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東京地方裁判所 昭和43年(特わ)205号 判決 1968年8月06日

本籍

東京都文京区西片一丁目一〇番地

住居

同都同区西片二丁目四番三四号

医師

金井良太郎

明治二八年一二月三〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山同譲次出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を罰金一、七〇〇万円に処する。

右罰金を完納しないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

理由

(罰となるべき事実)

被告人は、東京都文京区西片二丁目四番三四号に居住し、同都台東区池ノ端一丁目四番二九号に金井整形外科診療所を開設して整形外科医を開業しているものであるが、自己の所得税を免れるため診療収入の一部を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年分の実際総所得金額は別紙一修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)記載のとおり三、二〇三万七、九〇二円であり、これに対する所得税額は別紙四税額計算書(昭和四九年分)記載のとおり、一、六八〇万七、七一〇円あつたにもかからず、昭和四〇年三月八日、同都文京区本郷五丁目一八番所在の所轄本郷税務署において同署長に対し、総所得金額は三六六万五、七〇一円でこれに対する所得税額は九五万四、九六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額一五八五万二、七五〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の所得税を逋脱した。

第二、昭和四〇年分の実際総所得金額は別紙二修正貸借対照表(昭和四〇年一二月三一日現在の分)記載のとおり三、五〇五万四、九三六円であり、これに対する所得税額は別紙四税額計算書(昭和四〇年分)記載のとおり一、八七九万四三〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年三月九日、前記本郷税務署において同署長に対し、総所得金額は五二一万九、六九七円でこれに対する所得税額は一六五万四、七三〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額との差額一、七一三万九、七〇〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の所得税を逋脱した。

第三、昭和四一年分の実際総所得金額は別紙三修正貸借対照表(昭和四一年一二月三一日現在の分)記載のとおり、三、四五〇万七、三一四円であり、これに対する所得税額は別紙四税額計算書(昭和四一年分)記載のとおり一、八三六万九、九四〇円であつたにもかかわらず、昭和四二年三月一〇日、前記本郷税務署において同署長に対し、総所得金額は八九〇万九、八七一円でこれに対する所得税額は三三七万三、九七〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額一、四九九万五、九七〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の所得税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、金井宏の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書

一、金原和枝、根本正光、丑山寿元、石井保司の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、押収にかかる手帳四冊(昭和四三年押第六一五号の一)、元帳三冊(同号の一三、一四、一五)、税金申告書控等一綴(同号の一六)、所得税確定申告書等計三綴(同号の一八、二〇、二一)、昭和三九年分所得税修正申告書一通(同号の一九)並びに青色申告者書類一綴(同号の二二)

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書四通並びに検察官に対する供述調書二通

一、被告人の当公判廷における供述

(二)  別紙各修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

(1)  普通預金、定期預金について、

一、住友信託銀行八重洲口支店長木村芳郎作成の証明書

一、第一銀行足利支店長畑野三郎作成の残高証明書

一、第一銀行神田支店長下川瀁一作成の残高証明書並びに証明書

一、大蔵事務官藤田清次作成の銀行調査書類

一、金子淑子の検察官に対する供述調書

一、被告人作成の上申書一通(但し、昭和四二年一二月九日付)

(2)  金銭信託について、

一、住友信託銀行八重洲口支店長木村芳郎、三井信託銀行本店営業部長松尾恒太郎各作成の証明書

一、大蔵事務官藤田清次作成の三井信託財産調査書

(3)  貸付信託について、

一、住友信託銀行八重洲口支店長木村芳郎作成の残高証明書

一、大蔵事務官藤田清次作成の銀行調査書類、無記名裏帳調査書、財産記録調査書

一、大蔵事務官小村晋作成の現金有価証券等検査てん末書一通(記録第二二号)

(4)  金銭信託及び貸付信託を通じ、

一、金井淑子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(昭和四二年六月一五日付、同年一一月二日付)並びに検察官に対する供述調書

(5)  貸付金及び店主貸を通じ、

一、金井規子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(昭和四二年一〇月一六日付、同年一一月二〇日付)並びに検察官に対する供述調書

(6)  店主貸について、

一、大蔵事務官藤田清次作成の銀行調査書類、三井信託財産調査書、店主貸勘定調査書並びに個人関係税金調査書

一、文京区助役石橋三郎、鎌倉市長山本正一、杉並税務事務所長武川敏雄、文京税務事務所長羽山正男、本郷税務署長高野繁各作成の租税の納付状況等照会に対する回答書

一、足利市長長竹寅治作成の寄附金の照会に対する回答書

一、大蔵事務官小村晋作成の現金有価証券等検査てん末書二通

一、金井宏作成の上申書

一、金井淑子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通並びに検察官に対する供述調書

一、金井規子の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四二年六月一五日付)

一、被告人作成の上申書三通(昭和四二年一一月一〇日付二通、同年一二月一五日付)

(7)  未払金について、

一、文京税務所長羽山正男、台東税務所長各作成の租税の納付状況等照会に対する回答書

(8)  価格変動準備金について、

一、本郷税務署長高野繁作成の証明書

(9)  預金利子について、

一、住友信託銀行八重洲口支店長木村芳郎、第一銀行神田支店長下川瀁一各作成の証明書並びに残高証明書

一、第一銀行足利支店長畑野三郎作成の残高証明書

一、三井信託銀行本店営業部長松尾恒太郎作成の証明書

一、大蔵事務官藤田清次作成の預金利子等調査書

(法令の適用)

被告人の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三三号所得税法附則第三五条によりその改正前の所得税法第六九条第一項に、第二及び第三の事実はいずれも昭和四〇年法律第三三号所得税法第二三八条第一項に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて被告人を罰金一、七〇〇万円に処し、なお罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項を適用して金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙一

修正貸借対照表

金井良太郎

昭和39年12月31日

<省略>

別紙二

修正貸借対照表

金井良太郎

昭和40年12月31日

<省略>

別紙三

修正貸借対照表

金井良太郎

昭和42年12月31日

<省略>

別紙四

税額計算書

金井良太郎

<省略>

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