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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)14291号 判決 1969年6月25日

原告 東商業協同組合

右訴訟代理人弁護士 高松滋

被告 松山秀男

被告 有限会社二葉屋

主文

一、原告に対し

被告松山秀男は金一二一二万円と、うち金一〇七万円に対しては昭和四三年六月一日以降同年一二月一日まで一〇〇円につき一日金二銭八厘、同月一八日以降その支払いが済むまで年五分の各割合による金員を、残余の一一〇五万円に対しては昭和四三年一二月一八日以降その支払いがすむまで年五分の割合による金員を、被告有限会社二葉屋は金一三〇万円とこれに対する昭和四三年六月一日以降同年一二月一七日まで一〇〇円につき一日金二銭八厘、同月一八日以降その支払いが済むまで年五分の各割合による金員を、

各支払わなければならない。

二、訴訟費用は一〇分してその八を被告松山秀男の、その余を被告有限会社二葉屋の各負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実

原告は主文一項と同旨ならびに訴訟費用は被告らの負担とするとの判決と仮執行の宣言を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

一、原告は中小企業等協同組合法にもとづき昭和二九年九月一〇日設立された協同組合であり、主として事業資金の貸付を目的として設立されたもの、被告松山は原告の専務理事として昭和三九年頃から原告の組合業務を統括していたものである。

二、被告松山は、昭和四一年一月二四日から昭和四二年一〇月四日までの間に、別紙明細書記載のとおり、前後二三回にわたって、山中道之ほか一八名(いずれも架空人)に貸付けたように装って、保管中の原告の金員一一〇五万円を横領して原告に対し同額の損害を与えた。

よって、右一一〇五万円とこれに対する本件訴状が被告松山に送達された日の翌日である昭和四三年一二月一八日以降その支払いが済むまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

三、原告は被告松山に対し、昭和四〇年頃一〇七万円を、期限の定めなく、利息は日歩二銭八厘として毎月末日限り当月分を持参または送金して支払うとの約束で貸付けた。

被告松山は、昭和四三年五月三一日までの利息金の支払いをしたがその余の支払をしないので、原告は被告松山に対し、昭和四三年一一月一九日到達した書面で、同書面の到達後七日以内に昭和四三年六月一日から同年一〇月三一日までの未払利息金を支払うよう催告したがこれに応じなかったので、本件訴状をもって右消費貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

よって、右貸付元金と、これに対する昭和四三年六月一日以降本件訴状が被告松山に送達された昭和四三年一二月一七日までの約定の日歩二銭八厘の割合による利息およびその翌日以降その支払いがすむまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

四、原告は、被告会社に対し、昭和四一年六月一三日、一三〇万円を、期限の定めなく、利息は日歩二銭八厘とし毎月末日限り当月分を持参または送金して支払うとの約束で貸付けた。

被告会社は、昭和四三年六月一日以降の利息の支払いをしないので、原告は被告会社に対し、昭和四三年一一月一九日到達した書面で、同書面の到達後七日以内に昭和四三年六月一日以降同年一〇月三一日までの利息を支払うよう催告したがこれに応じなかったので、本件訴状をもって右消費貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

よって右貸付元金とこれに対する昭和四三年六月一日以降、本件訴状が被告会社に送達された昭和四三年一二月一七日まで約定の日歩二銭八厘の割合による利息と、その翌日以降右支払いのすむまで民事法定利率年五分の割合による金員の支払いを求める。

以上のとおり述べた。

被告らは、いずれも適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭しないので各提出にかかる答弁書を陳述したものとみなすべきところ、右答弁書の記載によると、いずれも請求棄却、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、被告松山は、請求原因第一項の事実は認める。同第二、第三項の事実は否認するというのであり、被告会社は、請求原因第一項の事実は認める。同四項の事実は否認するというのである。<証拠省略>

理由

請求原因第一項の事実は当事者の間で争いがない。

先ず請求原因第二項の事実について判断するに、<証拠>によると、被告松山は、原告の専務理事としてその貸付業務一切を行っていたところ、別紙一覧表記載のとおり前後二三回にわたり、原告の資金一一〇五万円を、架空人名義を用いて貸出したように帖簿上処理したうえ、勝手に自己の用途に費消して原告に対し同額の損害を与えたものと認められ、右認定に反する証拠は見当らない。

本件訴状が被告松山に送達された日の翌日が昭和四三年一二月一八日であることは被告松山において明らかに争わないところであるから自白したものとみなす。

してみると、被告松山に対し不法行為による損害賠償として右一一〇五万円とこれに対する、訴状送達の翌日である昭和四三年一二月一八日以降その支払いがすむまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める原告の請求は理由がある。

次に請求原因第三項の事実について判断するに、<証拠>に照らすと、原告は被告松山に対し、昭和四〇年中に、一〇七万円を、期限の定めなく、利息は日歩二銭八厘として各月末日限り当月分を支払うことと定めて貸付けたこと、被告松山より、昭和四三年六月一日以降の利息の支払いがないため、原告において、同年一一月一九日被告松山に到達した書面で、同書面到達後七日以内に右遅滞利息金の支払いをするよう催告したが被告松山がこれに応じなかったため、昭和四三年一二月一七日被告松山に到達した本件訴状をもって、右消費貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことの各事実が認められ、右認定に反する証拠は見当らない。

以上の事実によると、被告松山に対し右貸付金一〇七万円に対する、昭和四三年六月一日以降右消費貸借契約が解除された同年一二月一七日まで、約定の日歩二銭八厘の割合による利息金と、右解除により、右貸付金と同額の金員およびこれに対する解除の日の翌日以降その支払いがすむまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める原告の請求は理由がある。

最後に、請求原因第四項の事実について判断するに、<証拠>によると、原告が被告会社に対し、昭和四一年六月一三日、一三〇万円を、期限の定めなく、利息は日歩二銭八厘とし毎月末日限り当月分を支払うとの約束で貸付けたこと、被告会社より昭和四三年六月一日以降の利息の支払いがないため、原告において、同年一一月一五日被告会社が到達した書面で、同書面到達後七日以内に右遅滞利息の支払いをするよう催告したが被告会社がこれに応じなかったため、昭和四三年一二月一七日被告会社に到達した本件訴状をもって右消費貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことの各事実が認められ、右認定に反する証拠は見当らない。

以上の事実によると、被告会社に対し右貸付金一三〇万円に対する、昭和四三年六月一日以降右解除の日である同年一二月一七日まで、約定の日歩二銭八厘の割合による利息金と、右解除により、右貸付金と同額の金員およびこれに対する解除の日の翌日以降その支払いがすむまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める原告の請求は理由がある。<以下省略>。

(裁判官 川上正俊)

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