を有するから、立入区域内に住居を有するというべきである。その余の主張は争う。

2  第三の三1のうち、本件第一の処分については昭和四九年一一月六日、本件第二の処分については同年一二月二五日立入許可証が交付され、同日付東京都公報で公告されたことは認める。その余は知らない。

同2の主張は争う。

二  原告適格について

1  原告らのうち、北区に住居を有する1ないし64の原告らは、本件各処分による営団の立入を受忍すべき義務を負うものであり、立入によって住居の平穏等の利益が侵害される。

(一) 右原告らの占有

右原告らは、いずれも住所として表示された地に現に居住し、もって当該住居敷地部分、住居付随施設部分を占有している。

(二) 立入許可の効力の及ぶ範囲

法第一一条第二項の土地立入許可の効力の及ぶ範囲は公告によるものと解すべきである。

本件各処分の公告及び許可証の記載においては、各町丁目「地内」と表示されているが、各町丁目のどの部分と特に示されていないから、「地内」の用語自体には立入区域を特定する意味は持ちえず、立入区域としては各町丁目の全域に及ぶと解さざるを得ない。立入許可申請は法律上申請書によってすることを要する行為であるところ、法は申請書とは別に立入区域に関する図面の提出を要求しておらず、また立入区域を図面で特定することも要求していない。本件各申請に当たり提出された立入許可申請書と図面との間には契印はなく、申請書中に図面が添付されているとの記載もない。また右図面が住民に了知しうる状態に置かれたこともない。右図面は単なる参考資料にすぎず、申請行為の内容に影響を及ぼすものではない。したがって、各申請の際提出の図面で立入区域が画されいても、本件各処分の立入区域は公告で示された各町丁目の全域に及ぶ。そうでなければ住民は自己が立入を受忍すべき義務があるかどうか、また立入を拒否しうる正当な理由があるか否か判断ができないことになる。そして右各公告によれば、1ないし63の原告らは本件第一の処分の立入区域に、64の原告は本件第二の処分の立入区域に住居を有する。

2  原告らは、本件地下鉄七号線沿線の住民で、本件車庫の予定地である自衛隊赤羽駐屯地(旧TOD第二地区)を東京都震災予防条例第三七条による「避難場所」に指定されている者であって、右地下鉄七号線付近の環境の保持の向上について共通した利害関係を有しているところ、右地下鉄建設により、安全な「避難場所」がなくなるほか、地盤沈下、地下水枯渇、崖くずれ、家屋の損傷等原告らの生命、身体、財産に対する侵害が極めて明白であり、本件各処分により原告らに甚大な権利侵害が生ずる蓋然性が極めて強くなるというべきであるから、本件各処分の取消しを求める利益がある。

3  本件各処分が都市計画法に違反し、適法な事業準備としての要件を備えていないことは後記三2記載のとおりであるが、都市計画法第一六条、第一七条等の規定により原告らは利害関係人として、本件地下鉄七号線の建設計画の各段階においてその意見を述べ得る立場にあり、被告もこれを尊重しなければならないことはいうまでもない。したがって、、本件各処分は、都市計画法上原告らに保障された権利を奪うことになるから、原告らは本件各処分の取消しを求める利益がある。

三  本件各処分の違法事由

本件各処分は、次の理由により違法である。

1  事業準備のための土地立入許可に当たっては、当該事業が形式的に法第三条各号の一に掲げる事業に該当するという形式的要件と当該具体的特定の事業が公共の利益に合致するという実質的要件(具体的公共性)の両者を必要とする。そもそも法は公共の利益となる事業のために必要な土地取得に関する手続を規定するものであって、公益性の認められない事業について法は適用されない(法第二〇条第四号参照)。したがって、法第一一条の土地立入許可についても公益性が明らかに認められない事業について適用されないことは自明の理であるから、法第三条各号の一に掲げる事業に該当するだけでは足りず、公共の利益となる事業であるという実質的要件を充足しなければならない。

しかしながら、本件各処分は右の実質的要件を充たしていないから違法である。

(一) 一般に、地下鉄には公共性は認められない。地下鉄の路線を計画し、建設する立揚の「地下鉄公共性論」は、昭和四七年三月一日の都市交通審議会の運輸大臣に対する答申「東京圏高速鉄道網整備計画」に求めることができる。しかし、その内容の第一の通勤輸送の確保の点は、私的利潤を追及する企業に奉仕するもので、公共性とは何のかかわりもない。第二の地下鉄の高速性と輸送力の大量性の点は、実体の乏しい空疎な看板にすぎない。すなわち、住宅と職場を発着地として、その間の乗換え等の各段階の過大歩行とその時間を全体として考えれば、地下鉄の高速性は実際には失われている。このように、地下鉄公共性論は、資本の要請に応じ、これに奉仕する議論であるが、住民の立場からすると、地下鉄工事及び開通後の走行は、災害、公害の発生源であって、住民の健康を害し、環境を破壊する危険極まりない施設にほかならない。

仮に、一部住民の犠牲を強いても建設せざるを得ないとすれば、地域住民との十分な話合い、公聴会等民主的手続を履践し、その手続の中でその建設の必然性の問題が十分明らかにされなければならず、このような手続が履践されていない建設計画には合理性がなく、公共性を認めることができない。

(二) 本件車庫・引込線についても具体的公共性は存在しない。すなわち、第一に、交通需要の実態からみて、本件引込線沿線の需要は現在の交通機関で十分まかなえており、将来、人口増加をきたす地域開発の余地もないから、右引込線の必要性はない。第二に、車庫・引込線用地の地盤は極めて軟弱であるうえ、その幅員は狭隘でその両側に人家が密集しているから、このような地域で地下鉄建設工事をすると地盤沈下、崖くずれ、地すべり等が生ずる危険が明らかに予測され、また本件車庫用地は災害時の住民の緊急避難場所であり、工事中は当然に、また車庫完成後も安全な避難場所たり得なくなり、住民の生命と生活の安全が脅かされる虞がある。第三に、営団の独自計画たる本件車庫・引込線の策定について、住民の同意をうる民主的手続はとられていない。北区議会における審議は、すべて営団の主導の下に行われ、強行採決という強行手段によって営団の計画を追認したもので、住民参加の実態はなく、全く形式的なものにすぎない。第四に、公益性の判断には、まず都市計画に合致するか否かが問題とされねばならないところ、本件車庫・引込線については都市計画決定もされていないから、営団の計画があるにしても、いわば営団の私的な願望に過ぎず、公益性は存在しない。

以上のとおり、営団の計画には具体的公共性を認めることはできないから、本件各処分もまた実質的要件を充たしていないというべきである。

2  都市計画において定められている都市施設の区域外においては、当該施設の整備に関する事業の準備のための法第一一条第二項による立入許可処分は許されないと解すべきところ、本件車庫・引込線は都市施設として都市計画に定められた区域外であるから、本件各処分は違法である。

(一) 本件地下鉄七号線のような都市高速鉄道は、都市計画において都市施設として定めなければならないのであるが、営団が運輪大臣に免許申請中の本件地下鉄七号線は都市計画に適合しないから、その建設事業は違法な都市計画事業である。すなわち、地下鉄七号線は、都市計画において定められた都市施設であって、その建設は都市計画事業として施行されるべき事業であるが、営団の本件車庫・引込線の路線計画は、都市計画決定された地下鉄七号線についての計画図の路線の区域外であるから、違法な路線計画である。すなわち、地下鉄七号線は、昭和三七年八月二九日上大崎二丁目~岩渕町一丁目間延長二〇・七二キロメートルと都市計画決定されている(建設省告示二一八七号)が、営団が運輸大臣に対して事業免許を申請した本件地下鉄七号線目黒~桐ヶ丘間全長二二・二キロメートルのうち、本件車庫・引込線に該当する岩渕~桐ヶ丘間については、右建設省告示における都市計画施設の区域には含まれていない。

(二) 都市計画施設の区域外において当該施設の建設に係る都市計画事業を施行しようとする場合は、都市計画が変更されて都市計画施設の区域内となった後でなければ実施できない。前記のように本件地下鉄七号線は都市計画に適合していないから、営団は本件地下鉄七号線の路線計画を都市計画に適合するように修正するか、あるいは都市計画を変更して右路線計画と合致するようにしなければ、都市計画事業として施行できない。しかるに、営団が免許申請中の本件地下鉄七号線に関しては都市計画変更の手続をとっていない。

(三) 都市計画法第一一条第一項によれば、建設する必要がある都市施設はすべて都市計画に定めなければならないと解すべきである。もし、都市計画決定なしに地下鉄が建設できるとすると、住民等第三者に都市施設の存在を明示すべき都市計画法第一一条第二項、第一四条第二項の趣旨が没却されることになる。また、都市高速鉄道は、都市計画法第一五条第一項第三号、同法施行令第九条第二項第二号によって広域の見地から決定すべき都市施設又は根幹的都市施設として定められており、かつ、同法第一八条第三項、同法施行令第一四条第二号ロによって国の利害に重大な関係がある都市施設として、都市計画決定に当たって建設大臣の認可が必要であって、都市計画の内容の重要事項をなすべきものであるから、都市計画の決定・変更なしに建設できるものではない。都市計画に適合しない本件事業を都市計画事業として施行しないでよいものとすると、都市計画法第六一条を回避することになるばかりでなく、都市計画の決定・変更手続をも回避することになる。また、都市施設についての都市計画は、必要とされる全区域についてされるべきで、一部の区域は都市計画なくして都市施設を建設できるというようなことは、一体的・総合的整備を図ろうとする都市計画法の予定するところではない。

(四) 都市計画決定された都市施設の区域外に対する事業準備のための立入は、都市計画が変更され、都市計画施設の区域内となった後にはじめて許される。すなわち、都市計画区域内における地下鉄の建設に当たっては、都市計画法がまず適用されるのであって、法の規定が都市計画法に先立って直接適用されることはない。都市計画事業については同法第六九条によってはじめて法の規定が適用されるのであって、法の規定が都市計画法の規定に先立って適用されることはない。もし都市計画の変更もないのに法第一一条第二項の許可が与えられるとすれば、都市計画法第二五条、第二六条の規定を設けた趣旨が無視されることになる。

(五) 都市計画法は、都市計画決定・変更について公聴会の開催、案の縦覧、住民等からの意見書の提出、都市計画地方審議会への付議等住民の意見を尊重しこれを反映さすべき手続を定めている(同法第一六条及び第一七条)のであって、都市計画決定手続を潜脱した本件各申請に対しされた本件各処分は、都市計画法上原告ら地域住民に保障された権利を奪うこととなる。

3  本件各処分はそれぞれ、また他の立入許可処分と重複してされているから、立入区域、立入期間はその必要性を欠き違法である。

(一) 被告は、本件地下鉄七号線に関し本件各処分の前後に、別紙記載のとおり昭和四七年一一月四日付、同四八年一月一九日付、同五〇年一月一八日付で法第一一条第二項の規定による土地立入許可処分をした。

(二) 前述のとおり、右各処分は公告において立入区域として特定された各町丁目の全体に及ぶから、本件各処分は別紙記載のとおり重複してされたことになる。すなわち、北区岩渕町、赤羽一丁目は実に四回にわたり立入区域とされ、立入期間も重複している。また、本件各処分の有効期間内に重ねて同一町丁目に同一の処分をすることは許されないから、新たに同一町丁目に同一処分をするには、従前の処分を取り消して重複状態を消滅させてはじめて有効にしうるものである。したがって、昭和五〇年一月一八日付立入許可処分がされたことにより、本件各処分は取り消されるべきである。

4  本件各処分に示された立入区域は必要性を欠いているから、本件各処分は違法である。

(一) 被告が本件各処分をするについて立入区域の必要性の判断資料としたのは、営団職員の口頭説明のみであり、被告は、営団の申請をそのまま許可したものであって、実際に立入区域の必要性について行う実質的判断をしていない。

(二) 被告は立入区域として幅約二〇〇メートルの帯状の地域で、数か所において若干の広がりをもった部分を必要な範囲と主張するけれども、幅二〇〇メートルの合理的根拠はない。

地方鉄道法第一三条、同法施行規則第一一条にいう線路実測図においては線路を挾んで左右合計四〇〇メートルの地形等を示すことを要求しているから、被告主張の根拠とはならないし、線路実測図作成のためであれば本件各処分では不十分である。また、事前調査の段階で求められる平面測量は線路予想中心線の両側各五〇メートルないし八〇メートルにわたるのみであるから、本件各処分の立入区域は必要性を超えている。

(三) 被告は、被告主張第三の三2(二)ハホヘについて、現実には何ら具体的な事項を考慮していない。

(四) 営団の申請した立入区域には、二〇〇メートルの幅を超えたり、あるいはそれ以下の部分が随所にある。このような幅の増減の理由も全く明らかでない。

5  本件各処分に示された立入期間は必要性を欠いているから、本件各処分は違法である。

(一) 被告は立入期間についても営団から資料を求めたり、あるいは独自に調査するなど何ら実質的判断をせず、漫然と営団の申請をそのまま許可したものであるから違法である。

(二) 昭和四七年一一月四日付及び同四八年一月一九日付立入許可処分においては、立入期間はいずれも二年とされている。しかも営団は昭和四八年一月下旬ころ国鉄引込線跡地周辺において立入測量を開始したが住民の反対にあうや同年五月下旬ころ測量を中止し、その後は測量、調査をせず、立入権を行使していない。与えられた立入権を行使せず、自ら放棄しておきながら、改めて三年間立入を認める必要性は全くない。また従前の例に比しなぜ三年の期間が必要なのか、その合理的根拠を見出すことはできない。

6  本件各処分は、次に述べるように事業の準備のため測量又は調査をする必要がないから違法である。

(一) 本件各処分によりなすべき測量、調査は存在しないから、事業準備の必要性を欠く。すなわち、

法第一一条による立入は平面図作成のための測量等及びそのための軽易な仮杭を建植する程度にとどまるものであるが、営団は昭和四八年一月下旬ころ国鉄引込線跡地周辺において立入測量を開始したから、右測量により同条で許される測量等は終了した。

また、営団は昭和四九年一〇月二八日、本件地下鉄七号線の北区内全線の平面縦断面図等作成のためのボーリングによる地盤調査、試掘調査等の実施は本件地下鉄七号線の事業免許がおりた後行う旨関係住民に対し文書で約束しているから、このような調査が法第一一条の調査に含まれるとしても、事業免許は与えられていない現時点におて、立入調査すべき内容は存在しない。

(二) 前述のように、本件車庫・引込線は、地下鉄七号線に関する都市計画施設の区域外であって、都市計画決定区域外に地下鉄が建設されることはあり得ない。したがって、法的前提条件を欠く段階においてされた本件各処分は、事業準備の必要性を欠く。

(三) 本件各処分は、地下鉄建設に地質上不適な土地を対象とする違法な路線計画に基づくものであるから、事業準備の必要性を欠く。

本件各処分において立入区域として示された国鉄引込線跡地、本件車庫の予定地は、一見して地形・地質上、地下鉄建設には適しない地域である。国鉄引込線跡地周辺の地形は低地と台地が複雑に入り乱れており、低地の地盤は極めて軟弱である。また本件車庫の予定地は台地に囲まれた低地でこれまた地盤が極めて軟弱である。

ところが営団の計画では、右のような地形・地質の条件や人家の稠密状態を度外視し、国鉄引込線跡地は一一ないし一二メートル、本件車庫の予定地付近は二〇数メートル掘削し、地下鉄建設工事を実施するというのであるから、右工事あるいは完成後の電車の往来による振動によって地盤沈下、地下水枯渇、崖くずれ、家屋の損傷等の危険の発生が予想される。したがって路線計画自体が違法不当なものであるから、かかる違法不当な路線計画を進めるにつき事業の準備の必要性はありえないといわなければならない。

(四) 本件各処分は、災害時の避難場所を毀滅する違法な車庫計画に基づくものであるから、事業準備の必要性を欠く。

本件車庫の予定地である自衛隊赤羽駐屯地は、東京都震災予防条例第三七条により避難場所に指定されている。営団の車庫建設計画によれば、建設中は勿論、建設後も一部は避難場所としての機能を毀滅することが明らかである。かくて自衛隊赤羽駐屯地は避難場所としての条件を満たすことができず、同所を避難場所とする北区住民一〇万四〇〇〇人は災害時に生命の安全が保ちえなくなる。東京都震災予防条例施行規則(昭和四七年四月一日東京都規則八五号)第六条第二号は、避難場所はその内部において震災時に避難者の安全性を著しく損なう虞のある施設が存在しないことを条件としている。したがって、右車庫計画は東京都震災予防条例、同施行規則に抵触する適法なものであるから、違法な車庫計画を進めるについて事業の準備の必要性はありえないといわなければならない。

(五) 本件各処分は、東京における自然の保護と回復に関する条例(昭和四七年東京都条例第一〇八号。以下「自然保護条例」という。)に定める開発許可を受けていない違法な車庫、引込線計画に基づくものであるから、事業準備の必要性を欠く。

自然保護条例及び同条例施行規則(昭和四八年東京都規則第八五号)によると三万平方メートル以上の開発は自然環境保全審議会の審議を経て知事の許可を受けなければならないとされている。営団の本件車庫・引込線計画は、車庫のみでも約三万三四〇〇〇平メートルの用地が予定され、都市計画決定もされていないから、自然保護条例に定める知事の許可を受けなければならない開発行為であるが、営団は許可申請をせず、被告も自然保護の観点から検討もせず本件各処分をしたものである。このように自然保護条例に定める手続、許可を経ていない車庫、引込線計画に基づく違法な事業計画について事業の準備の必要性はありえないといわなければならない。

(六) 本件各処分は、都市計画事業の公園を対象とする違法な路線計画に基づくものであるから、事業準備の必要性を欠く。

国鉄引込線跡地は、昭和三七年一二月二二日付建設省告示三一九一号により公園として都市計画決定があった地域である。営団の計画どおり本件引込線が建設されると、工事中は勿論、工事完成後も公園としての機能が滅殺されることは明らかである。したがって営団の路線計画は都市計画決定に抵触するとともに、公園の存在によって受ける関係住民の生活上の各種の利益を侵害する違法なものであり、かかる違法な路線計画について事業の準備の必要性はありえないといわなければならない。

第五原告らの反論に対する被告の認否及び主張

一  被告の認否

1  第四の二1のうち、1ないし50の原告らが本件第一の処分により立入受忍義務を負うこと、本件各申請に当たり提出された立入許可申請書と図面との間に契印がないことは認めるが、その余の主張は争う。

2  同2のうち、原告らは本件車庫の予定地である原告ら主張の場所を避難場所に指定されている者であることは認めるが、その主張は争う。

3  同3の主張は争う。

4  第四の三1の主張は争う。

5  同2のうち、地下鉄七号線につき原告ら主張のように都市計画決定されていること、営団が運輸大臣に対して事業免許を申請した地下鉄七号線のうち本件車庫・引込線部分は都市計画区域に含まれていないこと、都市計画変更の手続を経ていないことは認める。その主張は争う。

6  同3(一)の事実は認める。ただし、昭和四七年一一月四日付と主張する許可は同年一〇月三〇日、同四八年一月一九日付と主張する許可は同月一八日に許可されたものである。また、立入区域は各町丁目の全域ではなく、その一部である。(二)の主張は争う。

7  同4の主張は争う。

8  同5のうち、昭和四七年一一月四日付、同四八年一月一九日付各公告に係る立入許可処分において立入期間は二年であったこと、国鉄引込線跡地周辺において立入測量を開始したが住民の反対で中止したこと、その後は測量、調査をしていないことは認めるが、その余は争う。立入測量を開始したのは昭和四七年一二月上旬であり、中止したのは同四八年二月上旬である。

9  同6(一)のうち、営団が国鉄引込線跡地周辺において立入測量を開始したこと、原告ら主張のような約束をしたことは認める。その主張は争う。同(二)のうち、本件車庫・引込線は地下鉄七号線に関する都市計画決定区域外であることは認めるが、その主張は争う。同(三)のうち、国鉄引込線跡地周辺の地形は低地と台地が入り乱れていること、本件車庫の予定地の一部は台地に囲まれた低地で地盤が軟弱であることは認める。その余の事実は知らない。その主張は争う。同(四)のうち、本件車庫の予定地が避難場所に指定されていることは認める。その主張は争う。同(五)のうち、本件車庫の予定地の面積が約三万三四〇〇平方メートルであること、本件車庫・引込線計画が自然保護条例に定める許可を受けていないこと、被告が自然保護の観点を勘案することなく本件各処分をしたことは認める。その主張は争う。同(六)のうち、国鉄引込線跡地について原告ら主張のように公園として都市計画事業の決定があったことは認める。その主張は争う。

二  被告の主張

1  立入区域について

(一) 法第一一条第二項の土地立入許可処分の効力は、都道府県知事(以下「知事」という。)の立入許可によって生ずるのであって、その後にされる公告によって生ずるものではない。けだし、法第一一条第三項は、同条第四項又は第一二条第二項の知事又は市町村長の通知又は公告があったことを必ずしも前提としないで、ただ単に知事の許可を受けた起業者は土地に立ち入ることができる旨規定していること、法第一一条第二項の許可を受けないで土地に立ち入った起業者に対しては罰則が規定されている(法第一四三条第一号)にもかかわらず、右の許可は受けたが、法第一一条第四項・第一二条第一項又は同条第二項の通知又は公告のされる前に立ち入った起業者に対しては罰則が規定されていないこと、実質的にみても、知事又は市町村長の手続不履行の結果、正当な手続を履践した起業者が立ち入ることができないとするのは不当であること、などの理由から判断して、起業者の立入権及び土地占有者の立入受忍義務は、知事の許可証の交付により発生するものと解すべきである。

そうすると、土地立入許可の後にされる知事の土地占有者への通知又は公告は、既に発生した土地立入許可の効力に基づいて起業者が具体的に立入権を行使する前提要件にすぎないものと考えられるのである。

したがって、仮に右の公告に立入区域の特定について不充分な点があり、これが公告の瑕疵になるとしても、それは立入許可処分の効力には何らの影響をもたらさないのである。

(二) しかして、本件各処分は、営団の図面が付されて提出された土地立入許可申請書に対し、被告が土地立入許可証を交付することによってされたものであるから、その効力の及ぶ地域的範囲も右の申請書、添付図面、許可証によって特定された区域に限られるのである。

(三) 立入区域の表示方法について、土地収用法施行規則(昭和二六年一〇月二七日建設省令第三三号。以下「規則」という。)第一条第三項は土地立入許可証の様式を定めているが、この様式の備考二において、「『立ち入ることができる土地の区域』については、土地登記簿又は土地台帳の記載によること。ただし、土地登記簿又は土地台帳に記載がないとき又は広範囲にわたる場合等で土地登記簿又は土地台帳によることが適当でないときは、郡、市、区、町村、大字及び字の名称によること。」と規定されている。

本件の立入区域は広範囲にわたるため、右の規定に基づき立ち入る土地の個々の地番を表示せず、字(東京都区部においては町、丁目)の表示までにとどめたものである。

2  都市計画決定と本件各処分との関係について

(一) 法第三条各号の一に掲げる事業の準備のためにする土地立入許可については都市計画決定を必要としない。

すなわち、法第一一条第二項による土地立入許可は、同法「第三条各号の一に掲げる事業の準備のため」(同条第一項)に認められるのであるから、本件事業のように法第三条第八号に明文上規定されているものについては、都市計画決定があるかどうかにかかわりなく、土地立入許可をすることができるのである。

これに対して、法第三条各号に該当しない事業については、都市計画決定がされることによって、はじめて法の規定が適用されるから(都市計画法第六九条)、法第一一条に定める土地立入許可をうけるためには、都市計画決定がなければならないのである。

しかし、前述のとおり、本件事業は、はじめから法第三条第八号に規定されている事業なのであるから、その車庫・引込線部分について都市計画決定がされていないとしても、法第一一条により本件各処分をすることができるのであって、右車庫・引込線が都市計画施設区域外であることは、何ら本件各処分の瑕疵となるものではない。

(二) なお、原告らは、地下鉄等の都市高速鉄道は、都市計画決定がなければ建設できないと主張する。しかし都市計画には、都市計画法第一一条第一項各号に定める都市施設のうち都市計画決定権者が必要と認めるもののみを定めるのであって、そのすべてが含まれるものではない(都市計画法第一一条第一項)。

また、ある事業を都市計画事業として施行するかどうかは、都市計画決定権者が独自に決定しうるところであって、都市計画決定がなければ当該事業がすべて実施できなくなるわけではない。すなわち、本件事業のうち車庫・引込線部分についていえば、営団が右事業を行うためには、地方鉄道法の定める手続を履践するのであれば、必ずしも都市計画決定が必要とされるものではない。

したがって、都市計画決定の有無とかかわりなく、営団は、右事業のために必要であるとして法第一一条第一項により土地立入許可申請をすることができるのであり、また、被告は、右申請に対して同条第二項により許可することができるのである。そして、被告は、本件各処分にあたり、本件事業の車庫・引込線部分について都市計画決定がされているかどうかを考慮する必要はないのである。

3  原告らの第四の三3の主張について

昭和四九年一一月六日付公告と昭和五〇年一月一八日付公告との双方に立入区域として「岩渕町・赤羽一丁目・赤羽三丁目・赤羽北一丁目地内」の区域が、又昭和四九年一二月二五日付公告と昭和五〇年一月一八日付公告との双方に立入区域として「赤羽台四丁目地内」の区域が表示されているが、これは右の区域が立入区域として重複していることを示すものではない。

すなわち、立入区域は右の区域の地内であり、その具体的地域は、被告が許可した営団の立入許可申請書の添付図面に表示されており、これによればいずれの場合も立入区域は重複していない。なお、昭和四七年一一月四日付公告(岩渕町より車庫部分に至るいわゆる車庫線部分)と昭和四九年一一月六日付公告(同)との関係、及び昭和四八年一月一九日付公告(目黒方面より岩渕町に至るいわゆる本線部分)と昭和五〇年一月一八日付公告(同)との関係は、おおむね同一の区域についての立入期間の更新に関するものである。

4  原告らの第四の三6(二)ないし(六)の主張について

原告らの主張する事由は、いずれも本件各処分の要件にかかわりなく、許可権者たる被告が法律上考慮すべき事項ではないから、右事由を本件各処分の違法事由とする原告らの主張は理由がない。

第六証拠関係《省略》

理由

一  原告適格について

1  被告は、本件各処分の立入区域の範囲は立入許可申請書、同添付図面、立入許可証により特定されると解すべきところ、51ないし72の原告らは本件第一の処分における立入区域に住居を有しないから、右原告らは右処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。また原告ら全員は本件第二の処分における立入区域に住居を有しないから、本件第二の処分の取消しを求める法律上の利益を有しない旨主張する。

51ないし72の原告らが本件第一の処分の被告の主張する立入区域に、原告ら全員が本件第二の処分の被告の主張する立入区域に、それぞれ住居を有しないことは、当事者間に争いがない。

これに対し、原告らは、立入許可の効力の及ぶ範囲は公告によって定まると解すべきであり、公告によれば51ないし63の原告らは本件第一の処分の立入区域に、64の原告は本件第二の処分の立入区域に住居を有すると主張する。

そこで本件各処分における立入区域の範囲について検討するに先立ち、まず一般的に法第一一条第二項の許可の効力の発生は、起業者に対する許可の告知によるか、あるいは同条第四項の公告によるかについて検討する。

法第一一条第一項は、第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査をする必要がある場合においては、起業者(起業者が国又は地方公共団体であるときを除く。)は、事業の種類並びに立入区域及び期間を記載した申請書を当該区域を管轄する知事に提出して立入の許可を受けなければならないとし、知事は同条第二項に掲げる事由がない限り立入を許可すべきものと規定し、起業者の土地立入の必要性と土地の占有者が立入によって受ける不和益との調整を図っているのであるが、他人の占有する土地への立入は、土地の占有者に受忍義務を生ぜしめるから、土地の占有者に土地の立入のあることを知らせるため、知事は右の許可をしたときは、一定の事項を土地の占有者に通知し、又はこれらの事項を公告するものとし(法第一一条第四項)、さらに実際に土地の立入をする場合には、立ち入ろうとする日の五日前までに、その日時・場所を市町村長に通知し、市町村長は直ちにその旨を土地の占有者に通知又は公告しなければならない(法第一二条第一項、第二項)とされている。

しかして、知事の許可の性質は、立入をする起業者のためにその権限を付与する行為であるから、起業者に対し許可のあったことが告知されれば、許可はその効力を生ずると解するのが相当である。このことは、法第一一条第三項が知事の許可を受けた起業者に同条第四項の通知又は公告を前提とせずに、土地立入の権限を付与していることからみても明らかである。

もっとも、右のように解すると、土地の占有者が立入許可のあったことを知らないうちに立入許可の効力が生ずることになるが、土地の占有者は、少なくとも、法第一一条第四項の規定による通知又は公告及び法第一二条第一項の規定による市町村長に対する通知があるまでは、立入を拒むことができると解せられる(法第一三条)から、この点は前記解釈の妨げとはならない。

したがって、起業者の土地立入権は起業者に対する許可の告知により生ずると解すべきであるから、立入区域の範囲も右許可によって示されているところにより決せられるというべきである。

2  そこで、本件各処分における立入区域の範囲について検討する。

《証拠省略》を合わせると、

営団は昭和四九年一〇月二四日土地立入許可申請書に立入区域を原告らの請求原因一1(三)のとおり記載し、立入測量区域申請図を添付して許可申請をしたこと、右申請図は三千分の一の地形図に各町丁目のうち立入区域を識別できるよう特定していること、右申請図によると立入区域は申請書に掲げられた各町丁目の一部であること、右申請図には赤羽西四丁目、赤羽台四丁目の一部も立入区域として表示されていたが、営団の不注意により申請書に右町丁目名を掲げなかったこと、そこで被告は右申請書に掲げられた各町丁目につき、その範囲は右申請図で特定されているとして同年一一月六日申請どおり土地立入を許可し、営団に許可証を交付したが(同日許可証が交付されたことは、当事者間に争いがない。)、許可証には立入区域として申請書と同じ記載がされたこと、昭和四九年一二月一一日営団は前回の申請で脱漏した赤羽西四丁目、赤羽台四丁目につき立入許可を申請することとし、土地立入許可申請書に立入区域を原告らの請求原因一2(二)のとおり記載し、前同様立入区域を特定するため立入測量区域申請図を添付して許可申請したこと、被告は同月二五日申請どおり土地立入を許可し営団に許可証を交付したが(同日許可証が交付されたことは、当事者間に争いがない。)、許可証には立入区域として申請書と同じ記載がされたこと、土地立入許可申請書の記載例につき、建設省の担当官の事務指導によれば、立入区域は土地登記簿又は土地台帳の記載によること、但し、土地台帳に記載がないとき、又は広範囲にわたる場合でこれによることが適当でないときは、適当な縮尺の平面図を添付し、郡、市、区、町村、大字及び字をもって表示することとされており、被告はこれを参考とし、従来から土地立入許可申請書の立入区域の表示は、「町丁目地内」と記載させ、添付図面によりその範囲を特定させる取扱いをしており、右申請を申請どおり許可する場合には立入区域の範囲は申請者と被告との間には明白であるので、許可証には図面を添付することはせず、許可証に申請書と同様町丁目地内と記載するにとどめていたことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

右認定の事実によれば、申請書に掲げられた「各町丁目地内」の表示は必ずしもその町丁目の全部を示すものではなく、具体的な範囲は添付図面において特定されており、被告の許可も右図面で特定された範囲についてされたことが明らかであるから、本件各処分の立入区域の範囲は被告主張のとおりと認められる。

3  これに対し原告らは、立入許可申請行為は申請書に記載して提出することを要する行為であり、法は申請書とは別に立入区域に関する図面の提出を要求しておらず、また立入区域を図面で特定することも要求していない。本件申請に当たり提出された図面は単なる参考資料にすぎず、申請行為の内容に影響を及ぼすものではないと主張する。

しかしながら、立入区域の範囲は、立入許可申請書と一体をなすものとして提出された添付図面を総合し特定されていれば足りると解すべきであり、法も図面等により立入区域の範囲を特定することを禁止しているものではない。前認定の本件各申請の際の経緯に照らせば、立入測量区域申請図と申請書との間に契印はないにしても(右の事実は、当事者間に争いがない。)、右図面が申請書の添付書類として提出され申請書と一体となるものであることは明らかである。よって原告らの右主張は理由がない。

4  そうすると、51ないし72の原告は本件第一の処分の立入区域に、原告ら全員は本件第二の処分の立入区域にそれぞれ住居を有しないというべきである。

しかして本件各処分により立入区域内の土地の占有者は土地立入りを受忍すべき義務を負うから、右立入区域内に住居を有する原告らは、右処分の取消しを求める法律上の利益を有するが、右立入区域内に住居を有しない原告らは、本件各処分により右のような受忍義務を負うことはないのであるから、右処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。したがって、51ないし72の原告らは本件各処分の、その余の原告らは本件第二の処分の取消しを求める法律上の利益を有しないものといわなければならない。

5  原告らは、本件車庫・引込線沿線の住民で、本件車庫の予定地を東京都震災予防条例第三七条による「避難場所」に指定されている者であって、右地下鉄建設により、安全な「避難場所」がなくなるほか、地盤沈下等により原告らの生命、身体、財産等に対する侵害が極めて明白であり、本件各処分により原告らに甚大な権利侵害が生ずる蓋然性が極めて強くなるから、本件各処分を取り消す利益があると主張する。

しかしながら、本件各処分は、本件事業の準備のためにされるだけであって、具体的な地下鉄建設工事を許可したわけではないから、原告らの右主張は理由がない。

6  次に原告らは、本件各処分は、都市計画法上原告らに保障された権利を奪うことになるから本件各処分の取消しを求める利益があると主張する。

しかしながら、後に述べるとおり、本件車庫・引込線につき都市計画決定がないことは、本件各処分を妨げるものではなく、仮に右につき将来なされることがあるべき都市計画決定に関し、原告らが何らかの利害関係を有するとしても、本件各処分により原告らの地位が害されることはあり得ない。よって、原告らの右主張は理由がない。

二  原告らの請求原因一の事実は、当事者間に争いがない。そこで、本件各処分が違法かどうかについて判断する。

1  原告は法第一一条第二項の許可に当たっては、当該事業が形式的に法第三条各号に定める事業に該当するという形式的要件と当該事業が公共の利益に合致するか否かの実質的要件の両者を必要とするところ、本件各処分は右の実質的要件を充たしていないから違法であると主張する。

しかしながら、法第一一条は、第三条各号の一に掲げる事業は、事業の性質上それ自体類型的にみて公益性があるという理由から、形式的に同条各号の一に掲げる事業に該当すれば、これらの事業の起業者は、所定の手続を踏んだうえ事業の準備のために他人の土地に立ち入ることができるとしたものと解するのが相当である。もとより、現実に土地を収用し、又は使用するためには、当該事業が法第三条各号の一に該当するほか、実質的要件として土地を収用し又は使用する公益上の必要がなければならない(法第二〇条参照)が、それは土地の立入許可の要件とは別個の問題であり、立入許可につき右の実質的要件を要求することは法第一一条第二項の文理に反するといわねばならない。

しかして、本件事業が法第三条第八号に掲げる地方鉄道に関する事業に該当することは明らかである。よって、原告らの右主張は理由がない。

2  原告らは都市計画において定められている都市施設の区域外においては、法第一一条第二項による立入許可処分は許されないと解すべきところ、本件車庫・引込線は都市計画で定められた都市施設の区域外であるから、本件各処分は違法であると主張する。

しかしながら、都市計画法第一一条第一項は、都市施設に関する都市計画には当該都市計画区域における次の各号に掲げる施設で必要なものを定めるものとするとし、都市高速鉄道等を列挙しているのであるから、都市計画決定権者は、都市高速鉄道(地下鉄はこれに該当する。)のすべてを都市施設として定めなければならないものではなく、都市計画決定権者が必要と認めるもののみを定めれば足りることは明らかである。すなわち、都市施設に関する都市計画の最大の効果は、都市計画事業としてそれを整備することとなることであるから、都市計画事業として都市施設の整備を行う必要がなければ、都市施設として定める必要はないのである。そして地下鉄を都市施設として定めるかどうかは、都市計画決定権者の判断に委ねられるから、地下鉄の建設がすべて都市計画に定められた上で施行されると限らないことは、いうまでもない。

原告らは、都市計画決定なしに地下鉄が建設できるとすると、都市計画法第一一条第二項、第一四条第二項の趣旨が没却されると主張する。

しかしながら、同法第一一条第二項は都市施設を都市計画に定める場合の記載事項を規定したもの、同法第一四条第二項は計画図及び計画書における都市計画施設等の区域の表示方法を定めたものにすぎず、これらの規定から、直ちに都市施設をすべて都市計画で定めなければならないという解釈を導き出すことはできない。

また、都市高速鉄道が、広域の見地から決定すべき都市施設又は根幹的都市施設の一に掲げられていること(同法第一五条第一項第三号、同法施行令第九条第二項第二号)、国の利害に重大な関係がある都市計画の一に掲げられており、その決定をしようとするときは、あらかじめ建設大臣の認可を必要とすること(同法第一八条第三項、同法施行令第一四条第二号ロ)は原告らの所論のとおりであるが、都市高速鉄道のすべてを都市計画に定める必要のないことは、前述のとおり同法第一一条第一項の規定に照らし明らかである。

原告は、本件事業を都市計画事業として施行しないでよいとすると同法第六一条を回避することになると主張する。しかし、同条は都市計画事業の認可等の基準を定めたものであるから、都市高速鉄道であっても、都市計画事業として施行する必要のないときは、同条の適用の余地のないことは当然である。

しかして、法第一一条第二項の規定による立入は、法第三条各号の一に掲げる事業の準備のために認められるものであって、都市計画決定の存在することはその許可の要件とされていないのであるから、本件事業のように法第三条第八号に該当する事業については、都市計画決定の有無にかかわらず、法第一一条第二項の要件を充たす限り、知事は許可しなければならないと解すべきである。

原告らは、都市計画法第六九条によりはじめて法の規定が適用されるのであって、法の規定が都市計画法の規定に先立って適用されることはないと主張する。

しかしながら、法によれば都市計画事業のすべてについて法の規定が当然に適用されることはないところから、都市計画法第六九条は、都市計画事業のための土地等の収用又は使用について法の規定を適用できるよう都市計画事業を法第三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなすこととしたにすぎないものであって、本件事業のようにそれ自体法第三条第八号に該当する事業については、都市計画法第六九条とは無関係に、直接、法第一一条の規定が適用されることは当然である。そして都市計画法第二五条と法第一一条とはその適用範囲を異にするから、同条が適用されるからといって、都市計画法第二五条の規定を設けた趣旨が没却されるものではない。よって、原告らの右主張は理由がない。

3  原告は、本件各処分は重複してされているから、立入区域、立入期間の必要性を欠き違法であると主張する。

被告が本件地下鉄七号線に関し本件各処分のほか、昭和四七年一一月四日付公告に係る立入許可処分、同四八年一月一九日付公告に係る立入許可処分、同五〇年一月一八日付立入許可処分をしたことは、当事者間に争いがない。

しかしながら、前示のとおり立入区域の範囲は、原告らの主張するように公告に掲げられた町丁目の全部に及ぶのではなく、証可証に掲げられた町丁目の一部であり、その具体的範囲は右町丁目のうち営団の立入許可申請書の添付図面に表示されているとおりであるというべきである。

ところで、《証拠省略》を合わせると、昭和四七年一一月四日付公告に係る許可と本件各処分は、本件車庫・引込線に関するもの、昭和四八年一月一九日付公告に係る許可と同五〇年一月一八日付許可は目黒より岩渕町に至るいわゆる本線部分に関するものであって、立入区域、立入期間は重複していないことが認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。よって、原告らの右主張は理由がない。

4  原告らは本件各処分に示された立入区域は当該事業の準備のため必要な範囲を超えるから、本件各処分は違法であると主張する。

《証拠省略》を合わせると、

本件第二の処分において立入を許可された赤羽台四丁目、赤羽西四丁目地内については、本来本件第一の申請の際申請すべきものを脱漏したため追加して許可を得たものであって、立入区域、立入期間の必要性については本件第一の処分と本件第二の処分を一体として判断すべきものであること、営団の計画によれば、本件引込線は、国鉄赤羽貨物駅の東方岩渕旧都電終点付近を起点とし、右地点から西へ向い、国鉄線の下をくぐり、同駅西側にある八幡神社前から南西にカーブしながら伸びる国鉄引込線跡地(幅員一二メートルないし二〇数メートル)を利用し、西が丘三丁目と赤羽西六丁目の境界である補助二四三号線まで南下する線を計画予定線としていたこと、本件車庫の予定地は、当初の計画では西が丘三丁目の旧TOD第一地区であったが、本件各申請時には赤羽西五丁目の現陸上自衛隊十条駐屯地赤羽地区(旧TOD第二地区)付近の約三万三四〇〇平方メートル(約一万坪)の土地に変更されていたこと、営団では本件各処分によって立入区域内の平面測量を行い、今後の事業を進めるうえにおいて基本的な図面である現況平面図(縮尺五〇〇分の一)を作成することを主たる目的としたこと、右現況平面図は立入区域内の地形、工作物のすべてを把握するため、地形の状況、道路の位置、幅員のほか、主要建物の名称、構造、電柱、マンホール、消火栓、止水栓、街路樹、ガードレールに至るまで漏れなく把握し、記入するものであること、右の作業を遂行するため立入区域としては計画予定線の中心から左右約一〇〇メートルないし一五〇メートルを必要とするのが通常であり、従来地下鉄路線建設のための立入許可についてはその程度の範囲について許可が与えられて来たこと、本件車庫・引込線については先に昭和四七年一一月四日付公告に係る許可がされている(右許可のあった事実は当事者間に争いがない。以下「前回の許可」といい、右許可に係る申請を「前回の申請」という。)が、立入区域の範囲は、本件各処分におけるそれとは必ずしも一致せず、本件各処分において改めて検討されたものであること、すなわち、営団の立入測量区域申請図によると赤羽台四丁目、赤羽台三丁目の一部が前回の申請に係る区域より広がっているが、星美学園と民地との間に崖の部分があるため地形を把握する必要があること、赤羽台四丁目、赤羽北一丁目は、前回の申請の際営団側の不注意により脱漏したものであること、赤羽台三丁目西側の前回許可に係る弧を描くような形の区域は、立入区域の範囲を現地において明確化するため直線に囲まれた区域としたこと、赤羽台三丁目から二丁目にかけて東側の部分が前回の許可に係る区域より広がっているが、国鉄引込線跡地が低地であるのに対し公道部分が台地であるため、道路の位置、状況を把握する必要があること、必らずしも国鉄引込線跡地を利用する案にかぎらず、北区議会で検討されたいわゆる団地中央通り案による通過地附近の状況も把握する必要があること、また本件車庫の予定地が変更されたこともあって、付近の崖、よう壁の位置や地形の状況を把握する必要があること、前回の許可では板橋区蓮沼町、清水町地内が含まれていたが、清水町については本件車庫の予定地の変更により必要がなくなったこと、蓮沼町については計画予定線の中心と区境の道路までは五、六〇メートルしかないがその間は平坦な地形であり、区境の道路まで現状を把握すれば足りること、本件車庫の予定地のやや中央には下水の幹線が西から東へ通っているから、その付替えを検討する必要があるが、起伏が大きいため西が丘一丁目付近まで公道を中心として広範囲な地形の現況を把握する必要があること、

以上の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》

ところで、立入区域及び立入期間については、それが当該事業の準備のために必要な範囲を超える場合を除いては、知事は、立入を許可すべく覊束されているところ、右認定の事実によれば、本件各処分で示された立入区域は幅約二〇〇メートルの帯状の地域で、数か所において若干の広狭があるが、右区域が本件事業の準備のために必要な範囲を超えていると認めることはできない。

原告は、被告は立入区域の必要性について何ら実質的判断をしていないと主張するけれども、その理由のないこと右認定のとおりである。

原告らは、平面測量は線路予想中心線の西側各五〇メートルないし八〇メートルにわたるのみであるから、本件各処分の立入区域は必要性を超えていると主張する。

しかしながら、《証拠省略》によれば、平面測量は、必ずしも右の範囲に限定されるものではないことが認められるから、右主張は理由がない。

よって、原告らの主張は理由がない。

5  原告らは本件各処分に示された立入期間は当該事業の準備のため必要な範囲を超えるから、本件各処分は違法であると主張する。

前記4で認定した事実に《証拠省略》を合わせると、

前回の許可に係る立入期間は二年であった(右の事実は当事者間に争いがない。)が、営団は、昭和四七年一二月ごろ測量に着手し、立入区域内の公道上等に基準となる杭又は鋲を打つ作業を始めたものの、住民の反対や北区、北区議会の要請により間もなく中止した経緯があり、したがって、最初から測量を行う必要があるが、住民の反対運動の動向からみてその了解を得るにはかなりの期間を必要とすることから、立入期間としては三年を必要とすると考えたこと、地下鉄八号線について被告が立入期間を三年として許可した例があること、

以上の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》

右認定の事実によれば、立入期間についても本件事業の準備のために必要な範囲を超えているとは認められない。

原告らは、被告は立入期間について何ら実質的判断をしていないと主張するけれども、その理由のないこと右認定のとおりである。

また原告らは、前回の許可により与えられた立入権を行使せず、自ら放棄しておきながら、改めて三年間立入を認める必要性は全くないと主張する。

しかしながら、前回の許可の際住民の反対等により測量を中止せざるを得なかったことは前認定のとおりであり、測量できたにもかかわらず営団があえてこれを放置していた事情はうかがうことができないから、原告らの右主張は理由がない。

6  原告らは、本件各処分によりなすべき測量、調査は存在しないから、本件各処分の必要性はないと主張する。

しかしながら、前回の許可後の測量は住民の反対等で中止したため最初から測量を行う必要があり、しかもそれは平面測量による現況平面図の作成を主たる目的とするものであって、本件各処分により測量、調査の必要があること前認定のとおりであるから、原告らの右主張は理由がない。

7  原告らは、本件各処分は、地下鉄七号線に関する都市計画決定区域外における違法な地下鉄建設計画に基づくこと、地下鉄建設に地質上不適な土地を対象とする違法な路線計画に基づくこと、災害時の避難場所を毀滅する違法な車庫計画に基づくこと、自然保護条例に定める開発許可を受けていない違法な車庫、引込線計画に基づくこと、都市計画事業の公園を対象とする違法な路線計画に基づくことを理由に事業準備の必要性を欠くから違法である旨主張する。

しかしながら、法第一一条第一項の立入許可の申請に対しては、知事は同条第二項に掲げる場合を除いては、立入を許可しなければならないものであって、原告らが主張するような右の事由は、本件各申請に対する許否に当たり被告が審査すべき事項には当たらない。よって、原告らの主張は主張自体理由がない。

8  したがって、本件各処分に原告ら主張の違法はないといわなければならない。

三  以上述べた理由により、51ないし72の原告らの訴え、その余の原告らの訴えのうち本件第二の処分の取消しを求める訴えは、いずれも不適当であるからこれを却下することとし、同原告らのその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三好達 裁判官 山﨑敏充 裁判官時岡泰は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 三好達)

〈以下省略〉

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