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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)6096号 判決 1968年9月28日

原告

吉成真由美

ほか二名

被告

帝都タクシー株式会社

主文

被告は、原告吉成真由美に対し五〇万円、同吉成宏三に対し三万三二四八円および原告真由美については五〇万円、原告宏三については三二四八円に対する昭和四三年六月一二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

原告らの被告に対するその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その二を原告らの、その余を被告の各負担とする。

この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

第一、請求の趣旨

一、被告は、原告吉成真由美に対し七〇万円、原告吉成八重子に対し三〇万円、原告吉成宏三に対し四九万八四一五円および右各金員(但し、宏三については三五万円)に対する昭和四三年六月一二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、仮執行の宣言。

第二、請求の趣旨に対する答弁

一、原告らの請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

第三、請求の原因

一、(事故の発生)

原告真由美は、次の交通事故によつて傷害を受けた。

(一)  発生時 昭和四一年一二月二〇日午前七時四五分頃

(二)  発生地 東京都新宿区下落合二丁目五六七番地先路上

(三)  加害車 普通乗用車(練五き六九三四号)

運転者 村上金作

(四)  被害者 原告真由美

(五)  態様 加害車が横断歩行中の原告真由美に衝突したもの

(六)  結果 頭部外傷、左大腿骨々折

二、(責任原因)

被告は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により、本件事故により生じた原告らの損害を賠償する責任がある。

三、(損害)

(一)  原告真由美の損害(慰藉料)七〇万円

原告真由美は、本件事故による受傷のため、昭和四一年一二月二〇日から昭和四二年二月五日まで、さらに、同年四月一九日から同年五月六日まで入院し、手術を受けた上左大腿部に生涯消えることのない醜痕を残すことになつた。原告真由美は、本件事故当時四才の女児であり、その精神的苦痛に対する慰藉料は、七〇万円が相当である。

(二)  原告八重子の損害(慰藉料)三〇万円

原告八重子は、同真由美の親として、事故発生以来看護に尽し、手術および治療期間中は精神的にも肉体的にも心労を重ね、さらに、原告真由美が手術の結果、醜痕を残すことになり、女児の親としてその将来の不幸を憂慮し、その精神的苦痛に対する慰藉料は、三〇万円が相当である。

(三)  原告宏三の損害

(1) 入院中の雑費 一万八四一五円

原告宏三は、原告真由美の入院期間中、別紙記載のとおり支出を余儀なくされ、同額の損害を蒙つた。

(2) 慰藉料 三〇万円

原告八重子と同様の理由により、慰藉料として、三〇万円が相当である。

(3) 弁護士費用 一八万円

原告宏三は、被告がその任意の弁済に応じないので、弁護士たる本件原告訴訟代理人にその取立てを委任し、着手金として、五万円を支払つたほか、成功報酬として、第一東京弁護士会所定の報酬範囲内である一三万円を第一審判決言渡と同時に支払うことを約した。

四、(結論)

よつて、被告に対し、原告真由美は七〇万円、同八重子は三〇万円、同宏三は四九万八四一五円および右各金員(但し、宏三については三五万円)に対する訴状送達の日の翌日である昭和四三年六月一二日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第四、請求の原因に対する認否

第一、第二項は認める。第三項のうち、原告宏三がその主張の入院雑費を支出したことは認めるが、本件事故と相当因果関係がない。

第五、証拠関係 〔略〕

理由

一、請求の原因第一、第二項の事実(事故発生、責任原因)は当事者間に争いがないから、被告は、原告らに対し、自賠法第三条にもとずいて、原告らの蒙つた損害を賠償する責任がある。

二、そこで、原告らの蒙つた損害について判断する。

(一)  原告真由美の損害(慰藉料)について

〔証拠略〕によれば、原告真由美は、本件事故当時四才の女児であつたが、本件事故により左大腿骨々折の傷害を受け、昭和四一年一二月二〇日から昭和四二年二月五日まで、さらに、同年四月一九日から同年五月六日まで入院し、手術を受けたこと、右手術の結果真由美の左大腿部に手術痕を残すことになつたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。これらの事情を総合すると、本件事故により、原告真由美の蒙つた精神的苦痛を金銭にかえると五〇万円を相当とする。

(二)  原告八重子の損害(慰藉料)について

原告八重子は原告真由美の本件受傷により精神的苦痛を受けたと主張する。原告真由美が前記傷害により、入院治療を受け、手術痕を残したことは前記認定のとおりであるが、右事実関係のもとにおいては、原告八重子において、原告真由美が生命を害された場合にも劣らない程度の精神上の苦痛を受けたものとは認め難いから、自己の権利として慰藉料を請求することはできないというべきである。

(三)  原告宏三の損害

(1)  入院中の雑費について

原告宏三は、原告真由美の入院期間中、別紙記載のとおり支出をしたことは、当事者間に争いがない。しかし、右入院中の雑費のうち、牛乳、ヨーグルト、ヤクルト、ピルマン、玉子、果物、チーズ、ハム、ちり紙、タオル、雑誌、折紙、ガス代、電話代のほかは、本件事故と相当因果関係にある損害とは認め難いから、三二四八円の範囲で、原告宏三の損害と認めるを相当とする。

(2)  慰藉料について

右請求は、原告八重子の場合と同様の理由により認め難い。

(3)  弁護士費用について

弁論の全趣旨によれば、原告宏三は、被告が本件事故による損害賠償を任意に支払わなかつたため、本件訴訟を原告訴訟代理人に委任し、着手金として五万円を支払つたほか、報酬として一三万円の支払を約したことが窺われる。しかし、本件事件の難易、被告の抗争状況等を考慮して右費用のうち、三万円を被告に負損させるのが相当である。

三、そうすると、被告は、原告真由美に対し五〇万円、同宏三に対し三万三二四八円および右各金員(但し、原告宏三については、三二四八円)に対する訴状送達の日の翌日であること記録上明かな昭和四三年六月一二日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるが、その余の原告らの本訴請求中、右の限度でこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条、第九三条、第八九条、仮執行の宣言について同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 福永政彦)

別表

<省略>

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