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東京地方裁判所 昭和49年(ヨ)2363号 決定 1974年10月30日

申請人

真部明雄

右訴訟代理人

杉本昌純

外二名

被申請人

東京都

右代表者

美濃部亮吉

主文

本件仮処分申請を却下する。

訴訟費用は申請人の負担とする。

理由

第一本件申請の趣旨および理由

一、趣旨

1  申請人が東京都水道局職員(主事)の地位にあることを仮に定める。

2  被申請人は、申請人に対し、昭和四九年一〇月一日以降毎月一五日限り、一か月金八〇、二四四円を仮に支払え。

3  訴訟費用は、被申請人の負担とする。

二、理由

1  申請人は、昭和四九年四月一日、被申請人から、「発令内容(採用)主事に任命する。一般事務の職務に従事することを命ずる。水道局給料表(二)四等級四号給を給する。北部第一支所勤務を命ずる。昭和四九年四月一日 東京都水道局長小原隆吉」との発令通知書および「発令内容(配属) 神楽河岸営業所勤務を命ずる。昭和四九年四月一日 東京都水道局北部第一支所長蓑田猪吉」との発令通知書の交付を受け、同日以降東京都水道局職員(但し、地方公務員法二二条一項の条件附採用職員)として神楽河岸営業所に勤務していた。

2  ところが、被申請人は、昭和四九年九月三〇日、申請人に対し、「発令内容(解職) 主事を免ずる。昭和四九年九月三〇日 東京都水道局長小原隆吉」なる発令通知書を交付した。

3  しかしながら、被申請人の申請人に対する本件解職は、次の理由により無効である。

(一) 本件解職は、申請人に解職さるべき事由がないにもかかわらずなされたものであるから、解職権の濫用である。

(二) 本件解職は、被申請人が申請人の全水道東京水道労働組合の組合員としての活動、とりわけ、被申請人水道局各営業所において活発に展開されている検針闘争に積極的に参加し活動したことを嫌悪し敵視してなしたものであるから、労働組合法七条一号に違反した不当労働行為である。

4  申請人は、被申請人から毎月一五日に一か月平均金八〇、二四四円の賃金の支払いをうけ、これを唯一の生計の資としていたものであるが、本件解職によつて右賃金の支払いをうけることができず、かつ、被申請人に雇用される職員としての地位をも否認されているので、その生活は危殆に頻し、保全されなければ著るしい損害をこうむる。

第二当裁判所の判断

本件疎明資料によれば、申請の理由1および2の事実が認められ、右事実からすれば、東京都水道局長小原隆吉は、昭和四九年九月三〇日、同日付をもつて申請人を解職する(主事を免ずる)処分をしたものというべきである。

ところで、地方公営企業労働関係法(以下、地公労法という。)三条二項は、地方公営企業職員の身分は、一般職に属する地方公務員であることを明らかにしている。もつとも、地方公営企業の営む事業内容等が私企業のそれと異らないことに鑑み、地方公営企業法(以下、企業法という。)三九条は、地方公営企業職員については地方公務員法の職階制、給与、勤務時間、その他の勤務条件等に関する規定は適用しないとし、また、企業法三六条は、地方公営企業職員の労働関係について地公労法の定めるところによるものとし、同法七条は職員の労働条件に関する事項を団体交渉の対象とした上それにつき労働協約の締結を認める等一般地方公務員とは異なつた取扱いをしている。しかし、前述したとおり、地方公営企業職員は、一般職に属する地方公務員であるから、原則として地方公務員法の適用を受けるものであり、同法所定の任用、分限および懲戒、服務等に関する規定が適用されるのである。そして、地方公務員法は、地方公務員の地方公共団体に対する勤務関係について、行政権によつて支配される権力関係として、これを公法的に規律している。

したがつて、申請人に対する本件解職の如き処分は行政処分としての性質を有し、行政事件訴訟法にいう「行政庁の処分」として抗告訴訟に服すべきものと解するのが相当である。

そうすると、本件解職は、右にいうところの行政庁の処分に該るから 行政事件訴訟法四四条により、これに対し民事訴訟法に規定する仮処分をすることは許されないものといわなければならない。

もつとも、本件解職に重大かつ明白な瑕疵があるためにそれが当然無効と認められる場合には、行政事件訴訟法四四条の規定にかかわらず、仮処分による救済が許されると解する余地もないではないが、本件において申請人が主張している事実だけでは、本件解職に重大かつ明白な瑕疵があるものとは認められない。

よつて、本件仮処分申請は、その余の点について判断するまでもなく不適法として却下すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(大西勝也 林豊 中田昭孝)

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